シカゴ・カブズ

概観
03年にあと1勝でナショナルリーグ優勝を逃してから、その後3年連続で勝率を落としてしまったシカゴ・カブズは、昨年ルー・ピニエラを新しい監督に迎えた。その人事が図に当たったか、最後はミルウォーキー・ブルワーズとの激しい首位争いを勝ち抜いて、85勝77敗という低い勝率ながらも、4年ぶりのナショナルリーグ中地区優勝を決めた。しかし、地区シリーズでは西地区優勝のアリゾナ・ダイアモンドバックスに手も足も出せないまま、3連敗で退くことになった。とは言うものの、打線の得点力が向上すれば、1908年以来、実に100年ぶりという世界一への道が開けてくるだろう。

先発
カブズのエースは、06年のナショナルリーグ最多勝右腕カルロス・サムブラノ。昨年は捕手のマイケル・バーレットと相性が悪く、試合中にいさかいを起こす場面も見られたが、バーレットがティームを去ってからは大人げなくも調子を取り戻し、18勝13敗、防禦率3.95、177奪三振の成績でシーズンを終えた。昨年8月に5年間9,150万ドルの内容で契約延長に合意し、名実ともにカブズのエースになったということだ。左のエース格はテッド・リリー。2年連続で15勝をマークしただけでなく、防禦率3.83、174奪三振は、いずれも自己ベストの数字であった。左腕リッチ・ヒルは、昨年4月に3勝1敗、防禦率1.77と好調な滑り出しだったが、その後はややペースが落ち、11勝8敗、防禦率3.92と平凡な数字に終わった。それでも奪三振数ではサムブラノ、リリーをも上回る183個を記録。三振を奪える先発投手として、今季も活躍が期待される。右腕ジェイスン・マーキスは、4年連続ふたケタ勝利を挙げたものの、安定感は今ひとつ。このまま不調が続くようだと、先発スタッフから外されかねない。この3年間カブズのクローザーを任されていた右腕ライアン・デムプスターは、5年ぶりに先発投手としてシーズンを迎える予定。この稿を書いている時点で2試合先発を務めているが、5イニングを投げて2失点と、今のところは先発復帰も順調に進んでいるようだ。1年契約を結んだジョン・リーバーは、カブズ在籍時の01年に20勝の経験があるヴェテラン右腕。昨年は故障のためにシーズンの半分を休んでいるが、体調が万全であればまだふたケタ勝利をマークするだけの力はあるだろう。昨年19試合で先発を務め、7勝8敗、防禦率3.92の左腕ショーン・マーシャル、マイナーリーグ2階級合計で10勝をマークしてMLBデビューを果たした右腕ショーン・ギャラガー、06年の新人ドラフトでは第5巡という低い指名ながら、プロ入り後に5年間MLB契約を新たに結んだ右腕ジェフ・サマージヤといった若手たちにもローテーション入りのチャンスはある。
評価:B

救援
過去3年間、カブズのクローザーは右腕ライアン・デムプスターが務めてきたが、この2年間はいずれも5点近い防禦率で信頼を失ってしまった。そのデムプスターは先発に戻り、この春期練習中に新しい抑え役が決定される。昨シーズン中盤にデムプスターがメンバーを離れたときに代役を務めた右腕ボブ・ハウリーが最有力候補のようだ。最近3年間の平均登板数は80以上、99年のシカゴ・ホワイトソックス時代に28セーヴをマークした実績もある。06年には先発投手だった右腕カルロス・マルモルは、ブルペンに回って急成長。59試合で防禦率1.43も見事だったが、69回3分の1を投げて奪った三振が96個というのがさらに目を引く。昨年のルール5ドラフトでタムパベイ・デヴィルレイズから全体第1位指名を受け、その後トレードされた右腕ティム・レイヒィは、ミネソタ・トゥインズのマイナーリーグ3年間で37セーヴを挙げている。隠れたクローザー候補として注目していいだろう。98年には新人賞、03年の地区優勝の時には自己ベストの数字をマークしているケリー・ウッドだが、度重なる右肩の故障ですっかり影の薄くなった感がある。04年からブルペンで調整を続けてきたが、いよいよ本格的にリリーフ役に固定されるようだ。右腕マイケル・ウァーツはハウリーに次ぐ73試合に登板。04年にデビュー以来、毎年投球回数以上の三振を奪っている投手で、ハウリーがクローザーに定着した場合には、代わってセットアッパーの座を占めることになる。左腕として最も多くマウンドを務めたウィル・オーマンは去ったが、スコット・エア、ニール・コッツはいずれも、シーズン70試合以上投げた経験のある投手だから不安はない。しかし、昨年AA級から2階級を駆け上ってMLBデビューを果たしたカーメン・ピニャティエッロは、練習試合で好投を披露しており、メンバー入りのチャンスをつかみつつある。
評価:C

