シンシナティ・レッズ

概観
06年は終盤までナショナルリーグ中地区優勝を争ったシンシナティ・レッズは、72勝90敗で5位と後退した。打者有利と言われる本拠地球場グレイトアメリカン・ボールパークで、ナショナルリーグ3位の204本塁打と打ちまくったが、投手成績はリーグ13位の4.95。この投打のバランスの悪さが、ティーム成績に反映していると言ってもいいだろう。故障者がむやみと多いのもこのティームの泣きどころで、リーグ優勝の経験もあるダスティ・ベイカーを新監督に迎えてはいるが、まずは選手たちがシーズンを全うしてもらわないとどうしようもない。

先発
06年に16勝、防御率3.76、216奪三振をマークした右腕アーロン・ハラングは、昨年も16勝、防禦率3.73、218奪三振。安定した投球を期待できるエースに成長した。完投するだけの体力も備えており、当代MLBでも指折りの先発投手の一人と言ってもいいだろう。一方、ハラングと並んでエース級の働きを見せていた右腕ブロンスン・アロヨは、やや振るわなかった。5月11日から7連敗を喫するなどシーズン前半は勝ち星が伸びず、シーズン通算では9勝15敗、防禦率4.23の不調に終わった。06年の安定感を取り戻し、今季は15勝以上を挙げてもらいたい投手だ。この二人に続く先発投手が定まらないのがシンシナティの課題である。ブルペンから抜擢された右腕マット・ベライルは、ハラング、アロヨに次ぐ30試合に先発を務めたものの、8勝9敗、防禦率5.32。シーズン途中にカイル・ローシをトレードしてしまったので、ベライルの次に先発登板数が多かったのが左腕ボビー・リヴィングストンの10試合になってしまうくらいだから人材難が知れる。しかしそのリヴィングストンも、春期練習での不振で出遅れ、シーズン終盤には肩を傷めて、そのままシーズンを終えるというさんざんな1年だった。マイナーリーグ屈指の好投手と評判の右腕ホーマー・ベイリィは、厳しい現実を思い知らされたのかもしれない。デビュー試合で初勝利を挙げたものの、その後5試合の先発で20失点を喫した。9月の再昇格のときには3試合で2勝負けなし、防禦率3.71と持ち直したが、やはり期待はずれの感はあった。移籍選手の中では、テキサス・レンジャーズから獲得した右腕エディソン・ボルケスへの期待が大きいようだ。やや制球力に欠けるところはあるが、90マイル後半の速球とチェンジアップとの配球に進歩が見られる。ジェレミー・アフェルトは、昨年コロラド・ロッキーズで75試合に登板、防禦率3.51の好成績を残したが、左腕投手が先発スタッフに欠けているというティーム事情から、ローテーション入りする可能性もある。
評価:C

救援
昨年はデイヴィッド・ウェザーズが33セーヴをマークしたが、失敗も6回、防禦率3.59では信頼の置けるクローザーだったとは言い難い。そこで、昨年ミルウォーキー・ブルワーズから右腕フランシスコ・コルデロを4年契約で迎えた。04年に49セーヴで初のタイトル獲得。昨年も44セーヴをマークしているが、ときおり信じられないような崩れ方をする悪い癖がある。将来のクローザーと期待されていた右腕トッド・コフィは、昨年58試合の登板で防禦率5.82と低調だった。06年の81試合登板で3.58くらいの投球ができるならば、ウェザーズとともに前抑え役に任せられる。コフィに限らず、昨年のシンシナティの救援投手はほとんど全員が不調で、40歳の左腕マイク・スタントンは69試合で防禦率5.93。右肘の故障を抱える右腕ゲイリー・マジェウスキはシーズン後半だけでも防禦率5.71。先発、救援両方での活躍が期待されていたカーク・サールースは、7.71の防禦率で放出された。比較的いい働きを示したと言えるのは、64試合で防禦率4.39の左腕ジョン・クトランガスや、47試合に投げてティーム唯一の2点台の防禦率をマークした右腕ジャレド・バートンくらいだろう。昨年途中にオークランド・アスレティックスから獲得したマーカス・マクベスは、9月にMLB復帰してからは防禦率4.00と立ち直っていた。右腕ジム・ブロワー、ジョン・アドキンズ、左腕のケント・マーカー、スコット・サウアベクなど、シーズン50試合以上救援登板した経験のある招待選手たちにブルペンの改善を期待しなければならないのは辛いところだ。
評価:D

