08年度の概要
今シーズン最大の驚きは、大物選手獲得でアメリカンリーグ優勝のペナント奪回を目論んだデトロイト・タイガーズの凋落ぶりであろう。2003年のフロリダ・マーリンズ世界一のとき、新人ながら主力で活躍したドントレル・ウィリス、ミゲル・カブレラを獲得するなど、オフシーズン中には積極的な動きを見せたが、開幕7連敗でいきなりつまづいてしまった。6月に2度の6連勝で19勝8敗と盛り返し、辛うじてシーズン前半を47勝47敗の五分、アメリカンリーグ中地区3位で終えたものの、8月以降は19勝35敗と崩れて順位が後退。最後の1週間でとうとうカンザスシティ・ロイアルズに抜かれ、シーズン通算74勝88敗、03年以来の最下位で終わった。ワールドチャンピオンも経験し、最優秀監督賞も受賞しているジム・レイランドの手腕を持ってしても、救いようのない一年であった。
投手
フロリダ・マーリンズから、2003年の新人賞、05年の最多勝利左腕ドントレル・ウィリスを獲得。06年リーグ優勝時の先発スタッフ、右腕ジャスティン・ヴァーランダー、ジェレミー・ボンダーマン、左腕ケニー・ロジャーズ、ネイト・ロバートスンと並ぶ先発五本柱は、他ティームの垂涎の的となっていたはずだった。ところが、故障や不振のために、全員が不本意なシーズンを送ることになってしまった。最初にローテーションから外されたのはウィリスだった。5回1安打7四球で3失点という大荒れのデビューに続き、次の先発では投球中に足を滑らせて足の付け根を傷め、故障者リスト入り。5月に復帰したものの、6月の先発で2回途中8失点を喫した翌日にマイナーリーグに送られた。9月に再昇格を果たしたが一向に調子は戻らず、0勝2敗、防禦率9.38と最悪のシーズンに終わった。ボンダーマンは、ウィリスがマイナーリーグ行きになる直前に、右腋の下の静脈に血栓が見つかり、12試合に先発を務めただけでシーズン終了。昨年は故障で11試合にしか投げられなかったロジャーズは、30試合で先発を務めたが、シーズン後半になるほど投球内容が悪くなり、オールスターゲーム以降は3勝7敗、防禦率7.93まで落ち込んだ。ロバートスンもロジャーズと同じく、シーズンが進むにつれて調子を落とす一方で、8月20日に今季10敗目を喫すると、ついにローテーションから外されてしまった。5人の中でただ一人10勝をマークしたヴァーランダーにしても、オールスターゲーム以降は4勝8敗と負け越し、防禦率も6.04と打ち込まれている。シーズン通算11勝17敗、防禦率4.84は、前年の18勝6敗、防禦率3.66から大きく落ち込んだ。
先発スタッフの崩壊でチャンスをつかんだのは、2年目の新人右腕アルマンド・ガララガだった。4月に故障者リスト入りしたウィリスに代わって先発に抜擢されたガララガは、7回途中まで1安打2失点と好投してMLB初勝利をマーク。そのままローテーションに定着したガララガは、今年の新人ではMLB最多タイの13勝、防禦率3.73、126奪三振の好成績を収めた。右腕ザック・マイナーは、新人だった06年にはスウィングマン、昨年は主に長抑えを任され、今年もシーズン前半はブルペンに控えていたが、オールスターゲーム後にローテーションに加わり、5勝2敗、防禦率4.23とまずまずの数字を残している。エディー・ボナイン、クリス・ラムバートの両新人右腕も5試合ずつ先発を経験しているが、こちらは目立った活躍はできなかった。一方、故障のために1年以上MLBのマウンドから遠ざかっていた右腕フレディ・ガルシアが9月にMLB復帰。3試合の先発で1勝1敗、防禦率4.20をマークし、ローテーション復帰の可能性を示した。
メンバーが揃わなかったのはブルペンも同様だった。開幕前にジョエル・ズマヤ、フェルナンド・ロドネイの両右腕が故障者リスト入り。アキリノ・ロペス、マイナーの両右腕が、シーズン序盤に代役を務め、5月には新人右腕フレディ・ドルシが加わった。ロペスはトロント・ブルージェイズでMLBデビューを果たした03年に72試合に投げて防禦率3.42、14セーヴをマークしたが、ここ4年間は登板機会に恵まれなかった。6月までは防禦率2点台の投球を披露したが、忌引で休んだ後、マイナーリーグに送られておよそ1カ月欠場。夏場にはやや調子を落としたものの、過去4年間で投げた39試合よりも多い、48試合でマウンドを務め、防禦率3.55の成績だった。ドルシは、デニ・バウティスタが故障者リスト入りした5月にMLBデビュー。制球にやや難のある投手だが、初年度で42試合に登板して、防禦率3.97であれば、悪くない働きだ。