先発
カルロス・サムブラノ
B
テッド・リリー
B
リッチ・ヒル
C
ジェイスン・マーキス
C
ライアン・デムプスター
C
ジョン・リーバー
(フィラデルフィア)
D
ショーン・マーシャル
D
ショーン・ギャラガー
(新人)
E
ジェフ・サマージヤ
(新人)
E
中抑え
スコット・エア
B
マイケル・ウァーツ
D
ニール・コッツ
D
ケリー・ウッド
D
ホアン・マテオ
D
カーメン・ピニャティエッロ
(新人)
E
ティム・レイヒィ
(新人)
E
チャド・フォックス
(招待選手)
D
抑え
ボブ・ハウリー
B
カルロス・マルモル
C

捕手
シーズン途中にマイケル・バーレットを放出、オークランド・アスレティックスから獲得したジェイスン・ケンドールも手放し、今年のカブズの正捕手には新人のヘオバニ・ソトが抜擢される。ソトは昨年のフューチャーズゲームに出場、9月にMLBに呼ばれると18試合で打率.389、8打点、3本塁打と持ち前の打力を発揮した。やや弱いとされていた守備でも成長の跡が見られる。昨年は腰痛で22試合にしか出られなかったが、控え捕手エンリ・ブランコの守備と肩の強さとには定評がある。しかし、3人目の捕手に昨年MLBデビューのジェイク・フォックスを登録した他、昨年カブズで36試合出場のコイー・ヒルや、コロラド・ロッキーズ時代に準レギュラーだったJ・D・クロサーを春期練習に招き、ブランコ欠場に備えている。
評価:D

内野手
06年は二度の手首の故障で50試合にしか出られなかった一塁手デレク・リーは、昨年150試合に出場。打率.317、82打点、22本塁打は、三冠王の可能性もあると言われた05年の数字と比べると物足りなさを感じるものの、安定感のある打撃に変わりはない。守備では、昨年3度目のゴールドグラヴに選ばれた名手でもある。アラミス・ラミレスは、手首を傷めてひと月以上メンバーを離れたたものの、ティームでただ一人100打点以上をマーク、.310、26本塁打はいずれもティーム内で2位の数字だった。以前には不安定だった三塁の守備もずいぶん板についてきて、攻守両面でナショナルリーグ屈指の三塁手と呼ばれうる選手になってきた。昨年新しく加わったマーク・デロサは二塁で先発。ラミレス欠場時には三塁を務めた他、内野外野全ての守備位置をこなした。春期練習直前に不整脈のために検査入院するというアクシデントに見舞われたものの、今はメンバーに復帰して、シーズン開幕に向けて調整を始めている。遊撃手は、昨年ティーム首位の28盗塁をマークしたライアン・セリオットが有力。昨年新人ながら86試合でプレイしたマイク・フォンテノットは、ルイジアナ州立大学時代にセリオットとダブルプレイコンビを組んでいた。将来の正遊撃手と期待されていたロニ・セデニョは、打撃が振るわずレギュラーの座をつかみきれない。ダリル・ウォードがリーの代わりに一塁を守る機会はほとんどないだろうが、昨年も.327をマークした打撃は依然として捨て難い。04年にはアリゾナ・ダイアモンドバックスで154試合出場したこともあるアレクス・シントロンが春期練習に招かれている。
評価:B

