08年度の概要
エースのエリク・ベダード、中心打者のミゲル・テハダを放出して、ティーム力の低下は必至と見られていたボルティモア・オリオールズだったが、監督デイヴ・トレムブリィが、打順の組み替えや、ローテーションの入れ替えなど、八方手を尽くしたおかげで、シーズン前半は悪くない試合運びを見せていた。3月から4月にかけては、今季最長の6連勝を含む、16勝12敗という数字で、アメリカンリーグ東地区の首位争いに加わり、6月までは勝率5割を維持していた。しかし、オールスターゲーム明けから次第に負けが混み始め、8月に11勝17敗、9月には10連敗を喫するなどして5勝20敗とさらに落ち込み、通算68勝93敗の最下位でシーズンを終えた。とは言うものの、オーブリィ・ハフ、メルビン・モラが以前の打撃を取り戻した打線には、なかなか迫力があった。
投手
左腕ジェレミー・ガスリーが、信頼の置けるエースとして成長した。9月に鎖骨を折ってほとんど登板できなかったために、勝ち星は10にとどまってはいるが、4月から8月まで、毎月3点台の防禦率と、抜群の安定感を披露している。一方、球威だけならMLBでも有数と言われる右腕ダニエル・カブレラは、今年も期待を裏切った。ティームが好調だったシーズン前半は、6勝5敗、防禦率4.33と悪くない数字を残していたが、後半に入ると与えた四球の数が奪った三振の数を上回ってしまうほどの荒れようで、最後は肘を傷めてシーズンを終えている。02年の新人ドラフトで全体第4位指名の左腕アダム・ローウェンは、今年も肘の故障で開幕早々に故障者リスト入り。投手を続けるのは無理と判断し、野手としての再起を目指すが、先日クラブから解雇された。ミゲル・カブレラとの交換でやって来た若手の中では、ローテーション入りを期待されていた左腕トロイ・パットンも右肩の手術を受けたためにシーズンを棒に振った。
昨年途中にシカゴ・カブズに移っていたヴェテラン右腕スティーヴ・トラクスルと再契約。今季初先発で勝ち投手になったものの、その後4連敗。制球を乱したところで長打を打たれて大量得点を喫するパターンで崩れ、6月には解雇された。昨年17試合先発の左腕ブライアン・バーリズも、シーズン当初はローテーションの一角を占めていた。4月に3勝1敗、防禦率2.59をマークしたのが今シーズンの頂点で、後は成績が落ちる一方。夏場にマイナーリーグに送られた後、9月に戻ってからはブルペンで控えることになった。
2年目の新人左腕ギャレット・オルスンは、ローウェンの故障から先発に抜擢された。5月までは4勝1敗、防禦率4.03とよく投げていたが、6月に入ると突如調子を乱して、勝ち星は10勝に届かず、通算防禦率は6.65まで跳ね上がってしまった。マイナーリーグでは、継投も含めてノーヒッター2回という期待の新人右腕ラダメス・リスは、先発から外されたトラクスルと入れ替わりMLBに昇格。95マイルを超える速球は魅力十分ながら、制球も配球も今ひとつで、長いイニングを投げることができない。9月14日の試合で8回を0点に抑える投球で勝ち投手になったのが、今季唯一の無失点試合で、シーズン通算では6勝6敗、防禦率6.72とは、まだまだ力不足のようだ。右腕クリス・ウォーターズは、バーリズがマイナーリーグに送られたときに、MLBにデビューした。初登板初先発で8回無失点の投球を披露して、初勝利もマーク。1カ月後の9月16日には早くもMLB初完投初完封勝利まで達成した。シーズン通算で見れば3勝5敗、防禦率5.01と冴えない数字だが、オルスンやリスよりはエキサイティングな投球を披露してくれた。ミネソタ・トゥインズではブルペンに控えていた右腕ブライアン・バスは、移籍後先発に移動。シーズン最後の登板で6回を投げて勝ち投手になった。