先発
アーロン・ハラング
B
ブロンスン・アロヨ
C
マット・ベライル
D
ホーマー・ベイリィ
(新人)
D
ボビー・リヴィングストン
D
ジェレミー・アフェルト
(コロラド)
D
エディソン・ボルケス
(テキサス)
D
ホニ・ケト
(招待選手)
E
トム・シャーン
(招待選手)
D
中抑え
デイヴィッド・ウェザーズ
C
トッド・コフィ
D
ジャレド・バートン
(新人)
D
ゲイリー・マジェウスキ
D
ジョン・クトランガス
(新人)
D
マーカス・マクベス
(新人)
E
ジム・ブレイ
D
マイク・スタントン
D
ジム・ブロワー
(招待選手)
D
ジョン・アドキンズ
(招待選手)
D
スコット・サウアベク
(招待選手)
D
ケント・マーカー
(招待選手)
D
ブラッド・サーモン
(招待選手)
E
抑え
フランシスコ・コルデロ
(ミルウォーキー)
B

捕手
今年もデイヴィッド・ロスとハビエル・バレンティンとの二人が交代でマスクをかぶることになるだろう。06年に90試合で21本塁打を打って周囲を驚かせたロスだったが、昨年は17本塁打は打ったものの、打率がわずか.203だった。しかし守備面では、4割を超える通算盗塁阻止率に、投手のリードにも長けた、頼りになる選手である。バレンティンは、守備ではロスに譲るものの、両打ちなので、代打として起用される場面も多い。春期練習に招かれているポール・バーコは、MLB10年間で9ティームを渡り歩いているヴェテラン。100試合以上に出場したことは一度もないが、控え捕手としてのプレイには定評がある。
評価:D

内野手
ブランドン・フィリプスは昨年は30本塁打、30盗塁を達成し、守りでもアウト参加数5.08、8失策と三面六臂の活躍。ビッグ・レッド・マシーン当時の正二塁手、殿堂入りのジョー・モーガンを髣髴とさせた。シンシナティは春期練習直前に延長付き4年契約を結んだが、低迷の続くティームの、フィリプスに寄せる期待の大きさがうかがえる。フィリプスとコンビを組む遊撃手アレクス・ゴンサレスは、曲芸のような派手な守備で知られている。おととし、昨年と続けて故障などのために50試合以上を欠場している点が気にかかるが、巧守のホアン・カストロと、昨年打撃がよくなったジェフ・ケッピンガーと、二人が控えている。カストロは内野のどのポジションでもこなせるうえに、いずれの守備位置でも水準以上の守りを披露する。ケッピンガーは、67試合の出場で打率.322をマーク。選球眼もよく三振12個に対して、24個の四球を選んでいる。一塁を守るスコット・ハティバーグは、高い出塁率と勝負強い打撃を備えたヴェテラン。しかし、昨年初めてMLBに呼ばれたジョーイ・ヴォットが、今年中には正一塁手の座に着くだろう。9月のロースター拡大に伴って昇格したヴォットは、デビュー2試合目で初安打初本塁打を打つなど、24試合で.321、17打点、4本塁打をマークした期待の強打者だ。ただ、二人とも左打ちなので、春期練習に招かれているクレイグ・ウィルスンやアンディ・フィリプスがメンバーに加えられる可能性もある。05年からシンシナティの三塁を任されているエドウィン・エンカルナシオンは、やっと素質を開花しつつあるようだ。昨年開幕当初は攻守両面で精彩を欠いたが、5月にマイナーリーグに送られたのが刺激になったのか、復帰後調子を上げてきて、シーズン後半は打率.309、40打点、10本塁打を打っている。06年には111試合で25失策も犯していたが、昨年は137試合で16失策と、守りでも進歩が見られる。
評価:C

