オークランド・アスティックス

概観
オークランド・アスレティックスと言えば、統括ビリー・ビーンであり、そのビーンによって、『マネーボール』が2000年代前半に一世を風靡した。しかし、その名声にもそろそろ陰りが出てきたように思われる。昨年ビッグ3の生き残りだったバリー・ジトが抜け、生え抜きのレギュラー野手エリク・チャベスが故障で長期欠場すると、前年のアメリカンリーグ西地区優勝から76勝86敗の3位に後退した。エースのダニー・ヘイレン、長打者ニック・スウィシャー、巧守のマーク・コツェイを手放したが、この人事異動がティームの再編成につながっていくというのであれば、ひとつお手並みを拝見したいところだ。

先発
昨年のオールスターゲームでアメリカンリーグの先発を務め、ティーム首位の15勝、防禦率3.07をマークしたダニー・ヘイレンをアリゾナ・ダイアモンドバックスに放出。ヘイレンに次ぐ14勝を挙げている右腕ジョー・ブラントンが先発スタッフの中心になるだろう。防禦率3.95は、前年の4.82と比べると大きく改善されているし、投球回数230イニングは、アメリカンリーグ内ではブラントンの上にクリーヴランド・インディアンズの左腕C・C・サバシアがいるだけ。MLB4年間で先発は10試合しか経験のなかった右腕チャド・ゴーダンは、シーズン通してローテーションに定着し、自身初のふたケタ勝利をマークした。しかし関係者やファンが一番待ち望んでいるのは、右腕リッチ・ハーデンの完全復帰である。03年にMLBに昇格して以来、規定投球回数を超えたのはたったの一度。フルシーズン務め上げれば、サイ・ヤング賞の最有力候補に名前を連ねると見られているハーデンに、今季も注目が集まる。左腕レニー・ディナルドは昨年の春期練習直前にボストン・レッドソックスから移ってきた。シーズン当初は救援で防禦率1点台をマーク。5月下旬に先発に回ってからは7勝8敗、防禦率4.93の数字を残している。右腕ジャスティン・ダックシェアラーもブルペンからローテーションに加わる投手の一人だ。04年から3年間、前抑えとして活躍してきたダックシェアラーが先発でマウンドを踏むのは03年以来のこと。この他の先発投手の候補には左腕投手が多い。昨年14試合の先発で1勝しかできなかったダラス・ブレイデン。ティム・ハドスンのトレードでアトランタ・ブレイヴズから来たダン・マイアーは、05年の移籍後まったくいいところが見られない。昨年は3年ぶりにMLBで投げたが、6試合で防禦率8.82はひどすぎた。デイナ・イヴランドは球威に定評はあるものの、制球力が今ひとつで伸び悩んでいる。
評価:D

救援
05年のアメリカンリーグ新人賞右腕ヒューストン・ストリートは、右腕にしびれを覚えたため2ヶ月マウンドを離れた。しかしシーズン通算では、5勝2敗16セーヴ、防禦率2.88と、決して悪くない数字を残している。今年はシーズンを全うして初の40セーヴ到達が期待される。ストリート欠場中に抑えを務めた左腕アラン・エムブリーは、17セーヴをマーク。これはエムブリーが過去13年間で挙げたセーヴ数の倍以上だった。しかしストリートが元気であれば、エムブリーは本来のワンポイント救援の仕事に戻ることになる。昨年クリーヴランド・インディアンズと契約を結んだ後、右肩の故障のために現役引退を発表したキース・フォークがオークランドに復帰した。04年のたった1年だけではあったが、その年にマークした9勝1敗43セーヴ、防禦率2.08はベストの記録である。オークランドに来てから3年間で174試合に投げている右腕キコ・カレロとともにダックシェアラーが先発に回った後の前抑え役を分け合うことだろう。新人ながら46試合で52三振を奪ったサンティアゴ・カシヤは球威抜群。デビューから2試合連続で満塁本塁打を浴びた不運から立ち直りつつある右腕ジョーイ・ディヴァイン、昨年33試合登板の右腕アンドルー・ブラウン、数少ない左腕のジェリー・プレイヴィンズもブルペン入りの候補だ。招待選手では、昨年新人として51試合に登板したが、防禦率は6.43だった左腕ジェイ・マーシャル、シンシナティ・レッズでは全く働けず、1年で古巣に戻ってきた右腕カーク・サールースあたりがメンバー入りに近いところにいるだろう。
評価:C

