フィラデルフィア・フィリーズ

概観
昨年のフィラデルフィア・フィリーズは4月に11勝14敗と負け越して出遅れたが、5月以降は全ての月で勝ち越して順位を上げていった。オールスターゲーム以降はナショナルリーグ東地区のライヴァル、ニューヨーク・メッツとの直接の顔合わせで7連勝。シーズン159試合目でメッツと並んで首位に立ち、シーズン最終日に89勝73敗でタイトルを決めるという競り合いだった。しかし、地区シリーズでは勢いに乗るコロラド・ロッキーズに手も足も出せずに3連敗を喫した。故障者の相次いだ投手スタッフを建て直して、メッツとのタイトル争いを勝ち抜きたい。

先発
フィラデルフィアのエースになるはずだった右腕ブレット・マイアーズは、開幕から3試合の先発で16失点を喫して、ローテーションから外された。抑えのトム・ゴードンが故障でメンバーを離れたため、5月からクローザーを任されてシーズン通算21セーヴを挙げたものの、もちろんこれはあくまで一時的なもの。今年は本来の先発に戻って、最低でも15勝は挙げてもらいたいところだ。マイアーズは冴えなかったが、MLB2年目の左腕コール・ハメルズが前年の9勝8敗、防禦率4.08から15勝5敗、防禦率3.39と大きく成長した。残念だったのは夏場に利き腕を傷めて一時メンバーを離れたことで、今季は体調万全でシーズンを全うし、フィラデルフィアの投手としては83年のジョン・デニー以来となるサイ・ヤング賞を狙いたい。昨年6月13日にMLBデビューを果たした右腕カイル・ケンドリックは、シーズン後半だけで7勝、防禦率3.69と活躍。ティームの逆転地区優勝に貢献した。45歳でシーズンを迎えるヴェテラン左腕ジェイミー・モイアーも、オールスターゲーム以降はケンドリックと並ぶ7勝をマーク。シーズン通算ではハメルズに次ぐ14勝を挙げてはいるが、防禦率は5.01と高かった。右腕アダム・イートンは2年ぶりにふたケタ勝利を挙げたとは言え、防禦率はモイアーよりもさらに悪い6.29だった。昨年わずか2ヶ月のあいだに4ティームを渡り歩いた右腕J・D・ダービンは、フィラデルフィアに来てMLB初勝利をマーク。まだ制球難で苦しむ場面は見受けられるが、ようやく100マイルの速球を活かす場所を見つけたのかもしれない。もう一人のダービン、チャド・ダービンは、昨年デトロイト・タイガーズで先発で6勝、リリーフで2勝1セーヴと、スウィングマンとして活躍した。左腕のローテーション入り候補はなかなか豊富で、ピッツバーグ・パイレーツでは定着できなかったシェイン・ユーマン、肩の故障でほぼ3年棒に振ってしまったトラヴィス・ブラックリィ、マイナーリーグ2階級合計で12勝を挙げたジョシュ・アウトマン、昨年の新人ドラフト第1巡指名ジョー・セイヴァリーが練習試合で起用されている。ボルティモア・オリオールズでは全く働けなかった右腕クリス・ベンスンが春期練習に招かれているが、まだマウンドには登っていない。
評価:C

救援
昨年は先発から外れたブレット・マイアーズが抑えを務めるという非常事態に陥った。今季はヒューストン・アストロズから右腕ブラッド・リッジを獲得。この2年間は長打を浴びて救援失敗という場面が目立っているが、05年のナショナルリーグ優勝のときには4勝4敗42セーヴ、防禦率2.29、103奪三振と見事な救援を披露している投手である。ところが、春期練習中に膝を傷めるというアクシデントに見舞われた。復帰は間近だと言われているが、昨年は怪我でシーズン前半冴えなかったゴードンと、先発、中抑え、抑えと何でもこなせるライアン・マドスンとの両右腕が、しばらくはリッジを助けていかなければなるまい。その他の右腕ではクレイ・コンドリィ、フランシスコ・ロサリオがいるが、ともに防禦率5点台と振るわなかった分、デトロイトからやってきたチャド・ダービンがロングリリーフとしていい働きを見せてくれるだろう。左腕では、J・C・ロメロが、ボストン・レッドソックスから移籍後51試合登板で防禦率1.24と復活。左打者に対して打率.125も見事だったが、右打者も.133に抑え込んだのはさらに素晴らしかった。ただ、ロメロの他の左腕はマイク・ザガースキやファビオ・カストロなどの新人しかいないため、フロリダ・マーリンズに在籍した98年から02年の5年間で271試合でマウンドを努めた経験のあるヴェテラン、ヴィク・ダレンズボーグを春期練習に招いている。
評価:B

