カンザスシティ・ロイアルズ

概観
昨年は69勝93敗で4年連続してアメリカンリーグ中地区5位に終わったカンザスシティ・ロイアルズだが、シーズン終盤までシカゴ・ホワイトソックスと4位争いを展開するなど、徐々にティーム力が向上しつつあるところを示した。シーズン中に引退を表明していたバディ・ベルの後任には、日本で2度のリーグ優勝を経験したトレイ・ヒルマンが選ばれ、若いティームは次の段階に進むときを迎えている。13年間カンザスシティひと筋でプレイしてきたマイク・スウィーニィがティームを去ったのは残念だったが、アレクス・ゴードン、ビリー・バトラーなど期待の若手が力をつけて、リーグ13位だった得点力がアップしてくれば、上位進出は十分可能だ。

先発
5年間5,500万ドルでやってきた右腕ギル・メッシュのカンザスシティ1年目は9勝13敗と負け越しに終わった。しかし防禦率3.67は、99年にMLBデビューを果たして以来初めてマークした3点台の数字だった。右腕ブライアン・バニスターは新人としては2番目に多い12勝をマーク。だが、開幕から2ヶ月と、9月2日以降とに1勝も挙げられなかったことを考えると15勝をマークできていたかもしれない。ティーム内ではメッシュに次ぐ防禦率3.87も目を引く。右腕ザック・グラインキは、プレッシャーから来る心神耗弱からやっと立ち直った。昨年開幕時は先発だったが、5月以降はブルペンに回って4勝1敗、防禦率3.54と好投。シーズン終盤に先発に復帰すると、7試合の先発で防禦率1.85をマークした。カンザスシティの未来のエースは今年こそ復活を果たすことだろう。左腕ホルヘ・デラロサは相変わらずの荒れ球だが、シーズンの3分の2をローテーションで投げた経験は自信になったはずだ。5人目の先発には、06年の新人ドラフトで全体第1位指名を受けた右腕ルーク・ホシェヴァーへの期待が大きい。昨年は1試合の先発を含む4試合登板で防禦率2.13。プロ経験が少ないのが懸念されるものの、将来的にはカンザスシティの主力投手になれる素材だ。新加入の右腕ブレット・トムコは、04年を最後にふたケタ勝利をマークしていないが、MLB通算250先発の実績を持つヴェテランである。右腕カイル・デイヴィーズは、統括デイトン・ムーアの前職がアトランタ・ブレイヴズだった縁で昨年途中呼ばれたが移籍後は3勝7敗、防禦率6.66。制球難と長打を打たれすぎる悪い癖を直さないとMLB定着もおぼつかない。06年に7勝をマークしたルーク・ハドスンは、右肩の手術から立ち直れるだろうか。招待選手の中での注目は、左腕マイク・マロス、右腕ブライアン・ロレンス。いずれも肩の故障のためにこの2年間ほとんどマウンドに登っていないが、ともにMLB通算50勝の実績がある先発投手だ。ミルウォーキー・ブルワーズの将来のエースと大いに期待された右腕ベン・ヘンドリクスンも春期練習に招かれている。
評価:D

救援
ルール5ドラフトで獲得した右腕ホアキム・ソリアがクローザーとして急成長を見せた。抑えとして投げた期間が短いためセーヴ数は17にとどまっているが、62試合登板で2勝3敗、防禦率2.48をマーク。投球回数を上回る75三振を奪っている点はクローザー向きと言えるだろう。昨年65試合で防禦率2.45と好投したデイヴィッド・リスキに代わるセットアッパーには、62試合登板で防禦率3.80の右腕ホエル・ペラルタが有力。もう一人の候補、右腕ヤブタ・ヤスヒコは、日本ではこの4年間に平均55試合以上でリリーフを務め、防禦率も2点台と安定しているが、球威に欠ける点が不安視されている。AAA級オマハで防禦率1.09のライアン・ブラウン、肩の故障から復帰したレオ・ヌニェスは、MLBでの数字がやや冴えない。ジミー・ゴブルはティーム最多の74試合に投げて防禦率3.02という、安定感抜群の左腕投手だ。ここに昨年2ティーム合計で58試合登板、防禦率2.55をマークしているヴェテランのロン・マヘイが加わり、日本でクローザーを務めた経験のあるジョン・ベイル、昨年がMLBデビューの年だったニール・マッサーと層が厚くなった。招待選手では、昨年23試合マウンドを務めたブランドン・ダックワース、右肘の故障に苦しむツァオ・チンホェイあたりが注目される。また、05年以来MLBのマウンドから遠ざかっているノモ・ヒデオも招かれているが、長いブランクに加えて右肘の手術の影響もあり、MLB復帰は難しいだろう。
評価:D

