08年度の概要
日本で実績を作ったトレイ・ヒルマンが新しい監督になったカンザスシティ・ロイアルズは、さほど悪くない08年を送ったと思われる。シーズン当初は、昨年のアメリカンリーグ中地区優勝クリーヴランド・インディアンズや、オフシーズンに大きな補強をしたデトロイト・タイガーズが振るわないのを尻目に、首位に立っていた。しかし、4月17日からの7連敗、5月19日からの12連敗で一気に最下位転落。8月には7勝20敗と大きく崩れて、今年も低迷の続くまま一年が終わるかと思われた。しかし、9月に入るや俄然調子を上げてきて、9月22日からのデトロイトとの3試合シリーズを全勝して4位に浮上すると、そのまま逃げ切ってシーズンを終えた。通算75勝87敗で、勝率5割には届かなかったものの、5年ぶりにアメリカンリーグ中地区最下位の座から抜け出せたのは、注目すべきだろう。
投手
2003年に中地区優勝を争ったときでさえ1人しかいなかったふたケタ勝利投手が、今年は2人も出ている。シアトル・マリナーズから移籍2年目の右腕ギル・メッシュがティーム最多の14勝、02年の新人ドラフト全体第6位指名右腕ザック・グラインキが13勝をマークした。これは、1999年にジェフ・スーパン、ホセ・ロサドが10勝ずつを挙げて以来のことである。昨年は自己ベストの防禦率3.67と好投しながら9勝に終わったメッシュは、今季前半6勝8敗、防禦率4.71と低調。しかし、オールスターゲーム直後の4試合でわずか5失点と好投して4連勝、ふたケタ勝利に到達した。9月にも4勝を挙げ、03年にマークした自己ベストの15勝に次ぐ、14勝、防禦率3.98という成績を収めた。投げることの重圧を克服したグラインキは、前年ブルペンで実績を作って、今年は開幕からローテーションに定着。4月は5試合に先発して負けなしの3勝、防禦率1.25と見事な投球を披露した。シーズン中盤までは打ち込まれる場面も見られたが、9月に4勝1敗、防禦率2.18と持ち直し、自身初めてのふたケタ勝利となる13勝をマーク。防禦率3.47は、リーグ10位の好成績だった。
08年には新人ながら12勝、防禦率3.87の好成績を挙げて新人賞の得票第3位だった右腕ブライアン・バニスターは、2年目の不運に見舞われている。開幕3連勝とスタートは良かったが、その後すぐに4連敗。6月23日に今季7勝目を挙げたが、それからほとんど3カ月近くも勝ち星を挙げられず、9勝16敗、防禦率5.76と前年から大きく落ち込んだ。06年のドラフト全体第1位指名右腕ルーク・ホシェヴァーは、4月20日にMLBに呼ばれてローテーション入り。6勝7敗、防禦率5.10の成績でシーズンを折り返したが、オールスターゲーム後の6試合で5連敗、防禦率6.68と打ち込まれた。8月半ばに肋骨の打撲で故障者リスト入りすると、そのままメンバーには戻らなかった。統括デイトン・ムーアの引きがあったか、昨年途中にアトランタ・ブレイヴズからやって来た右腕カイル・デイヴィーズは、04年にMLBにデビューして以来、最高の数字を挙げた。マイナーリーグで開幕を迎えたが5月下旬にローテーションに定着。9月には4勝1敗、防禦率2.27と好投し、シーズン通算9勝7敗、防禦率4.06の成績だった。ホシュヴァーやデイヴィーズが昇格する前には、右腕ブレット・トムコや、03年以来先発で投げた経験のない左腕ジョン・ベイルがローテーションに加わっていた。トムコは、開幕試合は救援で投げたが、今季2度目の登板で先発を務め勝利投手になった。しかし、以後9試合に先発して1勝6敗、防禦率6.62と打ち込まれてブルペンに移動。6月には解雇された。ベイルは開幕から3連敗、防禦率7.63と投球内容そのものも良くなかったが、左肩を傷めたためにその後4カ月以上もメンバーを離れることになった。しかし、9月に復帰したときには、救援投手として10試合を無失点に抑えている。ホシュヴァーが抜けた夏場以降に昇格した右腕ブランドン・ダックワースは、7試合で3勝3敗、防禦率4.50と、こちらはまずまずの数字だった。
