08年度の概要
2007年のアリゾナ・ダイアモンドバックスは、3年連続の負け越しから立ち直り、02年以来となるナショナルリーグ西地区優勝を遂げた。今季も開幕してすぐ8連勝を記録するなど、4月中にMLB一番乗りで20勝に到達していた。しかし、アリゾナが好調だったのは最初のうちだけ。5月13日から4連勝をマークしたのを最後に3連勝以上ができなくなり、とうとう47勝48敗の勝率5割未満でシーズンを折り返すことになってしまった。9月5日からのロサンジェルス・ダジャーズとの3試合シリーズに全敗して首位の座を明け渡すと、そのまま浮かび上がることができないまま、82勝80敗の2位でシーズンを終えている。
投手
右腕ブランドン・ウェブが、シーズン開幕から好投を披露した。開幕試合で6回2失点の投球で勝ち投手になってから、5月15日まで負けなしの9連勝。連勝が途切れた後、1カ月で4敗を喫したこともあったが、6月からまた勝ち星を伸ばし、9月12日には自身初の20勝を達成。通算では22勝7敗、防禦率3.30、183奪三振の成績を収めた。2006年に続いて自身2度目のサイ・ヤング賞受賞の可能性もあったものの、サンフランシスコ・ジャイアンツのティム・リンスカムに譲った。一方、サイ・ヤング賞5度の左腕ランディ・ジョンスンは、昨年傷めた腰の影響で開幕からやや出遅れたものの、カーヴボールを交える投球で再起を果たした。4月25日から4連勝、6月3日から6連敗、その後オールスターゲームをはさんで5連勝と、出入りの激しい一年ではあったが、2年ぶりに規定投球回数を上回って、11勝10敗、防禦率3.91をマーク。通算300勝まであと5勝に迫っている。
オークランド・アスレティックスから獲得した右腕ダン・ヘイレンは、数字の上では期待通りの活躍を見せた。5月には1勝しか挙げられなかったり、夏場には打ち込まれたりという場面も見受けられたが、シーズンを通してみれば防禦率3.33で、ウェブに匹敵する安定感を披露した。また、シーズン16勝、206奪三振は、いずれも自己ベストの数字だった。春期練習中にがんが見つかった左腕ダグ・デイヴィスは、開幕から2試合先発を務めて手術を受けた。5月23日の復帰後初登板で先発を務め、7回1失点の投球で勝利投手になったのは見事だったが、以後はなかなか勝ち星に恵まれず、6勝8敗、防禦率4.32の成績に終わっている。4月に4勝負けなし、防禦率3.48と、開幕当初はローテーションの一角として活躍していた右腕マイカ・オウィングズは、5月、6月と次第に調子を落として、7月にはマイナーリーグに送られた。しかし、4月30日の試合で代打に起用されて同点本塁打を打つなど、得意の打撃では.288を打っている。
6月にオウィングズが先発から外されると、昨年10試合の先発経験がある右腕ユスメイロ・ペティトがローテーションに加えられた。8月には4試合に先発して2勝2敗、防禦率3.13と悪くない数字を残していたが、9月に入って2試合連続で5失点を喫すると、やはりブルペンに戻されてしまった。06年のドラフト全体第11位指名の右腕マックス・シャーザーがMLBにデビューしたのは、4月29日のことだった。救援で4回3分の1を投げ、7個の三振を奪って注目された。一時マイナーリーグに戻されていたが、8月下旬に再昇格。9月に4試合先発して、勝ち星なしの2敗だったが、投球回数を上回る三振を奪える投手として、今後の成長が期待される。昨年8勝のエドガル・ゴンザレスは、ジョンスン、デイヴィスの欠場していた4月には先発を務めていたが、6点台の防禦率でブルペンに回されたうえに、右肘も傷めて、シーズン後半はメンバーを離れた。