先発
ジョー・ブラントン
B
リッチ・ハーデン
C
チャド・ゴーダン
C
レニー・ディナルド
D
ジャスティン・ダックシェアラー
C
ダラス・ブレイデン
D
ダン・マイアー
(新人)
E
デイナ・イヴランド
(アリゾナ)
E
中抑え
キース・フォーク
(復帰)
C
アラン・エムブリー
C
キコ・カレロ
D
サンティアゴ・カシヤ
D
ジョーイ・ディヴァイン
(アトランタ)
D
アンドルー・ブラウン
D
ジェリー・プレヴィンズ
(新人)
E
ジェイ・マーシャル
(招待選手)
D
カーク・サールース
(招待選手)
D
抑え
ヒューストン・ストリート
B

捕手
7月にジェイスン・ケンドールが放出された後は、予定通りにカート・スズキが正捕手の座に着いた。守備力やリーダーシップについては大学時代から定評があったスズキは、すぐにMLBでも堅実な守備を披露。やや弱いと見られていた打撃では、試合終盤での勝負強さを発揮してファンを沸かせた。控えは昨年3ティームを渡り歩いたロブ・ボウェンが務める。どちらかと言うと打撃よりも守備を買われている選手である。招待選手のマット・リクロイはボウェンとはミネソタ・トゥインズ時代のティームメイト。捕手としてのプレイには難があるが、代打や指名打者としてならまだ十分活躍の場がある。
評価:D

内野手
昨年がオークランドで10年目のシーズンだったエリク・チャベスは、故障のためにオールスターゲーム以降を全休、90試合しか試合に出ることができなかった。01年から06年まで連続してゴールドグラヴに選出された守備と、打率3割は難しくとも、100打点、30本塁打が期待できる打撃との復活が待たれる。04年のアメリカンリーグ新人賞ボビー・クロズビーも故障には苦しめられている。05年から3年連続で出場試合数は100未満にとどまり、強打巧守の遊撃手という評判もかなり落ちてしまった。その故障続きの三遊間をカヴァーしてきたマルコ・スクタロが抜けたのは痛かった。ドニー・マーフィーは二塁、三塁、遊撃を守った経験はあるが、全部合わせても100試合に満たない。昨年AAA級では二遊間コンビを組んでいたケヴィン・メリッロとグレゴリオ・ペティトとが控えの内野手としてメンバーに加わりそうだ。メリッロは98試合で10本塁打と長打力があり、ペティトは守備を高く評価されている。二塁のマーク・エリスの昨年は攻守ともに素晴らしかった。打率は.276とあまり高くはなかったが、84得点、76打点、19本塁打はいずれも自身ベストの成績。150試合で5失策、アウト参加数5.45は、プラシド・ポランコという名手がいなければ間違いなくゴールドグラヴに選出されていたはずの数字だった。一塁には期待の新人デイリク・バートンと、MLB4年目になるダン・ジョンスンという二人の候補がいる。昨年初めてMLBでプレイしたバートンは、18試合で打率.347、8打点、4本塁打をマーク。この2年間打撃不振に苦しんでいるジョンスンにとっては厳しい定位置争いになりそうだ。昨年途中にデトロイト・タイガーズから獲得したジャック・ハナハンは、チャベス欠場中に三塁を守って注目された。
評価:C

