概観
90年代の主力選手を放出して、若手重視のティーム作りに切り替えたクリーヴランド・インディアンズが、96勝66敗の最終成績でアメリカンリーグ中地区優勝を決めた。地区シリーズでは、シーズン後半の追い上げでワイルドカードに滑り込んだニューヨーク・ヤンキーズに3勝1敗。優勝決定シリーズでもボストン・レッドソックスを3勝1敗とリードして、97年以来のアメリカンリーグ優勝をほとんど手中にしていながら、そこから3連敗を喫してリーグ優勝を逃している。今年は地区のライヴァル、デトロイト・タイガーズのティーム力が大きく向上しており、タイトル争いは非常に激しくなりそうだ。
先発
昨年の左腕C・C・サバシアは、MLB7年目で自己最高の19勝、防禦率3.21、209奪三振をマーク。9月28日の試合では通算100勝も達成している。シーズン終了後の記者投票では、ボストン・レッドソックスのジョシュ・ベケットを抑えて、アメリカンリーグのサイ・ヤング賞に選ばれた。右腕ファウスト・カルモナの成長は誰も予想しなかっただろう。06年には先発でもクローザーでも振るわなかったカルモナが、昨年は脇腹を痛めて出遅れた左腕クリフ・リーに代わってローテーション入り。サイ・ヤング賞のサバシアを上回る防禦率3.06、サバシアと並ぶ19勝をマークしたのは見事だった。一方のリーは、2度の故障者リスト入りのために昨年は5勝しか挙げられなかったが、04年からの3年間で合計46勝をマークしており、シーズンを全うできればふたケタは確実に勝てる投手である。右腕ジェイク・ウェストブルックも、昨年は故障などがあって3ヶ月も勝ち星に恵まれない不運に見舞われた。ウェストブルックもこの04年からの3年間で44勝。この間、完投も10度マークしている。しかし、昨シーズン一番不運だったのは右腕ポール・バードだ。ほぼ自己ベストに近いシーズン通算15勝8敗、防禦率4.59をマーク。ポストシーズンでも2勝を挙げる活躍を見せていた。ところが、よりにもよって優勝決定シリーズの第7試合直前という、最悪のタイミングで過去の薬物使用歴を公表され、それが治療目的であったのにもかかわらず、結果としてティームに動揺を与えることになってしまった。故障者さえ出なければ、この5人でローテーションを組むことは間違いない。その他に先発で投げられそうな投手を挙げると、まず昨年後半にMLBに呼ばれて4勝を挙げている新人左腕アーロン・ラフェイ。06年に7勝をマークして、昨年は開幕からローテーション入りしていた左腕ジェレミー・ソワーズは、1勝6敗、防禦率6.71の不振でマイナーリーグに送られた。練習試合でも投球内容は冴えず、開幕メンバー入りは厳しそうだ。
評価:B
救援
昨年45セーヴを挙げて、アメリカンリーグのセーヴ王になった右腕ジョー・ボロウスキが今年も抑えを務める。ただし、昨年のボロウスキの防禦率は5.07。セーヴ失敗も8度あり、僅差の試合でマウンドに送るのには、かなり不安が残る。ボロウスキに比べると、前抑えの右腕ラファエル・ベタンコウルトのリリーフはほぼ完璧だった。68試合登板で5勝1敗3セーヴ、防禦率1.47。79回3分の1を投げて奪った三振が80個だったのに対して、与えた四球はわずか9個である。ベタンコウルトに次ぐ51試合で救援を務めた右腕トム・マスニーは、防禦率は4.68とやや高かったものの、ブルペンの中では最多の7勝を挙げている。左腕もアーロン・フルツと新人のラファエル・ペレスとがよく投げた。シーズン序盤はフルツが防禦率1.71と好投。6月にフルツが肋骨を傷めるとペレスが代役を務め、オールスターゲーム以降は防禦率1.49をマークしている。オールスターゲーム直後にMLBデビューの右腕ジェンセン・ルイスも、26試合で防禦率2.15だった。日本で通算227セーヴの記録を持つ右腕コバヤシ・マサヒデと2年契約を結んだが、練習試合ではすでに2本塁打を打たれており、球威不足が懸念される。招待選手の中では、右腕ホルヘ・フリオは、やや配球ミスが目立つものの、臨時のクローザーとして投げられるだろう。右腕スコット・エラートンには、3年前にクリーヴランドの先発スタッフの一員として11勝を挙げた経験がある。『ミッチェル・レポート』で禁止薬物使用が指摘される前日にボストン・レッドソックスから放出された右腕ブレンダン・ドネリーは、春期練習に招かれてはいるが、まだマウンドには登っていない。
評価:B
| 先発 |
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| C・C・サバシア |
左
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A
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| ファウスト・カルモナ |
右
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B
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| ジェイク・ウェストブルック |
右
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C
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| クリフ・リー |
左
|
|
C
|
| ポール・バード |
右
|
|
C
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| アーロン・ラフェイ |
左
