ボストン・レッドソックス

概観
昨年のボストン・レッドソックスは、2位以下を最大11.5ゲームも引き離しながら、終盤にヤンキーズの追い上げに遭うという不手際はあったものの、95年以来のアメリカンリーグ東地区優勝。地区シリーズでロサンジェルス・エンジェルズに3連勝、優勝決定シリーズでは1勝3敗からクリーヴランド・インディアンズを逆転してリーグ優勝を決めると、ワールドシリーズでは勢いに乗るコロラド・ロッキーズを4試合で退け、04年以来3年ぶりの世界一に輝いた。そのワールドチャンピオンは、きょう3月25日からオークランド・アスレティックスとの開幕シリーズ2試合を日本で行なうことになっているが、せっかくの開幕試合が地元ファンのいないところで行なわれること、レギュラーシーズンが始まる直前の大事な時期に日付変更線を越えてまでして地方巡業に赴くこと、マニー・ラミレスやダビド・オルティスが生まれたドミニカ共和国で開幕試合を開催しようという話には決してならないこと、先にシーズンが開幕しているパシフィックリーグだけがMLBの公式試合の犠牲になることなど、この興行には考え直すべき点が多いと思う。

先発
右腕ジョシュ・ベケットが、99年の新人ドラフト全体第2位指名の実力を遺憾なく発揮した。昨年与えた四球が40個、06年には36本も打たれた本塁打を17本にまで抑えるなど、コントロールに留意した投球が功を奏して、MLBでただ一人の20勝をマーク。しかし、残念ながらサイ・ヤング賞はC・C・サバシアの次点に終わった。一時引退するとも言われていたヴェテラン右腕カート・シリングは、ボストンで現役続行を表明した。しかし、春期練習前に右肩を傷めて故障者リストしたため、開幕メンバーからは外れることになる。シリングが休んでいる間の先発2番手を務めるのは、今年で赤靴下をはいて14年目になる右腕ティム・ウェイクフィールド。昨年はフィルとジョーとのニークロ兄弟が79年に達成して以来という、ナックルボーラーの20勝が期待されたが、終盤に勝ち星が伸びずに17勝でシーズンを終えた。昨年MLBの新人では最多の15勝をマークした右腕マツザカ・ダイスケだったが、内容は決して褒められたものではなかった。味方がリードしているか、最悪でも同点という場面になるまで投げさせてもらったおかげで勝った試合も多く、実際には10勝がやっとだったのではないか。しかも、体力不足で夏場にはほとんど使い物にならず、今年は一から出直しのシーズンになる。悪性リンパ腫から見事に立ち直った左腕ジョン・レスターと、MLBデビュー2試合目で無安打無得点試合を達成した右腕クレイ・ブックホルツとが5人目の先発を争う。フリアン・タバレスとカイル・スナイダーとの二人は、スウィングマンとしてメンバー入りするだろう。05年にアメリカンリーグのサイ・ヤング賞右腕バルトロ・コロンが春期練習に招かれていたが、2試合の先発で防禦率16.87ではメンバーに残れるはずもない。マイナーリーグで調整し直して、シーズン中の復帰を目指す。
評価:B

救援
06年に見事なデビューを果たした右腕ジョナサン・パペルボンは、昨年夏場にやや疲れの見える場面があったものの、防禦率1.85、37セーヴに、投球回数をはるかに上回る84個の三振を奪って、世界一に大いに貢献している。今年はさらに安定した投球で、初の40セーヴ以上が期待される。先日42歳になったばかりのヴェテラン右腕マイク・ティムリンは、昨年通算1,000試合登板も達成した。06年からブルペンに定着している右腕マニー・デルカーメンは、昨年44試合の登板で防禦率2.05と急成長。この二人でパペルボンの前抑えを務めることになるが、シカゴ・ホワイトソックスから獲得した右腕デイヴィッド・アーズマも三振の奪える救援投手として、ブルペンに加わるだろう。睡眠障害の影響で不調の続いていたクレイグ・ハンセンや、春期練習に招かれている右腕ダン・コルプは、マイナーリーグで開幕を迎えることになった。左腕オカジマ・ヒデキは、内容ではマツザカよりもはるかにティームの勝利に貢献した。ただマツザカと同じく、夏場以降は疲労のために調子を落としていた点は気にかかる。ハビエル・ロペスがオカジマに次ぐ左腕救援としてベンチ入りするだろう。昨年までタムパベイ・デヴィルレイズでプレイしていたジョン・スウィツァー、この2年間MLBで投げていないミチャエル・テヘラが、二人に続くメンバー入り候補だ。
評価:B