外野手
このオフシーズン中、ニック・スウィシャーとマーク・コツェイとをトレードし、シャノン・ステュワートと契約更新しなかったため、今年のオークランドの外野はがらりと顔触れが変わる。右翼定着が予定されているトラヴィス・バックは、昨年8月に太腿裏を傷めるまではレギュラー外野手の一人だった。確実に当てていく打撃と優れた選球眼とで高い出塁率をマークする。中堅には、昨年途中にシンシナティ・レッズから獲得したクリス・ディノーフィアが入る。昨年はリハビリテイション中だったためシーズンを全休しているが、シンシナティでは組織内トップクラスと評されたこともある、三拍子揃った外野手だ。左翼に入るのはカンザスシティ・ロイアルズの中心打者として活躍していたエミル・ブラウン。昨年はやや振るわなかったものの、常時出場すれば80打点、20本塁打の技量はある。また、不安視されていた守備面では大きな進歩を見せている。今のところはこの3人がレギュラー候補だが、他にはシカゴ・ホワイトソックスから来たライアン・スウィーニィ、アリゾナ・ダイアモンドバックスから獲得したカルロス・ゴンサレス、わずか3週間でシンシナティから放出されたジェフ・フィオレンティノなど、ディノーフィアと同様に将来を期待された若手がMLB定着を狙う。
評価:D

指名打者
最近3年間はMLBで5試合しかプレイしていなかったジャック・カストが大活躍だった。5月10日から4試合連続、5本塁打。特に4試合目のさよなら3点本塁打は、MLB定着を決定づける一打だった。打率は低いが、105四球を選んで出塁率.408という、オークランド向きの選手である。カンザスシティ・ロイアルズひと筋に13シーズンプレイしてきたマイク・スウィーニィとマイナーリーグ契約を結んだ。ここ数年は故障が多く、一昨年、昨年と続けてシーズンの半分もプレイできなかった。しかしベストシーズンだった00年には、打率.333、144打点、29本塁打をマークしている長打者である。この二人が体調万全でシーズンを過ごすとなると、オークランドの指名打者はかなり強力だ。
評価:C

CF
クリス・ディノーフィア
D
RF
トラヴィス・バック
D
3B
エリク・チャベス
B
DH
ジャック・カスト
C
LF
エミル・ブラウン
(カンザスシティ)
C
1B
デイリク・バートン
(新人)
D
SS
ボビー・クロズビー
C
2B
マーク・エリス
C
C
カート・スズキ
D
C
ロブ・ボウェン
D
C
ランドン・パウェル
(新人)
E
C
マット・リクロイ
(招待選手)
D
1B
ダン・ジョンスン
C
IF
ドニー・マーフィ
D
IF
グレゴリオ・ペティト
(新人)
E
IF
ケヴィン・メリッロ
(新人)
E
3B
ジャック・ハナハン
D
1B/DH
マイク・スウィーニィ
(招待選手)
C
OF
ライアン・スウィーニィ
(ホワイトソックス)
D
OF
ジェフ・フィオレンティノ
(シンシナティ)
E
OF
カルロス・ゴンサレス
(アリゾナ)
E

監督
ボブ・ゲレンは、ティームを地区優勝に導きながら、優勝決定シリーズでの4連敗で解任されたケン・マッカの後を継いだが、前監督の遺産はどんどん減っていっている。エースと中心打者の一人とを連れ去られてしまった今シーズンは、さらに苦しいペナントレースになりそうだ。リッチ・ハーデンやエリク・チャベス、ボビー・クロズビーなど、昨年は故障で満足に働けなかったヴェテランたちが復帰し、将来有望な若手が順調に伸びてきてくれることを期待するのがまず先という現状では、ゲレンが自分の野球を披露するチャンスはなかなか訪れないだろう。
評価:D

期待の若手
ビッグ3は全員去り、昨年のオールスターゲームで先発を務めたダニー・ヘイレンもアリゾナに放出。すぐにも先発で使えそうな投手を組織内から探すとなると、ニック・スウィシャーのトレードでシカゴ・ホワイトソックスから獲得した左腕ジオ・ゴンザレスに声がかかるのではないだろうか。04年にシカゴ・ホワイトソックスから追加第1巡指名を受けてプロ入り。常に高い評価を得ているのに、この4年間で3度もトレードされているのが腑に落ちないが、昨年はAA級で9勝7敗、防禦率3.18、185奪三振をマーク。機はいよいよ熟したというところか。