クリーヴランド・インディアンズ

08年度の概要
2007年のクリーヴランド・インディアンズはアメリカンリーグ中地区優勝を果たし、優勝決定シリーズでも3勝1敗とボストン・レッドソックスをリードしながら、3連敗で涙をのんだ。そこからの出直しを図ったはずの今季は、開幕試合でサイ・ヤング賞C・C・サバシアがノックアウトされるという衝撃的なスタートとなる。さらに、シーズン序盤で投打の主力を故障で失い、オールスターゲーム直前の6月下旬から7月にかけて10連敗を喫して最下位に転落したところで、インディアンズの今季はほとんど終わりかけていた。それでも、8月17日からの10連勝など、オールスターゲーム以降40勝28敗を挙げて巻き返したものの、前半の負け越し分を取り返すのが精一杯で、81勝81敗の3位に終わった。

投手
開幕当初のC・C・サバシアは、昨年のサイ・ヤング賞が嘘であったかのような不調に見舞われていた。開幕試合で6回途中5失点で降板したのを始め、4月までの6試合で1勝4敗、防禦率7.76。5月から徐々に立ち直りを見せていたものの、契約の関係もあって7月7日ミルウォーキー・ブルワーズに譲り渡された。サバシアが振るわなかったのに対して、同じ左腕のクリフ・リーは最高のシーズンを送った。昨年は故障のために20試合しか投げられなかったが、今季は開幕から7試合の先発で負けなしの6連勝、防禦率0.67という素晴らしいスタートを切った。シーズン前半で12勝2敗、防禦率2.31をマークした投球は、後半になっても衰えず、9月1日には今季2度目の完封勝利で20勝目。シーズン通算22勝3敗、防禦率2.54、170奪三振の投球内容で、サイ・ヤング賞に選出された。

リーの投球が抜群だっただけに、その他の先発投手はひどく見劣りがした。昨年急成長を見せた右腕ファウスト・カルモナは、4月に3勝1敗、防禦率2.60と、悪くない投球を見せていたが、5月下旬に臀部を傷めて2カ月欠場。オールスターゲーム後に復帰したが、4勝5敗、防禦率7.61と落ち込んだ。昨年はサバシア、カルモナに続く15勝を挙げている右腕ポール・バードは、故障にこそ見舞われなかったものの、4月、5月と1勝ずつしか挙げられず、6月には1勝5敗、防禦率7.47とさんざんの内容だった。それでもオールスターゲーム後には4勝負けなし、防禦率1.24と立ち直っていたのだが、2年連続の世界一を狙うボストン・レッドソックスに引き抜かれた。04年からの3年間で44勝をマークしている右腕ジェイク・ウェストブルックは、2度の故障者リスト入りで今年も途中欠場、わずか5試合しかマウンドに登れなかった。06年に7勝を挙げて注目された左腕ジェレミー・ソワーズは、22試合に先発を務めたが、4勝9敗、防禦率5.58と、依然として立ち直ることができず、2年目の新人左腕アーロン・ラフェイも、昨年の4勝に1勝を上積みしたが、負けは5つも増えて7敗を喫した。ただ、防禦率が前年の4.56から4.23に向上している点はよかった。夏場以降は、他ティームから獲得した左腕ザック・ジャクスン、右腕アンソニー・レイエス、ブライアン・ブリントンなどの若手がローテーションに起用され、その中では06年のセイントルイス・カーディナルズ世界一のメンバーだったレイエスが6試合で防禦率1.83と好投したのが目を引く。9月10日にMLBデビューを果たした新人左腕スコット・ルイスは、先発を務めた4試合に全勝、防禦率2.63と好投。来季の活躍が期待される。

昨年45セーヴをマークしてタイトルを手にしたジョー・ボロウスキは、防禦率5.07という不安定な投球は改善されなかった。今季3試合目の登板だったロサンジェルス・エンジェルズとの試合で逆転さよなら満塁本塁打を打たれるなどセーヴ失敗が続いたばかりか、右肩も傷めて故障者リスト入り。復帰後も投球は振るわず、オールスターゲーム前に解雇された。この人事によって、新人の右腕コバヤシ・マサヒデが抑えに定着するかと思われたが、大役が重荷になったのか、途端に打ち込まれ始め、数試合で役目から外された。その後2年目の新人右腕ジェンセン・ルイスが抑えに抜擢され、8月以降、13連続セーヴ機会に成功している。

