08年度の概要
今年のロサンジェルス・エンジェルズ・オヴ・アナハイムは、開幕試合でミネソタ・トゥインズに敗れたものの、その後すぐ3連勝でアメリカンリーグ西地区首位に立ってからが強かった。4月に首位争いをしていたオークランド・アスレティックスが、5月に入って成績を落として2位に後退すると、エンジェルズが独走の態勢に入る。5月31日から、今季最長の7連勝、7月には19勝6敗と大きく勝ち越して、2位とのゲーム差は12.5に開いた。エンジェルズの勢いは止まるところを知らず、8月以降は32勝を積み重ねて、100勝62敗でシーズン終了。2位のテキサス・レンジャーズを21ゲームも引き離しての圧勝であった。シーズン100勝は今年のMLB30ティームの中で唯一の数字だが、これは1961年にエンジェルズ創設されて以来、最高の成績でもあった。地区シリーズでは、この5年間で3度目の顔合わせになるボストン・レッドソックスと対面。過去2度のシリーズでは1勝もできずに敗退しているが、今年は辛くも1勝を挙げたものの、赤靴下のティームを降すことはできなかった。
投手
昨年19勝、防禦率3.01、179奪三振でサイ・ヤング賞候補にもなった右腕ジョン・ラッキィが二の腕を傷めて開幕に間に合わず、また、ラッキィに次ぐ18勝、防禦率3.40、160奪三振をマークしたケルビム・エスコバルは、右肩の手術を受けたためにシーズン全休。エンジェルズはエース2人がいない状態で開幕を迎えた。シーズン当初のローテーションを支えたのは、左腕ジョー・ソーンダーズ、右腕エルビン・サンタナの両投手だった。昨年はローテーションのやりくりが苦しいときにマイナーリーグから呼ばれることが多かったソーンダーズは、開幕からローテーションに定着。開幕から6連勝をマークするなど、シーズン前半で12勝5敗、防禦率3.07という見事な成績を収め、オールスターゲームにも選ばれた。後半は調子を落としたものの、17勝、防禦率3.41はティーム首位の数字だった。昨年7勝14敗、防禦率5.76と落ち込み、トレードされる可能性もあったサンタナは、見事に復活を遂げている。ソーンダーズと同じく、開幕6連勝と好スタートを切ったサンタナは、シーズン前半に11勝3敗、防禦率3.34の好成績でオールスターゲームに出場することになった。サンタナも後半は振るわなかったが、MLB4年目で初めて防禦率3点台でシーズン終了、ティーム最多の214奪三振、自己ベストに並ぶ16勝と活躍した。
ラッキィの復帰は5月中旬だったが、6月には5勝負けなしで防禦率1.16をマークするところは、さすがにサイ・ヤング賞候補と言える。しかし、7月は防禦率6.06、シーズン最後の登板では3回途中までで10失点を喫するなど、大きく崩れる場面も時折見られた。それでもシーズン通算では規定投球回数をクリアし、12勝5敗、防禦率3.75、130奪三振の成績を収めている。開幕投手を務めた右腕ジェレッド・ウィーヴァーは、ソーンダーズやサンタナやラッキィのように勝ち星が続かない代わりに、連敗もしないというシーズンだった。MLB3年目で初めて規定投球回数を超え、152奪三振も自己ベストの数字だったものの、勝ち星は前年の13勝から11勝に減り、防禦率も年々悪くなっている。オルランド・カブレラとの交換で獲得した右腕ジョン・ガーランドも、冴えない投球が続いた。5月に2勝負けなし、防禦率1.78と好投した以外は、全ての月で防禦率4点台から5点台と打ち込まれていた。9月には2勝を挙げたとは言え、防禦率7.18は打たれすぎた。ラッキィの代わりに開幕からローテーションに加えられた右腕ダスティン・モーズリィは、5試合の先発で1勝2敗、防禦率7.30の不調でブルペンに回された。9月に再昇格したときには4試合で先発しているが、やはり1勝1敗、防禦率6.06と振るわなかった。
