ボルティモア・オリオールズ

概観
昨年のボルティモア・オリオールズは、シーズン途中に、サム・ペロッツォからデイヴ・トレムブリィへ監督が交代したが、そのかいもなく69勝93敗でアメリカンリーグ東地区4位。アトランタ・ブレイヴズに投手王国をもたらしたレオ・マツォーネも成果を残せないまま解任され、10年連続で勝率5割未満というティームの再建は、また一から出直しになってしまった。このオフシーズンに、中心打者のミゲル・テハダとエースのエリク・ベダードを手放すという大異動を行なったが、つぎはぎ状態のティームは果たしてまとまるのだろうか。

先発
このオフシーズン中、去就が注目されていたエリク・ベダードのトレードが決まり、今のところボルティモアはエース不在という状態にある。ローテーション入りが予定されている投手でシーズン10勝以上をマークしたことがあるのは右腕ダニエル・カブレラただ一人だ。04年にデビューしてから3年間で31勝をマークしているカブレラは、MLB屈指と言われる球威を活かすことができず、制球力不足で9勝18敗、防御率5.55。同じく制球力が課題の左腕アダム・ローウェンは開幕から先発スタッフに加わっていたが、左肘の疲労骨折で故障者リスト入り。6試合に先発しただけでシーズンを終えた。代わってローテーションに抜擢されたのは、02年にクリーヴランド・インディアンズから第1巡指名を受けてプロ入りした左腕ジェレミー・ガスリーだった。オールスターゲームまでに4勝2敗、防御率2.74と好投したが、8月以降は勝ち星が挙げられなかった。昨年7月にMLBデビューを果たし、初勝利もマークした左腕ギャレット・オルスンも、32回3分の1で28与四球と、コントロールに課題を残した一人である。この4人がローテーション入り確定で、あと一つの枠を移籍選手や新人が争う。ヒューストン・アストロズから来た左腕トロイ・パットンは組織内トップクラスの投手と評判だった。昨年はAA級で防禦率2.99と好投したのを認められて、シーズン終盤にMLB昇格。3試合で2敗を喫してはいるが、防禦率は3.55と悪くない。右腕マット・アルバーズは、4月後半からヒューストンのローテーションに抜擢されたが、4勝11敗、防御率5.86と振るわなかった。マイナーリーグ時代には、06年に継投で、昨年は一人で無安打無得点をマークした経験のある右腕ラダメス・リスも、8月にデビューを飾ったが、三振と四球とが投球回数とほぼ同数だった。それでも、100マイルを計時する速球は魅力的である。昨年途中にシカゴ・カブズに移った右腕スティーヴ・トラクスルとマイナーリーグ契約を結び、春期練習に招いているが、持病の腰痛と38歳という年齢とを考えると、ローテーション入りは厳しいだろう。アトランタ・ブレイヴズから放出された右腕ランス・コーミアは、昨年9先発で2勝6敗、防禦率6.85。こちらもあまり期待できそうにない。
評価:D

救援
先発スタッフにエースがいないのと同様に、クローザーにも不安がある。06年に33セーヴをマークして、抑えに定着したかと思われた右腕クリス・レイは、昨年4月に2勝2敗7セーヴ、防禦率5.11と不調。さらに、夏場に肘を傷めてメンバーを離れた。05年には41セーヴしたこともある右腕ダニス・バエスが、8月にクローザー役を引き継いだが、この月防禦率が8点台ではとても信頼が置けず、最後は左腕ジェイミー・ウォーカーと右腕チャド・ブラッドフォードとの二人で試合終盤をまかなわざるを得なかった。二人合計で159試合を救援して、防禦率3.29という数字は上出来なのだが、セーヴ失敗11回は二人で挙げた9セーヴよりも多い。テハダのトレードでヒューストンから来た右腕デニス・サーフェイトは、昨年7試合と登板機会は少なかったが、7イニングで14奪三振に対して与えた四球はわずか1個。マイナーリーグ時代からの課題だった制球難を克服しつつあり、レイが復帰するまでのクローザー候補の一人に数えられている。ミルウォーキー・ブルワーズから来たグレッグ・アキノは、04年のアリゾナ・ダイアモンドバックス時代に16セーヴをマークしたことがあるが、ここ3年間の仕事は専ら中抑えだ。昨年ボルティモアのメンバーでマウンドを経験しているフェルナンド・カブレラ、ジム・ホーイ、ロッキー・チェリー、ジョン・レスターは右腕投手たちは全員防禦率7点台で、ボルティモアの投手スタッフがいかに苦しんでいたかがよくわかる。しかし、シアトル・マリナーズで昨年73試合登板、防禦率2.36をマークしたジョージ・シェリルを獲得できたので、ウォーカー、ブライアン・バーリズしかいなかった救援左腕はやや層が厚くなった。
評価:D