先発
ジョシュ・ベケット
B
カート・シリング
B
ティム・ウェイクフィールド
B
マツザカ・ダイスケ
C
ジョン・レスター
D
カイル・スナイダー
D
クレイ・ブックホルツ
(新人)
E
中抑え
マイク・ティムリン
C
フリアン・タバレス
C
マニー・デルカーメン
D
デイヴィッド・アーズマ
D
ブライアン・コーリィ
(新人)
E
オカジマ・ヒデキ
D
ハビエル・ロペス
D
ダン・コルプ
(招待選手)
D
ジョン・スウィツァー
(招待選手)
D
抑え
ジョナサン・パペルボン
B

捕手
ティームのキャプテン、ジェイスン・ヴァリテクが今年もティームを引っ張る。06年には脚の故障で長期欠場を強いられたが、昨年は大きな怪我もなくシーズンを全うできた。しかし、長年ティム・ウェイクフィールドとコンビを組んできたダグ・ミラベッリを春期練習中に解雇したため、誰にナックルボールを受けさせるかという課題もある。控え捕手候補には、強肩巧守で知られるケヴィン・キャッシュと、昨年はAA級でプレイしていた新人のダスティ・ブラウン。フューチャーズゲーム出場経験のある強打のジョージ・コッタラスはAAA級で開幕を迎えることになった。
評価:C

内野手
二塁手ダスティン・ペドロイアが初のフルシーズンで素晴らしい働きを示した。投球を良く見極める打撃で三振数を上回る四球を選び、打率.317をマークしただけでなく、守りでも6失策と堅実だった。シーズン終了後には1位28票のうち24票を得て新人賞に選ばれた。一塁手のケヴィン・ユーキリスは今年が2度目のフルシーズン。昨年から始めた一塁の守備もすっかり板について、昨年は1,080回の守備機会で一度も失策を犯さなかった。「ギリシアの四球神」としては、昨年の77四球はやや物足りなかったが、ペドロイアと組む1、2番コンビは、今年もしぶとい打撃を披露してくれるはずだ。一塁の控えには、デトロイト・タイガーズでプレイしていたショーン・ケイシィと契約を結んでいる。ワールドシリーズMVPの三塁手マイク・ローウェルは、MLB10年目で初めて打率3割をマークしただけでなく、自己ベストの120打点。もっとも15失策は、ゴールドグラヴ経験者らしからぬ数字だった。オフシーズン中にニューヨーク・ヤンキーズ復帰の噂があったものの、結局ティームに残留。内野のリーダーとして今年も働いてくれるだろう。新加入の遊撃手フリオ・ルゴは、ティーム首位の33盗塁でボストンに機動力をもたらしたものの、シーズン前半は2割にも満たない打撃不振に苦しんだ。守備範囲も狭くなり、攻守ともに不満の残るシーズンだったろう。内野の控えのアレクス・コラは、ルゴとは逆に、守備には覚えのある選手。春の練習試合では打撃好調で、場合によってはルゴと立場が逆転することがあるだろう。
評価:B