先発
コール・ハメルズ B
ブレット・マイアーズ C
ジェイミー・モイアー B
カイル・ヘンドリック C
アダム・イートン C
J・D・ダービン D
チャド・ダービン (デトロイト) D
シェイン・ユーマン (ピッツバーグ) E
トラヴィス・ブラックリィ (新人) E
ジョシュ・アウトマン (招待選手) E
クリス・ベンスン (招待選手) D
ジョー・セイヴァリー (招待選手) E
中抑え
トム・ゴードン C
ライアン・マドスン C
J・C・ロメロ C
クレイ・コンドリィ D
フランシスコ・ロサリオ (新人) E
マイク・ザガースキ (新人) E
ファビオ・カストロ (新人) E
ヴィク・ダレンズボーグ (招待選手) D
抑え
ブラッド・リッジ (ヒューストン) B

捕手
レギュラーが期待されたロッド・バラハスが1年で去ったので、今年はまたカルロス・ルイスとクリス・コストとの併用になる。昨年ティームで一番多い111試合でマスクをかぶったルイスは、打率.259、54打点、6本塁打をマーク。犯した失策は2個と守りは堅く、3割以上の盗塁阻止率を記録した強肩も備えている。コストは48試合の出場だったが、.279、22打点とルイスよりも打撃はいい。また、06年に33歳でMLBに昇格した経験を書いた"The 33-Year-Old Rookie"が先日出版されたばかりである。この二人に迫るのが、強肩巧守と評判の新人ジェイスン・ハラミロだ。ルイス、コストともに右打ちなので、両打ちのハラミロが食い込む余地は十分に残されている。
評価:C

内野手
遊撃手のジミー・ロリンズは、昨年全試合に出場して、打率.296、139得点、94打点、30本塁打、41盗塁をマーク。コロラド・ロッキーズのマット・ホリデイを押さえてMVPに選出された。片や、昨年のMVPライアン・ハワードはシーズン序盤に打撃不振と右太腿の故障とで苦しんだ。しかし、6月に故障者リストから復帰してからは、109試合で106打点、38本塁打と調子を取り戻している。もっとも故障なしでシーズンを全うしていたら、史上初の200三振という新記録を作っていたかもしれない。チェイス・アトリィも7月までは打率.339、82打点、17本塁打でMVP級の働きを示していたが、7月26日の試合で投球を右手に受けて骨折。およそひと月メンバーを離れた。しかし、8月下旬に復帰後も打棒は衰えず、自己ベストの.332に、3年連続の100打点以上をマークして終盤の追い上げに尽力した。一塁ハワード、二塁アトリィ、遊撃ロリンズの3人は強力だが、スコット・ローレンを手放して以来、フィラデルフィアは正三塁手の人材難に苦しんでいる。サンフランシスコ・ジャイアンツから2年契約で迎えたペドロ・フェリスは、攻守ともに穴はあるものの、20本塁打を打てる長打力は魅力。何より、シーズン通して働ける三塁手である点がありがたい。昨年三塁を分け合った右打ちのウェズ・ヘルムズと左打ちのグレッグ・ダブズとの二人は、苦手な守備から解放されて、代打で力を発揮してくれるだろう。ヒューストン・アストロズでは内野外野両方を守っていたエリク・ブラントレットも獲得、さらにピッツバーグ・パイレーツから譲渡予定にされたレイ・オルメドとも契約を結び、内野手の層は厚くなった。
評価:A