先発
ギル・メッシュ
C
ブライアン・バニスター
C
ザック・グラインキ
C
ホルヘ・デラロサ
D
ルーク・ホシェヴァー
E
ブレット・トムコ
(サンディエゴ)
D
カイル・デイヴィーズ
D
ブライアン・ロレンス
(招待選手)
D
マイク・マロス
(招待選手)
D
ベン・ヘンドリクスン
(招待選手)
E
中抑え
ジミー・ゴブル
C
ホエル・ペラルタ
D
ロン・マヘイ
(アトランタ)
D
ライアン・ブラウン
E
レオ・ヌニェス
E
ヤブタ・ヤスヒコ
(新人)
E
ジョン・ベイル
D
ニール・マッサー
E
ブランドン・ダックワース
(招待選手)
D
ツァオ・チンホェイ
(招待選手)
D
ロマン・コロン
(招待選手)
D
ノモ・ヒデオ
(招待選手)
D
ジョン・フォスター
(招待選手)
E
抑え
ホアキム・ソリア
C

捕手
ジョン・バックは、04年途中にカルロス・ベルトランとの交換トレードでヒューストン・アストロズから移籍してきて以来、カンザスシティの第一捕手としてプレイしている。マイナーリーグ時代から守備には定評があり、昨年は盗塁阻止率が振るわなかった他は、安定した守りを披露した。通算打率が.237という打撃はやや不得手だが、昨年も18本塁打を打っており、意外に長打力はある。今年は、フロリダ・マーリンズで2年間本塁を守ったミゲル・オリボが加わっている。オリボも打率は低いが、2年連続16本塁打とやはり長打力がある。その強肩ぶりはよく知られているが、捕球にミスが多いのが玉に瑕だ。
評価:C

内野手
三塁のアレクス・ゴードンのMLB初年度は、シーズン序盤の不調が響いて、打率.247、60打点、15本塁打と期待はずれの数字に終わった。同じ年の新人ドラフトで指名されたライアン・ジマーマンが06年のナショナルリーグ新人賞得票第2位、ライアン・ブラウンが昨年のナショナルリーグ新人賞に選ばれて、水を空けられたようだが、『ベースボール・アメリカ』誌が選んだマイナーリーグ最優秀選手の力はこんなものではないだろう。03年の新人賞アンヘル・ベロアは、攻守両面での不振から抜け出すことができずに解雇されたが、昨年途中にアトランタ・ブレイヴズから獲得したトニ・ペニャが完全に穴を埋めた。シーズン当初は攻守ともに穴だらけだったが、前監督バディ・ベルが辛抱強く起用し続け、結局ティームで2番目に多い152試合に出場。正遊撃手に定着することができた。しかし、今年の春期練習にはベロアも招かれており、定位置を奪い返すチャンスをうかがっている。06年のゴールドグラヴ二塁手のマーク・グルジラネクは、故障で116試合の出場にとどまったものの、6失策と守りは堅い。.302と安定した打撃は相変わらずで、今年も2番打者として活躍するだろう。一塁は昨年と同じく、左打ちのロス・グロードと右打ちのライアン・シェアリーとが併用される。グロードは昨年自己ベストの51打点をマーク、左投手も苦にしない巧打者だ。一方、06年途中にコロラド・ロッキーズから来て4番に定着したシェアリーは伸び悩み気味。エステバン・ヘルマンは、カンザスシティに来てから2年連続で100試合以上に出場。昨年はグルジラネクの欠場中は二塁で先発するなど、5人目の内野手として重宝されている。アリゾナ・ダイアモンドバックスから獲得したアルベルト・カラスポも三塁、遊撃、外野を守れる選手。ティーム唯一のスウィッチヒッターとしてメンバー入りが期待される。
評価:D