外野手
ケン・グリフィの昨年は、18年間も守ってきた中堅から、右翼に守備位置が変わるという転機の年であった。4月にわずか1本塁打と出遅れたが、5月、6月の2ヶ月で合計20本塁打。ところが、シーズン後半は62試合で7本塁打しか打てず、シーズン通算では.277、93打点、30本塁打と平凡な数字で終わってしまった。しかし、144試合出場は00年の145試合に次ぐ数字で、体調面での不安はやや軽くなっている。無事に開幕を迎え、4月中には史上6人目の通算600本塁打をマークすることだろう。アダム・ダンは、ティーム史上初めて4年連続の40本塁打に、自己ベストの106打点をマークした。04年から3年連続のリーグ最多三振という穴の多い打者であるわりには、MLB7年間で5回、100個以上の四球を選んでいる。昨年主に中堅を守ったジェフ・ハミルトンを手放してしまったので、今年の春期練習では熾烈なレギュラー争いが展開されそうだ。ライアン・フリールは故障が多く、昨年は75試合にしか出場できなかった。脚力があり、選球眼も備わっている、理想的なリードオフマンと言えるが、定位置確保のためには健康管理が課題になる。ハミルトンと併用されたノリス・ホッパーも、脚力を備えた巧打者。オールスターゲーム以降は.365と大当たりだった。しかし、何と言っても一番の注目は、組織内だけでなくマイナーリーグ全体でもトップクラスの素材と評されるジェイ・ブルースだろう。春期練習には招待選手としての参加ではあるが、三拍子揃った若きスターの開幕メンバー入りを期待する声は多い。
評価:B

CF
ライアン・フリール
C
1B
スコット・ハティバーグ
C
RF
ケン・グリフィ
B
2B
ブランドン・フィリプス
B
LF
アダム・ダン
B
3B
エドウィン・エンカルナシオン
C
SS
アレクス・ゴンサレス
C
C
デイヴィッド・ロス
D
C
ハビエル・バレンティン
D
C
ポール・バーコ
(招待選手)
D
IF
ホアン・カストロ
C
IF
ジェフ・ケッピンガー
D
1B/OF
ジョーイ・ヴォット
(新人)
D
IF
ホルベルト・カブレラ
(招待選手)
D
IF
アンディ・グリーン
(招待選手)
E
1B
アンディ・フィリプス
(招待選手)
E
1B/OF
クレイグ・ウィルスン
(招待選手)
D
OF
ノリス・ホッパー
D
OF
ジェイ・ブルース
(招待選手)
E

監督
14年間の監督生活で1,162勝1,041敗、最優秀監督3度の名監督ダスティ・ベイカーが2年ぶりにフィールドに戻ってきた。直近のシカゴ・カブズでは就任初年度の03年にナショナルリーグ中地区優勝。あと1勝で58年ぶりのリーグ優勝というところまでティームを引っ張ったが、以後は次第に数字が落ちて、06年に解任された。どちらかと言うと、打撃に重きを置いた采配を振るう監督なので、シンシナティというティームには向いているかもしれない。しかし、01年のボブ・ブーン以来、このティームでは3年目のシーズンを無事に終えることのできた監督がいない。果たしてベイカーは、シンシナティを何年間率いることができるだろうか。
評価:B

期待の若手
かつてシンシナティには、ジョニー・ベンチという殿堂入りの名捕手がいた。しかし、デヴィン・メソラコはそのベンチを超えることができるかもしれない。昨年のドラフト第1巡で指名を受けたメソラコは、打率も長打も狙える打撃、目を見張る強肩、堅実な守備に、俊敏な動きを兼ね備えた選手と評判である。ルーキーリーグでのプロ初年度の成績は振るわなかったが、長い目で見守りたい素材である。なお、これは余談だが、メソラコの出身校のあるペンシルヴァニア州パンクストーニィは、ジリスが春の訪れを占う祭"Groundhog Day"で有名な町である。