概観
04年に63勝99敗と最悪の状態だったシアトル・マリナーズは、マイク・ハーグローヴ監督の下で05年に69勝93敗、06年に78勝84敗と立ち直りを見せていた。昨年もオールスターゲーム直前までに45勝33敗と好調だったが、ハーグローヴが情熱を失ったとして突如辞任。ジョン・マクラレンがティームを引き継いだ後はやや勢いが衰え、88勝74敗で、ロサンジェルス・エンジェルズから6ゲーム離されてのアメリカンリーグ西地区2位に終わった。このオフシーズンには先発投手を補強してティーム力がさらに向上、01年以来のポストシーズン進出に一歩近づいた。
先発
オフシーズン中にミネソタ・トゥインズの右腕カルロス・シルバ、ボルティモア・オリオールズの左腕エリク・ベダードを獲得して、強力な先発スタッフが形成された。シルバはミネソタ・トゥインズで4年間先発を務めて47勝をマーク。05年には、188回3分の1を投げて与えた四球がわずか9個という、抜群の制球力を持つ。昨年のベダードは、13勝5敗、防禦率3.16、221奪三振。オールスターゲーム以降は6勝1敗、防禦率2.69と好投していたが、故障で9月を全休したのは残念だった。05年に衝撃的なデビューを飾った右腕フェリクス・エルナンデスは、その後の2年間はやや平凡だったかもしれない。しかし、今年4月でまだ22歳。昨年の14勝7敗、防禦率3.92から、さらなる飛躍を遂げる可能性は十分に残されている。92年にMLBにデビュー以来、一度も12勝以上挙げたことがなかった右腕ミゲル・バティスタが、ティーム首位の16勝をマーク。先月37歳になったという年齢面の不安は多少あるものの、先発の層が厚くなっているので、昨年ほどではなくともふたケタ勝ってくれればティームとしては十分に助かる。左腕ジャロッド・ウォシュバーンは06年にシアトルに来てから2年連続で5勝以上の負け越し。10勝は見込める投手であるが、アナハイム・エンジェルズ時代の実績を考えると、15くらい勝ててもおかしくはない。シルバ、ベダードの加入により、昨年ローテーションで投げていたジェフ・ウィーヴァーは放出され、右腕ペク・チャソン、左腕ホレイシオ・ラミレス、ライアン・ファイアアーベンドも、故障者でもでない限り、先発で投げる機会はほとんどなくなるだろう。
評価:B
救援
右腕J・J・パッツは、MLBを代表するクローザーに成長した。68試合登板で6勝1敗40セーヴ、防禦率1.38。セーヴ失敗はわずかに2回という、ほとんど完璧な救援を披露した。パッツの前抑えは、64試合登板で防禦率3.84をマークした右腕ショーン・グリーンに、06年の新人ドラフト第1巡指名右腕ブランドン・モローが務める。先発ローテーションから外されたペクや、昨年は登板機会の減ったマーク・ロウやジョン・ヒューバーは今シーズンに再起を賭けたいが、この3年間、MLBではほとんど働いていない右腕R・A・ディッキィが食い込むのは辛そうだ。ベダードを獲得するために、昨年ティームで最も多い73試合に投げて防禦率2.36と好投した左腕ジョージ・シェリルを手放しているが、7勝を挙げたエリク・オフラハーティが、シェリルに代わるワンポイント救援の一番手として起用されるだろう。その他の左腕投手でメンバー入りの可能性があるのは、昨年MLBデビューのライアン・ローランドスミスに、先発から外れたラミレス、ファイアアーベンドあたりになると思われる。この2年間は故障の影響で不調が続く右腕クリス・レイツマ、01年の西地区優勝時に8勝負けなしの3セーヴ、防御率1.72をマークした左腕アーサー・ローズ、06年に先発、救援の二役でティームに貢献した左腕ジェイク・ウッズが春期練習に招かれている。
評価:C
| 先発 |
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| フェリクス・エルナンデス |
右
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|
B
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| エリク・ベダード |
左
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(ボルティモア) |
B
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| カルロス・シルバ |
右
|
(ミネソタ) |
B
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| ジャロッド・ウォシュバーン |
左
|
|
C
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| ミゲル・バティスタ |
右
|
|
C
|
| ホレイシオ・ラミレス |
左
|
|
D
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| ペク・チャソン |
右
|
|
D
|
| ライアン・ファイアアーベンド |
左
|
|
D
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| 中抑え |
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| ショーン・グリーン |
右
|
|
D
|
| ブランドン・モロー |
右
|
|
D
