ミルウォーキー・ブルワーズ

08年度の概要
昨年83勝79敗でナショナルリーグ中地区2位に終わったミルウォーキー・ブルワーズだったが、若手野手の成長のおかげで、今年こそはポストシーズン進出の可能性は高いだろうと見られていた。実際、開幕から7試合で6勝1敗と出だしは好調だったが、5月には13勝16敗と負け越して、一時は地区の5位にまで後退した。しかし、昨年アメリカンリーグのサイ・ヤング賞に選ばれたC・C・サバシアを獲得すると、ティームのムードが一変する。オールスターゲームをはさんで8連勝などがあって、シカゴ・カブズと同率首位に並ぶが、その直後に5連敗して再び後退。8月には2度目の8連勝を含む20勝7敗で、首位から4.5ゲーム差につけていたが、9月に入ると突然勝ち星が伸びなくなった。そして、9月14日のダブルヘッダーで連敗を喫したところで、何と監督ネッド・ヨストが解任され、ベンチコーチのデイヴ・スヴュームが代行を務めるという人事交代が発表された。賛否両論渦巻く中、残り12試合で7勝5敗、シーズン通算90勝72敗となったミルウォーキーは、シーズン最終試合でニューヨーク・メッツが敗れたために、辛うじて1勝の差でワイルドカードとなった。1982年のアメリカンリーグ優勝以来となるポストシーズンでの試合だったが、フィラデルフィア・フィリーズに1勝3敗で敗れ去っている。

投手
2001年以来ミルウォーキーひと筋に投げている右腕ベン・シーツは、大きな故障もなく、4年ぶりに30試合以上に先発を務めた。4月には負けなしの4連勝をマークするなど、シーズン前半だけで10勝3敗、防禦率2.85。オールスターゲームではナショナルリーグの先発を務めている。ところが、シーズン後半に入ると大量失点を喫するようになり、3勝6敗、防禦率3.46と数字を落としている。5完投のうち完封がリーグ首位タイの3度もあるが、投球回数は200イニングに届かず。自己ベストと言っても13勝では、エースの名にふさわしい数字とは言えない。06年のナショナルリーグ優勝決定シリーズMVP右腕ジェフ・スーパンは、シーツとは逆に、シーズン前半の方が良くなかった。今季初先発で勝ち投手になったものの、その後一カ月は勝ち星なしと浮き沈みが激しく、5勝6敗、防禦率4.71でシーズンを折り返した。8月に5連勝で一気に勝ち数をふたケタに乗せたが、9月は防禦率8.44と崩れた。

ミルウォーキーにとって痛手だったのは、05年に18勝の左腕クリス・キャプアノが左肘を傷めてシーズン全休、昨年新人ながら8勝をマークした右腕ヨバニ・ガヤルドが左膝の故障でほとんど登板できなかったことだ。そこで代役を任されたのが、この2年続けて12勝をマークしている右腕デイヴ・ブッシュだった。開幕3連敗でマイナーリーグに送られていたが、ガヤルドの故障者リスト入りに伴って、先発に復帰。8月には負けなしの4連勝、防禦率2.12と好投することもあったが、やはり9月には打ち込まれて、3年連続のふたケタ勝利には届かなかった。昨年も6試合先発の経験がある右腕カルロス・ビヤヌエバも、開幕からローテーションに加わっていたが、9試合で2勝5敗、防禦率6.43と全く振るわず、ブルペンに戻った。それでもリリーフ投手としては38試合で防禦率2.12とよく投げている。2年目の新人左腕マニー・パラは、2試合しか先発経験がなかったが、開幕からローテーションに抜擢され、6月に5勝無敗、防禦率2.59と好投した。しかし、オールスターゲーム以降は2勝6敗、防禦率5.32。やっと10勝はマークしたが、防禦率4.39は平凡だった。右腕セス・マクラングは、5月下旬から7月下旬までの2カ月間先発を務めて4勝4敗、防禦率4.24。救援では2勝2敗、防禦率3.67をマークした

7月に左腕C・C・サバシアを獲得したのは、ミルウォーキーにとって大きな転機になった。移籍後初試合で勝利投手になると、その後1完封を含む3試合連続完投勝利。8月には3完投2完封で5連勝で、まったく打てそうに思われなかった。そのサバシアが初黒星をつけられたのが、中地区のライヴァル、カブズとの試合だったというのは、ある意味で象徴的であった。しかし、ブルワーとして17試合に先発を務めて11勝2敗、防禦率1.65、128奪三振。リーグ首位の7完投、シーツと並ぶ3完封は見事にすぎる数字で、今年のサイ・ヤング賞投票では得票第3位だった。