昨年のセーヴ王ホセ・バルベルデをヒューストン・アストロズに放出したため、右腕ブランドン・リオンが3年ぶりにクローザーに起用された。3年前には肩を傷めてシーズンの大半を欠場したリオンは、今季2度目の救援で逆転さよなら本塁打を打たれるなど、先行き不安を予感させた。果たして、6月に防禦率4.91と打ち込まれ始めると、7月、8月と次第に投球内容が悪くなり、ついに抑え役から外された。リオンを引き継いだのは、バルベルデとの交換でやって来た右腕チャド・クウォールズ。ヒューストン・アストロズでは、05年からの3年間平均77試合でマウンドを務めているクウォールズは、シーズン前半はやや打ち込まれていたものの、オールスターゲーム後あたりから調子を取り戻し、今年も77試合登板で防禦率2.81の数字を残した。クローザーとしては、9月は13試合無失点の投球で2勝無敗7セーヴをマークしている。ワシントン・ナショナルズでクローザーを務めていた右腕ジョン・ローチを7月22日に獲得。これでブルペンが強化されると思われたが、8月以降は全くの期待はずれの投球で、移籍後26試合で0勝6敗、防禦率6.56の成績に終わっている。
ティーム内ではクウォールズに次ぐ72試合に登板した右腕トニー・ペニャは、前年の防禦率3.27から今年は4.33と、1点以上も数字を落とした。右腕ホアン・クルスは、4勝1敗、防禦率2.61と、アリゾナに来てから3年続けて数字を向上させているが、故障に弱いのが玉に瑕で、今年は7月に腹斜筋を傷めて1カ月休んでいる。MLB2年目のビリー・バックナー、ハイレン・ペゲロ、今年がデビューの年になったレオ・ロサレスもマウンドに送られているが、シーズン通して定着することはできなかった。
アリゾナの左腕救援はダグ・スレイテン1人だけ。しかも、7月には右膝を傷めて故障者リスト入りしたために、ブルペンに左腕投手が一人もいないという状態になった。8月にサンディエゴ・パドレスのウィルフレド・レデスマを獲得したが、マウンドに立ったのはわずかに3試合だった。
野手
昨年定位置を手にした若手の飛躍が期待されたが、いずれの選手もまだ成長途上の段階でとどまっている。ティーム首位の97打点、28本塁打を打った2年目のマーク・レノルズは、打率がわずか.239しかないうえに、MLB史上初めてとなるシーズン200三振を喫してしまった。三塁守備でも34失策も犯しており、レノルズを先発で起用するのは、痛し痒しと言ったところだろう。ティーム最多の160試合に出場したクリス・ヤングは、新人賞得票第3位だった前年の32本塁打、27盗塁から、今年は22本塁打、14盗塁と数字を落とした。もともと出塁率の高い選手ではなかったが、今年も出塁率3割がやっとというありさまで、オールスターゲーム直前にリードオフマンから外されている。ヤングに代わってリードオフマンに起用されたスティーヴン・ドルーは、前年の打率.238から.291と打率が急上昇。21本塁打と長打力も発揮したが、このまま1番遊撃手としてプレイを続けるには、.333と低い出塁率を向上させなければならないだろう。コナー・ジャクスンも、4月には打率.348、25打点。5本塁打と大当たりしていた。ジャクスンは打率こそ下がらなかったものの、打点、本塁打の伸びが今ひとつで、打点がひとケタだった月が2度、7月27日の試合で今季12号本塁打を打ったのが最後になってしまった。規定打席に達した選手の中では唯一打率3割をマークしたとは言え、75打点、12本塁打は、打線の中軸を任せるのにはかなり不満の残る数字であろう。
05年全体第1位指名のジャスティン・アプトンは、昨年途中にMLBデビューを果たし、ポストシーズンでの試合も経験した。今季は開幕から8番右翼手として起用され、4月には打率.340、15打点、5本塁打と当たっていたが、5月に入ると成績が急激に下がった。オールスターゲーム前に腹斜筋を傷めて、2カ月近くも故障者リスト入りし、シーズン通算では.250、42打点、15本塁打と冴えない数字に終わっている。アプトン欠場時には、ミネソタ・トゥインズから来たアレクス・ロメロが起用されることもあったが、攻守ともにレギュラークラスとは言えず、アダム・ダンの加入とともに、控えに回った。「ウェブの代打」ことジェフ・サラザーは、もっぱら外野守備要員として90試合に出場した。内野ならどこでもこなせるオージー・オヘダは、MLB昇格後初めて100試合以上に出場。ヒューストンでは、俊足巧打の内外野手として活躍していたクリス・バーキは、バッテリーと中堅とを除く、6つのポジションで先発出場している。
