デトロイト・タイガーズ

概観
06年のアメリカンリーグ優勝ティーム、デトロイト・タイガーズは、主力投手に故障者が出て勝ち星が伸びず、シーズン通算88勝74敗。アメリカンリーグ中地区優勝のクリーヴランド・インディアンズから8ゲームも離されての2位に終わった。このオフシーズンに統括デイヴ・ドムブロウスキは、かつて辣腕を揮ったフロリダ・マーリンズからドントレル・ウィリス、ミゲル・カブレラを引き抜いて、アメリカンリーグでもトップクラスのメンバーを揃えた。06年の再現どころか、84年以来24年ぶりの世界一が大いに期待できるシーズンとなりそうである。

先発
03年のナショナルリーグ新人賞、05年には22勝でタイトルを獲得している左腕ドントレル・ウィリスの獲得で、デトロイトの先発スタッフはさらに強力になった。いい年と悪い年との差が激しいヴィンテージプレイヤーではあるが、デビュー以来5年連続ふたケタ勝利をマークしており、最低でも10勝が計算できる。06年のアメリカンリーグ新人賞の右腕ジャスティン・ヴァーランダーには二年目の不運など全く関係なかった。シーズン通算18勝6敗、防禦率3.66、奪三振183は、サイ・ヤング賞に準ずる好成績。 の試合では無安打無得点試合を達成している。開幕前にはサイ・ヤング賞候補に名前の挙がっていた右腕ジェレミー・ボンダーマンは、オールスターゲームまでは9勝1敗、防禦率3.48と好調だったが、シーズン後半に肘を傷めてから全く勝てなくなり、シーズン終了を待たずにメンバーを離れた。今季は最低でも15勝が期待されている。左腕ネイト・ロバートスンは、自己ベストだった06年の13勝、防禦率3.84から、昨年途中の故障の影響もあって、9勝13敗、防禦率4.76と数字を落とした。それでも4年連続で30試合以上に先発しており、4番手の先発としては十分な働きを期待できる。ヴェテラン左腕ケニー・ロジャーズも、昨年は左肩の血行障害で出遅れ、シーズン中は肘の痛みに悩まされた。開幕時点で43歳という年齢のことも考慮すると、シーズンを通してローテーションで投げるのは難しいかもしれない。ロジャーズの代わりを探すとすれば、シアトル・マリナーズ組織内では一、二を争う素材と評されていた右腕ヨルマン・バサルドが最有力、昨年3試合先発の経験がある右腕ヴァージル・ヴァスケスが続く。06年にMLBデビュー、昨年は初勝利もマークした右腕ジョーダン・タタは、練習試合では不調。昨年の新人ドラフトで第1巡指名を受けてプロ入りした右腕リック・ポーチェッロは、No.1高校生の名にふさわしい投球を披露しているが、そう急いで昇格させる必要はない。伸び悩みの続く右腕プレストン・ラリスン、セイントルイス・カーディナルズでは将来のローテーション入りが期待されていた右腕クリス・ラムバートは招待選手からメンバー入りを目指す若手だ。
評価:B

救援
先06年からデトロイトの抑えはヴェテラン右腕トッド・ジョーンズが務めている。2年間で75セーヴを挙げているものの、失敗も12回あって、信頼できる抑え投手とはいささか言い難い。06年に100マイルを超える速球で話題になったジョエル・ズマヤが将来はクローザーを引き継ぐと思われるが、昨年は右腕の故障でほとんどマウンドに登れなかった。そのうえオフシーズン中に肩も傷めて、今シーズンも大部分を休むことになりそうだ。ズマヤとともに06年には試合終盤を支えた右腕フェルナンド・ロドネイが、今年もセットアッパーを担当。ジェイスン・グリッリ、ザック・マイナーの両右腕は、先発からブルペンに回った投手なので2イニング以上投げられる。この他に、ウィンターリーグで好投を披露したフランシスコ・クルセタや、この5年間で4ティームを渡り歩いているデニ・バウティスタ、トロント・ブルージェイズ時代に14セーヴをマークしたこともある右腕アキリノ・ロペスが食い込んでくるだろう。左腕救援には、58試合登板で防禦率2.34のボビー・シーイを中心に、39試合登板のティム・バーダク、昨年途中にアトランタ・ブレイヴズから獲得したマケイ・マクブライドがメンバー入りを争うことになる。
評価:C