フランシスコ・ロドリゲスは、4月は防禦率3.86とやや打ち込まれながらも11セーヴをマークしたロドリゲスは、その後も毎月ふたケタのセーヴを挙げ、7月20日には早くも昨年の40セーヴと並んだ。8月20日は自身最多となる48個目のセーヴ、8月が終わった時点で53セーヴとなり、ボビー・シグペンが1990年に達成したシーズン57セーヴのMLB記録がいよいよ近づいてきた。ロドリゲスがシグペンに並んだのは9月11日。2日後の9月13日には3点差と余裕はあったものの、1イニングを抑えて新記録を樹立した。その後ロドリゲスは、9月20日にシーズン60セーヴに到達し、通算成績は2勝3敗62セーヴ、防禦率2.24、76奪三振だった。ロドリゲスの新記録達成を支えたのは、前抑えの右腕スコット・シールズだ。今季も64試合に登板して、5年連続で60試合以上にマウンドを務めている。6勝4敗4セーヴ、防禦率2.70、64奪三振と安定感があり、三振も奪えるという、頼りになるセットアッパーである。昨年はシールズと並んで、試合終盤を支えた右腕ジャスティン・スパイアは、2勝8敗、防禦率5.03とひどい落ち込みようだった。今季喫した8敗のうち6敗は本塁打を打たれたためで、被本塁打15本は、救援投手としてはあまりにも多すぎた。昨年51試合に登板している右腕クリス・ブーチェクは、春期練習中から故障がちで、今季は10試合登板で防禦率10.13と振るわなかった。
新人では右腕ホセ・アレドンドの好投が目を引いた。5月14日のデビュー試合ではいきなり本塁打を浴びたが、その後10試合連続で無失点。9月にはやや打たれたものの、シーズン通算で10勝2敗、防禦率1.62の好成績を収めている。練習試合で三振の山を築いて注目された右腕ダレン・オデイは、開幕メンバーに抜擢され、シーズン当初は好投していたが、やや打たれ始めた6月にマイナーリーグに送られると、そのままシーズンを終えている。リッチ・トムプスン、ケヴィン・ジェプセンなど、フューチャーズゲームのメンバーに選ばれたことがある両右腕も昇格したが、こちらはそれほど目立った活躍はしていない。
この2年間、ダレン・オリヴァーはエンジェルズのブルペン唯一の左腕投手として活躍している。今季は54試合に登板して、7勝1敗、防禦率2.88をマークした。オリヴァーの強みは、長いイニングを投げられることと、右打者に対してもいい投球をするということで、そのおかげで、左腕投手を小刻みに注ぎ込む必要がない。
野手
ミネソタ・トゥインズではゴールドグラヴの常連だったトリイ・ハンターを中堅手に迎え、左翼にギャレット・アンダースン、右翼にブラディミル・ゲレロ、さらにゲイリー・マシューズが4人目に控える外野手は、他ティームの垂涎の的であったろう。ハンターは、4月に.317、16打点、4本塁打を打っていたが、5月以降は低調。7月にはオールスターゲームをはさんで.314、21打点、9本塁打と当たりを取り戻したが、8月からは3本塁打しか打てず、シーズン通して見ると好不調の波が大きかった。守備でもかつてのような躍動感が見られなくなったものの、失策なしと堅実なところを見せ、8年連続のゴールドグラヴに選出されている。ゲレロはシーズン前半が打率.286、50打点、15本塁打と当たっていなかった。オールスターゲームを過ぎてからようやく本来の打撃を取り戻し、56試合で.330、41打点、12本塁打を打ったものの、故障で長期欠場した2003年を除くと、シーズン通算での打率.303、91打点、27本塁打は、98年以来最低の数字だった。ここ数年は故障を抱えながらのプレイが続くアンダースンは、左翼手と指名打者との掛け持ちをしている。昨年もシーズン後半に当たっていたアンダースンは、今年も59試合で打率.335、40打点、7本塁打を打ち、勝負強さを披露している。マシューズは、外野の全てのポジションと指名打者までこなして127試合に出場。しかし、テキサス・レンジャーズに在籍していた06年にマークした打率.313、102得点、79打点、19本塁打、10盗塁をピークに、成績は年々低下している。昨年の足首の故障から立ち直ったホアン・リベラは、マシューズと同じく外、野の3ポジションと指名打者とに起用されて、89試合出場だったが打率.246、45打点、12本塁打は、200打数近くも多く打っているマシューズの数字とほとんど変わらない。昨年のレジー・ウィリッツは、2年目の新人ながら、規定打席をクリア。打率.293、出塁率.391、74得点、27盗塁と、いい働きを見せたが、今年はハンターの加入で出番が大きく減っている。