昨年ともに防禦率1点台の好投で、不安定なボロウスキを支えた左腕ラファエル・ペレス、右腕ラファエル・ベタンコウルトは、今季もそれぞれ73試合、69試合でマウンドを務めたが、防禦率は前年よりも悪くなり、昨年ほどの安定感は見られなかった。しかし、この2人を上回る成績を残した救援投手も見あたらない。昨年51試合登板で7勝をマークしているトム・マスニーは、開幕メンバーから外れるなど、シーズンを通してMLBとマイナーリーグとを往復。一度も防禦率が10点台を下回らないままで、08年を終えることになった。招待選手からMLBに復帰したホルヘ・フリオ、ブレンダン・ドネリー、リック・バウアーや、シーズン途中にミネソタ・トゥインズから獲得したホアン・リンコンなどのヴェテラン右腕は、いずれも防御率が高すぎて、ブルペン強化の助けにならなかった。

野手
トラヴィス・ハフナー、ビクトル・マルティネスの3番、4番を欠いた打線は、やはり迫力不足としか言いようがなかった。昨年は投手力でカヴァーすることもできたが、それも期待できなかった今季は、得点力の低下がティーム成績の不振を招く要因になった。2006年終盤に投球を受けて右手を骨折して以来やや低調だったハフナーは、開幕から打率2割がやっとという打撃不振に陥っていた。さらに悪いことには、5月下旬に右肩を傷めて故障者リスト入り。9月に復帰後も不振から抜け出すことはできず11試合で.122しか打てなかった。一方のマルティネスは、開幕から1本も本塁打が打てないまま、6月中旬に右肘の故障でメンバーを離れた。8月下旬に復帰後ようやく初本塁打も打ち、19試合で14打点もマークしたが、シーズン通算73試合出場で打率.278、35打点、2本塁打は、もちろん04年に正捕手の座に就いてから最悪の成績である。

ハフナー、マルティネスを欠いた打線の中心になったのは、グレイディ・サイズモア、ホニ・ペラルタ、ライアン・ガーコの3人だ。サイズモアは、打率の低さを選球眼で補って出塁率は.374。33本塁打、38盗塁をマークして「30-30クラブ」の仲間入りを果たし、当代屈指のリードオフマンに成長した。脚力を活かした広い守備範囲に加えて、打球に頭から飛び込んでいくダイナミックな守備を評価されて、2年連続ゴールドグラヴに選出されている。ペラルタは、サイズモアの157試合に次ぐ、154試合に出場。シーズン序盤は低打率のうえに、打点も挙げられないという不振に苦しんでいたが、6月あたりから調子が上向きになり、4番を任されることが多くなった。シーズン後半は、67試合で打率.295、41打点とさらに調子を上げ、打率.276、89打点、23本塁打をマークしている。前任者がオマル・ビスケルだったために、遊撃手としての守備ではいろいろ注文をつけられることが多かったが、アウト参加数4.56、失策14ならば、ずいぶん安心して見ていられるようになったろう。昨年一塁の定位置を手にしたガーコは、昨年を上回る141試合に出場。前年の21本塁打から14本塁打と長打は減っているが、3割を超える得点圏打率と勝負強さを発揮して、サイズモアと並ぶ90打点をマークした。

