ロサンジェルス・ダジャーズ

08年度の概要
ブルックリンから西海岸に移転して、今年が50周年になるロサンジェルス・ダジャーズは、ニューヨーク・ヤンキーズを12年続けてポストシーズンに導き、4度の世界一を経験したジョー・トーリを監督に招いた。記念となるシーズンにしたいところだったが、シーズン前半は46勝49敗の負け越しで終了。ダジャーズにとって幸いだったのは、ナショナルリーグ西地区首位のアリゾナ・ダイアモンドバックスも勝率5割未満でシーズンを折り返したことだった。7月31日のトレードでボストン・レッドソックスの強打者マニー・ラミレスを加えて打線を強化。8月にはグレッグ・マダクスも呼び戻して先発スタッフを再編成したダジャーズは、9月5日からのアリゾナとの直接対決で3連勝して、首位の座を奪い返すと、そのまま逃げ切って84勝78敗の成績で2004年以来の地区優勝、2年ぶりのポストシーズン進出を果たした。地区シリーズではリーグ最多勝のシカゴ・カブズを3試合であっさりと退けたものの、1983年以来の顔合わせとなったフィラデルフィア・フィリーズとの優勝決定シリーズでは、第4試合での逆転負けが響き、1勝4敗で敗退している。

投手
2年連続16勝の右腕ブラッド・ペニーは、5月に1勝4敗、防禦率8.82と、突如調子を乱した。5月7日から7連敗を喫した後に、肩の故障で2カ月欠場。8月に復帰して最初の試合で勝ち星を挙げたものの、その後2度も肩を傷め、ほとんど投げられないままシーズンを終えている。06年にペニーと最多勝利投手を分け合った右腕デレク・ロウも5月には勝ち星なしの4敗、防禦率6.11と振るわない。しかし、6月に防禦率2.81と徐々に調子を取り戻し、オールスターゲーム以降は7勝3敗、防禦率2.38をマークして、終盤の先発スタッフを支えた。昨年12勝の右腕チャド・ビリングズリィは、開幕から4連敗というスタートだったものの、5月以降はすっかり投球が安定し、最後は16勝、防禦率3.14、201奪三振でティームの三冠王になった。クロダ・ヒロキは、新人ながら2つの完封勝利は目を引いたが、1度目の直後に右肩を故障、2度目の後には4試合連続ノックアウトと、昨年のマツザカ・ダイスケと同じく、体力面で不安なところが見られた。5人目の先発には、当初左腕クオ・フンチーと、ヴェテラン右腕エステバン・ロアイサを併用していたが、5月に入ってロアイサが肩の故障でメンバーを離れると、組織内No.1投手と評判の左腕クレイトン・カーショーを5月下旬に昇格させた。しかし、投球内容が悪くないわりには勝ち星に恵まれず、カーショーがMLB初勝利を挙げたのは、オールスターゲーム後の7月27日だった。9月には3勝、防禦率3.45をマークし、来季以降の成長が期待される。

ペニーが最初に故障者リスト入りした6月中旬からは、左腕エリク・スタルツ、右腕パク・チャンホに、日本から帰ってきた右腕ジェイスン・ジョンスンまでも起用したが、8月に再びメンバーを離れたときには、サンディエゴ・パドレスから右腕グレッグ・マダクスを呼び戻した。350勝を達成して以来勝ち星がなかなか挙げられなかったマダクスは、ロサンジェルスに来ても調子を取り戻すことはできず、7試合の先発で2勝4敗、防禦率5.09。ポストシーズンではとうとう先発から外されてしまった。昨年ダジャーズにやって来た右腕ジェイスン・シュミットは開幕前から故障者リスト入りしたうえ、一度もマウンドに立つことができなかった。