6月16日にロドネイ、20日にズマヤが戻り、抑えのトッド・ジョーンズとともに、06年のリーグ優勝を支えた救援トリオがようやく揃ったが、幸福な時期はそう長くは続かなかった。シーズン前半は防禦率4.95と打たれながらも17セーヴを挙げていたジョーンズが右肩を傷めて、7月一杯で故障者リスト入り。急遽ロドネイが代役でクローザーに回ったが、今度は8月半ばにズマヤも肩の故障でメンバーを離れた。そのすぐ後にジョーンズが復帰したが、1イニングもたずに5失点を喫してマウンドを降りると、再び故障者リストに入れられた。ジョーンズは、シーズン終了直前に現役引退を発表したため、この試合が最後のマウンドになったわけである。結局ロドネイがシーズン最後まで投げ抜いて抑え役を務めたが、わずか2カ月のあいだにセーヴ失敗が6回、防禦率4.91と冴えなかった。7月下旬のトレードで右腕カイル・ファーンズワースが3年ぶりに戻ってきたが、投球が単調になりすぎたか、16試合で防禦率6.75と、こちらも振るわなかった。
左腕ボビー・シーイがティーム最多の60試合に登板したが、開幕時にブルペンに控えていた左腕投手はシーイ1人だけ。開幕して間もなくMLBに呼ばれた2年目の新人クレイ・ラパダは、4月は防禦率0.00と好投したが、利き腕を傷めたために、9月までほとんど投げられなかった。6月に30歳のヴェテラン、ケイシィ・フォッサムをブルペンに加えたものの、シーズン通算5.66はやや打たれすぎた。
野手
ウィリスとともにフロリダからやって来たミゲル・カブレラは、評価が大きく分かれるシーズンだったろう。開幕試合で本塁打を打ったものの、開幕7連敗中に挙げた打点はその1点だけ。三塁の守備も14試合で5失策という不安定さで、開幕からわずか3週間で一塁に移動することになった。しかし、カブレラが期待通りの働きを見せるようになったのは、シーズン後半に入ってからのことで、オールスターゲーム以降は68試合で打率.302、70打点、21本塁打。4年連続の打率3割はマークできなかったが、37本塁打で初タイトル、127打点はリーグ3位の数字だった。移籍選手としては、アトランタ・ブレイヴズから獲得したエドガル・レンテリアは、期待はずれだった。膝の故障で守備範囲の狭くなったカルロス・ギエンに代わる遊撃手として迎えたが、首位打者も争った前年の.332から.270へと打率が低下。打撃走塁守備ともに平凡な成績で、シーズン終盤にはラモン・サンティアゴにポジションを譲る場面も多かった。ギエンは、カブレラ、レンテリアにやや振り回された感がある。レンテリアの加入で、守備の負担が軽い一塁に移動できたと思いきや、カブレラの不調で、この4年間守ったことがない三塁に移動。それが悪い影響を与えたのか、前年の.296、102打点、21本塁打から.286、54打点、10本塁打と数字が半減している。
昨年.363を打って首位打者獲得、139打点、117得点、28本塁打は、真のMVPという活躍を見せたマグリオ・オルドニェスは、今年も打線の中軸として働いた。6月下旬に腹斜筋を傷めて3週間ほど休んだためにやや数字は落としているものの、3年連続100打点をクリアする103打点に、打率.317、21本塁打を打った。ただ、9月に.354、25打点をマークした打棒が、もっと早い時期に発揮されていたら、ティームもこれほど低迷しなかったかもしれない。昨年オルドニェスと首位打者を争ったプラシド・ポランコは、今年も安定感のあるシーズンを送った。4月は.247と低調だったが、5月、6月に調子を上げて.357をマーク。シーズン通算では.307の成績だった。昨年の無失策には及ばないものの、141試合と守備も堅実だったが、ゴールドグラヴ賞はダスティン・ペドロイアに譲っている。