サイズモアの中堅は不動だったが、両翼はなかなか定着しなかった。開幕当初にはジェイスン・マイケルズとデイヴィッド・デルッチとが左翼に併用され、右翼がフランクリン・グティエレスという先発メンバーになることが多かったが、マイケルズが4月に打率.222と不振だったために、5月にピッツバーグ・パイレーツに放出された。その後次第に新人のベン・フランシスコが先発で起用されるようになり、5月下旬には左肘の故障から復帰したチュ・シンスが加わった。シーズン終盤になるとデルッチの出番が減り、フランシスコ、グティエレス、チュの3人で左翼と右翼とを分け合った。フランシスコは、4月の大部分をマイナーリーグで過ごしていたが、5月に先発出場のチャンスを与えられると、打率.305を打って、MLB定着を確実なものにした。シーズン終盤に調子を落としはしたが、外野手の中ではサイズモアに次ぐ15本塁打を打っている。グティエレスは、シーズン通して故障もなく、毎月20試合前後に出場した。打撃面では前年を下回る数字にはなったが、右翼の守備では、脚力を活かして守備範囲の広さを見せつけた。故障続きで冴えなかったチュは、ようやくくスズキ・イチロウを超える打力を披露し始めた。シーズン前半は.243しか打てなかったのが、オールスターゲームを過ぎると俄然調子を上げてきて、58試合で打率.343、48打点、11本塁打。9月の24試合だけで打率.400、24打点、5本塁打はティーム内でもトップクラスの働きである。デルッチは、故障で53試合しか出場できなかった前年よりは試合によく出ていたが、シーズン通算.238という低打率では、伸び盛りの若手にはかなわなかった。

マルティネスの欠場で正捕手の座を与えられたケリー・ショパックは、打撃面で大きな進歩を見せている。シーズン後半だけで14本塁打と長打力を発揮。守備面でのミスが少し目立ったものの、もともと動きに難のあったマルティネスに比べれば、十分な働きを見せたと言える。9月にマルティネスが復帰してからも、ショパックがマスクをかぶることが多かったのは自然のことだろう。昨年後半の活躍で地区優勝に貢献した二塁手アスドルバル・カブレラは、打撃不振のために6月にマイナーリーグに送られた。しかしオールスターゲーム後に復帰してからは調子を取り戻したようで、9月には打撃好調だったチュを上回る.416を打っている。なおカブレラは、5月12日に行なわれたトロント・ブルージェイズとの試合でMLB史上14人目となる一人トリプルプレイを完成させている。カブレラ欠場中には、ヴェテランの内外野手ジェイミィ・キャロルが二塁を無難にこなした。昨年クリーヴランドにやって来て、カブレラがデビューするまでは正二塁手だったジョシュ・バーフィールドは、シーズンのほとんどをマイナーリーグで過ごすことになった。

得点圏打率.393で58打点と頼りになるヴェテラン、ケイシィ・ブレイクを7月31日のトレードでロサンジェルス・ダジャーズに放出したので、夏場以降は4年目のアンディ・マルテが三塁手に起用された。しかし、80試合出場で打率.221、17打点、3本塁打。守備面では大きな進歩を示しているものの、アトランタ・ブレイヴズ組織内No.1素材と言われ続けたマルテは、いまだにその技量を発揮できていない。

MLBにようこそ
マイケル・オーブリィが2003年の新人ドラフトで全体第11位指名を受けてプロ入りしたときには、3年もあればMLBでプレイできるようになるだろうと思われた。しかし昨年までの5年間、オーブリィは故障のためにほとんど試合に出場することができなかった。一番多く試合に出たのが03年にHigh A級、AA級合計で98試合。少なかったのは06年のわずか14試合だった。AA級で開幕を迎えた今年は、25試合で.282を打つとすぐにオーブリィにとって初めてとなるAAA級昇格。さらに5月17日にはMLBデビューを飾り、デビュー2試合目、3試合目と連続本塁打を打って、素質の片鱗を示している。守備のうまさはつとに知られていて、プロ入り前からゴールドグラヴ級と評判なのだが、問題はオーブリィの守備位置が一塁打ということ。守備に難があるとは言え、ガーコ、マルティネスを打撃でしのがないと、MLB定着はかなわないのである。

09年への展望
主力に故障者が相次いで、ほとんど崩壊してしまった投手スタッフの再編成を優先課題としてくるだろう。カルモナやウェストブルックは、シーズンを全うできれば15勝前後も期待できる投手だが、4番手、5番手の先発投手には、他のティームから実績あるヴェテランを迎えるか、まずまずの投球を披露したアンソニー・レイエス、スコット・ルイスの若手の成長に期待するか。不安定だったとは言え、抑えのボロウスキが抜けた穴も埋められなかったブルペンにも問題はある。先発スタッフと同様に、ジェンセン・ルイスの成長も待ちたいところだろうと思われる。昨年の最優秀監督エリク・ウェッジは、このティームをどこまで建て直すことだろうか。