未来は今 07

昨年のナショナルリーグMVPはフィラデルフィア・フィリーズのライアン・ハワード、アメリカンリーグMVPはジャスティン・モノーだった。ちなみにこの二人はいずれもオールスター・フューチャーズゲームに出場した経験がある。そういう楽しみがあるからこそ、わたしは7年間も『未来は今』というタイトルでこの試合のレヴューを書き続けているのである。巷ではこの試合のことを「オールスターゲームの前哨戦」と呼び習わしているが、そんなつまらないイヴェントではないということは重ねて強調しておきたい。

今年が9回目になるオールスター・フューチャーズゲームは、7月8日にサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地AT&Tパークで開催された。両ティームの先発メンバーは以下の通りである。

世界選抜
CF
マイケル・ソーンダーズ(シアトル)
SS
フー・チンロン(ダジャーズ)
RF
ウラディミア・バレンティーン(シアトル)
1B
ジョーイ・ヴォット(シンシナティ)
DH
マックス・ラミレス(クリーヴランド)
2B
ヘルマン・ドゥラン(テキサス)
C
ロビンソン・ディアス(トロント)
LF
カルロス・ゴンサレス(アリゾナ)
3B
フレディ・サンドバル(エンジェルズ)
P
リック・ヴァンデンハーク(フロリダ)
アメリカ選抜
LF
ジャコービ・エルズベリー(ボストン)
CF
ジャスティン・アプトン(アリゾナ)
3B
エヴァン・ロンゴリア(タムパベイ)
DH
イアン・ステュワート(コロラド)
1B
スティーヴ・ピアース(ピッツバーグ)
SS
ブレント・リリブリッジ(アトランタ)
RF
ジェイ・ブルース(シンシナティ)
2B
クリス・コフラン(フロリダ)
C
ブライアン・アンダースン(セイントルイス)
P
ジェフ・ニーマン(タムパベイ)

アメリカ選抜の先発はジェフ・ニーマン(タムパベイ)。世界選抜の先頭打者として打席に入るマイケル・ソーンダーズ(シアトル)は投手返しにグラウンダーを放つが、これを二塁のクリス・コフラン(フロリダ)が弾いて出塁を許してしまう。ソーンダーズは次打者フー・チンロン(ダジャーズ)の2球目にすかさず二塁を奪う。その直後の投球をフーが右へ流し打つと、打球は一塁線を破る二塁打となり、ソーンダーズがホームイン。世界選抜が1点を先取した。ウラディミア・バレンティーン(シアトル)の打席で今度はフーが三塁盗塁に成功する。バレンティーンは中堅に飛球を打ち上げ、楽々犠牲フライと思われたが、中堅手のジャスティン・アプトン(アリゾナ)が本塁へ直接返球。フーは得点を挙げたもののきわどいタイミングになって球場が沸いた。走者がいなくなったところで、ニーマンは95マイルの速球で4番のジョーイ・ヴォット(シンシナティ)を三振に退ける。続く5番マックス・ラミレス(クリーヴランド)の打球は二塁後方への飛球。半身の姿勢になった二塁のコフランが打球を落としてしまうが、右翼のジェイ・ブルースがカヴァーして辛くもアウトを取った。しかし、世界選抜が速攻で2点を先取。

世界選抜の先発を務めるのは、すでにMLBでも勝ち星を挙げているリック・ヴァンデンハーク(フロリダ)。アメリカ選抜の1番打者ジャコービ・エルズベリーもつい先日ボストン・レッドソックスでのプレイを経験したばかりである。エルズベリーの打球は二塁へのゆるい当たりになったが、ヘルマン・ドゥラン(テキサス)がすばやくさばいて、間一髪でアウトに退けた。2番は1回表に強肩を披露したアプトン。3-2のフルカウントからヴァンデンハークは外角低めに94マイルの速球を決めてアプトンから三振を奪う。しかし、3番エヴァン・ロンゴリア(タムパベイ)が中堅頭上を越す二塁打を打って、2アウトながらアメリカ選抜にチャンスが訪れた。ヴァンデンハークの、4番イアン・ステュワート(コロラド)への初球が外角に逸れてロンゴリアは三塁に進んだが、ステュワートの当たりそこなった打球は投手前に力なく転がり、1回裏のアメリカ選抜は無得点に終わっている。

2回表、アメリカ選抜の2番手には左腕チャック・ロフグレン(クリーヴランド)が送られた。6番ドゥランの打球は左翼深くまで飛んだが、フェンスにはわずかに届かず1アウト。しかし、7番ロビンソン・ディアス(トロント)が、低めのボール球を中堅前に弾き返して一塁に出る。カルロス・ゴンサレス(アリゾナ)は三塁への飛球で2アウトとなるが、フレディ・サンドバル(エンジェルズ)の打席でディアスが二塁への盗塁を決めて、またも世界選抜の得点機。しかし、サンドバルはロフグレンの変化球に空振り三振を喫し、この回の世界選抜は無得点で攻撃を終えた。

