トロント・ブルージェイズ

概観
トロント・ブルージェイズは、06年にはボストン・レッドソックスを抜いて、 年ぶりにアメリカリーグ東地区2位に浮上した。昨年はポストシーズン進出の可能性も大いにあったのだが、開幕早々に抑えのB・J・ライアンがメンバーを離れたのを始め投手、野手ともに、主力選手に怪我人が続出。83勝79敗で辛くも勝率5割以上は維持できたものの、順位は再び3位に下がってしまった。とは言うものの、故障者に代わって起用された若手が急成長を遂げているのは見逃せない。選手層の厚くなった今季こそ、ニューヨーク・ヤンキーズ、ボストンの壁を打ち破るチャンスの年だと言える。

先発
トロントのエースは何と言っても右腕ロイ・ハラデイだ。5月に2試合合計で17点を失った直後に急性盲腸炎で入院するというアクシデントには見舞われたものの、復帰直後の5月31日に7回無失点の投球で通算100勝を達成。シーズン終盤には、9回を投げ抜いたのに延長に入ってしまった試合、完投しながら敗れた試合がそれぞれ2度と、不運なところもあって勝ち星が伸びなかったが、16勝7敗、防禦率3.71でシーズンを終えた。今年がトロントで3年目のA・J・バーネットは、過去2年はいずれも怪我のためにシーズンを全うできていない。MLB9年間で30試合以上に先発できたのは05年の一度だけ。フルシーズン投げれば15勝は期待できる投手なので、今季こそは体調万全でシーズンに臨んでもらいたいところだ。バーネットの他にも故障者が続出した先発スタッフだったが、5月にMLBに呼ばれた右腕ダスティン・マガワンはそれをよくカヴァーした。過去2年間は救援登板の多かったマガワンは、今季は登板した27試合全てが先発。6月24日のコロラド・ロッキーズとの試合では8回まで無安打無得点の投球で、MLB初完投初完封勝利を飾るなど、シーズン通算で12勝10敗、防禦率4.08の成績を収めた。開幕当初にはブルペンにいた右腕ショーン・マーカムは、5月から先発に回ると以後11勝4敗、防禦率3.91。さらに、右腕ジェシー・リチュは、5月15日にMLBデビューをした当初は、4試合の先発で1勝2敗、防禦率6.62と冴えなかったが、オールスターゲーム直前に再昇格してからは、6勝7敗、防禦率3.29と見事な立ち直りを見せた。今年もこの5人を中心にローテーションが組まれることだろう。そうすると右投手ばかり5人も並ぶことになるので、左腕グスタボ・チャシンにも先発で投げてもらいたいところだが、05年に13勝をマークしてから2年続けて故障のために不本意なシーズンが続いている。その他の左腕は04年の新人ドラフト第1巡指名デイヴィッド・パーシィは、マイナーリーグでは目立った活躍ができていないが、昨年のアリゾナ秋季リーグでの活躍が自信につながれば、今年こそMLBのチャンスとなるだろう。
評価:B

救援
06年に38セーヴ、防禦率1.37のクローザー、B・J・ライアンは左肘を傷めて、シーズンの大部分を棒に振ってしまった。ライアンの穴を埋めたのは、ジェレミー・アッカードとケイシィ・ジャンセンとの両右腕だった。主に抑え役を任されたアッカードは、4勝4敗30セーヴ、防禦率2.14をマークし、サンフランシスコ・ジャイアンツ在籍時には、将来のクローザーと期待されていた素質を開花させた。06年には先発として起用されていたジェンセンは、アッカードの前抑えに抜擢され、70試合を投げて防禦率2.35をマーク。ブルペンには欠かすことのできない投手になった。左腕スコット・ダウンズはティーム最多の81試合登板で防禦率2.17と、見事なワンポイント救援を披露。今年ここにライアンが戻ってくれば、試合終盤の3イニングはほとんど完璧に抑え込むことができるはずである。この4人以外にも、4年連続51試合以上でマウンドを務めている右腕ジェイスン・フレイザー、長いイニングを投げられる左腕ブライアン・タレト、昨年MLBデビューで防禦率2.98の数字を残した右腕ブライアン・ウルフ、肘の故障から復帰を目指している右腕ブランドン・リーグが控えており、トロントのブルペンはMLB有数の強力なスタッフを揃えている。しかし、先発、救援いずれもこなせるジョー・ケネディがオフシーズン中に急死したのは残念なニューズだった。
評価:B