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| エリク・オフラハーティ |
左
|
|
D
|
| ライアン・ローランドスミス |
左
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(新人) |
D
|
| マーク・ロウ |
右
|
(新人) |
E
|
| ジョン・ヒューバー |
右
|
(新人) |
E
|
| R・A・ディッキィ |
右
|
(復帰) |
D
|
| クリス・レイツマ |
右
|
(招待選手) |
D
|
| アーサー・ローズ |
左
|
(招待選手) |
D
|
| ジェイク・ウッズ |
左
|
(招待選手) |
D
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| 抑え |
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| J・J・パッツ |
右
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|
B
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捕手
昨年がMLB2年目のジョウジマ・ケンジは、打撃では初年度よりも数字を落としたものの、守備では大きな進歩を見せている。失策2、捕逸5はいずれも前年から目を見張る改善ぶりで、ダブルプレイ参加15回、盗塁阻止率.465はゴールドグラヴ級の数字だった。しかし、05年のドラフト第1巡指名ジェフ・クレメントが昨年9月にデビュー。一度もマスクはかぶらなかったが、2本の本塁打はいずれも9回2アウトから放ったもの。勝負強い打撃を活かして指名打者として起用されることもあるだろうが、将来はジョウジマに代わってシアトルの本塁を守るはずである。2年ぶりにMLBに復帰したヴェテランのジェイミー・バーキの出番は少なくなるかもしれない。
評価:C
内野手
05年からシアトルでプレイしている三塁手アドリアン・ベルトレは、04年の打率.334、121打点、48本塁打と比べるとどうしても見劣りしてしまうが、この3年間の平均で91打点以上というのは、それほど悲観されるような数字ではない。シアトル初年度には.255しかなかった打率も2年続けて向上している。むしろ心配なのは、ベルトレと同じ年にマリナーになった一塁のリッチー・セクスンで、こちらは3年続けて成績が低下。昨年の打率はわずか.205にとどまり、63打点、21本塁打は、05年の121打点、39本塁打からほとんど半減している。二塁手ホセ・ロペス、遊撃手ユニエスキ・ベタンコウルトのコンビは、ともにアメリカンリーグの平均を上回る、広い守備範囲を誇り、ダブルプレイ参加が100回以上と、互いに息も合っている。昨年序盤のロペスは、3割近くを打っていたが、6月に実兄を交通事故で失ってから調子を落としてしまった。一方、ベタンコウルトは得点圏打率が.345と勝負強さが備わり、06年から打点を20も増やしている。ウィリー・ブルームクウィストは、登録上では内野手になっているが、昨年もバッテリーを除く全てのポジションをこなした。今年は、やはり内野外野どこでも守れるミゲル・カイロが加わり、控え選手の層はさらに厚くなった。二塁と中堅以外は全て守った経験のあるマイク・モースは、不可解な薬物検査プログラムのせいでずいぶん遠回りさせられたが、春季練習では打撃好調が続いている。ブルームクウィスト、カイロの両ヴェテランとのメンバー入り争いで、どこまで迫ることができるだろうか。
評価:B
外野手
昨年のスズキ・イチロウは、アメリカンリーグ2位の打率.351をマーク。01年の新人賞とMVP同時受賞、04年のシーズン最多安打記録樹立に続いて、3年に一度のヴィンテージプレイヤーらしいところを示した。昨年夏に5年間の契約延長に合意したものの、日本での報道ではティームよりも自分のプレイを優先するような発言がしばしば伝えられるのは、たいへん残念なことだ。ラウル・イバニェスは、2年連続で100打点以上をマークしている、頼りになる打者。左翼の守備範囲は広くはないが、正確な送球で走者をアウトにする。ホセ・ギエンが抜けた後の右翼は複数の選手が争うことになる。打撃ではスズキよりも上と言われながら、故障のために出場機会が減ってしまったジェレミー・リード、昨年のフューチャーズゲームで長打力を披露したウラディミア・バレンティーン、俊足長打のチャールトン・ジマースンの若手の中に、テキサス・レンジャーズでは故障がちで活躍の場がなかったブラッド・ウィルカースンが加わった。常時出場のチャンスがあれば30本塁打の力を持つウィルカースンだが、打率の低い点がレギュラー確保の妨げになるかもしれない。昨年ニューヨーク・ヤンキーズでデビューを果たしたブロンソン・サルディニャは、遊撃、三塁の守備で苦しんだ後、外野に移って、ようやくMLB定着のチャンスをつかんだ選手である。
評価:B
指名打者
モントリオール・エクスポズ時代には巧守巧打の二塁手として活躍したホセ・ビドロは、最近は故障のために守備範囲が狭まってしまった。昨年シアトルにやって来てから指名打者に専念するようになると、3年ぶりに打率3割以上をマーク。今年も2番打者として中軸につなぐ働きを見せてくれるだろう。招待選手として春期練習に参加しているグレッグ・ノートンは、代打で勝負強さを発揮する選手。一塁、三塁、外野を守ることもできる。
評価:B