先発
ジャスティン・ヴァーランダー
B
ドントレル・ウィリス
(フロリダ)
B
ジェレミー・ボンダーマン
B
ネイト・ロバートスン
C
ケニー・ロジャーズ
C
ヨルマン・バサルド
(新人)
D
ヴァージル・ヴァスケス
(新人)
E
ジョーダン・タタ
(新人)
E
リック・ポーチェッロ
(新人)
E
プレストン・ラリスン
(招待選手)
E
クリス・ラムバート
(招待選手)
E
中抑え
フェルナンド・ロドネイ
C
ジョエル・ズマヤ
D
ジェイスン・グリッリ
D
ザック・マイナー
D
ボビー・シーイ
D
ティム・バーダク
D
マケイ・マクブライド
D
デニ・バウティスタ
E
フランシスコ・クルセタ
(新人)
E
アキリノ・ロペス
(招待選手)
D
抑え
トッド・ジョーンズ
C

捕手
このオフシーズンにデトロイトは、イバン・ロドリゲスとの1年間の契約延長を選んだ。一時期のような長打者タイプの選手ではなくなったが、昨年13度目のゴールドグラヴ賞に選ばれた堅守は変わっていない。今年はフロリダ・マーリンズ世界一のときにリードしたドントレル・ウィリスを立ち直らせるという役目も担うことになる。控えのヴァンス・ウィルスンは、昨年右肘の手術を受けてシーズンを全休した。かつては5割を超える盗塁阻止率をマークした強肩で知られていたが、故障の影響が懸念される。場合によっては、元捕手のブランドン・インジがマスクをかぶることもあるかもしれない。
評価:B

内野手
ミゲル・カブレラ、エドガル・レンテリアの加入によって、デトロイトの内野は大きく様変わりすることになる。カブレラは、03年にフロリダ・マーリンズに昇格して世界一に貢献、04年から4年連続で110打点以上をマークしている強打者だ。三塁守備に目をつぶれば、現役トップクラスの野手の一人と言える。しかしカブレラの加入によって、打率は低いが勝負強く、三塁の守備範囲も広いブランドン・インジが控えに回るのはかなりもったいない。長打力のあるマイク・ヘスマンも本来の守備位置は三塁なので、さらに出番が少なくなってしまう。遊撃手のレンテリアは、97年のフロリダ世界一に貢献した選手だ。昨年はシーズン終盤まで首位打者争いに加わり.332の高打率をマーク。ゴールドグラヴ選出2回の名手が加わったことで、膝の故障で守備範囲が狭まったカルロス・ギエンは、一塁に移動して打撃に専念する。内野4人の中で、ただ一人昨年と変わらないのは二塁のプラシド・ポランコだ。昨年はポランコにとって、ベストの中のベストと言えるシーズンだったろう。ティームメイトのマグリオ・オルドニェスと終盤まで首位打者を争い、守りでは無失策で初めてのゴールドグラヴに選出された。控えの内野手がラモン・サンティアゴ一人しかいないのがやや不安な点だが、『ベースボール・アメリカ』誌では組織内のトップ10素材と評されているスコット・サイズモア、マイケル・ホリモン、ダニエル・ワースを春期練習に招き、メンバー入りを争わせている。
評価:A

