概観
昨年のニューヨーク・ヤンキーズは、4月に9勝14敗と出遅れたのが響いて、オールスターゲーム直前でようやく43勝43敗の五分。しかし、アメリカンリーグ東地区首位のボストン・レッドソックスから9.5ゲームも引き離されていただけでなく、ワイルドカード争いでも8ゲーム差の4位タイで、ついにポストシーズン進出の道も断たれるかと思われた。それが後半は、51勝25敗という驚くべき勝率で追い上げ、ワイルドカードとしてポストシーズンに駒を進めることができた。しかし、地区シリーズで顔を合わせたクリーヴランド・インディアンズに対して1勝3敗と歯が立たず、ティーム力の低下をうかがわせている。02年以降に獲得したオールスター級の選手がほとんど全員ティームの勝利に貢献できていない現状を重く見たか、昨年あたりから若手の登用にも力を入れている。
先発
昨年はロジャー・クレメンスの復帰でローテーションが強化されるというのがクラブの思惑だったが、いざマウンドに登ってみれば調整不足は明らかで、ポストシーズン敗退の要因になった。そこで今年は原点に返り、若手の起用でスタッフの建て直しを図る。デレク・ジーター以来ドラフト第1巡指名選手をことごとく手放してきたヤンキーズだが、今年は3人の第1巡指名選手がローテーション入りを争っている。04年の第1巡指名右腕フィル・ヒューズは、8月からローテーションに定着して4勝2敗、防禦率4.65をマーク。昨年の地区シリーズでただ一人、クリーヴランド・インディアンズの打線を抑えた投球が今年に活かされるか。06年の追加第1巡指名右腕ジョバ・チェムバレンは、昨年終盤主にブルペンで働いた。24イニングを投げて奪った三振が34個、自責点わずか1という完璧な投球を披露している。チェムバレンと同じ年に第1巡で指名を受けた右腕イアン・ケネディは選手枠が40人になる9月に昇格。3試合に先発して1勝、防禦率1.89をマーク。故障で投げられないクレメンスの代役以上の働きを示した。右腕ワン・チエンミン、左腕アンディ・ペティット、右腕マイク・ムシナの三本柱はすでに決まっている。06年のアメリカンリーグ最多勝のワンは、打たせてアウトにする投球で2年連続の19勝。ティーム内では最も信頼の置ける投手である。昨年4年ぶりにヤンキーになったペティットは15勝を挙げて通算200勝に到達した。しかし、『ミッチェル・レポート』で筋肉増強剤の使用を公表されたことの心理的な影響は多少気にかかるところだ。ムシナは、故障を抱えながらの投球だったが、16年連続ふたケタ勝利になる11勝をマーク。通算250勝もマークした。右腕カール・パヴァノは今年が4年契約最後の年だが、この3年間でマウンドに登ったのはわずかに19回。左腕イガワ・ケイは、昨年細縦縞のユニフォームを着たばかりなのに、早くもトレードの噂が流れた。この二人がローテーションに加えられることはほとんど考えられない。
評価:C
救援
史上2位の443セーヴを記録している右腕マリアノ・リベラは、果たして下り坂にさしかかっているのだろうか。最近のリベラは春先が不調で、昨年も4月に1勝2敗1セーヴ、防禦率10.57。一度は持ち直したものの、夏場以降にはまた打たれる場面が見られ、シーズン通算での防禦率は、97年にクローザーに定着してから最も悪い3.15だった。昨年終盤完璧な前抑え役を務めたチェムバレンを引き継ぐのは、右腕ラトロイ・ホーキンズ。かつては100マイル近い速球で三振の山を築く投手だったが、ここ数年は配球に気をつけた投球を心がけている。右腕カイル・ファーンズワースも100マイルを超す速球を持つが、投球が単調になりやすいくせがあり、ヤンキーズでの2年間はいずれも防禦率が4点台だった。06年途中にヤンキーズに昇格して防禦率0.87と活躍した右腕ブライアン・ブルニィも昨年は防禦率4.68と打たれた。ランディ・ジョンスンのトレードでアリゾナ・ダイアモンドバックスから獲得した右腕ロス・オーレンドーフが昨年MLBデビューを果たし、6試合の登板ながら防禦率2.84をマーク。ポストシーズン出場メンバーにも名前が残った。40人枠の中では、MLBでは36試合しか登板経験のないショーン・ヘンしか左腕投手が登録されていなかったため、招待選手のビリー・トレイバーとMLB契約を結んだ。イガワを救援で起用するには、制球力と精神力とにあまりにも不安が多い。
評価:C
| 先発 |
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| ワン・チエンミン |
右
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B
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| アンディ・ペティット |
左
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|
B
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| マイク・ムシナ |
右
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|
B
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| フィル・ヒューズ |
右
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C
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| ジョバ・チェムバレン |
右
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(新人) |
D
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| イアン・ケネディ |
右
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(新人) |
E
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| カール・パヴァノ |
右
|
|
D