フランシスコ・コルデロがシンシナティ・レッズに去った後のクローザーとして期待されたのは、03年ナショナルリーグのサイ・ヤング賞に選ばれている右腕エリク・ガニェだった。4月までに8セーヴを挙げたものの、この時点ですでに失敗も4度。5月にはクローザー役から外されたうえに、右肩の故障でメンバーを離れた。以後ミルウォーキーのブルペンで中心になったのは、36歳のヴェテラン右腕サロモン・トレス。ここ2年続けてピッツバーグ・パイレーツで12セーヴずつをマークしているトレスは、5月下旬から14連続セーヴ成功。8月には1勝6セーヴ、防禦率0.84の数字を残しているが、やはり9月には調子を落としていて、この月の防禦率は8.53だった。デイヴィッド・リスキとギエルモ・モタの両右腕の仕事は、主に前抑え役だったが、リスキは右肘を傷めたこともあって、シーズン通して防禦率5点台と不調。モタは、7月まではひどく打ち込まれていたものの、8月以降は20試合でわずか3失点と立ち直っている。ガニェは7月に復帰したが、以後は一度もセーヴ機会でマウンドを踏むことはなかった。むしろ、9月に入ってシンシナティ・レッズからやって来た右腕トッド・コフィが9試合無失点と好投したのが目を引いた。05年に7勝1敗39セーヴ、防禦率1.74の右腕デリク・ターンボウはさらに落ち込み、8試合での防禦率は15.63だった。

39歳の左腕ブライアン・シャウスは、昨年の73試合に続いて、今年は69試合に登板。5勝1敗2セーヴ、防禦率2.81と好投している。ここに今年は、2年目の新人ミッチ・ステッターが加わり、MLBとマイナーリーグとを行き来しながらも、30試合で3勝1敗、防禦率3.20の成績を収めた。

野手
昨年のナショナルリーグ新人賞に選ばれたライアン・ブラウンは、苦手な三塁守備から解放され、左翼手として08年シーズンを迎えた。シーズン当初は冴えない数字だったが、5月に.322、22打点、11本塁打をマーク。8月までには昨年と並ぶ34本塁打に、打率3割、95打点と当たっていたのだが、9月に.208、11打点、3本塁打と落ち込んだ。シーズン打率は昨年の.324をはるかに下回る.285だったものの、106打点、37本塁打は前年以上。出場試合数の違いはあるとは言っても、二年目の不運は、何とか切り抜けることができたと言えるだろう。昨年ティーム史上初の50本塁打を打ったプリンス・フィルダーは、シーズン前半93試合で52打点、18本塁打とやや低調だった。8月にも.228しか打てず不調が続いていたが、9月に入ってようやく調子を取り戻したらしく、打率.316、21打点、6本塁打をマーク。かろうじて打点は100を超えたが、34本塁打は前年から20本近くも減らしている。一塁手として17失策はあまりに多く、守備範囲も狭いのも、辛いところだ。

J・J・ハーディは、打てる遊撃手として定着した。5月までに2本塁打しか打てずに苦しんだが、6月に.310、12打点、4本塁打を打ってからは成績が上がり始め、ほぼ昨年の数字に匹敵する打率.283、74打点、24本塁打でシーズンを終えた。古傷が多いために、守備の方はやっと水準程度ではあるが、打撃の良さで十分カヴァーしている。昨年俊足長打の外野手としての素質を開花させたコリィ・ハートは、さらなる飛躍を遂げている。開幕からほぼ全試合で右翼を守り、2年連続で20本塁打、20盗塁をマークした。9月に.173と不振に陥ったため、通算打率は.268に下がってしまったのが惜しまれる。ファン投票による32人目の出場選手として、オールスターゲームも体験している。毎年怪我に悩まされるリッキー・ウィークスは、膝の故障で6月に半月ほど欠場している。しかし、MLB5年目で最多の129試合に出場、初めて規定打席を超えた。とは言うものの、相変わらずの低打率で今年も.234しか打てず、シーズン終盤に監督がスヴュームに替わったときには、シーズン途中にサンフランシスコ・ジャイアンツから来たレイ・ダラムに1番二塁手の座を譲ることが多かった。