外野手
例年オフシーズンになるとトレードの噂が流れるマニー・ラミレスだが、今年はわりあいに静かに過ごせたようだ。とは言うものの、昨年はシーズン終盤の故障で、8年続けてきた100打点、30本塁打がストップしている。今年は体調万全でオルティスとの強打コンビを復活させたいところだ。なお、通算500本塁打にあと10本と迫っている。ロサンジェルス・ダジャーズとの4年契約を2年で破棄してボストンと契約した右翼J・D・ドルーは、打率.270、64打点、11本塁打と、全くの期待はずれだった。右翼の守備も急激に衰えており、アトランタ・ブレイヴズに在籍していた04年にはMVP級の働きを見せたのが遠い過去の話であるようだ。開幕試合に先発した外野手の中で最も多くの試合に出場したのは中堅手のココ・クリスプだった。28盗塁、アウト参加数3.07と、スピードはあるクリスプだが、出塁率が3割そこそこしかないためリードオフマンには定着できなかった。その一方で、昨年後半にMLBに昇格したジャコービ・エルズベリーの評価が高まっていて、春の練習試合でもエルズベリーがレギュラー中堅手として起用されている。今年のボストンはエルズベリーに定位置を与え、クリスプを控えに回すつもりのようだ。エルズベリーからやや遅れてMLBデビューを果たしたブランドン・モスも打撃好調で、開幕メンバー入りの可能性は高い。招待選手のボビー・キールティは、昨年8月からボストンでプレイしており、ワールドシリーズ第4試合で代打本塁打を放っている。
評価:C

指名打者
ダビド・オルティスがボストンに来てから今年が6年目になるが、過去5年間の平均が打率.302、41本塁打、128打点と抜群の成績を収めている。昨年はオールスターゲーム以降に68試合で65打点、打率.352、21本塁打と大当たりで、ラミレス欠場の穴をカヴァーした。打撃では文句のつけようがないオルティスだが守備は苦手で、指名打者の使えないリーグ間試合では、致し方なく一塁グラヴをはめることになる。それでも昨年は7試合、48イニングで一塁を守り、失策なしで切り抜けることができた。
評価:S

2B
ダスティン・ペドロイア
B
1B
ケヴィン・ユーキリス
B
LF
マニー・ラミレス
S
DH
ダビド・オルティス
S
3B
マイク・ローウェル
A
RF
J・D・ドルー
C
C
ジェイスン・ヴァリテク
B
CF
ココ・クリスプ
C
SS
フリオ・ルゴ
C
C
ダスティ・ブラウン
(新人)
E
C
ケヴィン・キャッシュ
(招待選手)
D
1B
ショーン・ケイシィ
C
IF
アレクス・コラ
C
IF
キース・ジンター
(招待選手)
D
IF
ジェド・ローリー
(招待選手)
E
OF
ジャコービ・エルズベリー
(新人)
D
OF
ブランドン・モス
(新人)
E
OF
ボビー・キールティ
(招待選手)
D

監督
テリー・フランコナは、04年にボストンの監督に就任していきなり86年ぶりの世界一を達成してその名を挙げた。それから3年後の昨年2度目のワールドチャンピオンにティームを導いたわけだが、ボストンの歴代監督の中で世界一を2度経験したのは、1915年、16年のビリー・キャリガン以来2度目という快挙であった。ティームにオールスター級の選手が多くなったために、監督としての力量を適切に評価されにくいが、パペルボン、レスター、ユーキリス、ペドロイア、エルズベリーなど、就任以来多くの若手をティームの主力に育て上げた手腕は評価されていい。
評価:A

期待の若手
ミネソタ・トゥインズのジョー・マウアーは、高校時代の公式試合ではたった一度だけしか三振を喫したことがない。しかしライアン・カリシュには、高校3年生のときに一度も空振りしたことがないという伝説がある。もちろんそれは誇張された話だろうが、カリシュの打撃の巧みさをうかがわせる。大学進学を表明していたため、06年の新人ドラフトでは第9巡と遅い指名でプロ入り。昨年は短期A級でプレイし、23試合で打率.368、13打点、3本塁打、18盗塁と好調だったのに、投球を右手首に受けて骨折し、以後シーズンを全休した。俊足巧打で、守備範囲も広く、将来はJ・D・ドルーに代わって右翼を任されることになりそうだ。