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| イガワ・ケイ |
左
|
|
E
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| 中抑え |
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| ラトロイ・ホーキンズ |
右
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|
D
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| カイル・ファーンズワース |
右
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|
D
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| ブライアン・ブルニィ |
右
|
|
D
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| ロス・オーレンドーフ |
右
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(新人) |
E
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| ショーン・ヘン |
左
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|
E
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| ビリー・トレイバー |
左
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|
D
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| 抑え |
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| マリアノ・リベラ |
右
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S
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捕手
ホルヘ・ポサダは、昨年自身初めて打率3割以上をマーク、90打点、20本塁打で、打撃面ではベストに近いシーズンを送った。しかし、ここ数年進歩の跡が見られた守備では、100人以上の盗塁を許し、打球を処理する動きもやや鈍っている。控えには、昨年途中にロサンジェルス・エンジェルズ・オヴ・アナハイムから獲得したホセ・モリナと再契約。守りについて言えばゴールドグラヴ級のモリナは、試合終盤の守備固めには欠かせない選手である。
評価:B
内野手
昨年3度目のMVPに選出されたアレクス・ロドリゲスは、このオフシーズンに新たに10年契約を結んだ。打率.314、156打点、54本塁打、24盗塁という数字だけ見れば、MVPは当然であるように思われるが、ポストシーズンで打てないのは相変わらず。ティームの世界一に貢献できなければ、長期契約に見合った活躍をしたとは言い難い。ティームのキャプテン、遊撃手のデレク・ジーターは、3年連続の200安打、打率3割をマーク。通算安打数は2,356になり、現在33歳のジーターが、ピート・ローズが引退した45歳までプレイすれば、ローズの4,256安打を破れるかもしれないという話も聞かれるようになった。ジーターと二遊間コンビを組むロビンソン・カノは春期練習直前に2年の任意延長付き4年契約を結び、ようやくトレードの噂から解放される。首位打者を争った06年から打率は下がったものの、それでも3割台を維持。97打点、19本塁打はデビューから3年間で最高の数字だった。守備での進歩も目覚ましく、攻守揃った二塁手にと成長を続けている。ジェイスン・ジアムビは、ニューヨークに来てから守りにつく機会が減少しているだけでなく、膝の故障のため、動きは以前よりもさらに衰えている。昨年後半にMLBに呼ばれて34試合で7本塁打と長打力を発揮したシェリー・ダンカンや、05年にヒューストン・アストロズが初のナショナルリーグ優勝を果たしたときの主力打者だったモーガン・エンズバーグを一塁に据えるのが現実的なようだ。控え内野手として40人枠に登録されているのは、ウィルソン・ベテミトただ一人だけ。招待選手のクリス・ウッドウォードは内野も外野も守れる選手で、代打でも勝負強さを発揮する。ニック・グリーンは06年にヤンキーとしてプレイした経験がある。
評価:A
外野手
ヤンキーとして初めてフルシーズンを過ごしたボビー・アブレウだが、シーズン前半は打率.263、41打点、5本塁打とたいへんな不調だった。オールスターゲーム以降に.305、60打点、11本塁打と持ち直して、5年連続の100打点はマークしたものの、本塁打は16本に減少。99年以来続いていた100四球も途絶えたうえ、出塁率.369はアブレウの通算成績からするとかなり低かった。ヤンキーズに来て2年目のジョニー・デイモンは、肩、脚、腰に故障を抱えたプレイを強いられて、06年と比べると成績は落ちている。また、シーズン後半は左翼に回ったり、指名打者で起用されたりすることが多くなった。デイモンに代わって中堅手を任されたのは、メルキ・カブレラ。アメリカンリーグ平均をはるかに上回る広い守備範囲と、16人の走者をアウトにした強肩とで、前任者以上の働きを披露した。一昨年、左手首の骨折で連続試合出場記録が止まった途端に、マツイ・ヒデキは故障欠場が多くなった。今年は膝の故障で調整が遅れているうえに、年を追うごとに外野の守備も衰えており、打撃だけで正左翼手の座を確保するのはもう無理なのではないか。エンズバーグとともに05年のヒューストン・アストロズ優勝を支えたジェイスン・レインが春期練習に招かれている。新人のブレット・ガードナーは、春期練習では4割を超える高打率に、ティーム最多の盗塁数を決めており、メンバー入りの大きなチャンスである。
評価:B
指名打者