外野手
三塁から右翼に移ったマーク・ティーヘンは、MLBの平均をはるかに上回る守備範囲の広さと、17人をアウトにした強肩とで周囲を驚かせた。しかし、本塁打は06年の18本から7本に激減、打点も前年を下回った。中堅手ダビド・デヘススは、例年怪我で休むことが多かったが、昨年は157試合でプレイ。3割5分台の出塁率はもう少し向上させなかればならないが、初めて100得点を超えて、ようやくリードオフマンらしくなってきた。左翼にはシアトル・マリナーズからホセ・ギエンを迎えた。昨年は98年以来の153試合に出場して打率.290、99打点、23本塁打と、ほぼベストに近い数字を残した。当然打線の中軸として期待がかかるが、過去の薬物使用歴を今さらのようにとがめられて、開幕から15試合出場停止処分を受けることになっている。昨年途中タムパベイ・デヴィルレイズから獲得したジョーイ・ギャスライトは控えに回る。脚力と守備範囲の広さとには定評があるものの、レギュラーになるには打力を向上させなければならない。あと一人の外野手は、ミッチ・マイアー、シェイン・コスタ、招待選手のクリス・ルバンスキの左打者や、日本でプレイしていたデイモン・ホリンズの中から選ばれる。
評価:D

指名打者
マイク・スウィーニィの後継者の最有力候補はビリー・バトラーのようだ。昨年はスウィーニィの64試合よりも多い69試合で指名打者を務め、シーズン通算で打率.292、52打点、8本塁打をマークした。バトラーは06年のラリー・ドビー賞だったが、その前年の05年に同じ賞を授かっているジャスティン・ヒューバーも、打撃だけならば決して引けを取ることはない。
評価:D

CF
ダビド・デヘスス
C
2B
マーク・グルジラネク
B
DH
ビリー・バトラー
D
LF
ホセ・ギエン
(シアトル)
B
3B
アレクス・ゴードン
C
RF
マーク・ティーヘン
D
1B
ロス・グロード
D
C
ジョン・バック
C
SS
トニ・ペニャ
C
C
ミゲル・オリボ
(フロリダ)
C
1B
ライアン・シェアリー
D
IF
エステバン・ヘルマン
C
IF
アルベルト・カラスポ
(アリゾナ)
D
SS
アンヘル・ベロア
(招待選手)
D
IF
ジェイスン・スミス
(招待選手)
D
OF
ジョーイ・ギャスライト
D
OF
シェイン・コスタ
D
OF
ミッチ・マイアー
(新人)
E
OF
クリス・ルバンスキ
(招待選手)
E
OF
デイモン・ホリンズ
(招待選手)
D

監督
バディ・ベルの引退後、トレイ・ヒルマンが新監督に迎えられた。日本で采配を振るった5年間では、日本人好みの長打力重視の野球を捨てて、バントや盗塁を多用する野球へ移行。さらに若手の積極的な起用も図に当たって、2度のリーグ優勝、日本シリーズ制覇も成し遂げている。伸び盛りの若い選手が多い今のカンザスシティには、まさにうってつけの人材と言える。日本も含めた、16年間のマイナーリーグでのコーチ経験と育成担当として培った選手の鑑識眼とで、低迷の続くティームを立て直してくれることだろう。
評価:E

期待の若手
アレクス・ゴードン、ビリー・バトラーなど、これまでは野手に成長株の多かったカンザスシティだが、今年は投手にも期待の若手がいる。ダニエル・コルテスは、06年に当時のクローザーだったマイク・マクドゥガルとの交換でシカゴ・ホワイトソックスから獲得した右腕投手。95マイル前後の速球と縦に曲がり落ちるカーヴボールとが得意球で、『ベースボール・アメリカ』誌ではルーク・ホシェヴァーよりも高い評価を与えている。今年3月で21歳とまだ若いが、3年以内にカンザスシティのエースとしてマウンドに登るだろう素材である。