昨年リーグ屈指のクローザーとまで言われるようになった右腕サイトウ・タカシも、日本人選手が苦しむ3年目のジンクスに見舞われた。昨年はシーズン通してセーヴ失敗が4回だったのに、今年は4月ですでに2度も救援に失敗した。その後は安定感を取り戻したように見えたが、7月に右肘を傷めて故障者リスト入り。ポストシーズン進出を狙って、9月に復帰したものの、6試合の救援で1勝1敗1セーヴ、防禦率4.76と振るわなかった。サイトウに代わって抑えを務めたのは、かねてより将来のクローザーと期待されているジョナサン・ブロクストン。5月に打ち込まれたために、シーズン前半の防禦率は3.40とやや高くなっているが、抑えに定着したシーズン後半にいきなり7試合連続でセーヴ成功。8月には再び打ち込まれることもあったが、9月は防禦率0.79と持ち直してシーズンを締めくくった。ブロクストンを上回る、ティーム最多の71試合に登板した左腕ジョー・ベイメルは、防禦率も2.02と、抜群の安定感を披露した。開幕当初はスウィングマンだったクオは、ブルペンに定着するや、長いイニングを投げられる左腕投手として5勝2敗1セーヴ、防禦率1.69の成績を収めた。

ヤンキーズ時代に監督ジョー・トーリと確執のあったスコット・プロクターは、右肘を傷めたこともあったが、41試合で防禦率6.05と不調だった。右腕投手をカヴァーしたのは、7年ぶりにダジャーブルーに身を包んだパク・チャンホと、新人コリー・ウェイド。パクが救援中心に起用されるのは、MLB3年目の新人だった1996年以来のことで、49試合にリリーフを務めて防禦率3.84の投球内容だった。ウェイドは、ブルペン強化のために4月下旬にMLB昇格。失点の少ない投球でいい中抑え役を務めていた。8月に肩の故障で一時メンバーを離れていたが、9月に復帰すると13試合に登板して防禦率1.08。シーズン通算で55試合に登板し、2勝1敗、防禦率2.27の好成績を収めている。ウェイドと同じく今年がMLBデビューだった右腕ラモン・トロンコソは、開幕メンバーに抜擢されていた。2試合続けて打ち込まれた後、マイナーリーグを行き来することにはなったが、オールスターゲーム以降はブルペンに残って防禦率3.86の数字を残した。こうしたブルペンの活躍に支えられて、ダジャーズは今季MLBで最も優れたティーム防禦率3.68をマークしている。

野手
ゴールドグラヴ選出10回、2005年にはアトランタ・ブレイヴズ史上初の50本塁打を打っているアンドルウ・ジョーンズを2年契約で迎えたが、これが大変な期待はずれに終わってしまった。昨年の打撃不振がさらに悪化し、開幕から打率が2割を超えないという状況に陥った。得意の守備もリーグ水準以下に落ち込んだうえ、両膝の故障でシーズン後半はほとんど出番がなくなり、打率.158、14打点、3本塁打という、無惨な成績で西海岸での初年度を終えた。ジョーンズだけでなく、ここ数年に獲得したヴェテラン選手はいずれも振るわなかった。06年にカムバック賞を受賞したノマー・ガルシアパラは、三塁手という新しいポジションでの活躍を期待されながら、開幕前から故障者リスト入り。シーズン通算でもわずか55試合にしか出場できなかった。遊撃手ラファエル・フルカルは、5月初めに腰痛に襲われて故障者リスト入りすると、次に復帰したのはおよそ4カ月半も経った9月下旬だった。ポストシーズンでは全試合に先発を務めたとは言え、著しく評価を落としており、今季限りでダジャーズを去るのは確実のようだ。03年のアメリカンリーグ新人賞アンヘル・ベロアが、6月にカンザスシティ・ロイアルズから移籍。フルカルに代わる遊撃手に起用されたものの、守備では無難にこなすことはできたものの、打撃では2割がやっとという低打率に苦しんだ。今年40歳になった二塁手ジェフ・ケントは、シーズン前半.253、40打点、9本塁打とやや低調。9月には左膝の故障でほとんど試合に出ることができず、打率.284、55打点、12本塁打と低迷した1996年以来の、打率.280、59打点、12本塁打という不本意な成績に終わっている。

