ヒューストン・アストロズ

08年度の概要
昨年はシーズン途中で統括、監督が解任されるという騒ぎもあったヒューストン・アストロズは、今年もシーズンを折り返すまでは苦しい試合運びが続いていた。4月をほぼ五分の成績で終え、5月に17勝11敗と勝ち越して一時はナショナルリーグ中地区2位にもなったが、6月には今季最長の8連敗を喫するなどして、シーズン前半は44勝51敗の最下位まで沈んでしまった。これで終わったかと思われたが、後半に入ると俄然調子を上げてきて、8月には2度の8連勝で4位、9月6日からさらに6連勝で3位に浮上し、ワイルドカードを争えるところまで数字を伸ばしてきた。前半の負け越しが響いてポストシーズン進出はならなかったものの、86勝75敗で中地区3位の成績。今年が監督として初のフルシーズンになったセシル・クーパーは、今年の最優秀監督賞候補にも名前が挙がった。

投手
エースの右腕ロイ・オズウォルトは、開幕3連敗、防禦率9.00と冴えないスタートだった。シーズン前半でも7勝8敗、防禦率4.56と不調だったのに加えて、臀部の筋肉を傷めて7月に故障者リスト入り。しかし、2週間休んだ後のオズウォルトは、本来の投球を取り戻していた。8月は4勝1敗、防禦率2.51、9月には2試合連続完封勝利も含めて5勝1敗、防禦率1.42とさらに調子を上げ、終盤の追い上げに貢献した。オズウォルトの投球が素晴らしかった分、他の先発投手はかなり見劣りがした。右肩の故障から復帰のブランドン・バッキは、MLB7年目で初めて規定投球回数を超えることができたが、9勝14敗と負け越し、防禦率は6.05もあった。打撃では.277で2本塁打を打っているのは、さすが元内野手と言える。左腕ワンディ・ロドリゲスは、開幕早々に足の付け根を傷めて1カ月半欠場。5月下旬にローテーションに戻ってからは、比較的安定した投球を見せたが、勝ち星が伸びず、3年連続の9勝止まりだった。ただ、防禦率が3.54と大きく向上しており、来季以降の飛躍が期待できそうである。昨年途中にニューヨーク・ヤンキーズから来た右腕ショーン・チャコンは、4月に防禦率3.32と好投したが、勝ち負けなし。5月、6月と次第に数字が悪くなってくると、ティーム方針を批判するようになり、とうとうティーム統括に暴力を振るって、6月下旬に解雇された。開幕時には5人目の先発投手だった右腕クリス・サムプスンも、開幕から10試合の先発で防禦率6点台と振るわず、ブルペンに回された。しかし、救援としては43試合登板で防禦率2.93と、意外な活躍を見せている。

昨年は42試合全てリリーフでマウンドに登った右腕ブライアン・モーラーは、開幕当初はブルペンに控えていたが、ロドリゲスの故障者リスト入りに伴って、ローテーションに加えられた。5月から3カ月続けて2勝ずつを挙げ、8月には4勝1敗、防禦率3.44の好成績で、2000年以来8年ぶりのふたケタ勝利をマークした。7月にはサンディエゴ・パドレスから左腕ランディ・ウルフを獲得。移籍後は12試合に先発を務めて、6勝2敗、防禦率3.57とこちらも好投。2ティーム合計で12勝は、03年以来のふたケタ勝利だった。モーラー、ウルフは見事なカムバックを披露したが、招待選手から2年ぶりにMLB復帰を果たした右腕ルネルビス・エルナンデスは、4試合に先発で勝ち星なしの3敗、防禦率8.38の成績に終っている。7月31日にコロラド・ロッキーズから獲得した新人右腕アルベルト・アリアスは、9月に再昇格した最初の試合でMLB初先発を務めて勝ち投手になったが、続く2試合はいずれも3回をもちこたえられずにマウンドを降りている。