一塁のケイシィ・コッチマンは、4月に打率.326、19打点、6本塁打と好スタートを切った。6月に.220と調子を落としたものの、7月にはまた長打が出るようになり、7月28日終了時点で早くも昨年を上回る12本塁打。打率.287、54打点をマークしていた。しかし、クラブはコッチマンをアトランタ・ブレイヴズに譲って、強打のマーク・テイシェイラを獲得。ティームの新しい3番打者は、54試合で打率.358、43打点、13本塁打と活躍し、エンジェルズの地区優勝に大きく尽力している。三塁手のショーン・フィギンズは、5月に2度太腿裏を傷めたのが影響したか、6月に復帰してからは打撃走塁ともに冴えなかった。MLB昇格以来初めて1つの守備位置で100試合以上に先発したものの、打率.276、22打点、1本塁打、34盗塁は、この5年間では最低の数字だった。フィギンズ欠場時には、ロブ・クウィンランが三塁で先発。クウィンランは一塁も守るが、やはり一塁が本来の守備位置であるケンドリ・モラレスは、今年は外野を守ることも多かった。しかし、期待されている打撃では、打率.213と今年も振るわなかった。
二塁手のハウイー・ケンドリックは、開幕から9試合で.531と打ちまくっていたのに、左太腿裏を傷めて故障者リスト入り。5月下旬に復帰してからはまた巧打を披露していたが、8月下旬に再び左太腿裏の故障で1カ月休んだ。シーズン通算打率.306をマークしたものの、出場試合数は今年も100を超えられなかった。オルランド・カブレラが去った後の遊撃手には、組織内トップクラスの長打力を備えた新人ブランドン・ウッドが抜擢される予定だったが、春期練習で全く打てなかったために、ともに両打ちのマイセル・イストゥリスとエリク・アイバルとが併用された。開幕当初はイストゥリスが主に起用されていたが、ケンドリックが故障者リスト入りすると、イストゥリスは二塁に回り、アイバルが遊撃手を任された。アイバルは4月に.318を打って、ほぼ定位置を確保したかのように見えたが、5月に薬指を脱臼しておよそ1カ月欠場。9月には再昇格してきたウッドが先発で起用され、しばしば長打力を発揮したが、最後はアイバルが遊撃手に戻った。シーズン通算ではアイバルが91試合に先発しているが、18失策も犯した守備を安定させる必要があるだろう。イストゥリスも5月に腰を傷めて故障者リスト入り。8月には左手の親指の故障でメンバーを離れて、そのまま復帰できなかった。過去2年間は一塁を除く、内野の3ポジションをこなして100試合以上に出場していたが、今季は79試合に止まっている。ショーン・ロドリゲスは、ケンドリックの故障で4月19日にMLBデビューで初安打を打った。イストゥリスやアイバルの故障時にも先発で二塁手を務めて巧守を披露したが、打撃の方は打率.204、10打点、3本塁打と今ひとつの成績に終わっている。
捕手出身の監督マイク・シオシアは、自分が育てたジェフ・マシスとマイク・ナポリとの2人に本塁を守らせた。左打ちの捕手ということで、ミネソタ・トゥインズのジョー・マウアーのライヴァルと目されてきたマシスは、MLB昇格後は打撃で苦労している。今季も打率は.194と低かったが、42打点、9本塁打と力はついてきたようだ。守備では13失策がややいただけないが、動きはよくなりつつある。ナポリは、227打数で20本塁打と長打力を発揮。守備でも大きなミスは少なかった。
MLBにようこそ
ニック・アーデンハートは、2004年の新人ドラフトで第14巡指名を受けてプロ入りした。本来ならば第1巡で名前が呼ばれるはずの素材だったのが、ドラフトの直前に右肘にトミー・ジョン手術を受けたために、どこのティームも上位指名を避けたのである。しかし、故障が癒えた06年にはLow A級で10勝2敗、防禦率1.95と好投。その年のフューチャーズゲームのアメリカ選抜のメンバーに加えられた。今年の春期練習でもいい投球を披露し、ラッキィ、エスコバルを欠く先発ローテーションに抜擢されるかと思われたが、開幕メンバーには残れず、5月1日にようやくMLBデビューを果たした。3試合の先発で投球回数を上回る四球を与え、防禦率も9.00。3度目の先発で初勝利を挙げたが、ラッキィが復帰してくるのでは、もうローテーションに残ることはできなかった。
09年への展望
フランシスコ・ロドリゲスが抜けたクローザー探しは大ごとだが、噂通りにコロラド・ロッキーズの左腕ブライアン・フエンテスを獲得できるならば、シールズの支えを受けながら、いい働きをしてくれそうに思われる。夏にティームに加わって4番打者を務め上げたテイシェイラには8年契約を提示しているが、交渉が進展しているという話をなかなか耳にしない。その一方で、マニー・ラミレス獲得にも動いてもいるようだ。