ニューヨーク・メッツ

08年度の概要
昨年のニューヨーク・メッツは、シーズンの大詰めでフィラデルフィア・フィリーズに逆転を許し、ナショナルリーグ東地区優勝を逃している。何とかして地区タイトルを奪回したいシーズンではあったが、開幕から勝ち星が伸びず、勝率5割を行きつ戻りつするありさまで地区の下位に低迷していた。そしてついに6月16日にウィリー・ランドルフが解任され、ベンチコーチのジェリー・マヌエルが監督を代行することになる。この人事はティームによい影響をもたらし、7月5日から、オールスターゲームをはさんで10連勝で、同率首位に浮上。8月半ばから9月半ばにかけては単独首位の座を保っていた。しかし、9月20日からの3連敗で2位に後退。またしてもフィラデルフィアに逆転優勝を許したばかりか、シーズン最終試合に敗れたために、ワイルドカードまでもミルウォーキー・ブルワーズに譲ってしまうという、残念な結果に終わった。なお、メッツの今シーズン成績は89勝73敗で、2年連続の東地区2位。

投手
サイ・ヤング賞2度の左腕ホアン・サンタナを獲得して、投手力は大きく向上したはずだったが、そのサンタナがシーズン前半はなかなか勝ち星に恵まれなかった。2失点以内に抑えながら勝てなかった試合が6試合もあり、オールスターゲームまでの防禦率が2.84だったのに8勝7敗とほとんど五分の数字だった。しかし、シーズン後半はかつてのサンタナらしい投球を取り戻して、8勝負けなしの防禦率2.17をマーク。シーズン通算16勝7敗、防禦率2.53、206奪三振の成績を収めた。もう一人のサイ・ヤング賞投手ペドロ・マルティネスは、故障に苦しめられながらのシーズンだった。開幕試合では4回途中4失点で負け投手となり、さらに悪いことには、左太腿裏を傷めて故障者リスト入りすることになった。2カ月後に復帰してからは、7月後半を除いて、ほぼローテーションで投げていたが、かつての制球力がすっかり衰え、5勝6敗、防禦率5.61と振るわなかった。

昨年自己ベストの15勝をマークした左腕オリベル・ペレスは、4月は2勝2敗、防禦率4.05と無難な立ち上がりではあったが、5月、6月に合わせて15本も本塁打を打たれて、防禦率が5点台まで跳ね上がった。投球回数の半分を超える四球を与えたこともあって、シーズン通して投球が冴えず、10勝7敗、防禦率4.22と、ふたケタ勝つのがやっとだった。昨年MLBデビューを果たした右腕マイク・ペルフライは、4月25日から5連敗を喫したが、6月16日におよそ2カ月ぶりの勝ち星を挙げてから、オールスターゲームをはさんで7連勝、8月にも4勝1敗、防禦率2.93と好投した。9月には1勝もできなかったものの、サンタナに次ぐ13勝、防禦率も3点台の3.72と安定した投球だった。

マルティネス以外にも、メッツには故障に見舞われた先発投手が多い。昨年15勝と活躍した右腕ジョン・メインは、オールスターゲームまでは8勝6敗、防禦率3.99の投球で、昨年ほどの勝ち星が期待されていたが、8月に右肩を傷めてからはマウンドに登ることができず、辛くも10勝はマークしたものの、規定投球回数には届かなかった。昨年9勝のヴェテラン、オルランド・エルナンデスは、開幕前に右脚の手術を受けたため、今シーズンは全休。臀部の故障でやはり開幕に間に合わなかった右腕クラウディオ・バルガスは、5月に4試合の先発で2勝2敗、防禦率4.50の投球だったが、6月にはブルペンに回され、7月にはマイナーリーグに送られた。バルガスと入れ替わりでMLBに昇格したのは、モントリオール・エクスポズ時代にバルガスとティームメイトだったこともある右腕トニー・アルマスだったが、今季初登板で先発を務めて勝ち星を挙げながら、そのすぐ後に腹筋を傷めて故障者リスト入り。昨年スウィングマンとして9勝を挙げた右腕ホルヘ・ソサは、開幕からブルペンで控えていたが、防禦率7点台という不振で5月下旬に解雇された。この3年間MLBから離れていた右腕ネルソン・フィゲロアまで昇格させて故障者を補おうとしたが、6試合の先発で2勝3敗、防禦率5.13ではあまり活躍したとは言えない。

クローザーの左腕ビリー・ワグナーの長期欠場が、メッツにとって最大の痛手になったと言える。開幕から2カ月で11セーヴ、防禦率0.39と好投していたワグナーだったが、6月8日から3試合連続でセーヴ機会に失敗。その後立ち直りを見せたものの、8月2日の試合でセーヴ機会をふいにすると、その直後に左腕の故障でメンバーを離れることになった。右腕ルイス・アヤラをワシントンから獲得して代役に充てたが、9セーヴを挙げたものの、防禦率は5.50。特にティームが首位の座を明け渡すことになった9月後半に2敗を喫しているのが痛い。