先発
ダニエル・カブレラ
C
ジェレミー・ガスリー
D
アダム・ローウェン
D
トロイ・パットン
(ヒューストン)
D
ギャレット・オルスン
(新人)
E
マット・アルバーズ
(ヒューストン)
D
ラダメス・リス
(新人)
E
スティーヴ・トラクスル
(招待選手)
C
ランス・コーミア
(招待選手)
D
中抑え
チャド・ブラッドフォード
C
ジェイミー・ウォーカー
C
ジョージ・シェリル
(シアトル)
C
グレッグ・アキノ
(ミルウォーキー)
D
デニス・サーフェイト
(新人)
E
ジム・ホーイ
(新人)
E
ブライアン・バーリズ
D
ジョン・レスター
D
ロッキー・チェリー
(新人)
E
エステバン・ヤン
(招待選手)
D
ライアン・バクヴィチ
(招待選手)
D
抑え
ダニス・バエス
C
クリス・レイ
C

捕手
昨年のラモン・エルナンデスは、2度の故障者リスト入りのために50試合近くを欠場。自身ベストだった06年の打率.275、91打点、23本塁打から、打率.258、62打点、9本塁打と落ち込んだ。しかし守備面では、盗塁阻止率は下がったものの、動きはそれほど悪くなっていない。エルナンデスの健康状態も心配だが、それをカヴァーする控え選手の層が薄い点も大いに気にかかる。昨年のポール・バーコに代わって、今年はギエルモ・キロスと契約したが、MLBでの出場経験はわずか39試合。この3年間MLBでプレイしていないベン・デイヴィスや昨年のドラフト第1巡指名のマット・ウィーターズが控え候補として春期練習に招かれている。
評価:C

内野手
5選手との交換でミゲル・テハダがティームを去った。昨年は手首の骨折で連続試合出場がストップ、打点、本塁打は99年以来最低の数字だったテハダではあるが、その後継者は今のところ見つかっていない。テハダ欠場中に起用されたルイス・エルナンデスは、守備を高く評価されている選手だが、今年がやっとMLB2年目の若手だ。ブランドン・フェイヒィも3年目と経験不足。内野外野いずれもこなすフレディ・バイナムでさえ4年のキャリアしかない。三塁メルビン・モラは、04年に打率.340、104打点、27本塁打をマークして以来毎年数字が落ちてきている。しかし以前は不安の多かった守備は、逆に年々安定してきているとは皮肉な話だ。一塁ケヴィン・ミラーも、ボストン・レッドソックスでプレイした03年、04年の2年間がピークだった。昨年の63打点、17本塁打というのは、ミラーにとっては平均的な数字ではあるが、テハダがいなくなった打線を支えるにはあまりにも物足りない。昨年MLB初本塁打を打ったスコット・ムーアは、一塁と三塁との控えでメンバー入りしそうだが、モラやミラーと定位置争いをできるまでに成長するならば、少しはおもしろくなってくる。ボルティモアの内野でただ一人オールスター級と呼べる二塁のブライアン・ロバーツは、出塁率.377、102得点、50盗塁と、MLB屈指のリードオフマンにふさわしい成績を収めた。定位置を確保した03年から5年続けて失策数がひとケタと、守備も安定しているが、昨年12月に発表された『ミッチェル・レポート』に薬物使用選手として名前が掲載されており、その悪影響だけが心配だ。
評価:D