外野手
MLB昇格以来最高の成績を収めたアーロン・ロワンドが去り、昨年右翼を守っていたシェイン・ヴィクトリノが、ロワンドに代わって中堅を守る。ロリンズに次ぐ37盗塁、リーグ平均を上回るアウト参加数2.34をマークしているスピードがあるので、新しいポジションでも全く心配はないだろう。ヴィクトリノの後に右翼を任されるのは、MLBデビュー以来10年間ミルウォーキー・ブルワーズでプレイしてきたジェフ・ジェンキンズ。昨年はやや低調だったが、03年から3年続けて86打点、25本塁打以上をマークしたことのある長打者だ。パット・バーレルは、前年とほとんど変わらない打率.256、97打点、30本塁打。MLBの水準をはるかに下回る左翼の守備が不安だが、ハワード、アトリィ、新加入のジェンキンズがいずれも左打者なので、右の長打者バーレルはフィラデルフィアの打線に欠かすことができない。控えには長打力のあるジェイスン・ワースに加えて、ワシントン・ナショナルズでプレイしていたクリス・スネリング、セイントルイス・カーディナルズから放出されたタグチ・ソウを獲得している。昨年AAA級で連続し合い安打記録を作ったブランドン・ワトスンや、04年のドラフト第1巡指名グレッグ・ゴルスンというスピードのある選手が春期練習に招かれている。
評価:C

CF
シェイン・ヴィクトリノ
B
SS
ジミー・ロリンズ
A
2B
チェイス・アトリィ
A
1B
ライアン・ハワード
A
LF
パット・バーレル
B
RF
ジェフ・ジェンキンズ
(ミルウォーキー)
C
3B
ペドロ・フェリス
(サンフランシスコ)
C
C
カルロス・ルイス
D
C
クリス・コスト
D
C
ジェイスン・ハラミロ
(新人)
E
1B/3B
グレッグ・ダブズ
D
1B/3B
ウェズ・ヘルムズ
D
IF
エリク・ブラントレット
(ヒューストン)
D
IF
レイ・オルメド
(トロント)
D
OF
ジェイスン・ワース
D
OF
クリス・スネリング
(ワシントン)
D
OF
タグチ・ソウ
(セイントルイス)
D
OF
グレッグ・ゴルスン
(招待選手)
E
OF
ブランドン・ワトスン
(招待選手)
E

監督
チャーリー・マヌエルは、04年に就任以来、シーズン終盤で力が尽きてペナントを逃すことが多かった。しかし昨年は、ニューヨーク・メッツが勢いの衰えたのに助けられた面はあったものの、8月以降の急激な追い上げでナショナルリーグ東地区優勝を勝ち取っている。ライアン・ハワード、チェイス・アトリィ、ジミー・ロリンズのスター選手たちを中心にした打線は昨年ナショナルリーグ最多の892得点を挙げたが、マヌエルの悩みの種は故障者の多い投手のやりくり。この春期練習でのマヌエルの狙いは、ブレット・マイアーズを再起させること、若手の中からローテーション入り候補をしぼっていくことであるだろう。
評価:B

期待の若手
右腕カルロス・カラスコは、プロ入りから2年間はあまり冴えなかったが、06年にLow A級で26試合に先発12勝6敗、防禦率2.26、159奪三振と急成長を見せてから、注目を集めるようになった。昨年はHigh A級、AA級2階級合計で12勝をマーク。フューチャーズゲームの出場メンバーにも選ばれている。AA級に上がってからは制球に苦しむ場面が多く見られたが、経験を積むことで改善されるはずだ。今年はAA級からAAA級での登板が中心になるだろうが、ヴェテランや故障者の多い先発スタッフをカヴァーするため、今シーズン終盤には昇格のチャンスが巡ってくるかもしれない。