アトランタ・ブレイヴズ

08年度の概要
1991年から2005年まで、14シーズン連続でポストシーズン進出を果たしてきたアトランタ・ブレイヴズだが、この2年続けてナショナルリーグ東地区3位。今年は故障者が続出したために、急激にティーム力が低下したように見えた。5月終了時点では勝率5割を維持してナショナルリーグ東地区の上位を争いに加わっていたものの、6月6日からの6連敗で勝率5割を切った。そして、シーズン前半終了前に4位に後退するとさらに負けが込み始め、8月の成績は9勝20敗。最終的には、首位フィラデルフィア・フィリーズから20ゲームも引き離された72勝90敗の4位となったが、ナショナルリーグ西地区最下位になった90年以来、18年ぶりの90敗だった。来季20年目のアトランタ監督を務めるボビー・コックスは、果たしてこのティームをどう建て直すのか。

投手
90年代にブレイヴズの投手王国を支えた300勝左腕トム・グラヴィンが6年ぶりに戻ってきた。開幕から2試合で防禦率0.79と好投を披露したが、4月13日の試合では、16球投げただけで太腿裏を傷めて降板。MLB22年目にして初の故障者リスト入りを経験。6月に肘を傷めて2度目の故障者リスト入りした後は8月に一度だけマウンドを務めたが4回7失点で負け投手。2勝4敗、防禦率5.54は、奇しくもMLBにデビューした1987年と同じ、キャリア最低の数字だった。グラヴィンとともに90年代に活躍した右腕ジョン・スモルツも肩の故障に苦しめられた。4月6日の初先発から4試合で3勝1敗、防禦率0.78と好投。ところが、4月の終わりに右肩の故障が再発して故障者リスト入りする。引退か、ブルペンで投げるか、手術を受けるかの選択を迫られたスモルツは、最初救援投手として6月2日にマウンドに戻ったが、やはり先発投手での現役続行を希望して手術を選んだ。スモルツの復帰は早くとも来年終盤、そのときスモルツは42歳になっている。右腕ティム・ハドスンは、シーズン前半9勝7敗、防禦率3.13と安定した投球を見せており、シーズン後半に入ってからも2連勝をマーク。だが、7月下旬に右肘に違和感を覚え、そのまま故障者リスト入り。MLB昇格以来10年連続のふたケタ勝利は挙げたものの、11勝は新人の年以来の最も少ない数字だった。

ヴェテラン三本柱がいなくなったティームでローテーションの中心になって活躍したのが、2年目の新人ヤイア・ユーリエンスだった。昨年デトロイト・タイガーズでデビューして3勝をマークした新人左腕は、エドガル・レンテリアとの交換でアトランタに移籍。開幕からローテーションに抜擢され、新人としてはMLB最多タイの13勝、防禦率3.68、139奪三振の好成績をマークした。シアトル・マリナーズでは芽が出なかった右腕ホルヘ・カムピヨは、開幕直後にブルペン入り。防禦率1点台の見事な救援ぶりを披露していたが、故障者が出たのを機に、5月20日の試合でMLB初先発。この試合で6回無失点、7奪三振の好投を見せたカムピヨは、そのままローテーションに加えられ、25試合の先発で8勝7敗、防禦率4.34とそれほど悪くない数字を残した。

しかし、他の若手の出来は今ひとつ。2年連続11勝の左腕チャック・ジェイムズは、春期練習中に肩を傷めたのが響いて、シーズン通算で7試合しか先発できずに終わってしまった。昨年MLBデビューの左腕ジョジョ・レイエスは、4月下旬にグラヴィンが故障者リスト入りしたときに昇格、初先発で初勝利を挙げた。しかし、今年も制球難に苦しむ場面がしばしば見られ、シーズン通算で3勝11敗、防禦率5.81と振るわなかった。チャーリー・モートン、ジェイムズ・パーの両右腕は今年がMLBデビュー。モートンは、スモルツ、グラヴィンが相次いでメンバーを離れた6月中旬にMLBに昇格。6月14日に初登板初先発初勝利と華々しいデビューは飾ったが、以後は制球を乱して打ち込まれ、4勝8敗、防禦率6.15と冴えない成績に終わっている。9月の40人枠に加えられたパーは、9月4日のデビュー試合で初先発を務め、モートン同様に初勝利もマークしたが、最後の3度の先発は、いずれも序盤で打ち込まれている。