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|
D
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| ジェレミー・ソワーズ |
右
|
|
D
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| アダム・ミラー |
右
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(新人) |
E
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| チャック・ロフグレン |
左
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(招待選手) |
E
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| 中抑え |
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| ラファエル・ベタンコウルト |
右
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|
B
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| トム・マスニー |
右
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|
D
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| ラファエル・ペレス |
左
|
|
D
|
| アーロン・フルツ |
左
|
|
D
|
| ジェンセン・ルイス |
右
|
(新人) |
D
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| コバヤシ・マサヒデ |
右
|
(新人) |
D
|
| ホルヘ・フリオ |
右
|
(招待選手) |
D
|
| スコット・エラートン |
右
|
(招待選手) |
D
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| ブレンダン・ドネリー |
右
|
(招待選手) |
D
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| 抑え |
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| ジョー・ボロウスキ |
右
|
|
B
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捕手
ビクトル・マルティネスの打撃については、心配することはほとんどない。昨年は、3年連続の打率3割以上を打ち、自己最多の114打点、25本塁打もマークした。捕手としての守備、特に盗塁阻止率の低さを指摘されることが多かったが、昨年は初めて阻止率が3割を超えている。しかし、昨年がMLB3年目だったケリー・ショパックの成長で、マルティネスの守備に関する不安もずいぶん軽減された。それだけでなく、161打数で30打点、7本塁打と、打撃面でもいいところを見せている。ポール・バードが先発するときには、ショパックがマスクをかぶることになっているが、今年はさらに出場機会が増えるかもしれない。
評価:B
内野手
一塁にはライアン・ガーコが完全に定着したようだ。もともとは捕手としてプロ入りしたガーコは、打撃を活かすために一塁に移動。初のフルシーズン出場になった昨年は、打率.289、61打点、21本塁打。調子のいい月とそうでない月との落差が激しかったが、今年はシーズン通して安定した数字を残してもらいたいところだ。ガーコ以外には、捕手のビクトル・マルティネスが守ることもある。遊撃手のホニ・ペラルタも、昨年前半は50打点、14本塁打とよく打っていたが、オールスターゲーム以降は22本塁打、7打点と落ち込んでいる。前任者が名手オマル・ビスケルだったため、守備で見劣りするのは致し方ないが、打てる遊撃手としては許容できるレヴェルを保っている。二塁には昨年開幕当初はサンディエゴ・パドレスからきたジョシュ・バーフィールドが起用されていたが、シーズン通して打撃が不調。守備でもミスが目立った。しかし、新人のアスドルバル・カブレラが8月にMLB昇格を果たすと、巧みな打撃と広い守備範囲とで、バーフィールドから定位置の座を奪った。今年はコロラド・ロッキーズで主に二塁を守っていたジェイミィ・キャロルも加わり、レギュラー争いはさらに激しくなっている。なかなか期待に応えることのできない三塁手アンディ・マルテは、春期練習でも打率2割未満と打撃不振に苦しんでいる。ヴェテランのケイシィ・ブレイクは、派手なところはないものの、レギュラーとしてシーズンを全うすれば80打点、20本塁打は期待できる選手である。一塁、三塁、外野と複数のポジションでもプレイできる、頼りになるヴェテランだ。招待選手のアンディ・ゴンサレスは、昨年シカゴ・ホワイトソックスでMLBデビュー。バッテリーと指名打者とを除く、全てのポジションで起用された。
評価:B
外野手