先発
ロイ・ハラデイ
A
A・J・バーネット
B
ダスティン・マガワン
C
ショーン・マーカム
C
ジェシー・リチュ
D
グスタボ・チャシン
D
デイヴィッド・パーシィ
(新人)
E
中抑え
ジェレミー・アッカード
C
ケイシィ・ジャンセン
C
スコット・ダウンズ
C
ジェイスン・フレイザー
D
ブライアン・タレト
D
ブライアン・ウルフ
(新人)
E
ブランドン・リーグ
D
ダビス・ロメロ
(新人)
E
ジョン・パリッシュ
(招待選手)
D
ランス・カーター
(招待選手)
D
ショーン・キャムプ
(招待選手)
D
マイク・ゴズリング
(招待選手)
D
抑え
B・J・ライアン
B

捕手
ここ4年間、トロントの本塁はヴェテランのグレッグ・ゾーンが守っている。動きは衰えてきたと言っても、リードには定評があるし、両打ちの勝負強い打撃も披露する。今年はフィラデルフィア・フィリーズから放出されたロッド・バラハスを獲得して層が厚くなった。昨年は故障がちで振るわなかったが、テキサス・レンジャーズ時代には打てる捕手として活躍した。昨年MLBデビューのカーティス・シグペンは22試合にマスクをかぶって無失策。組織内No.1捕手の実力を今年こそ発揮するだろうか。しかし春期練習には、昨年ゾーン欠場中に16試合に出たサル・ファサノ、昨年の新人ドラフト第1巡指名のJ・P・アレンシビアやおととしのブライアン・ジェロロマンも招かれており、定位置争いは激しいものになりそうだ。
評価:C

内野手
内野の左側、三遊間がセイントルイス・カーディナルズで世界一を果たしたコンビになった。トロイ・グロースとの交換トレードでやって来た三塁手スコット・ローレンは、左肩の故障で不振が続いているものの、体調万全ならばオールスター級の強打巧守を披露してくれるはずである。06年のワールドシリーズでMVPに輝いた遊撃手のデイヴィッド・エクスタインも怪我の多い選手ではあるが、常に全力のプレイを心掛ける姿勢にはファンが多い。出塁率が高いので、1番か2番で起用するのがベストだろう。内野の右側、一塁ライル・オーヴァベイ、二塁アーロン・ヒルは昨年と変わらない。ヒルの打率は06年と同じ.291だったが、打点が50から78、本塁打が6本から17本へと急増。二塁を守っても、広い守備範囲と堅い守りを披露している。オーヴァベイは打撃不振と故障とで、この4年間では最低の打率.240、44打点、10本塁打しか打てなかった。勝負強い中距離打者として打棒復活が期待されている。トロントの内野は控えも豊富に揃っている。ジョン・マクドナルドは、不振のヴェテラン、ロイス・クレイトンに代わって102試合で遊撃手を務めた。二塁、三塁も無難にこなす有能ぶりを評価されて、昨年9月には早くも2年契約を結んでいる。新加入のマルコ・スクタロは、オークランド・アスレティックスでは5人目の内野手とも言える働きを示していた。マクドナルドとともに、故障者が出たときには、レギュラーにも匹敵する働きを見せてくれるだろう。05年には正遊撃手として期待されていたラス・アダムズは、攻守ともに精彩を欠き、MLB定着も危うくなっている。06年にはクリーヴランド・インディアンズの正二塁手の座をつかみかけたジョー・イングレットも、昨年はわずか2試合にしか出られなかった。春期練習に招待されたエクトル・ルナは、内野外野をこなす俊足の選手。
評価:B