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CF
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スズキ・イチロウ |
左
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S
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DH
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ホセ・ビドロ |
両
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B
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3B
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アドリアン・ベルトレ |
右
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|
B
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LF
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ラウル・イバニェス |
左
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|
B
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1B
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リッチー・セクスン |
右
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C
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|
C
|
ジョウジマ・ケンジ |
右
|
|
C
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RF
|
ウラディミア・バレンティーン |
右
|
(新人) |
E
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2B
|
ホセ・ロペス |
右
|
|
C
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|
SS
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ユニエスキ・ベタンコウルト |
右
|
|
C
|
|
|
|
|
|
|
|
C
|
ジェフ・クレメント |
左
|
(新人) |
E
|
|
C
|
ジェイミー・バーキ |
右
|
|
D
|
|
IF/OF
|
ウィリー・ブルームクウィスト |
右
|
|
D
|
|
IF/OF
|
ミゲル・カイロ |
右
|
(セイントルイス) |
C
|
|
IF/OF
|
マイク・モース |
右
|
|
D
|
|
IF
|
チェン・ユンチー |
右
|
(新人) |
E
|
|
OF
|
ジェレミー・リード |
左
|
|
D
|
|
OF
|
ブラッド・ウィルカースン |
左
|
(テキサス) |
D
|
|
OF
|
チャールトン・ジマースン |
右
|
(新人) |
E
|
|
OF
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ブロンスン・サルディニャ |
左
|
(招待選手) |
E
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監督
昨年夏にマイク・ハーグローヴが45勝33敗の好成績を残しながら突如辞任。その後を受けたジョン・マクラレンは43勝41敗でシーズンを終えた。現役時代のマクラレンは捕手だったが、MLBでのプレイ経験はなし。引退後はスカウト、マイナーリーグの監督を経て、86年にトロント・ブルージェイズの三塁コーチに就任した。以来21年間もの長い間MLBでコーチの仕事をしてきたのにもかかわらず、代行も含めて監督の職に就いたのは、昨年が初めてのことだった。現在シカゴ・カブズ監督のルー・ピニエラがシンシナティ・レッズの監督だったときにブルペンコーチを務めたのが縁となり、以来ピニエラがシアトル、タムパベイ・デヴィルレイズで采配を揮ったときにも、三塁コーチやベンチコーチとして補佐している。
評価:D
期待の若手
スズキ・イチロウの5年契約が決まり、シアトルの外野に若手が食い込むことはますます厳しくなったが、ウラディミア・バレンティーン、チャールトン・ジマースンのように、40人枠に残ってMLBでのプレイを目指す選手もいる。マイケル・ソーンダーズは、さらにその中に食い込んでいこうという伸び盛りの選手だ。プロ3年目の昨年はHigh A級で108試合に出場し、出塁率.392、91得点、27盗塁をマーク。カナダ出身選手として世界選抜のメンバーに選ばれたフューチャーズゲームでもリードオフマンを務めて、2盗塁、2得点を記録した。もともと投手だったので肩も強く、これで打撃に力が備わってくればMLB昇格のチャンスがさらに近づいてくる。