セイントルイス・カーディナルズ

概観
06年に82年以来24年ぶりの世界一に輝いたセイントルイス・カーディナルズではあったが、83勝78敗の勝率.516は、MLB史上最低でのワールドチャンピオンだった。昨年の78勝84敗というのは、ほんのわずかの違いではあるものの、順位はナショナルリーグ中地区3位に後退。昨年開幕前から不安視されていた先発スタッフが崩れただけでなく、ティーム全体が打撃不振に陥って、得点力もダウン。MLB6地区の中で最も低い勝率でペナントレースが争われた中地区でも、勝ち抜くのは難しかった。長年ティーム統括を務めていたウォルト・ジョケッティも去り、今年のセイントルイスは、いろいろな意味で新しいスタートを迎えることになる。

先発
昨年開幕早々に右肘の故障でメンバーを離れたクリス・カーペンターは、術後の経過は良好と伝えられている。シーズン通して投げてくれれば15勝以上が期待できる投手だが、いつ復帰できるかは今のところ未定で、それまでは右腕アダム・ウェインライトがエースの座を占める。06年世界一のときにはクローザーとしてポストシーズンで大活躍を見せたウェインライトは、先発投手としては初めてのシーズンだったが、ティーム首位の14勝、防禦率3.70をマーク。打たれた本塁打がわずか13本という丁寧な投球を今年も続けることができれば、20勝近い数字も挙げられそうだ。ウェインライトと同様に、MLB9年間で先発経験が全くなかった右腕ブレイデン・ルーパーの12勝も上出来と言っていい。しかし右腕アンソニー・レイエスは昨年も期待を裏切り、開幕10連敗もあって2勝14敗、防禦率6.04。昨年途中にボストン・レッドソックスから来て6勝、防禦率3.96だった右腕ホエル・ピニェイロや、右肩の手術で昨年全休のマット・クレメント、同じく肩の手術から再起を目指す左腕マーク・マルダーが復調すれば、レイエスはとてもローテーションに残ることはできまい。カーペンターの代わりに先発を務めたブラッド・トムプスンや、5月にセイントルイスにやって来てから先発と救援とで好投したトッド・ウェルマイアーの両右腕は、ブルペンに回る。右腕ブレイク・ホークスワースは、昨年初めてのAAA級で4勝13敗、防禦率5.28とさんざんの出来だったが、かつてはウェインライトと並ぶ実力者と評されていたこともある。タムパベイ・デヴィルレイズ時代には将来のエースと期待されていた右腕デュウォン・ブレズルトンが春期練習に招かれているが、果たして制球難から立ち直ることはできているのだろうか。
評価:C

救援
やりくりに苦しんだ先発に対して、ブルペンは強力だった。例年救援失敗の目立つ右腕ジェイスン・イズリングハウゼンは、昨年は4勝無敗、防禦率2.48。34セーヴ機会で失敗は2度と安定していた。06年終盤に傷めた肩の心配はもうないだろう。昨年新加入のラス・スプリンガー、ライアン・フランクリンは、それぞれ76試合で8勝1敗、防禦率2.18、69試合で4勝4敗、防禦率3.04と好投。左腕はランディ・フロレスがこの3年間で185試合でマウンドを務めている。タイラー・ジョンスンは、故障で夏場に休んでいるが、55試合で防禦率4.03は、左のワンポイント救援としては悪い数字ではない。ブラッド・トムプスン、トッド・ウェルマイアーの両右腕は、先発、救援いずれもこなせる投手だ。この他にメンバー入りの可能性があるのは、昨年トミー・ジョン手術でシーズンを棒に振ったが、三振の奪えるジョシュ・キニィ、MLB初年度で34試合に投げたが防禦率は7.44と振るわなかったケルビン・ヒメネスの若手右腕。春期練習に招かれている、左腕ロン・ヴィローン、右腕クリフ・ポリットはいずれも60試合から70試合の救援を務めた経験のあるヴェテラン。左腕ロン・フロレスは、ランディの実弟である。
評価:C