ティーム創設以来毎シーズンを2人以上の捕手でまかなってきたアリゾナだが、来年はクリス・スナイダーが正捕手の座を手にしそうに見える。自身最多タイの115試合に出場、打率は.233と低かったが、64打点、16本塁打はベストの記録だった。守備での動きにも進歩が見られる。ミゲル・モンテロは、春期練習中の負傷で開幕から出遅れてしまったが、昨年は214打数で10本塁打という長打力を秘めている。また、左打ちだということもあって、右打ちのスナイダーの控えとして来年も起用されるだろう。モンテロの故障で開幕メンバーに登録されたロビー・ハモックは、膝に故障があるのでレギュラー確保は難しい。
若いティームだけに、ヴェテランの故障欠場は大きな痛手になった。昨年.286、103得点、83打点、21本塁打、50盗塁で打線の中心となったエリク・バーンズは、開幕から打撃が不調。5月には右、6月には左と、相次いで太腿裏を傷めたのが思いの外に重傷になって、以後のシーズンを全休しなければならなくなった。さらに、打率3割と好調に打っていたゴールドグラヴ二塁手オーランド・ハドスンも試合中に手首を負傷して、終盤の50試合以上を欠場した。05年、06年と2年連続で20本以上の本塁打を放っているチャド・トレイシーは、昨年来の故障のために開幕時には故障者リスト入りしていた。メンバーに戻ってきたのが5月下旬のことで、守備位置が重なるジャクスンと一塁を分け合いながら試合に出場していたが、シーズン後半は外野手としてのプレイ経験が豊富ではないジャクスンが左翼に回り、トレイシーが定着した。とは言うものの打撃復調はまだ先の話で、9月には本塁打を1本も打てないなど、シーズン成績は打率.267、39打点、8本塁打だった。
8月にシンシナティ・レッズから強打のアダム・ダンを獲得して得点力向上を狙ったが、期待されたほどの効果は上がらなかった。ダンは2ティーム合計で、5年連続の40本塁打、5年間で4度目の100打点をマークしているものの、.236と相変わらずの低打率で、長打力があるわりに、相手投手に与える重圧はあまり高くなかったのではないだろうか。ハドスンの代役には、06年にワールドシリーズMVPに選ばれたデイヴィッド・エクスタインを迎えたが、守備での貢献度は高かったものの、18試合で打率.219では、劣勢を跳ね返す力にはなれなかった。今年はサンディエゴと契約していたトニー・クラークを、オールスターゲーム直後に呼び戻しているが、打率.206しか打てず、やはり得点力アップの助けにはなれなかった。
MLBにようこそ
オフシーズンのダン・ヘイレン獲得に始まり、シーズン後半にはジョン・ローチ、アダム・ダンをトレードで迎え入れたために、トッププロスペクトがごっそりと抜けてしまった。そんな中で、マックス・シャーザーの素質には目を見張るものがあった。2006年の新人ドラフトで全体第11位指名を受けながら契約を結ばず、翌年のドラフト直前になってやっとアリゾナ入り。そして、それから11カ月後の4月29日にMLBデビューを果たした。2番手でマウンドに登ったシャーザーは、4回3分の1を投げて7奪三振を記録した。一度マイナーリーグに戻されてから8月下旬に再昇格。9月にはローテーションの一角を占めて、0勝2敗、防禦率3.68の数字ながら、22回を投げて32個の三振を奪った剛球右腕は、再契約しなかったランディ・ジョンスンの後を引き継ぐことになるだろう。
09年への展望
若手をうまく育てて、昨年はダイアモンドバックスをポストシーズンへと導いたボブ・メルヴィンも、バーンズ、ハドスンの故障欠場に直面して、若いティームを支えるヴェテラン選手の助けが必要だと痛感したのではないか。噂に耳を傾けてみると、ラモン・バスケス、マーク・ロレッタ、デミオン・イーズリィなど、複数の守備位置をこなせるヴェテラン獲得に動いているという話が聞こえてくる。場合によっては、故障の多いバーンズ、ハドスンそのものをトレードするという大技が見られるかもしれない。