肘の故障から復帰した左腕マイク・ハムプトンが3年ぶりにマウンドを務めた。最初の2試合は大量失点を喫してマウンドを降りているが、8月5日の先発で7回2失点の投球で勝利投手になった。シーズン通算では3勝4敗、防禦率4.85の成績は残したが、クラブは契約延長を行なわず、今後の去就が注目される。

昨年マイク・ゴンザレスが、左肘を傷めてメンバーを離れて以来、アトランタはクローザーに苦しんでいる。ゴンザレスの代役として期待されていた右腕ラファエル・ソリアノも、開幕早々に肘を傷めて故障者リスト入り。その後も肘の故障を繰り返し、シーズン通算では14試合しか投げられなかった。また、昨年80試合で防禦率1.80と素晴らしい投球を見せた右腕ピーター・モイランも、開幕から2週間も経たないのに故障者リスト入り。そのまま復帰できずにシーズンを終えている。ゴンザレスがマウンドに戻ってきたのは、6月18日。最初は調整も兼ねて、中抑えで投げ、8月下旬からクローザーの仕事に戻ったが、9月にはセーヴ機会に2度失敗、防禦率5.84と冴えなかった。

ティーム最多の83試合に登板した左腕ウィル・オーマンは、4勝1敗1セーヴ、防禦率3.68と好投。右腕で最も多い76試合でマウンドを務めたブレイン・ボイアーは、防禦率5.88とやや振るわなかったが、ボイアーに次ぐ72試合登板のジェフ・ベネットは、防禦率3点台で3セーヴを挙げただけでなく、先発を務めることもあった。2年目の新人右腕マニー・アコスタは、5月までは防禦率2.83と好投していたが、6月に防禦率9.26と急落。その後故障者リスト入りすると、シーズン後半はほとんど活躍の場面がなかった。昨年は先発でも投げている右腕バディ・カーライルは、今季は救援ばかり45試合に登板して防禦率3.59は悪くなかった。シーズン途中には、右腕フリアン・タバレス、ホルヘ・フリオ、エルメル・デセンス、左腕ブラディミル・ヌニェスなどのヴェテランを呼び集めたが、ティームの状態を改善させてくれるほどの活躍をした投手はいなかった。

野手
10年連続ゴールドグラヴの名中堅手アンドルウ・ジョーンズ、打撃走塁守備の揃った遊撃手エドガル・レンテリアが抜けて、アトランタの打線はまたしても長打力、得点力が低下することになった。アンドルウ・ジョーンズに代わる中堅手として迎えられたマーク・コツェイは、前任者ほどの長打力はもちろん期待できないが、1番と9番とを除く全ての打順で先発に起用され、打率.289をマーク。しかし8月に、左打ちの外野手を狙っていたボストン・レッドソックスへ譲り渡された。レンテリアに代わって遊撃手に定着したユネル・エスコバルは、打率.288、60打点、10本塁打と、MLB2年目の選手としては及第点の数字だった。守備でもリーグの平均を上回る守備範囲の広さを披露し、レンテリアの穴はカヴァーできたと言っていい。