先発
アダム・ウェインライト
B
ホエル・ピニェイロ
C
マット・クレメント
(ボストン)
C
ブレイデン・ルーパー
C
アンソニー・レイエス
D
クリス・カーペンター
B
マーク・マルダー
D
ブレイク・ホークスワース
(新人)
E
デュウォン・ブレズルトン
(招待選手)
D
中抑え
ライアン・フランクリン
C
ラス・スプリンガー
C
トッド・ウェルマイアー
D
ブラッド・トムプスン
D
タイラー・ジョンスン
D
ランディ・フロレス
D
ジョシュ・キニィ
(新人)
E
ロン・ヴィローン
(招待選手)
D
ロン・フロレス
(招待選手)
D
クリフ・ポリット
(招待選手)
D
ジョン・ウォズディン
(招待選手)
D
抑え
ジェイスン・イズリングハウゼン
B

捕手
ヤディエル・モリナと4年間1,550万ドルの内容で契約を結んだ。強力なブロック、俊敏な動作、盗塁阻止率5割を超える強肩で、守備については現役屈指と言われている。やや苦手としていた打撃も06年のポストシーズンでの活躍以来上向きで、昨年は自己ベストの打率.275をマークした。故障が多いため、この3年間で100試合以上を休んでいるが、将来は攻守両面でMLBを代表する捕手になり得る選手だ。今年モリナの控えを務めるのは、カンザスシティ・ロイアルズから来たジェイスン・ラルー。シンシナティ・レッズ時代の01年には盗塁阻止率.609をマークして周囲を驚かせたが、捕球が不得手なために定位置を確保できなかった。打率は低いが長打力ではモリナより上。
評価:B

内野手
打線の中心アルバート・プホルスは、4月に打率.250しか打てず周囲を心配させた。しかし5月以降シーズン終了まで3割を打ち続け、103打点、32本塁打は自身最低の数字ではあったものの、01年のデビュー以来7年連続打率3割、100打点、30本塁打をマーク。一塁守備も、近い将来にはゴールドグラヴに選ばれるだろうというほどに安定してきている。スコット・ローレンとトロイ・グロースという、三塁手同士のトレードはこのオフシーズン最大のニューズのひとつだったろう。巧守強打の三塁手として鳴らしていたローレンだが、3年前の左肩の故障以来打撃が落ち込んでいた。代わりにトロント・ブルージェイズから来たグロースは、本塁打王のタイトルを持つ長打者。守備ではゴールドグラヴの常連だったローレンには及ばないものの、送球ミスによる失策をかなり減らしている。不安を言えば、ローレンと同様に故障が多いことだ。06年のワールドシリーズMVP、デイヴィッド・エクスタインとは契約更新を行なわかった。今年の遊撃手にはおそらくセサル・イストゥリスが起用されるだろう。04年にゴールドグラヴ選出、俊足巧打を披露したが、右肘のトミー・ジョン手術を受けてからは、プレイ機会に恵まれていない。春期練習直前に28歳になるという、まだ若い選手なので、これからまた復調のチャンスはあるはずだ。3年契約で二塁に迎えたアダム・ケネディは、膝の故障のためにシーズンの半分しか出場できなかった。イストゥリスともに体調万全であれば、俊足巧守の二遊間コンビが形成されることになる。もしアーロン・マイルズがいなかったら、故障者続出だったセイントルイスの内野はもっと悲惨なことになっていただろう。昨年は外野手ばかりか、マウンドまでも経験し、マイルズの出番はますます多くなりそうだ。スコット・スピーツィオは、内野外野どこでも守れるうえ、打力があるスウィッチヒッター。昨年デビューで.289を打ったブレンダン・ライアンや、招待選手のダンヘロ・ヒメネスも複数の守備位置をこなせる内野手だ。招待選手といえば、ジョシュ・フェルプスも春期練習に招かれている。今は主に一塁を守っているが、元々は捕手なので、3人目の控えとしての働きも期待されている。
評価:B