ブラッド・リッジを放出して、昨年47セーヴでタイトルを獲得した右腕ホセ・バルベルデをアリゾナ・ダイアモンドバックスから迎えた。ところが、4月は防禦率6.92、セーヴ失敗が3度と打ち込まれた。5月には1勝10セーヴ、防禦率1.20と立ち直ったかに見えたが、6月、7月と防禦率5.75とまたしても低調。しかし、8月以降はわずか2失点、18回のセーヴ機会で失敗はたったの一度だけと、ほぼ完璧な救援ぶりを披露して、最終的には44セーヴをマーク、2年連続のタイトルを手にしている。12年ぶりに古巣に戻ってきた右腕ダグ・ブロケイルは、バルベルデの74試合に次ぐ72試合に登板、7勝5敗2セーヴ、防禦率3.93の成績を収め、41歳という年齢を感じさせないタフなところを見せた。リッジとの交換でフィラデルフィア・フィリーズから来た右腕ジェフ・ギアリーは、5月中旬まで防禦率1点台と好投していたが、右脚付け根を傷めて故障者リスト入り。6月に復帰直後はやや打たれたが、オールスターゲーム以降は22試合で防禦率2.81と、本来の調子を取り戻している。ここに7月下旬、ヤンキーズから右腕ラトロイ・ホーキンズが加わると、24試合でわずか3失点と、ミネソタ・トゥインズ時代を髣髴とさせる投球を見せた。35試合で防禦率5.02のオスカル・ビヤレアル、26試合で防禦率7.50のデイヴ・ボルコウスキ、故障でシーズンの大部分を欠場したフェルナンド・ニエベなど、不振に終った選手もいたが、ヒューストンの右腕救援は、全体的に見て強力だったと言えるだろう。

例年救援左腕が手薄なヒューストンだが、今年は2人が常時ブルペンに控えていた。新人ウェズリィ・ライトは、ティーム第3位の71試合に登板。コントロールを乱して失点を重ねることが多く、右打者に対して簡単に四球を許してしまう点は改善しなければなるまい。昨年はボルティモア・オリオールズで39試合に登板しているティム・バーダクは、4月下旬にMLBに復帰した。5月までは無失点に抑えるなどいい投球をしていたが、オールスターゲーム以降は、防禦率6.85と打ち込まれた。

野手
5人をボルティモア・オリオールズに譲り渡してミゲル・テハダを獲得するというトレードには、誰もが驚かされたが、肝心の本人の成績が全く振るわなかった。3月、4月は打率.345、22打点、4本塁打と好調だったが、6月から8月までの3カ月間のわずか18打点、6本塁打。シーズン通算.283、66打点、13本塁打は、オークランド・アスレティックスで定位置を得た1998年以来の低い数字だった。テハダはこれといった理由もなく不振に終わってしまったが、カルロス・リーは故障でシーズンを棒に振ってしまった。シーズン前半だけで打率.302、76打点、21本塁打。8月に入って9試合で打率5割、13打点、4本塁打と、猛打をほしいままにしていたが、8月9日の試合で投球を左手の薬指に受けて骨折。手術を受けることになったため、リーのシーズンはそこで終わりになった。テハダの不振、リーの欠場のため、ランス・バークマンにはやや負担がかかりすぎたのかもしれない。5月に打率.471をマークするなど、6月までに打率.365、68打点、22本塁打と打ちまくっていた。ところが、7月に入ると突如として打球が飛ばなくなり、29試合も本塁打が出なかった。そのうえ、リーが抜けた8月中旬からは打率まで下がり始め、9月は.171しか打てずにシーズン終了。通算成績.312、106打点、29本塁打は、前半の勢いからすると物足りない成績だった。

昨年は新人賞候補にもなったハンター・ペンスは、159試合のバークマン、158試合のテハダに続く、157試合に出場。やや振り回す打撃のせいか.269と打率は低かったが、83打点、25本塁打は、6番や7番を打つ打者としては十分な数字だろう。ペンスとともに下位打線を任されることが多かったタイ・ウィギントンは、開幕して間もなく左手の親指を骨折。その影響でシーズン前半は振るわなかったが、8月には.379、26打点、12本塁打と好成績を残している。特に、リーが抜けた後の左翼手を無難にこなした点は評価される。ジェフ・ブラムは、ウィギントンと三塁の守備位置を分け合って68試合に先発出場。シーズン通算打率は.240と低かったが、53打点、14本塁打は1999年にMLBデビュー以来最高の数字だった。8月にサンフランシスコ・ジャイアンツから三塁手ホセ・カスティヨを獲得したが、15試合しか出場機会がなかった。