残った方のジョーンズ、チパー・ジョーンズは.364をマークして初の首位打者獲得。しかし、故障で休むことが多く、先発で出場できたのは115試合だけ。打点75、22本塁打しか打てなかったのでは、ティームの得点力低下は致し方ない。05年のデビューから強打を振るってきた右翼手ジェフ・フランクーアは、今季は低打率で苦しんだ。5月以降は2割5分も打てない月が続き、7月にはマイナーリーグに送られたほどだった。打率.239、11本塁打は、70試合しか出場していないMLB初年度の数字さえ下回っている。ブライアン・マキャンは、打率.301、87打点、23本塁打を打って、シーズン終了後にシルヴァースラッガー賞に選ばれるなど、打撃面ではほとんど心配することはない。捕手としての守りも、少しずつ改善されているようだが、特に.225しかない盗塁阻止率は不安が残る。マキャンを支える控えも手薄で、32歳のヴェテラン、コーキー・ミラーが31試合、2年目の新人クリント・サモンズが23試合に出場したが、2人合わせても.114しか打てなかった。昨年7月31日にテキサス・レンジャーズから獲得したマーク・テイシェイラを、わずか1年で譲り渡したのは、いささか皮肉な話であった。75打点、20本塁打を打っていた長打者テイシェイラと交換で、ロサンジェルス・エンジェルズ・オヴ・アナハイムからやってきたケイシィ・コッチマンは、移籍当初は全く打てずに.180の低打率に苦しんだ。そのうえ母親の看病のためにメンバーを離れたが、9月に復帰後は.305と立ち直りつつある。昨年二塁手として再起を果たしたケリー・ジョンスンは、打率.287、69打点、12本塁打という打撃成績は地味ではあるが、大きな怪我もなくシーズンを務め上げたのは評価できる。二塁の守備もますます安定してきており、来季はコッチマンと組む一二塁間のプレイが楽しみである。

規定打席不足ながら2年連続で打率3割を打ち、レギュラー左翼手の有力候補だったマット・ディアスが、左膝を傷めて5月下旬に故障者リスト入り。グレゴル・ブランコ、ブランドン・ジョーンズ、ジョシュ・アンダースンの新人たちが、出場機会を与えられることになった。ブランコは、腰痛でメンバーを離れていたコツェイに代わって中堅手を任されていたが、6月に入ってリードオフマンに抜擢。144試合に出場して、規定打席もクリアした。打率は.251と低かったものの、四球を74個選んでいるので出塁率は.366と高く、守備、走塁面でさらに経験を積めば、このまま定位置を確保できそうだ。昨年デビューを果たしている、ブランドン・ジョーンズは、組織内トップクラスの外野手との評判をとっている。41試合で打率.267、17打点、1本塁打と平凡な数字に終わっているが、長打力には大きな期待が寄せられている。アンダースンは、マイナーリーグ6年間で279盗塁という俊足が魅力の選手である。今年初めて経験したMLBでも40試合で10盗塁をマークしたが、ブランコからリードオフマンの座を奪い取るには、.338しかなかった出塁率を向上させる必要がある。

オマル・インファンテとマルティン・プラドの2人は、控えでいい働きを見せた。デトロイト・タイガーズからシカゴ・カブズを経由してやってきたインファンテは、主に三塁と左翼を守った他、二塁、遊撃、中堅でもプレイ。96試合に出場して、打率.293、40打点、3本塁打の成績を残した。かつてはジョンスンと正二塁手を争っていたプラドは、5月に指を傷めて故障者リスト入り。しかし、2カ月休んだ後にメンバーに戻ると内野すべてのポジションに左翼手もこなして、故障者の多いティームを支えた。打率.320、33打点、2本塁打は、MLB3年目でベストの数字である。

MLBにようこそ
ブレント・リリブリッジは、2005年にピッツバーグ・パイレーツから新人ドラフト第5巡で指名を受けてプロ入り。その年は短期A級でプレイし、翌06年はLow A級、High A級の2階級。アダム・ラローシのトレードで、マイク・ゴンザレスとともにアトランタにやってきた07年には、AA級からAAA級に呼ばれただけでなく、フューチャーズゲームのアメリカ選抜メンバーにも選ばれた。そして今年4月26日にMLBデビューと、俊足堅守と評判の遊撃手は、順調な成長ぶりを示していたが、打率.200しか打てず、守備でも23試合で6個も失策を犯している。春期練習では、体力面での課題をクリアせねばなるまい。

09年への展望
グラヴィン、スモルツ、ハムプトンと、20勝経験を持つヴェテラン3人が、40人枠から外れている。いずれも年齢や体力に問題を抱える投手だけに契約延長にも二の足を踏んだに違いないが、それにしても、先発スタッフの再編成は急務。一方野手では、ジョンスン、エスコバルの二遊間コンビは着実に成長中、ブランコ、アンダースン、ブランドン・ジョーンズの3人が外野に定位置を得られるかにも注目が集まるが、このところ故障がちなチパー・ジョーンズを支えられる長打者を獲得しておかないと、こうした若手にもいらぬ負担がかかってしまうだろう。