ワシントン・ナショナルズ

概観
ワシントン・ナショナルズは、昨年4年ぶりにナショナルリーグ東地区4位に浮上したものの、73勝89敗は前年と大差のない成績だった。先発スタッフが明らかな人材不足で、招待選手からMLB復帰を果たしたヴェテランと、経験の乏しい若手とで何とかシーズンをまかなってきた。今年もその状況にはあまり変わりはないが、経験を積んだ若手の成長を待つという楽しみはある。ナショナルズのもう一つの楽しみは、今年3月30日の新本拠地球場ナショナルズ・パークの開場だ。しかし、最近CS放送のドキュメンタリー番組で建設作業の様子を見たが、左翼後方の桜並木がなくなったように見えたのが気になっている。

先発
昨年のワシントンで、ふたケタ勝利をマークした選手は一人もいなかった。05年に9勝、防御率3.13と好投した右腕ジョン・パタースンは、故障のために2年続けてシーズンの大半を欠場。今季はフルシーズン務め上げて、自身初のふたケタ勝利を目指す。パタースンの他にも怪我人が多く、右腕ジェイスン・バーグマンは2度の故障者リスト入りが影響して、投球が安定せず。右腕ショーン・ヒルは開幕から8試合で3勝3敗、防禦率2.70と好投していながら、肩を傷めて2ヶ月以上も休まなければならなかった。昨年最も多く先発を務めたのは、昨年がMLB初年度だった左腕マット・チコだった。31試合の先発で、ティームで唯一規定投球回数を超えたが、7勝9敗、防禦率4.63と成績は振るわなかった。チコと同じく、昨年がMLBデビューだった左腕ジョン・ラナンが、8月に5試合の先発で2勝2敗、防禦率3.56をマークしたのは目を引いた。その他の若手でローテーション入りの可能性があるのは、ニューヨーク・ヤンキーズから獲得したタイラー・クリッパード。昨年MLBデビューを果たしたが、制球に苦しみ、3勝を挙げたものの防禦率は6.33だった。昨年のドラフト第1巡指名左腕ロス・デトゥイラーは、すでに9月7日の試合でわずか1イニングながらMLBのマウンドを踏んでいる。招待選手からMLB復帰を果たした右腕ティム・レディングは、3勝6敗と負け越しはしたが、防禦率3.64の安定した投球が認められて再契約となっている。02年に15勝を挙げたことのあるオダリス・ペレス、06年に新人ながら20試合で先発を務めたマイケル・オコナー、3年ぶりのMLBでのマウンドでワシントンの先発スタッフに加わり5勝をマークしたマイク・バシクの左腕投手3人も、レディングのようにMLB復帰のチャンスを活かすことができるだろうか。
評価:D

救援
このところトレードの噂の絶えない右腕チャド・コーデロがクローザー。05年の47セーヴ、防禦率1.82は見事な数字だったが、ここ2年続けて防禦率は3点台。長打を打たれやすい点は改善されなければなるまい。とは言うものの、ブルペン全体で防禦率3.81と、救援投手はかなりいい働きをしている。ワールド・ベースボール・クラシックのために06年を棒に振った右腕ルイス・アヤラが6月に復帰して、防禦率3.19をマークしている。アヤラ欠場中に前抑えに定着したジョン・ローチは、2年連続で85試合以上にマウンドを務め、ともに防禦率3点台、ローチに次ぐ85試合で起用された右腕サウル・リベラも2年続けて防禦率3点台と好投した。06年にはほとんど登板機会のなかった右腕ヘスス・コロメもワシントンに来て復活。昨年がMLB2年目だった右腕クリス・シュローダーも37試合で防禦率3.18の数字を残している。右腕投手の人材には事欠かないのだが、現時点では救援専門の左腕投手が40人枠に登録されていない。そこで、春期練習には11人もの左腕投手が招かれている。その中の一人、レイ・キングは、春期練習に招かれてMLB復帰を果たしたが、9月にミルウォーキー・ブルワーズに移籍している。
評価:B