その裏、世界選抜の2番手は右腕カルロス・カラスコ(フィラデルフィア)。先頭のスティーヴ・ピアースの打球は内野への飛球。三塁のサンドバルと重なって、遊撃手フーが危うく打球を落としそうになりながらも1アウトを取った。ブレント・リリブリッジ(アトランタ)は変化球を振って三振。2アウトになったが、7番ジェイ・ブルース(シンシナティ)の打球は右中間のフェンスを直撃する大飛球。ブルースは俊足を飛ばして三塁まで達したが、打球がもう何メートルか中堅に寄っていたら本塁打という当たりだった。この打球にやや動揺したかカラスコは、続くコフランを歩かせてしまう。2アウトながら一、三塁のピンチに立たされたカラスコだったが、続く9番ブライアン・アンダースン(セイントルイス)に落ちる球を振らせて、何とか無得点で切り抜けた。

3回表のアメリカ選抜のマウンドに登った右腕ジョバ・チェムバレン(ヤンキーズ)は、初球から97マイルの速球を投げ込んで観客を驚かせる。しかしやや制球が定まらず、4球続けてのボールで俊足のソーンダーズを歩かせてしまう。ソーンダーズがまたも二塁を奪って追加点のチャンスを作ると、フーも第1打席と同じく右狙いの打撃で右翼前一塁打。ソーンダーズが還って世界選抜に3点目が入った。しかし、バレンティーンは外角高目の速球を振って三振。アンダースンが二塁を狙ったフーをアウトにして、世界選抜の攻撃は2アウトになる。4番ヴォットの打球は鋭いラインドライヴになったが、一塁のピアーズがつかんで3アウト。しかし、世界選抜のリードは3点に開いている。

3回裏、世界選抜3番手の右腕ファウティノ・デロスサントス(ホワイトソックス)は投球回数を上回る三振を奪っている投手だ。先頭のエルズベリーはカーヴボールを見逃して三振。しかし続くアプトンがライナーで左翼席にたたき込んで、アメリカ選抜がついに1点を挙げた。3番ロンゴリアが投球を受けて出塁、ステュワートは左翼への浅い飛球で2アウトになったものの、ピアースが四球を選んで、一、二塁のチャンスを作る。しかしデロスサントスは、リリブリッジを外角の速球で三振に退けてアメリカ選抜の追加点を阻んだ。

4回表、アメリカ選抜は一塁にマット・トルバート(ミネソタ)、遊撃に地元サンフランシスコ所属のブライアン・ボコック、中堅にコルビー・ラスムス(セイントルイス)が入った。4番手には、MLBに呼ばれたマット・ガーザに代わって出場することになったケヴィン・マルヴィ(メッツ)が送られたが、先頭のラミレスに左中間二塁打を打たれていきなりピンチを招く。ドゥランを三振に退けたものの、続くディアスの一二塁間への打球を、この回から一塁に入ったトルバートが弾いて一、三塁。ゴンサレスの打球は、これも左中間への長打になろうかという当たりになったが、この回から中堅に入ったラスムスがフェンス前まで走って捕球。しかし、犠牲フライでさらに1点が入った。サンドバルの打球は、二塁手コフランから二塁をカヴァーしたボコックに渡って3アウト。しかし、得点は4対1となり、再び世界選抜が3点リードである。

4回裏、世界選抜も守備の交代があった。捕手はヘオバニ・ソト(カブズ)、二塁手はクレイグ・スタンズベリー(サンディエゴ)。そして、マウンドには地元サンフランシスコ所属の右腕エンリ・ソサが登っている。この回先頭のブルースは二塁正面へのグラウンダーで、続くコフランの投手越えになった打球も遊撃手フーが軽くさばいて2アウト。アンダースンは一塁へのグラウンダーに退き、この試合初めて打者3人でイニングが終わっている。

5回表、アメリカ選抜の5番手はルーク・ホシェヴァー(カンザスシティ)。また、捕手がJ・R・トールズ(ヒューストン)、二塁がエイドリアン・カーデナス(フィラデルフィア)、三塁がジョニー・ホイットルマン(テキサス)に交代した。この回先頭のソーンダーズに代わって代打にゴルキス・エルナンデス(デトロイト)が送られたが三塁正面のグラウンダーで1アウト。続くフーには代打エルビス・アンドルス(アトランタ)。しかし、アンドルスも遊撃手へグラウンダーを打ってアウトになり、バレンティーンは中堅への浅い飛球と、世界選抜の攻撃も3人で終了した。