昨年ルール5ドラフトでカンザスシティにやって来た右腕ホアキム・ソリアは、見事にクローザーとして大成した。開幕から17試合連続無失点の投球で10セーヴをマーク。今年初めてセーヴ機会に失敗したのが6月7日というから、抜群の安定感だった。8月にやや打ち込まれたものの、9月は再び10試合に登板して無失点、1勝9セーヴと、完璧な内容でシーズンを締めくくった。42セーヴは、ジェフ・モンゴメリーが93年に45セーヴを挙げて以来、ティーム史上3人目のシーズン40セーヴの記録である。前抑えに定着したのはコロラド・ロッキーズから来た右腕ラモン・ラミレス。ティーム最多の71試合に登板して、防禦率2.64、投球回数とほとんど同数の70三振を奪っている。右腕レオ・ヌニェスは、5月まで防禦率1.71と好投していたが、その後背筋の故障で2カ月近くマウンドを離れていた。復帰後はやや調子が落ちたが、ラミレスとともに2点台の防禦率をマークしてシーズンを終えた。右腕ホエル・ペラルタは、06年にカンザスシティに来てから2年続けて60試合以上でマウンドを務めてきたが、今季は春期練習中から不調で開幕メンバーから外れていた。4月半ばに昇格しても調子は戻らず、以後はマイナーリーグとMLBとを往復するありさまで、防禦率5.98でシーズンを終えた。テキサス・レンジャーズでは先発で成功しなかった右腕ロビンソン・テヘダを6月下旬に獲得。長抑えとして定着し、25試合の登板で防禦率3.20といい投球を見せた。2年契約で迎えられた新人右腕ヤブタ・ヤスヒコはストライクが投げられず、6月にマイナーリーグに送られた。9月の40人枠でマウンドに戻ったが、大量得点差のついた試合でしか起用されず、全く期待はずれのシーズンだった。3年ぶりのMLB復帰を果たした右腕ノモ・ヒデオも、春の練習試合のときから力の衰えは明らかで、本来ならばMLBのマウンドに立つことなど不可能だったはずだ。
昨年74試合に登板してブルペンの中心になったヴェテラン左腕ジミー・ゴブルは、春から余り調子が良くなかった。しかし極めつけは、7月21日のデトロイト・タイガーズとの試合で、この日3番手の投手としてマウンドに登ったゴブルは、1イニングだけで7安打4四球を許して10点を失った。悪いことは重なるもので、その直後に腰を痛めて故障者リスト入りしたが、9月に復帰したときには8試合で無失点と調子を取り戻していた。ゴブルが不調だった分、ロン・マヘイがよく働いた。7月までは防禦率1.75とよく投げていたが、足の裏を傷めた夏場は数字を落とした。それでも、57試合で防禦率3.48は、左腕投手の中で最も優れた成績である。
野手
MLB2年目でのさらなる成長が期待されたアレクス・ゴードン、ビリー・バトラーの2人は、その豊かな才能を発揮することができなかった。昨年151試合に出場したゴードンは、4月に打率.306と、なかなかの滑り出しを見せたが、以後は2割5分前後の打率に低迷。夏場に太股の故障で3週間欠場。復帰後の9月に.311を打ったものの、打率.260、59打点、16本塁打は、前年とあまり変わり映えのしない数字だった。今年初のフルシーズンを経験するバトラーは、4月14日に今季第1号を打ってから本塁打が出ない。5月下旬から約1カ月マイナーリーグに送られ、ようやく2本目の本塁打が出たのは7月3日のことだった。それでも、オールスターゲーム以後は57試合で打率.305、36打点、9本塁打と遅ればせながら、本来の打棒を揮った。
