08年度の概要
ドントレル・ウィリス、ミゲル・カブレラの放出で、03年世界一の主力選手は全員いなくなったフロリダ・マーリンズだったが、今年はシーズン終盤近くまでポストシーズン進出を争うなど、それほど悪くない一年だった。5月までは31勝23敗の成績でナショナルリーグ東地区の首位の座を保っていたが、6月からやや負けが目立つようになってきて2位に後退。夏場から調子を取り戻してきたニューヨーク・メッツに抜かれて、さらに順位が下がったものの、9月に盛り返してきてワイルドカード争いに加わった。最後は84勝77敗で地区3位の成績に終わったが、4月2日を最後に勝率5割を下回ったことがないという、しぶとさを披露している。監督2年目のフレディ・ゴンサレスは、この采配を評価されて、今年の最優秀監督賞の記者投票で第3位になった。
投手
ウィリスの放出で先発の柱がいなくなったが、06年の新人10勝カルテットの一人、右腕リッキー・ノラスコがエース級の働きを見せた。昨年は故障のために5試合にしか投げられなかったノラスコは、開幕時にはブルペンに控えていたが、右腕リック・ヴァンデンハークがわずか2試合の先発でマイナーリーグに送られたために先発に復帰し、シーズン前半で10勝をマーク。オールスターゲーム以降は勝ち星が伸びなくなったが、15勝、防禦率3.52、186奪三振はティームの三冠王だった。ノラスコと同じく、06年に新人で10勝を挙げながら昨年は故障に苦しんだジョシュ・ジョンスン、アニバル・サンチェスの両右腕もマウンドに戻ってきた。オールスターゲーム直前に復帰したジョンスンは、安定感のある投球で、シーズン後半に7勝1敗、防禦率3.50をマーク。8月27日には自身初の完封勝利も挙げている。サンチェスは、ジョンスンより3週間遅れての復帰。今季初登板で勝利投手になったものの、次第に打ち込まれるようになり、2勝5敗、防禦率5.57でシーズンを終えた。新人10勝カルテットの中でただ一人昨年もシーズンを全うできた左腕スコット・オルセンは、33試合に先発したものの、シーズン後半になって調子を落としたために8勝11敗、防禦率4.20。3年連続のふたケタ勝利はならなかった。
マーク・ヘンドリクスン、アンドルー・ミラーの両左腕は、先発スタッフとして迎えられた。タムパベイ・デヴィルレイズで投げていた04年、05年と続けて10勝以上をマークしたことがあるヘンドリクスンは、5月までに7勝を挙げたが、5月最後の先発で10失点を喫したのを境に急激に調子を落とし、ジョンスン復帰後は、ブルペンに回っている。06年の新人ドラフトでデトロイト・タイガーズから全体第6位指名を受けたミラーは、開幕当初は制球難に苦しみ、7月には右膝を傷めて故障者リスト入り。9月に復帰したが、リリーフで9試合投げて防禦率9.45と振るわなかった。
クリス・ヴォルスタッド、バーク・バーデンホップ、ライアン・タッカーの右腕3人は、先発投手として今年デビューした。バーデンホップは、ヴァンデンハークに代わって4月上旬に昇格。すぐにローテーションに加えられたものの、1勝3敗、防禦率6.75と不調。6月には肩の故障でメンバーを離れた。バーデンホップを引き継いだタッカーは、デビュー試合で初勝利を挙げたが、3試合連続で打ち込まれると、やはりブルペンに移動。7月6日に救援でMLB初勝利を挙げたヴォルスタッドは、そのままオールスターゲーム以降もローテーションに定着。シーズン後半は4勝4敗と五分の数字ながら、防禦率3.18は、ノラスコやジョンスンよりもいい数字だった。