不調続きのヴェテランに対して、若手の活躍は目覚ましかった。右翼のポジションを分け合っていた左打ちのアンドレ・イージアと、右打ちのマット・ケムプとが、ジョーンズ、ピアを押しのけて、それぞれ右翼、中堅に定位置を得た。イージアはピアが膝を故障した7月に左翼を守ったが、ジョーンズが故障者リスト入りした8月からは右翼に戻り、ケムプが正中堅手を務めることになった。シーズン前半は平均的な成績だったイージアは、定位置を与えられたシーズン後半に成績が向上。特に9月には.462の高打率をマークするなど、56試合で打率.335、36打点、9本塁打の成績だった。ケムプは、イージアほどの目覚ましい活躍こそしていないが、ティームでは2番目に多い155試合に出場して、シーズン通算で.290、76打点、18本塁打。ピアに次ぐ35盗塁と、脚力のあるところも披露した。また、イージア、ケムプは守備でも活躍しており、ケムプは16人、イージアは11人の走者をそれぞれ送球でアウトにしている。ラッセル・マーティンは、シーズン後半に調子を落としたため、打率.280、69打点、13本塁打はいずれも前年の数字を下回り、盗塁阻止率も下がってはいるものの、ケムプと並ぶ155試合に出場し、そのうち138試合で先発マスクをかぶったタフさは評価出来る。ジェイムズ・ロニィはティーム首位の161試合に出場。長打力はないが、チャンスに強い打撃でティームで最も多い90打点をマークした。13失策は多かったが、抜群に守備範囲の広い一塁手で、将来はゴールドグラヴを受賞することもあるだろう。ガルシアパラの故障で正三塁手に抜擢されたのは、04年の新人ドラフト全体第28位指名を受けてプロ入りしたブレイク・ディウィットだった。5月には.322、18打点、5本塁打を打って注目されたが、6月以降は調子を落としたため、7月にクリーヴランド・インディアンズからやって来たヴェテラン三塁手ケイシィ・ブレイクにポジションを譲った。それでも、リーグ水準をはるかに上回る守備範囲の広さを見せ、巧打堅守の三塁手という印象を与えた。ブレイクも58試合の出場で10本塁打と、持ち前の長打力を披露している。昨年のフューチャーズゲームでラリー・ドビー賞に選ばれたフー・チンロンは、65試合に起用されたものの、打率.181しかマークできず、こちらはやや期待はずれの若手だった。

いろいろと書いてはきたが、何と言ってもマニー・ラミレスの活躍に勝るものはなかっただろう。クラブ側とのいさかいがもとでボストン・レッドソックスから放出された格好になったが、結果的にはラミレス本人にとっても、ダジャーズにとってもいいトレードになった。ナショナルリーグでの初のプレイは、地区のライヴァル、アリゾナとの試合だったが、3試合で13打数8安打、そのうち本塁打が2本で5打点を挙げている。これで勢いづいたラミレスは、移籍後53試合で、打率.396、53打点、17本塁打という驚くべき数字を残し、ティームのポストシーズン進出に大きく貢献している。リーグMVPの記者投票では第4位に入ったというのも、納得がいく。

MLBにようこそ
クレイトン・カーショーのMLBデビューで影が薄くなってしまったが、スコット・エルバートも、将来を嘱望された左腕投手だった。やはり今年MLBデビューを果たしたブレイク・ディウィットと同じ04年の新人ドラフトで全体第11位指名を受けてプロ入りしているだけに、期待の大きさが窺えるというものだ。実際、あと少しでMLBデビューというところまで来ていたのだが、昨年4月に肩を傷めてシーズンの大部分を棒に振ってしまったために、やや後戻りを強いられてしまった。今年はAA級で投げていたエルバート、プロ入り以来ほとんど経験のない救援で25試合に登板して、4勝1敗、防禦率2.10と好投。ついに8月29日にダジャーズに昇格を果たしたが、10試合で防禦率12.00と打ち込まれてしまったのは、まだ左肩の調子が万全でなかったのだろうか。

09年への展望
最近のダジャーズでは、若い選手の成長は目覚ましいが、大金を注ぎ込んで獲得した大物選手がことごとく故障や不振に苦しんでいる。それだけに、マニー・ラミレスと何とかして契約延長にこぎ着けたいというクラブの思惑はよくわかる。ロウ、マダクスが抜け、シュミットにもあまり期待できないという状況で、先発スタッフをどうやって建て直していくのか。また、ケント、フルカルに代わる二遊間に誰が起用されるのかにも注目が集まる。