外野手
06年にワシントン・ナショナルズで40本塁打、40盗塁をマークして鳴り物入りで迎えられたアルフォンソ・ソリアノは、昨年ティーム最多の33本塁打を打ったものの、70打点は、1番という打順だったことを差し引いても、いささか期待はずれだった。練習試合の最中に右中指を折って現在欠場中だが、開幕には十分間に合うと見られている。中堅手には長年期待されていたフェリクス・ピエがついに定着する。MLB初年度の昨年は87試合の出場で.215と苦しんだが、16歳でプロ入りしたときから将来のスター選手と目された素材が開花するのはこれからのことだろう。サム・ファルドは組織内トップクラスの外野守備と評判の選手で、ピエと中堅手を争う。俊足強打巧守、三拍子揃った外野手と、日本では評判のフクドメ・コウスケは、ジャック・ジョーンズ、クリフ・フロイドが抜けた後を埋める左の長打者と期待されている。ただ、本来中距離タイプのフクドメが、果たしてMLBで中軸を打つような打者になれるかどうかは、春の練習試合での働きを見ていかなければなるまい。フクドメがMLBの投手に苦しむときには、左投手に滅法強い、右打ちのマット・マートンが代わって右翼に入る。二塁から外野に移動してMLB昇格を目指すエリク・パタースンは、マイナーリーグ3年間で113盗塁という脚力を活かしたいところだ。
評価:C

LF
アルフォンソ・ソリアノ
A
CF
フェリクス・ピエ
D
1B
デレク・リー
A
3B
アラミス・ラミレス
B
2B
マーク・デロサ
C
RF
フクドメ・コウスケ
(新人)
D
C
ヘオバニ・ソト
(新人)
D
SS
ライアン・セリオット
C
C
エンリ・ブランコ
C
C
ジェイク・フォックス
(新人)
E
C
コイー・ヒル
(招待選手)
D
C
J・D・クロサー
(招待選手)
D
IF
マイク・フォンテノット
D
IF
ロニ・セデニョ
D
1B/OF
ダリル・ウォード
C
IF
アレクス・シントロン
(招待選手)
D
IF
アンドレス・ブランコ
(招待選手)
D
OF
マット・マートン
C
OF
エリク・パタースン
(新人)
E
OF
サム・ファルド
(新人)
E

監督
ルー・ピニエラは、シカゴ・カブズを含めて5ティームで監督を務めた経験がある。ナショナルリーグで采配を揮うのはシンシナティ・レッズ監督だった92年以来のことだが、90年にはレッズを世界一に導いた。先の塁を積極的に狙う野球を好むところからもうかがえるが、気性の激しさはつとに有名で、昨年6月にも三塁塁審に砂を蹴り上げたため退場処分を受けた。しかし、春期練習で打たれたジェイスン・マーキスを「このままではよそのティームに行ってもらうしかない」と怒りに任せて罵ったのはさすがにやり過ぎと思ったらしく、後になってマーキスに謝罪している。
評価:B

期待の若手
06年の新人ドラフト第1巡指名を受けてプロ入りしたタイラー・コルヴィンは、初年度こそ平凡な数字で終わったものの、昨年は期待通りの活躍を見せたと言っていい。High A級では63試合出場で打率.306、50打点、7本塁打、10盗塁をマークしてAA級昇格。そこでも、62試合で.291、31打点、9本塁打、7盗塁と好成績を収めている。守備でも正確な送球と広い守備範囲とが高く評価されており、新人フクドメとの契約期間は4年あるものの、満了を待つことなくMLB昇格、右翼の座を争うことになるかもしれない。