禁止薬物使用のため開幕から出場停止処分を受けていたマイク・キャメロンは、4月下旬からメンバーに復帰。当初は2番を打つことが多かったが、打率.212しか打てなかったために6月からは下位打線に回ることになった。8月に.360、22打点、9本塁打と大当たりしたこともあったが、シーズン通算で.234、70打点、25本塁打、17盗塁は、例年とあまり代わり映えのしない数字に終わっている。ゴールドグラヴ選出の中堅守備にも冴えがなかった。キャメロンの加入、ブラウンの左翼移動によって、ビル・ホールは中堅手から三塁に守備位置を移した。2006年の35本塁打で鮮烈な印象を与えたとは言え、やはりホールの実力はシーズン15本塁打くらいであるだろう。今季は打率.225、55打点、15本塁打の成績に終わり、あまり得意ではない三塁守備では17失策も犯している。同じ三塁を守るラッセル・ブラニアンが5月下旬に昇格してきたときには、起用法に不満を抱き、トレードを願い出る場面もあった。そのブラニアンは132打数で12本塁打と長打力を発揮したが、打点はわずか20点。シーズン終盤にはヴェテランのクレイグ・カウンセルが先発三塁手に起用されることが多くなったが、打率2割も打つことができず、ミルウォーキーの三塁手は最後までぱっとしなかった。9月になってミネソタ・トゥインズからやって来たマイク・ラムが三塁を守る機会は1試合しかなく、11打数3安打で.273を打っただけだった。

ピッツバーグ・パイレーツ時代には巧打巧守の捕手として知られていたジェイスン・ケンドールも、05年にオークランド・アスレティックスに移籍してからは攻守で不振が続いていた。今季はMLB13年間で最も多い149試合に先発出場。送球アウト94回、ダブルプレイ参加13回、盗塁阻止率.427は、全盛期そのままの動きだった。打率は.246と低くとも、三振数を上回る四球を選び、3年ぶりに痛球の数もふたケタをマークするなど、しぶとい打撃を披露している。控えのマイク・リベラは、ケンドールが出場しなかった13試合に先発。出場機会は少なかったが、打率.306、14打点とよく打った。

ゲイブ・キャプラーは、一時現役を引退してマイナーリーグの監督を務めていたが、ミルウォーキーの春期練習に参加して、2年ぶりにMLBに戻ってきた。キャメロン欠場時に中堅手を務めるなど外野の3ポジションをこなして、96試合に出場、打率.301、38打点、8本塁打と活躍した。キャプラーとともに4月は中堅を守っていたトニー・グウィンは、開幕試合で2安打を放つ活躍を見せたが、直後に左太腿裏を傷めて故障者リスト入り。3週間ほどで復帰したものの、その後は出場機会に恵まれず、シーズン通算でも.190しか打てなかった。グウィンが抜けた後に中堅手を守ったゲイブ・グロスも、16試合で.209しか打てず、4月下旬にはタムパベイ・レイズにトレードされている。

MLBにようこそ
マット・ガメルは、サバシア獲得のときに交換選手として名前が挙がった強打者だ。クリーヴランド・インディアンズにトレードされたマット・ラポータには長打力で譲るが、07年にはHigh A級で33試合連続安打をマーク、今季はAA級で.329を打っており、打率が期待できる。AAA級で5試合プレイした後、9月3日に代打でMLBデビュー。2試合目でMLB初安打となる二塁打を打った。今季は三塁手で苦しんだミルウォーキーとしてはすぐにもレギュラーで起用したいところだが、ガメルの最大の難点は守備。07年には53度もミスするなど、この3年間続けて30失策以上を犯している。

09年への展望
シーズン終了後、前オークランド・アスレティックス監督のケン・マッカの監督就任が発表された。ネッド・ヨストが育てたティームを、ポストシーズン進出2回の実績を持つマッカがどのように鍛えるか。強打者揃いの野手に比べて、投手は先発も救援も不安を抱かせる材料が多い。今年後半の先発スタッフからサバシアが抜けることが決まり、28セーヴをマークしたトレスは、家族と一緒の生活を選んで現役引退を表明した。この大きな穴を何とかして埋めなければ、2年連続のポストシーズン進出などかなうまい。