5回裏、世界選抜の5番手には右腕デオリス・ゲラ(メッツ)が起用された。守備では、捕手にヘオバニ・ソト(カブズ)、二塁にクレイグ・スタンズベリー(サンディエゴ)、三塁にアルシデス・エスコバル(ミルウォーキー)が入っている。先頭のエルズベリーは一塁正面のゆるい当たり、続くラスムスは右翼に高々と打ち上げて簡単に2アウトになったが、3-2のフルカウントからホィットルマンが低めの球を右中間スタンドに打ち込んでアメリカ選抜が2点目を挙げる。ここで世界選抜は6人目の左腕フランクリン・モラレスを救援に送る。モラレスは4番のステュワートを、2-2から外角への速球で見逃し三振に退けて、アメリカ選抜に追加点を与えなかった。

6回表のアメリカ選抜のマウンドには右腕クレイ・ブックホルツ(ボストン)が登ったが、先頭の4番ヴォットが左翼席に見事な流し打ちの本塁打を打って、世界選抜に5点目が入る。しかし、ラミレスを得意のカーヴボールで空振り三振に退けると、スタンズベリーのゆるい当たりは遊撃手のボコックが素早い動きでアウトにした。そして、ソトも空振り三振で世界選抜の攻撃は終了。だが、スコアは5対2で世界選抜のリードは三度3点に開いている。

6回裏、先頭のトルバートはファウルで粘ったが、最後は外角の速球を振って三振に終わる。地元の大声援に送られた次打者のボコックは3-2から四球を選んで出塁するが、ブルースはモラレスの変化球を振って三振。モラレスは三つのアウトを全て三振で奪ったところでマウンドを右腕ペドロ・ベアト(ボルティモア)に譲る。エイドリアン・カーデナスの打球は左翼線への飛球になったが、三塁、遊撃、左翼が譲り合って安打になり、走者は一、三塁。トールズに期待が集まったものの、最後は空振りの三振に終わって、アメリカ選抜はチャンスを活かすことができなかった。

7回表のアメリカ選抜のマウンドは左腕クレイトン・カーショー(ダジャーズ)。代打に起用されたジェイムズ・ヴァンオストランド(ヒューストン)が低めの球をうまくすくい上げると、打球は左翼フェンスぎりぎりのところを越えていき、世界選抜の6点目が入った。アルシデス・エスコバル(ミルウォーキー)の打球は二塁へのグラウンダーで1アウトになったが、エルナンデスが四球を選んで塁に出る。アンドルスを空振りの三振に退けたところで、投手はカーショーから右腕コリン・ベイルスター(ワシントン)に交代。しかし、バレンティーンが左中間に二塁打を放って、エルナンデスが一塁から長駆ホームイン。世界選抜の7点目が入った。前の打席で本塁打を打っているヴォットだったが、ベイルスターが速球で三振を奪って7回が終了。スコアは7対2で世界選抜の5点リードになっている。

7回裏の世界選抜は8人目の投手に右腕リッチ・トムプスン(エンジェルズ)を送った。エルズベリーは3-2から粘ったが、最後は外角へのカーヴボールを見逃して三振。ラスムスの打球も平凡な左翼フライに終わり、世界選抜は2年ぶりの勝利まであと1アウト。ここでトムプスンに代わって9人目の右腕エミリアノ・フルト(ワシントン)がマウンドに登る。昨年シアトル・マリナーズでMLBの経験があるフルトだが、前の打席で本塁打を打っているホィットルマンを警戒したのか、四球で歩かせる。しかし、最後はステュワートが中堅へ飛球を打ち上げて試合終了。7対2で世界選抜が勝利を収めた。

1
2
3
4
5
6
7
R
H
E
世界選抜
2
0
1
1
0
1
2
7
8
0
アメリカ選抜
0
0
1
0
1
0
0
2
5
1
勝:リック・ヴァンデンハーク
負:ジェフ・ニーマン
本:ジョーイ・ヴォット
  ジェイムズ・ヴァンオストランド(世界)
  ジャスティン・アプトン、
  ジョニー・ホィットルマン(アメリカ)

この試合のMVP、ラリー・ドビー賞に選ばれたのはティームに先取点をもたらすなど、2打数で2安打、2打点1盗塁をマークしたフー・チンロン。今年のMLBオールスターゲームには、過去にフューチャーズゲームでMVPに輝いたアルフォンソ・ソリアノ、ホセ・レイエス、グレイディ・サイズモアの3人が選ばれている。果たしてフーはどこまで上がっていくことができるだろうか。未来への期待の大きさが、オールスター・フューチャーズゲームの最大の魅力なのである。
(7/9/07)