昨年クローザーに抜擢されて32セーヴをマークした右腕ケヴィン・グレッグは、シーズン前半こそ無難なリリーフを見せていたが、8月下旬に2試合連続で4失点を喫し、セーヴ機会を逸すると、抑え役を外された。9月以降は、2年目の新人右腕マット・リンドストロムが抑えに抜擢され、11試合で防禦率1.74と好投、5個のセーヴを挙げている。シーズン通算でも66試合登板で防禦率3.14と、来季はクローザーに定着するチャンスだ。昨年はMLBでの登板がなかった右腕ジョー・ネルスンは、5月下旬にMLBに呼ばれると中抑えの柱とも言える活躍を見せた。6月は11試合に投げてわずか1失点。その後も毎月防禦率2点台と安定した投球で、59試合登板の3勝1敗1セーヴ、防禦率2.00の成績を収めている。ネルスンと同じく、2年ぶりのMLBでのマウンドになった右腕ダグ・ウェクターも、4月半ばに復帰してしばらくは好投していたが、シーズン後半は肩の故障もあって振るわず、19試合で防禦率4.91と数字を落としている。昨年2年ぶりにMLBのマウンドに戻って好投したジャスティン・ミラー、リー・ガードナーの両右腕は、いずれも不調。ミラーは、右肘の故障もあってシーズン後半は投球が冴えず、最後はマイナーリーグに送られてシーズンを終えた。ガードナーも、開幕早々に肘を故障して、今季は7試合にしか投げられなかった。逆に昨年9試合にしか投げられなかった右腕ローガン・ケンジングは、7月から8月にかけてマイナーリーグに送られることはあったものの、MLB5年目で自己最多の48試合登板だった。
左腕ではレニエル・ピントが、67試合に登板してティームをリードした。しかし、クローザー定着も期待されていたテイラー・タンカーズリィは今年も不調で、オールスターゲーム以降は1試合しか登板の機会がなかった。そこで、7月末にシアトル・マリナーズから38歳のヴェテラン、アーサー・ローズを呼んでみたら、25試合で1失点と完璧な救援を披露した。
野手
06年の新人賞ハンレイ・ラミレスは、この3年間でこのティームのスター選手に成長した。昨年は本塁打1本が足りずに30本塁打、30盗塁をマークできなかったが、今年は33本塁打、35盗塁で記録達成となった。盗塁数が51から減っているのは、故障を嫌ったためとも言われているが、四球の数を90に増やしたおかげで出塁率が.400となり、俊足長打のリードオフマンの称号を恣にした。今年は初めてオールスターゲームにも選ばれ、シーズン終了後にはシルヴァースラッガー賞を授かっている。しかし、一体いつまでラミレスがミスター・マーリンでいてくれるのか、それはクラブの方針次第だ。同じ年に新人として20本塁打を打った一塁手マイク・ジェイコブズ、二塁手ダン・アグラも、今年は自身最高の数字をマークしている。開幕当初は打撃が振るわなかったアグラだったが、5月に打率.347、26打点、12本塁打。シーズン前半だけで23本塁打を放った。この活躍が認められてオールスターゲームに出場したが、以降は成績が急落。92打点、32本塁打は、MLB3年目で最高の数字だが、打率.260はいささか物足りなかった。ジェイコブズは、ティーム最強の左打者として長打を放った。シーズン打率は.247と低いものの、大きな浮き沈みなく毎月平均して打点と本塁打をマークし続け、93打点、32本塁打はいずれもティーム2位の数字だった。左投手に対して打率.218という苦手意識を克服できれば、100打点、40本塁打を打つ事も出来るだろう。しかし、この年やはり新人で20本塁打を打ったジョシュ・ウィリンガムは、5月に故障者リスト入りして、2カ月以上も欠場することになった。6月下旬に復帰したが、打撃は復調せず、前年の89打点、21本塁打から、今季は51打点、15本塁打に数字を落としている。招待選手からMLBに復帰したホルヘ・カントゥは、ミゲル・カブレラが抜けた後の正三塁手の座を確保した。9月には22試合の出場で23打点をマークして、ティームの最後の追い上げに貢献している。シーズン成績は打率.277、95打点、29本塁打だったが、あと1本、本塁打を打っていれば、内野手4人が全員30本塁打という記録になっていた。