外野手
マグリオ・オルドニェスは、ニューヨーク・ヤンキーズのアレクス・ロドリゲスには印象度でMVPをさらわれたものの、内容ではオルドニェスの方がはるかに勝っていた。.363の高打率で初の首位打者も獲得しただけでなく、得点圏打率はさらにそれを上回る.429をマーク、107打点も挙げた勝負強さは、もっと評価されてしかるべきだった。昨年がレギュラー2年目だったカーティス・グランダースンは、さらなる飛躍を遂げた。MLB史上3人目という二塁打、三塁打、本塁打、盗塁をいずれも20以上マークするという大記録を達成。打率は3割を超え、122得点はティーム首位の数字だった。このオフシーズンにクラブはグランダースンと5年契約を結んだが、その価値は十分あるだろう。左翼にはシカゴ・カブズでプレイしていたジャック・ジョーンズが入る。昨年の66打点、5本塁打は99年にMLB昇格を果たして以来最も振るわない数字だったが、勝手知ったるアメリカンリーグへの復帰で、以前の打棒を取り戻すかもしれない。左投手をやや苦手とするジョーンズをカヴァーするのは右打ちのマーカス・テームズ。左投手に対して.310を打っているだけでなく、得点圏打率も3割を超す勝負強い選手だ。マイナーリーグ時代には快足をほしいままにしたフレディ・グスマンは試合終盤の守備要員からチャンスをつかむだろう。若手では二塁も守れるライアン・ラバーンと、守備力の高さは認められているが、持ち前の長打力を発揮しきれないブレント・クリヴレンとがメンバー入りの候補になる。
評価:B

指名打者
06年には肩の故障で39試合にしか出られなかったゲイリー・シェフィールドは、昨年前半に打率.303、58打点、21本塁打と大活躍。夏場に調子を落としたため、133試合で打率.265、75打点、25本塁打と平凡な成績で終わってしまったが、特筆すべきは盗塁を22個決めていることで、シェフィールドがシーズン20盗塁以上をマークしたのは、90年の25盗塁以来である。怪我の影響や39歳という年齢を心配する必要はなさそうだ。また、史上24人目の500本塁打まであと20本というから、今年中の達成は確実と言っていいだろう。シェフィールドを休ませるときには、マーカス・テームズやカルロス・ギエンが指名打者に起用される。
評価:B

CF
カーティス・グランダースン
B
2B
プラシド・ポランコ
A
3B
ミゲル・カブレラ
(フロリダ)
A
RF
マグリオ・オルドニェス
A
DH
ゲイリー・シェフィールド
B
C
イバン・ロドリゲス
A
1B
カルロス・ギエン
B
LF
ジャック・ジョーンズ
(カブズ)
C
SS
エドガル・レンテリア
(アトランタ)
B
C
ヴァンス・ウィルスン
D
3B/OF
ブランドン・インジ
C
IF
ラモン・サンティアゴ
D
IF/OF
ライアン・ラバーン
D
3B
マイク・ヘスマン
D
OF
マーカス・テームズ
C
OF
ブレント・クリヴレン
(新人)
E
OF
フレディ・グスマン
(テキサス)
D
OF
ティモ・ペレス
(招待選手)
D

監督
ジム・レイランドはデトロイト・タイガーズ監督就任1年目に22年ぶりのアメリカンリーグ優勝を成し遂げたが、昨年は中地区2位に後退。リーグ優勝を支えた先発スタッフが崩れたのが要因だが、それでも勝率5割を保ったレイランドの手腕はさすがだったと見るのがよさそうだ。今シーズンは投打にオールスター級の選手が多数加わっているが、レイランドの采配は相変わらず、打順やローテーションを固定する正攻法でペナントレースを争っていくことだろう。
評価:A

期待の若手
デトロイトはこの2年間のトレードで、組織内のプロスペクトをほとんど手放してしまった。しかし、昨年の新人ドラフトでは、エースのジャスティン・ヴァーランダーに匹敵する素材を指名している。高校生No.1投手と絶賛されていたリック・ポーチェッロは、高額の契約金になることを危惧した、多くのティームが指名を回避。06年のアメリカンリーグ優勝ティームが全体第27位でこの右腕投手を指名できたのはたいへんな幸運だった。95マイル前後の速球、鋭く変化するスライダー、大きく曲がり落ちるカーヴボールはいずれも、水準以上と評価されており、まだ19歳という若さを度外視すれば、すぐにでもMLBで投げられると見る関係者も多い。