シアトル・マリナーズから移籍のホセ・ギエンは、月によって打率3割か、2割前後かと浮き沈みの激しいシーズンだった。そのため打率は.264と低かったが、ティーム首位の97打点、20本塁打を打って、打線の中心になった。ギエンに次ぐ打力を披露したのは、中堅手ダビド・デヘスス。開幕試合で右足首を傷め、4月前半を欠場したが、以後はほぼフル出場を果たして打率.307、73打点、12本塁打。打撃主要3部門では、デビュー以来最高の数字をマークした。デヘスス欠場時に中堅を守ったジョーイ・ギャスライトは、ティーム首位の21盗塁をマークしたものの、相変わらず打撃が課題だ。出塁率.311では、リードオフマンは任せられない。来季はデヘススが本来の守備位置である中堅、1番打者に戻ることだろう。右翼手マーク・ティーヘンは、年によって成績の上がり下がりが激しい選手である。06年に18本塁打を打ったが、昨年は半分以下の7本。今年は15本塁打に戻してはいるが、打率は前年の.285から.255にまで下がっている。
昨年正遊撃手に抜擢されたトニー・ペニャは、打率2割にも満たないという打撃不振でレギュラーから外された。6月から遊撃手を任された新人マイク・アヴィレスが、得意の打撃で定位置をつかんだ。デビュー以来毎月3割を超える打率をマークし続け、シーズン通算では打率.325、51打点、10本塁打の成績だった。03年にカンザスシティの正遊撃手として活躍し、新人賞にも選ばれたアンヘル・ベロアは、ついにMLBに呼ばれないまま、6月にロサンジェルス・ダジャーズに放出されている。ティーム最年長の38歳で二塁を守るマーク・グルジラネクは、2番打者として、ゴールドグラヴ受賞経験を持つ守備も健在だった。しかし、8月に右足首を傷めて故障者リスト入りし、そのままシーズンを終えた。グルジラネクが抜けた後は、ヴェテランの内外野手エステバン・ヘルマンが二塁に入ることもあったが、9月にはMLB3年目のアルベルト・カラスポが定着。シーズン通算でも3割以上の打率をマークしているカラスポが来年の正二塁手になるだろうか。主に一塁を守ったのはヴェテランのロス・グロード。自己最多の122試合に出場して400回以上も打席に立ったが、シーズン当初のバトラーと同じく、長い当たりが出ない。結局今年は3本塁打しか打てず、打点も37にとどまった。長打力のあるライアン・シェアリーは開幕メンバーに残ることができず、9月に出場選手枠が40人になって、やっとMLBに昇格した。復帰後は20試合で打率.301、20打点、7本塁打と打ちまくったが、シーズン通してこの調子で打てるかどうか。
ジョン・バック、ミゲル・オリボが併用された捕手は、それぞれが持ち味を活かして働いた。04年途中にカンザスシティに来てから、堅実な守備で本塁を守ってきたバックが106試合に先発。MLBデビュー以来4年続けてきたふたケタ本塁打は途絶えたが、それ以外はほぼ例年と変わらない数字をマークしている。一方オリボは、残り56試合で先発出場した。2年前から長打力が増し、今季も84試合の出場ながら12本塁打を放っている。
MLBにようこそ
どちらかと言うと野手の方に好素材が多いロイアルズだが、カルロス・ロサは、『ベースボール・アメリカ』誌が今年の組織内7位のプロスペクトと評価した右腕投手である。ドミニカ共和国出身のロサは、2001年にロイアルズと契約。プロ入りからしばらくはルーキー級やLow A級で投げていたが、この2年間で急成長して、今年はAA級からMLBまで一気に昇格している。マイナーリーグでは先発を務めることが多かったが、MLBではブルペンに控えることになるかもしれない。95マイルを超す速球と、チェンジアップ、カーヴボールを得意球にしている。
09年への展望
打力向上を狙って、ワールドシリーズ直後にフロリダ・マーリンズの長打者マイク・ジェイコブズを獲得。さらに、ボストン・レッドソックスから機動力を使えるココ・クリスプも迎えた。これで今年は不調に終わったバトラー、ゴードンの両若手が、シーズン通して期待通りの打力を発揮してくれると、ティームの得点力も向上するはずだ。ただ、このトレードで、ヌニェス、ラミレスという、今年好投した右腕救援投手を2人も失ったのは大きな痛手で、クローザーのソリアの負担を軽くするためにも、ブルペンの補強も考えるべきだろう。