ゴールドグラヴと言えば、13回選出の名捕手イバン・ロドリゲスだが、打撃では衰えが見え始めた。シーズン前半72試合に出場して.288、29打点、4本塁打の成績は、昨年までMLB17年間で通算打率3割以上、15年連続でふたケタの本塁打を打ってきたロドリゲスとしては低い数字だった。それでも守備力の高さは健在。ホルヘ・ポサダの故障で正捕手不在のニューヨーク・ヤンキーズに目をつけられ、7月にトレードされた。カブレラの獲得で三塁手から外され、一時はトレードも希望していたブランドン・インジは、ロドリゲス移籍後、本来のポジションである捕手としてレギュラーの座を取り戻している。
デトロイトの開幕からのつまづきの原因には、カーティス・グランダースンの故障もあっただろう。昨年は史上3人目の20二塁打、20三塁打、20本塁打、20盗塁をマークし、若きスター選手としての道を歩み始めたグランダースンは、練習試合で親指を折って故障者リスト入り。4月下旬までメンバーから外れていた。復帰後は夏場までは、昨年の数字に匹敵するペースで打っていたが、9月に.192と落ち込んだため、2年連続の打率3割は逃した。しかし、昨年よりも四球の数が増えており、より信頼の置けるリードオフマンへと成長しつつある。ゲイリー・シェフィールドは、開幕から打撃不振が続いたうえ、6月には腹斜筋の故障で1カ月欠場。オールスターゲーム後は59試合で14本塁打と長打力は取り戻したが、通算500本塁打にはあと1本足りず。打率は.225しかなかった。
左打者が不足する打線にジャック・ジョーンズが加わったが、4月に2割も打てなかったために左翼手から外された。その後も調子は上がらず、6月10日を最後にメンバーから外された。ジョーンズと左翼を分け合っていたマーカス・テームズは、6月13日からの5試合で6本塁打を放つなど長打力を発揮したが、ホームランを打つ以外で打点を挙げられず、シーズン通算25本塁打で56打点の成績だった。
若手で注目されたのはマシュー・ジョイス。AAA級トレド監督のラリー・パリッシュから長打力を絶賛されたジョイスは、デビュー当初に2週間で5本の本塁打を打ったものの、打率が低かったためにマイナーリーグに逆戻り。7月に復帰すると今度はオールスターゲームをはさんで10試合で5本塁打を放ったが、それ以後は8月19日に1試合2本塁打を打っただけ。それでも、今年デビューの新人の中では最も多い92試合に出場して、打率.252、35打点、12本塁打の成績だった。グランダースンの代役として開幕メンバーに抜擢されたクリート・トーマスは、グランダースンが復帰するまで3割近い打率をマーク。途中足首の故障も経験したが、40試合に出場して.284を打っている。ジェフ・ラリッシュは5月30日のデビュー試合で打点を挙げるなど、得点圏に走者を置いた場面では.375、13打点と、出場機会が少ないながらも勝負強さを発揮している。
MLBにようこそ
ここ何年か、大物獲得のために将来有望な若手を次々と手放しているデトロイトだが、今年デビューした新人の中で、『ベースボール・アメリカ』誌で最も高い評価を得ていたのはマイク・ホリモンだった。05年にドラフトされたときには第16巡の指名だったが、3年でLow A級からAAA級まで昇格した、隠れた逸材である。今季はマイナーリーグでは打撃不振に陥っていたが、ラモン・サンティアゴが故障者リスト入りしていた6月にMLBに呼ばれ、一塁を除く、内野の3ポジションをこなした。もう26歳だからあまりぐずぐずしてはいられない。レンテリアが抜けた後の正遊撃手を争ってもらいたい。
09年への展望
現在盛んに報じられているのは、レンテリアが抜けた後の遊撃手獲得の噂。レンテリアと同じく期待はずれだったウィリスを出して、ボストン・レッドソックスのフリオ・ルゴを迎えようという話である。このトレードがまとまれば、投手スタッフの建て直しに、本格的に取り組んでいくことだろう。統括デイヴ・ドムブロウスキが、かつての人脈を使ってフロリダ・マーリンズから多くの選手を迎えているが、今年の補強はあまり芳しくなかった。このオフシーズンは、さらに市場を拡大して、積極的に動いてくるだろう。