過去2年間で49セーヴの右腕クリス・レイ、通算114セーヴの右腕ダニス・バエスがともに昨年受けたトミー・ジョン手術からのリハビリテイション中で今シーズンは全休。クローザー不在という事態を救ったのは、エリク・ベダードのトレードでシアトル・マリナーズから獲得した左腕ジョージ・シェリルだった。防御率は高かったが、前半だけで28セーヴをマークし、オールスターゲームにも選ばれた。しかし、肩を傷めたシーズン後半は振るわず、3セーヴを挙げるにとどまっている。シェリルが抑え役から外れてしまっても、取って代わるような投手は出てこなかった。シェリル以外にセーヴを挙げた投手は3年目のジム・ジョンスン、2年目のロッキー・チェリー、今年デビューのジム・ミラーという新人右腕3人に、ヴェテラン右腕ランス・コーミアがいるが、いずれもわずか1個ずつをマークしただけだった。このうちジョンスンは、54試合に登板して防禦率2.23と、ブルペンで最も安定した投球を見せた。ミラーも点抑えで8試合に投げて、自責点1と好投した。コーミアは45試合で防禦率4.02ではあったが、04年にアリゾナ・ダイアモンドバックスでデビューして以来、最高の数字だった。ジョンスンに次ぐ防禦率2.45をマークしていたヴェテラン右腕チャド・ブラッドフォードは、8月にタムパベイ・レイズに去っている。
ティーム最多登板がジェイミー・ウォーカーの59試合だというのは、ウォーカーも故障でメンバーを離れた期間があるからだ。02年から昨年までの通算防禦率が3.31という信頼の置ける左腕投手だったが、今年は開幕からよく打たれた。6月下旬に肘の故障で1カ月休んだが、復帰してみたらさらに投球内容が悪くなり防禦率は6.87。過去6年間の倍以上も打ち込まれたシーズンだった。テハダのトレードでやって来た3年目の新人右腕デニス・サーフェイトは、シェリルと並んで、ウォーカーに次ぐ57試合に登板した。先発も4試合こなしているが、勝ち星なしの2敗で防禦率10.34。救援では防禦率3.38だから、来年もブルペンで豪腕を揮うことになりそうだ。昨年ヒューストンでは先発、救援の両方をこなしていた右腕マット・アルバーズは、中抑えで好投していたが、右肩を傷め、6月でメンバーを離れた。
新人のアルベルト・カスティヨは4月28日のデビュー試合が、雨のために順延。8月25日に再開された試合でティームが勝ち、4カ月かかってMLB初勝利をマークするという、変わった記録の持ち主になった。
野手
ここ数年不振の続いていたオーブリィ・ハフ、メルビン・モラの二人が全盛期の強打を取り戻している。ハフは指名打者の他、三塁、一塁もこなしながら、タムパベイ・デヴィルレイズに在籍していた03年に続き、自身二度目の打率3割、100打点、30本塁打を達成。シーズン終了後に指名打者としてシルヴァースラッガー賞に選ばれた。モラは、シーズン前半こそ打率.232、48打点、11本塁打と低調だったが、オールスターゲーム以降には別人になったかのように打ちまくった。特に8月は打率.418。24試合の出場で32打点も挙げる猛打を振るった。打率.285、104打点、23本塁打は、打率.340を打って首位打者争いにも加わった04年以来の好成績だったが、シルヴァースラッガー賞には残念ながら選ばれなかった。
右翼手ニック・マーカキスは、昨年.300、112打点、23本塁打でティームの三冠王。その打撃を買われて、今シーズン当初は3番を任されていたが、最初のふた月では打点が挙げられず、2番のモラと打順を入れ替わった。これが図に当たって、6月以降は打撃も復調し、ティーム首位の打率.306、87打点、20本塁打でシーズンを終えた。守備も素晴らしく、リーグ平均を上回る守備範囲の広さに加えて、17人の走者を送球でアウトにしている。この数字が維持できれば、近い将来にゴールドグラヴに選ばれることだろう。リードオフマンのブライアン・ロバーツは、『ミッチェル・レポート』の悪影響も懸念されていたが、いざシーズンが始まってみれば、何の心配もなかった。目覚ましい活躍と言うほどではないが、打率.296、出塁率.378、107得点、40盗塁は、リードオフマンとしては申し分のない数字であるし、二塁の守備も8失策と安定していた。