グレイディ・サイズモアの正中堅手はまず動かない。2年連続で全試合に出場、出塁率.390、118得点、33盗塁は1番打者として理想的な数字であるだけでなく、24本塁打と長打力もある。さらに昨年は守備範囲の広さと果敢なプレイとが評価されて、初のゴールドグラヴ賞に選出された。しかし、外野の両翼はまだ未定。昨年クリーヴランドの左翼には、主に左打ちのデイヴィッド・デルッチと右打ちのジェイスン・マイケルズとが併用されている。右投手に強いデルッチは、打点と本塁打の9割以上は右投手から打っているが、昨年は太腿裏の故障にも見舞われて3ヶ月以上もメンバーを離れており、ほとんど活躍の場がなかった。一方のマイケルズは、左投手に対する通算打率が3割以上と左腕に滅法強い。昨年、トロット・ニクスンに次いで多くの試合で先発右翼を務めたフランクリン・グティエレスは、外野手の中ではサイズモアを除いて一番多い13本塁打を打っている。しかし、この春期練習でのプレイを見ていると、昨年デビューのベン・フランシスコの方が好調だ。組織内では打撃走塁守備が揃った好素材と高く評価されており、レギュラー定着の大きなチャンスである。シアトル・マリナーズ時代から俊足長打の外野手と評されているチュ・シンスだが、故障が多く、なかなかMLBに定着できない。トミー・ジョン手術を受けたため、今年の春期練習にも大幅に遅れて参加することになってしまった。05年の新人ドラフト第1巡指名トレヴァー・クロウは外野だけでなく、昨年から二塁の練習も始めている。ミネソタ・トゥインズから放出されたジェイスン・タイナーは、俊足巧守のうえ、クリーヴランドの外野手には少ない左打者である。
評価:C
指名打者
MLB最強の指名打者の一人、トラヴィス・ハフナーだが、昨年はかなり不調だった。辛くも100打点には到達したものの、得点圏での打率はわずか.224。打率.266、24本塁打は、06年の.308、42本塁打と比べればずいぶん見劣りがするし、しかも06年には、右手の骨折で9月を全休したのにもかかわらずこの数字をマークしているのである。昨年ポストシーズンに進んだアメリカンリーグの4ティームの中で、クリーヴランドが最も得点が少なかったが、ハフナーが復調すれば、この問題は簡単に解決する。
評価:B
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CF
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グレイディ・サイズモア |
左
|
|
B
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2B
|
アスドルバル・カブレラ |
両
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|
D
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DH
|
トラヴィス・ハフナー |
左
|
|
B
|
|
C
|
ビクトル・マルティネス |
両
|
|
B
|
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SS
|
ホニ・ペラルタ |
右
|
|
C
|
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1B
|
ライアン・ガーコ |
右
|
|
C
|
|
LF
|
デイヴィッド・デルッチ |
左
|
|
D
|
|
RF
|
ベン・フランシスコ |
右
|
(新人) |
D
|
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3B
|
アンディ・マルテ |
右
|
|
E
|
|
|
|
|
|
|
|
C
|
ケリー・ショパック |
右
|
|
D
|
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3B/OF
|
ケイシィ・ブレイク |
右
|
|
C
|
|
IF
|
ジョシュ・バーフィールド |
右
|
|
D
|
|
IF
|
ジェイミィ・キャロル |
右
|
(コロラド) |
D
|
|
IF
|
アンディ・ゴンサレス |
右
|
(招待選手) |
D
|
|
OF
|
ジェイスン・マイケルズ |
右
|
|
D
|
|
OF
|
フランクリン・グティエレス |
右
|
|
D
|
|
OF
|
チュ・シンス |
左
|
|
D
|
|
OF
|
トレヴァー・クロウ |
両
|
(招待選手) |
E
|
|
OF
|
ジェイスン・タイナー |
左
|
(招待選手) |
D
|
監督
03年に当時最年少の35歳でMLB監督のキャリアをスタートさせたエリク・ウェッジは、やはり才能ある人物だった。05年にポストシーズン進出を逃した後、06年には勝率5割にも届かないという苦渋を味わったが、昨年は強力な投手スタッフを前面に押し出して、ティームをアメリカンリーグ中地区優勝に導いた。10年ぶりのリーグ優勝は果たせなかったものの、シーズン終了後にアメリカンリーグの最優秀監督に選ばれたのは当然だったろう。ウェッジが、さらに上に進むためには、機動力も駆使して、昨年リーグ6位だった得点力を向上させる工夫が必要だ。
評価:B
期待の若手
01年の地区優勝の後、着実に世代交代を進めているクリーヴランドだが、今だに解決していないポジションがいくつかある。三塁手もその中の一つで、06年の新人ドラフト第2巡指名のウェズ・ホッジズは、将来のレギュラー候補の筆頭に名前が挙がっている。プロ初年度だった昨年は、シーズン序盤の故障を克服して、104試合で、打率.288、71打点、15本塁打をマーク。守備範囲の広さや肩の強さは平均的なレヴェルだが、練習の成果が実を結びつつあるようだ。