外野手
01年以来中堅の位置を守り続けたジム・エドモンズがサンディエゴ・パドレスにトレードされた。正右翼手だったホアン・エンカルナシオンは、昨年8月30日の試合で打球を自分の顔に当てて骨折。今のところ復帰のめどは立っていない。タグチ・ソウも解雇され、今年のセイントルイスの外野は激しい定位置争いが見られることだろう。クリス・ダンカンは、打率が.293から.259と大きく下がったものの、2年連続20本塁打。長打力のある左打者という印象を強く与えた。00年に11勝をマークして、将来は左のエースになれると期待されていたリック・アンキールは、その後は故障続きで引退さえも考えたが、昨年打者として見事に復活した。過去の薬物使用をとがめられて調子を落とした時期もあったが、47試合で打率.285、39打点、11本塁打は見事な成績である。この二人はそれぞれ左翼、中堅のレギュラーで決まりだろう。残る右翼は、昨年途中に昇格して14本塁打を打ったライアン・ルドウィク、177打数ながら打率.333を打って成長ぶりを示したスキップ・シューメイカー、ルール5ドラフトでクリーヴランド・インディアンズから獲得した俊足長打巧守を併せ持つブライアン・バートン、昨年マイナーリーグ2階級合計で31本塁打を打ったジョー・マーザーの中から選ばれることになりそうだ。しかし、春期練習には2人の注目選手も参加している。MVP選出2回の大ヴェテラン、ホアン・ゴンサレスがMLBに復帰すれば、ほとんど4年ぶりのことになるが、02年以降故障続きで体調面での不安が大きい。05年のドラフト第1巡指名のコルビー・ラスムスは、プロ入り当初からエドモンズの後継者と期待されていた。
評価:D

SS
セサル・イストゥリス
(ピッツバーグ)
C
CF
リック・アンキール
D
1B
アルバート・プホルス
S
3B
トロイ・グロース
(トロント)
B
LF
クリス・ダンカン
C
RF
ライアン・ルドウィク
D
C
ヤディエル・モリナ
C
2B
アダム・ケネディ
C
C
ジェイスン・ラルー
(カンザスシティ)
C
C
ブライアン・アンダースン
(招待選手)
E
IF
アーロン・マイルズ
C
IF
ブレンダン・ライアン
(新人)
D
IF/OF
スコット・スピーツィオ
D
IF
ブライアン・バーデン
(新人)
E
1B/C
ジョシュ・フェルプス
(招待選手)
D
IF
ダンヘロ・ヒメネス
(招待選手)
D
OF
スキップ・シューメイカー
D
OF
ホアン・エンカルナシオン
C
OF
ブライアン・バートン
(新人)
E
OF
コルビー・ラスムス
(招待選手)
E
OF
ホアン・ゴンサレス
(招待選手)
C

監督
06年には、スパーキー・アンダースン以来2人目の、両リーグ世界一を成し遂げた監督となったトニー・ラルサは、1年で栄光の座から転落してしまった。投手にも野手にも故障者続出で、主力メンバーが揃わなかったとは言え、不満の多いシーズンであったのには違いない。今年はラルサがMLBの監督として迎える30年目のシーズンになる。通算4,448試合、2,375勝は、いずれも殿堂入りの名監督コニー・マック、ジョン・マグローに続く、史上第3位の数字。ラルサも将来は間違いなく、野球栄誉の殿堂入りを果たすことだろうが、現役引退までには二人の数字にどれほど近づいていることだろう。
評価:A

期待の若手
昨年の低迷で、若手の成長が一層期待される今シーズンのセイントルイスだが、その中でも右腕クレイトン・モーテンセンのMLB昇格はかなり早い時期に訪れそうだ。昨年の新人ドラフトで追加第1巡指名を受けてプロ入りしたモーテンセンは、昨年短期A級、Low A級の2階級合計で16試合に登板、1勝3敗、防禦率2.67、投球回数を上回る68個の三振を奪った。落ちる球を効果的に使ってグラウンダーを打たせる投球を得意とする右腕投手だ。今年の春期練習にも招かれており、ことによると開幕メンバーに名前を連ねることもあるかもしれない。