『ベースボール・アメリカ』誌でマリナーズ組織内No.1素材と評されたこともあるアダム・ジョーンズは、開幕から正中堅手に抜擢された。シーズン序盤は低打率に苦しんでいたものの、6月に打率.323を打ってようやく調子が上がってきた。7番か8番が多かった打順も夏場には2番にまで上がったが、8月初めに左足を折って1カ月休んでからは、打率.228と低調だった。三振108個に対して、選んだ四球が23個しかないという、粗い打撃を改める必要がありそうだ。36歳のヴェテラン一塁手ケヴィン・ミラーは、打率.234と低調だったものの、右打者としてはモラに次ぐ20本塁打をマーク。打点も上から4番目の72打点を挙げている。左翼手ルーク・スコットは、モラと並んでティーム2位の23本塁打と長打力を発揮。やや振り回しがちの打撃を少し改善すれば、今ひとつだった.257、65打点という数字も向上してくるだろう。35歳のヴェテラン、ジェイ・ペイトンは控え外野手として3つのポジションをこなした。
かつては強打巧守を兼ね備えたMLB屈指の捕手と呼ばれたラモン・エルナンデスも、32歳にして早くも技量の衰えが見られるようになった。昨年の故障からは立ち直り、レギュラーシーズンの4分の3で先発出場できたのはよかったが、打率は.257と低く、捕逸10回、盗塁阻止率が2割にも届かなかったとは、事態はかなり深刻だと言えるだろう。エルナンデスの控えを務めたギエルモ・キロスは、トロント・ブルージェイズに所属していたころには組織内でもトップクラスの若手と期待されていたが、MLB5年目で初めて100打数を超えたものの、こちらも打率.187しか打てなかった。
テハダ放出でレギュラー不在となった遊撃手も、結局最後まで落ち着かなかった。開幕時に抜擢された新人ルイス・エルナンデスは、あまりにも打てなかった。6月にマイナーリーグに送られるまでに打った長打は、二塁打が1本だけ。開幕5試合目までに3打点を挙げたが、それっきりチャンスで快打を放つことはできなかった。その後しばらくフレディ・バイナム、ブランドン・フェイヒィ、招待選手から復帰のアレクス・シントロンが併用されたが、バイナム、フェイヒィは、エルナンデスよりもさらに打率が低く、シントロンは、打率.286をマークしたものの守備に難があった。オールスターゲーム後にシンシナティ・レッズから獲得した、ヴェテランのホアン・カストロがシーズン終了まで正遊撃手を務めることになったたが、守備はともかくも、打撃はあまり期待できなかった。
MLBにようこそ
ルイス・モンタネスは、かつてシカゴ・カブズ組織内で、俊足巧打の遊撃手として将来を嘱望されていた。2000年にプロ契約を結び、翌01年から3年連続で120試合に出場したが、失策数も3年連続で30以上。それで守備の負担を軽減するために外野に移動したが、これが幸いして、以後毎年2割9分前後の打率をマークしている。今年は、4月28日に行なわれたシカゴ・ホワイトソックスとの試合でついにMLBデビュー。雨のために一時中断された試合が再開されたのが、何と4カ月後のことだったが、延長14回表に一塁打を打って決勝点を挙げた。もちろんこれは、モンタネスにとってMLB初打点だった。
09年への展望
故障者続きで崩壊したローテーションの建て直しが急務である。クラブの公式サイトでも取り上げられていたのは、実績のある先発投手を獲得すべきという、ファンからの指摘だった。たとえば、今年ミネソタ・トゥインズは、サイ・ヤング賞2回のホアン・サンタナが抜けた後にリバン・エルナンデスと契約したが、若手が伸びてくるまでのあいだに10勝をマークして、自分に与えられた役割をきちんと果たしている。2年続けてローテーションに抜擢されながら、伸び悩むオルスンやリスなど、若手が育ってくるまでの投手スタッフを支えてくれるヴェテランを補強するのは、いいアイディアである。