打つだけならば、まだそれなりに数字が期待できるマツイ・ヒデキを指名打者に使いたいが、ジェイスン・ジアムビの一塁守備にも不安が多く、どちらをより多く指名打者で起用すればいいか悩みどころである。さらに困ってしまうのは、二人とも左打者だということ。左投手に対するときには、この春打撃好調なシェリー・ダンカンや、招待選手のジェイスン・レインなどの右打者も適宜使っていくことになるだろう。
評価:C
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LF
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ジョニー・デイモン |
左
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B
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SS
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デレク・ジーター |
右
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S
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RF
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ボビー・アブレウ |
左
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A
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3B
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アレクス・ロドリゲス |
右
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|
S
|
|
C
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ホルヘ・ポサダ |
両
|
|
B
|
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DH
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ジェイスン・ジアムビ |
左
|
|
C
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2B
|
ロビンソン・カノ |
左
|
|
B
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1B
|
シェリー・ダンカン |
右
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(新人) |
D
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|
CF
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メルキ・カブレラ |
両
|
|
C
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|
|
|
|
|
|
|
C
|
ホセ・モリナ |
右
|
|
D
|
|
C
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チャド・モラー |
右
|
(招待選手) |
D
|
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IF
|
ウィルソン・ベテミト |
両
|
|
D
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1B/3B
|
モーガン・エンズバーグ |
右
|
(招待選手) |
D
|
|
IF
|
ニック・グリーン |
右
|
(招待選手) |
D
|
|
IF
|
バーニー・カストロ |
両
|
(招待選手) |
D
|
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IF/OF
|
クリス・ウッドウォード |
右
|
(招待選手) |
D
|
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OF
|
マツイ・ヒデキ |
左
|
|
B
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|
OF
|
ジェイスン・レイン |
右
|
(招待選手) |
D
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監督
ジョー・ジラルディは、06年にフロリダ・マーリンズの監督に就任。若手ばかりのティームを率いて、史上初の新人4人が10勝以上、同じく2度目という新人3人が20本塁打以上という記録を作り、これも史上初めて、勝率5割未満の成績ながら最優秀監督に選ばれた。ところが、オウナーのジェフリィ・ロリアに疎まれたために、シーズン終了と同時に解任される憂き目を見た。監督の仕事に集中できれば、ゆるやかな崩壊への道をたどっているヤンキーズの危機を救うことができるだろうが、スタインブレナー一族の干渉が激しくなったときには、2年前の不幸に再び見舞われるかもしれない。
評価:C
期待の若手
オースティン・ジャクスンは、高校卒業後05年の新人ドラフトで第8巡指名を受けてプロ入りした。プロ3年目の昨年はLow A級で開幕を迎えたが、6月にHigh A級に昇格して、打率.345、34打点、10本塁打、13盗塁と活躍。わずか1試合だけだったがAAA級でのプレイも経験している。打撃走塁守備いずれをとっても平均を上回る技量を備えており、今後さらに経験を積めば、1、2年のうちにMLB昇格できるのではないかと見られている。1歳年少のホセ・タバタや、ジャクスンと同じ年に第3巡指名を受けたブレット・ガードナーとのメンバー入り争いが楽しみだ。