先発
ジョン・パタースン
C
マット・チコ
D
ショーン・ヒル
D
ジェイスン・バーグマン
D
ティム・レディング
D
ジョン・ラナン
(新人)
D
タイラー・クリッパード
(ヤンキーズ)
D
ロス・ディトウィラー
(新人)
E
オダリス・ペレス
(招待選手)
D
マイケル・オコナー
(招待選手)
D
マイク・バシク
(招待選手)
D
コリン・ベイルスター
(招待選手)
E
中抑え
ジョン・ローチ
C
ルイス・アヤラ
B
サウル・リベラ
D
ヘスス・コロメ
D
クリス・シュローダー
D
ライアン・ワグナー
D
レイ・キング
(招待選手)
C
抑え
チャド・コーデロ
B

捕手
堅守のブライアン・シュナイダーがニューヨーク・メッツに去ったが、入れ替わるようにしてポール・ロドゥカがやって来た。ところが、1月下旬に左膝の手術を受けたために、シーズン前半の出場が不可能になってしまった。急遽、オールスターゲーム出場経験もある両打ちのジョニー・エストラダと契約。打率3割、70打点を2度マークしている好打者だが、守備面では穴が目立つ。また、昨年在籍したミルウォーキー・ブルワーズでは、試合中に監督と口論になるなど、何かとトラブルの多い選手でもある。昨年がMLBデビューのヘスス・フロレスは、79試合に出場して打率.244。攻守ともに課題は多いが、将来の正捕手として大いに期待されている。
評価:C

内野手
招待選手からMLB復帰を果たしたドミトリ・ヤングは、打率.320、74打点、13本塁打を打って、カムバック賞に選ばれた。確実な打撃が衰えていないところは証明したが、守備の方は期待できない。ヤングの復活によって、06年シーズン終盤に足首を骨折、昨年は全休だったニック・ジョンスンの立場が難しいものになっている。高い出塁率が期待できる中距離打者だが、守備はヤングよりも少しうまいくらい。いずれも一塁以外に守る場所のない選手なので、定位置を得られなかった方はトレードされる可能性もありそうだ。アルフォンソ・ソリアノ移籍後のティームを支えるはずだったライアン・ジマーマンは、162試合全てに3番打者として先発して、打率.266、99得点、91打点、24本塁打。ナショナルリーグ新人賞の得票第2位だった06年に比べるとやや打棒が振るわなかった。しかし三塁守備は安定していて、近い将来にはゴールドグラヴに選ばれることだろう。やはりミスター・ナショナルはジマーマンをおいて他には考えられない。06年は故障でシーズン全休だったクリスティアン・グスマンは、昨年開幕試合で遊撃手を務めたが、いきなり左太腿裏を傷めて故障者リスト入り。5月に復帰後は.329の高打率をマークしていたが、6月下旬に今度は左親指を傷めたため、シーズンの残りはほとんどプレイできなかった。グスマン欠場時には開幕試合でグスマンと二遊間コンビを組んだフェリペ・ロペスが遊撃手のポジションを引き継いだ。ティーム首位の24盗塁をマークした脚力は捨てがたいが、守備の方では20失策と不安が多い。ロペスが遊撃手に回った後の二塁には、ロニー・ベリアードが入って打率.290をマーク。広い守備範囲と堅い守備を披露したが、グスマンが復帰したときにはロペスが二塁に戻ることになり、ここでも選手があふれてしまう。控え内野手には、昨年フロリダ・マーリンズでプレイしていたアーロン・ブーンと契約。2年前に引退を表明していたアーロンの実兄ブレット・ブーンも春期練習に招かれている。昨年MLBでのデビューを果たしたコリー・カストは、持ち前の長打力を発揮することができず、打率.130と苦しんだ。ティームは、ヤング、ジョンスンと並ぶ一塁を一塁を争わせることはせず、今年は外野で起用することになりそうだ。
評価:C