外野手
昨年がMLB2年目だったニック・マーカキスは、ティームでただ一人打率3割、100打点、20本塁打をマーク。テハダが去った今季は、打線の中心として一層の活躍が期待されている。昨年ロバーツに次ぐ37盗塁をマークしたコリィ・パタースンとは契約延長をしなかったが、ベダードのトレードでやってきたアダム・ジョーンズが中堅手のレギュラーに抜擢されるだろう。シアトルの強力なレギュラー外野手の壁を越えられなかったものの、昨年AAA級では打率.314、84打点、25本塁打をマーク。定位置を与えられることで、大きな飛躍を遂げるかもしれない。移籍選手と言えば、ヒューストンから獲得のルーク・スコットは、昨年64打点、18本塁打をマークしている。テハダに代わる長打者として、5番左翼手に定着する。昨年8月に、05年以来のMLB復帰を果たしたタイク・レドマン、ピッツバーグ・パイレーツ時代にリードオフマンを務めていた経歴を持つ俊足の選手。試合終盤の守備要員にうってつけの人材である。ボルティモアの外野手には左打者が多いので、ヴェテランのジェイ・ペイトンは、貴重な控えになるだろう。
評価:D

指名打者
指名打者の他、一塁、三塁でもプレイしたオーブリィ・ハフが、この1月にヘルニアの手術を受けた。春期練習にも遅れて参加することになりそうで、調整不足が懸念される。シーズン3割、100打点、30本塁打をマークした強打者の一日も早い復帰が待たれている。もう一人の左の長打者ジェイ・ギボンズは、過去に筋肉増強剤を使用したという理由で開幕から15試合の出場停止処分を受けている。右打ちの指名打者にはジェイ・ペイトンやケヴィン・ミラーなどのヴェテランが起用されるだろう。
評価:C

2B
ブライアン・ロバーツ
A
CF
アダム・ジョーンズ
(シアトル)
D
3B
メルビン・モラ
C
RF
ニック・マーカキス
B
DH
オーブリィ・ハフ
C
C
ラモン・エルナンデス
C
1B
ケヴィン・ミラー
C
LF
ルーク・スコット
(ヒューストン)
C
SS
ルイス・エルナンデス
D
C
ギエルモ・キロス
(テキサス)
D
C
ベン・デイヴィス
(招待選手)
D
C
マット・ウィーターズ
(招待選手)
E
IF
ブライアン・フェイヒィ
D
IF
スコット・ムーア
(新人)
E
IF/OF
フレディ・バイナム
D
1B/OF
ジェイ・ギボンズ
D
OF
ジェイ・ペイトン
C
OF
タイク・レドマン
D

監督
今シーズン正式に監督に就任したデイヴ・トレムブリィは、このティームをどう率いていくべきか、大いに頭を悩ませていることだろう。昨年途中にサム・ペロッツォを引き継いでからは、中堅手にパタースンとレドマンとを併用した以外は、ほとんどメンバーを動かさないでシーズンをこなしてきた。しかし今年は、いやが上にも若手を起用しなければならない状況に立たされている。トロイ・パットン、ラダメス・リス、アダム・ジョーンズなど、将来有望な新人を育てきれなければ、ボルティモアの監督は3人続けて途中解任ということになるかもしれない。
評価:D

期待の若手
ノーラン・ライモールドは、組織内トップクラスの長打力と評されている外野手だ。05年に第2巡指名でプロ入りしたが、06年には足腰の故障、昨年は脇腹を傷め、シーズンの大部分を欠場してしまった。それでも昨年、AA級で50試合に出て、打率.306、34打点、11本塁打をマーク、アリゾナ秋季リーグでは打率こそ.245と低かったものの、106打数で23打点、6本塁打を打って、素質の片鱗を示している。テハダが抜けて右の長打者が手薄になったボルティモア打線の期待の星である。