外野手
昨年のヴァーノン・ウェルズは、打率.245、80打点、16本塁打と大いに不満の残るシーズンだった。中堅の守りでは、相変わらず守備範囲の広いところを披露したが、3年連続のゴールドグラヴ賞選出はならなかった。右翼手のアレクス・リオスは、ほぼフル出場を果たして、打率.297、85打点、24本塁打、17盗塁をマーク。守りでは送球アウト11回と強肩ぶりも見せつけて、三拍子揃った好素材は完全に花開いたと言っていいだろう。リード・ジョンスンは、故障でシーズンの半分しか出場できず、打率.236は5年間で最低の数字だった。高い出塁率が期待できるシャノン・ステュワートが春期練習に招かれており、今年のトロントの左翼は、この二人の争いになるかもしれない。先日40歳になったばかりのマット・ステアーズは、左打者として最も多い21本塁打を放った。昨年はライル・オーヴァベイの故障欠場中には一塁も守っている。組織内屈指の素材と評されてきたアダム・リンドも11本塁打を打ったが、左投手から2割も打てずに苦しんだ。
評価:B

指名打者
06年に打率.270、114打点、39本塁打を打って見事なカムバックを果たしたフランク・トーマスは、6月28日に通算500号本塁打をマーク。95打点、26本塁打と数字はやや落ちたものの、シーズン通算では21世紀に入ってから最も多い155試合に出場しており、数年来の下半身の故障はどうやら心配なさそうだ。だが万が一トーマスが休むときには、長打力のある左打ちマット・ステアーズが指名打者を務める。招待選手のシャノン・ステュワートがMLBに復帰すれば、ステアーズと同じく、外野と指名打者との兼務になる。
評価:D

LF
リード・ジョンスン
C
SS
デイヴィッド・エクスタイン
(セイントルイス)
B
CF
ヴァーノン・ウェルズ
B
DH
フランク・トーマス
B
3B
スコット・ローレン
(セイントルイス)
B
RF
アレクス・リオス
B
1B
ライル・オーヴァベイ
C
2B
アーロン・ヒル
C
C
グレッグ・ゾーン
D
C
ロッド・バラハス
(フィラデルフィア)
D
C
カーティス・シグペン
(新人)
E
C
サル・ファサノ
(招待選手)
D
IF
ジョン・マクドナルド
C
IF
マルコ・スクタロ
(オークランド)
C
IF
ラス・アダムズ
D
IF
ジョー・イングレット
(クリーヴランド)
E
IF
エクトル・ルナ
(招待選手)
D
OF
マット・ステアーズ
C
OF
アダム・リンド
D
OF
シャノン・ステュワート
(招待選手)
C

監督
いさかいのあった選手たちがティームを離れて、采配に専念できるかと思われたジョン・ギボンズは、昨年は相次ぐ故障者のために、なかなかベストメンバーが組めずに苦しめられた。それでも、若手投手を次々と抜擢して、ローテーションとブルペンとを再編成し、アメリカンリーグ第2位のティーム防禦率4.00をマークさせたのは見事だった。残された課題は得点力不足の打線をどのように立て直すかということで、この点をクリアできるか否かによって、ギボンズの評価は大きく変わってくるだろう。
評価:C

期待の若手
高校球界屈指の強打者として06年に第1巡指名を受けてプロ入りしたトラヴィス・スナイダーは、早くも組織内No.1の評価を勝ち取った。昨年Low A級で118試合に出場し、リーグ最年少の19歳ながら、93打点でタイトルを獲得、打率.313、16本塁打をマークした。7月7日には全塁打も記録している。245パウンドという巨体ではあるが、高校時代にはランニングバックとしても活躍していたので、意外にスピードがある。しかし、トロントの外野手には守備の巧い選手が多いので、将来MLBに呼ばれたときには、指名打者としてプレイすることになるかもしれない。