外野手
オフシーズン中に積極的に選手を迎え入れたため、外野手はやや多すぎるくらいの人数を抱えている。しかし実績で考えると、左翼ウィリ・モ・ペニャ、中堅ラスティングス・ミリッジ、右翼オースティン・カーンズという先発メンバーで落ち着くだろう。例年故障に悩まされるカーンズは、昨年ほぼフル出場を果たしたものの、打率.266、74打点、16本塁打は前年から後退した。カーンズとはシンシナティ・レッズ時代に同僚だったペニャは、移籍後37試合で8本塁打と長打力を発揮。ライアン・チャーチとの交換でやって来た三拍子揃ったミリッジが、初のフルシーズンで豊かな素質を開花させるかどうか注目される。昨年中盤からアトランタ・ブレイヴズのリードオフマンを務めていたウィリー・ハリスは、フェリペ・ロペスの他にはあまり走れる選手のいないナショナルズにとっては、重要な選手になるだろう。ハリスは外野の他に二塁も守るが、サンディエゴ・パドレスから来たロブ・マコウィアクは内野外野ほとんどの守備位置をこなせる。06年にはデヴィルレイズ組織内でも上位に入る好素材と言われていたイライジャ・デュークスは、52試合で10本塁打を打ったものの、打率は1割台、44三振と安定感を欠いた。ライアン・ランガーハンスは守備力の高い外野手という定評はあるが、打撃の方は昨年3ティーム合計で打率が2割にも満たず、MLB定着には打力向上が必須条件になる。06年に33試合と少ない試合数ながらも.356を打って定位置をつかんだかに見えたアレクス・エスコバルは、右肩の故障で昨年全休。今年9月には30歳になるエスコバルにとっては、この春期練習が最後のチャンスになるかもしれない。
評価:D

SS
フェリペ・ロペス
C
2B
ロニー・ベリアード
C
3B
ライアン・ジマーマン
B
1B
ドミトリ・ヤング
C
RF
オースティン・カーンズ
C
LF
ウィリ・モ・ペニャ
D
CF
ラスティングス・ミリッジ
(メッツ)
D
C
ジョニー・エストラダ
(ミルウォーキー)
C
C
ポール・ロドゥカ
(メッツ)
C
C
ヘスス・フロレス
D
C
ウムベルト・コタ
(招待選手)
D
C
チャド・モラー
(招待選手)
D
1B
ニック・ジョンスン
C
SS
クリスティアン・グスマン
C
1B/3B
アーロン・ブーン
(フロリダ)
D
IF/OF
ロブ・マコウィアク
(サンディエゴ)
D
1B/3B
コリー・カスト
(新人)
D
2B
ブレット・ブーン
(招待選手)
D
IF
ウィリアム・ベルゴヤ
(招待選手)
E
IF
ピート・オーア
(招待選手)
D
IF
アントニオ・ペレス
(招待選手)
D
OF
ウィリー・ハリス
(アトランタ)
D
OF
ライアン・ランガーハンス
D
OF
イライジャ・デュークス
(タムパベイ)
D
OF
アレクス・エスコバル
(招待選手)
D

監督
71歳のフランク・ロビンスンの後を引き継いだマニー・アクタは、37歳の若さながらもマイナーリーグでの長い指導経験を活かして、峠を越したヴェテランと、これからが成長段階という若手とで形成されるティームをうまくまとめあげたと言っていいだろう。とりわけ、故障者の続出した先発スタッフのやりくりには苦労したものの、救援投手の起用では、同じ投手を4試合連続では投げさせないという方針を頑なに守り、リーグ有数のブルペンを作り上げた。今年の春期練習には70人以上が参加することになっているが、アクタとしては何としてでもその中から、ライアン・ジマーマンのようなスターを見いだしたいところだろう。
評価:D

期待の若手
クローザーのチャド・コーデロは、03年にドラフト第1巡指名を受けてプロ入り、その年にはMLBでのデビューを果たした。昨年の第1巡指名左腕ロス・ディトゥイラーも、9月7日のたった1試合だけだったが、MLBのマウンドを踏んでいる。95マイル前後の速球、変化の大きいカーヴボール、70マイル台を計時するチェンジアップと、MLBの投手が必要とする球種はすでに揃えているが、あとディトウィラーに必要なのはプロの投手としての経験だろう。しかし春の練習試合でいいところを見せれば、開幕からメンバー入り、それもローテーションに加えられる可能性もある逸材である。