強打者揃いの内野手に比べて、左翼手のウィリンガムが故障がちだったこともあり、外野手はずいぶん見劣りがした。組織内No.1の素材と期待され続けてきたジェレミー・ハーミダが、右翼手として142試合に出場。規定打席にも到達したが、打率.249、61打点、17本塁打、6盗塁は、期待された数字にはほど遠かった。シーズン当初は第4の外野手だったコディ・ロスは、5月に放った14安打のうち10本が本塁打という、すさまじい打撃で、アルフレド・アメサガから中堅手の定位置を奪い取った。レギュラー定着後は勢いが衰えたものの、長打巧守の外野手という印象は周囲に与えただろう。アメサガは、定位置こそ失ったものの、内外野の控えとして125試合に出場、3年連続で100試合以上でプレイしている。フロリダの外野手で一番期待されているのは、もちろんキャメロン・メイビンだ。移籍直後には開幕からレギュラー中堅手と注目されたが、AA級でシーズンを迎え、9月17日にようやくマーリンになった。今季初試合で打点を挙げ、9月18日、19日と2試合連続で4安打を放つなど打撃は好調で、8試合の出場ながら、32打数16安打の5割ちょうどをマーク。走塁でも守備でも、いよいよその豊かな才能を発揮し始めた。デトロイトでは組織内No.1素材と評判だったメイビンは、ボストン・レッドソックスのトッププロスペクトだったラミレスのように、スーパースターになることができるだろうか。
40歳のルイス・ゴンザレスは、ハーミダ定着までは右翼を守り、ウィリンガムが故障してからは本来の左翼を務めた。5月には.337、17打点と活躍し、代打でもしばしばいい働きを見せた。開幕直後にフィラデルフィア・フィリーズから獲得したウェズ・ヘルムズは、左投手の苦手なジェイコブズに代わって一塁に入ったり、代打で起用されたりと、適材適所で働いたと言える。しかし、デトロイト・タイガーズで振るわなかったジャック・ジョーンズと5月に契約したが、18試合に出場して一塁打を4本しか打てずに解雇された。
ミゲル・オリボが抜けた後の正捕手には、巧守のマイク・ラベロが起用されることになっていた。しかし、春期練習中に左膝を故障したため、開幕メンバーには、やはり守備力には定評のあるマット・トリーナーと、MLB4年間で15試合しか出場経験のないポール・フーヴァーとが選ばれた。4月半ばにはラベロが戻って、フーヴァーと代わったが、打撃で苦しむラベロは控えに回り、トリーナーが主にマスクをかぶっていた。ラベロが6月下旬にマイナーリーグに送られ、7月にトリーナーが臀部を傷めて故障者リスト入りすると、MLB経験のないジョン・ベイカーを昇格させたり、とうとうワシントン・ナショナルズから放出されたポール・ロドゥカまで呼び戻すことになったりしたが、結局最後に正捕手になったのはベイカーだった。昇格直後は2割そこそこしか打てなかったものの、8月に入ると打力が向上、打率.351、12打点と大当たりだった9月には、ほとんどの試合で先発を務めている。盗塁阻止率が2割未満であるなど、守備にやや難点はあるが、現在のところは来季の正捕手候補の筆頭である。
MLBにようこそ
2005年の新人ドラフトでフロリダは、追加も含めて5人を第1巡で指名しているが、その中で最も早く名前を呼ばれたのが右腕クリス・ヴォルスタッドだった。高卒からのプロ入りだったが、初のフルシーズンになる06年には、Low A級で11勝8敗、防禦率3.08、昨年はHigh A級、AA級の2階級合計で12勝11敗、防禦率4.16と、まだ二十歳そこそこというのにすでに主力投手として活躍し、組織内No.1投手と評判をとっていた。今季も開幕からAA級で投げていたが、7月に待望のMLB昇格。シーズン後半はローテーションに定着している。ヴォルスタッドがこのまま順調に成長すれば、スコット・オルセンが抜けた先発スタッフの穴は十分に埋められるだろう。
09年への展望
この稿を書いている時点で、すでにオルセン、グレッグ、ジェイコブズ、ウィリンガムという主力選手を放出している。オウナーのジェフリィ・ロリアが得意とするのは、ティームが世界一になった直後の人件費高騰を嫌ってのガレージセールだが、今回の積極的な人事はやや趣を異とするようだ。その一方で、2012年に新球場オープンというニューズも伝えられた。マイアミからの移転、最悪の場合にはティームそのものが消滅という危険もあったマーリンズは、ようやく腰を落ち着けて、長期的展望に立ったティーム作りに専念できるのだろうか。