中堅手は春期練習から複数の選手が争っていたが、開幕試合でレギュラーに抜擢されたのは、フィラデルフィア・フィリーズから来た新人マイケル・ボーン。持ち前の快足と守備範囲の広さは見せてくれたが、課題は打撃。打率が低いうえに、四球も少ないために、通算出塁率はわずか.288で、リードオフマンとしては大いに問題ありだった。ここ2年間は故障のために出場機会が減っていたダリン・アースタッドは、3年ぶりに140試合に出場した。攻守ともに堅実な働きを見せ、9月には1年の契約延長を取り付けている。マイナーリーグでは三拍子揃った外野手と評判のレジー・アーバークロムビーは、あまり出場機会を与えられなかったが、少ない打数で初めて3割をマーク。守備や走塁でもいいところを見せた。

ゴールドグラヴ2度受賞のヴェテラン捕手ブラッド・オースマスから、期待の新人J・R・トールズへの引き継ぎが行なわれるはずだったが、トールズが開幕から打率1割台の打撃不振に陥り、6月にはマイナーリーグに送られた。その後は12試合に出場しただけで、3安打しか打てず、シーズン通算成績は打率.137、16打点、4本塁打と、すっかり期待はずれに終わってしまった。結局オースマスがティームで一番多い81試合にマスクをかぶり、投手スタッフを引っ張った。トールズに代わってMLBに呼ばれたウムベルト・キンテロは、59試合に出場して打率は.226と振るわなかったが、4割近い盗塁阻止率をマークするなど、いい動きを見せた。

昨年後半コロラド・ロッキーズに移って、初優勝に尽力したマツイ・カズオを3年契約で迎えたが、今年も故障がちだった。腸の病気のため、およそ3週間遅れてメンバーに合流。6月に入って打撃が上向いてきたところで、今度は右太腿裏の故障で2週間欠場。復帰後は打率3割と好調ではあったが、8月に腰痛でさらに2週間休んでいる。結局都合3度の故障者リスト入りがあったために、今年も出場試合数は100試合を下回った。マツイ欠場時に主に二塁を守ったマーク・ロレッタは、その他に一塁、三塁、遊撃も守って101試合に出場して、打率.280、38打点、4本塁打の成績を収めている。昨年は故障がちだったデイヴィッド・ニューハンは、シーズン序盤はほとんどマイナーリーグでプレイ。しかし、6月にMLBに復帰してからは、左打ちの内外野手としていい働きをした。

MLBにようこそ
昨年はハンター・ペンスやトロイ・パットンのような、将来有望な若手がいくたりかMLBにデビューしているが、今年呼ばれた新人は目立たない選手が多かった。その中でおもしろい選手を挙げるとするならば、28歳の一塁手マーク・サッコマノが適当だろう。2003年の新人ドラフトでは第23巡と遅い指名だったサッコマノだが、翌04年にはHigh A級で22本塁打と、持ち前の長打力を発揮した。06年はAA級で20本塁打、07年からはAAA級でプレイして、それぞれ22本、27本の本塁打を打ち、ついに9月8日にMLBデビューを果たした。この試合に代打で出場したサッコマノは、史上24人目となる初打席初球本塁打という珍しい記録をマークしている。

09年への展望
テハダの打撃不振、リーの故障など、監督クーパーが開幕前に思い描いていたのとはやや違った展開になったものの、打線はさほど悪くはない。モーガン・エンズバーグが落ち込んで以来レギュラーが定まらない三塁と、新人トールズが伸び悩んでいる捕手とが定着すれば、リーグでも有数のメンバーを揃えることになる。オズウォルトが突出している先発スタッフには、実に10年ぶりにヒューストンで投げることになった左腕マイク・ハムプトンが加わる。最後にアストロだった1999年にマークした22勝4敗、防禦率2.90の数字はとても期待できないが、シーズンを無事に務め上げ、ふたケタ勝利を挙げてもらいたいところだろう。