この3年間前抑えとして活躍してきた右腕アーロン・ハイルマンは、5月までの防禦率が6.91と、出だしでつまづいてしまった。6月には防禦率0.64と持ち直したように見えたが、シーズン後半は3勝5敗、防禦率6.58とさらに打ち込まれてしまった。不振のハイルマンに代わって、2年目のジョー・スミスは、82試合で救援を務め防禦率3.55とまずまずの数字を残した。昨年は右肩の故障でシーズンを全休していたドゥアネル・サンチェスが4月15日にメンバー復帰。66試合で防禦率4.32はやや打たれているようだが、2年ぶりのマウンドとしては悪くない出来だった。左腕はペドロ・フェリシアノがティーム最多の86試合にマウンドに登った。06年から年々登板数は増えているが、それに伴って防禦率が1点ずつ悪くなっているのが気掛かりではある。スコット・ショーンワイスは73試合の登板ながら、防禦率3.34はフェリシアノよりも優れていた。しかし、ポストシーズン進出を争う終盤の9月に入ってから勝ち星なしの3敗、防禦率5.40と落ち込んだのは痛かった。

野手
レギュラー4年目のデイヴィッド・ライトが、攻守両面でティームの中心になった。特に、シーズン後半の66試合で打率.330、54打点、16本塁打と猛打を揮い、終盤の追い上げに尽力。シーズン通算124打点、32本塁打はいずれも自己ベストの数字で、4年連続の3割となる.302もマークし、2年連続のシルヴァースラッガー賞に選ばれた。三塁守備はさほど巧いとは言えないが、堅実さを買われてこちらも2年連続でゴールドグラヴを授かっている。あとは.243しかなかった得点圏打率を向上させたいところだ。3番ライトの後を打つカルロス・ベルトランも、シーズン後半は.307、46打点、12本塁打とよく打って、3年連続の100打点以上をマーク。中堅手としての守備範囲の広さは相変わらずで、こちらは3年連続のゴールドグラヴ選出である。カルロス・デルガドはシーズン前半、打撃不振で苦しんだ。開幕試合では5番を打っていたが、4月に.204しか打てなかったために、打順を6番に下げられることもしばしばだった。それが7月に入るや途端に打撃が上向きになり、この1カ月だけで.357、24打点、9本塁打と大当たり。8月以降も打撃好調は続き、シーズン後半には、ライトやベルトランをはるかにしのぐ63打点、21本塁打を放っている。今季終了時点でデルガドの通算打点は1,489、本塁打は469になった。1,500打点は来季達成確実と言えるが、MLB史上25人という500本塁打の大台到達はどうだろうか。

ライト、ベルトラン、デルガドの100打点トリオの前で、ホセ・レイエスは今年もリードオフマンを務め上げた。4月に出塁率.300、13得点、6盗塁と、リードオフマンとしては大いに不満の残る数字でのスタートだったが、5月以降は3割5分を超える出塁率に40盗塁をマークして、レイエスらしいプレイを取り戻した。9月にやや調子を落としたものの、シーズン打率.297、出塁率.358、68打点、16本塁打はいずれも前年を上回る数字。自身初の200安打を打った他、4年連続50盗塁、3年連続100得点もマークしている。レイエスの後を打つ人材として、打撃の巧みなルイス・カスティヨはうってつけの選手なのだが、今年は故障に泣かされた。7月初めに、臀部の故障でメンバーを離れると、ほぼ1カ月半の欠場となった。8月下旬に復帰したものの打撃が振るわず、シーズン通算87試合出場、打率.245は、フロリダ・マーリンズでレギュラーになった1999年以来最低の数字だ。3年連続ゴールドグラヴを誇った二塁守備も、衰えが目立つようになった。カスティヨの代わりにはデミオン・イーズリィが起用されることが多かったが、7月3日にデビューしたアルへニス・レイエスも先発で20試合出場し、107回の守備機会で失策なしと、堅い守備を披露している。

それでもメッツの内野は強力だが、ベルトランの両側はレギュラー不在と言ってよく、左翼手に至っては、延べ12人が先発で起用されたほどである。本来ならばこのポジションは、ヴェテランのモイセス・アロウが打つところだが、ヘルニアの手術を受けたためにメンバー復帰が5月まで遅れた。不調のデルガドに代わって5番を任され、14試合で.340、7打点を打っていたが、今度は左肩の故障で再度欠場。6月10日に復帰していきなり2打点の活躍を見せたが、またしても左肩を傷め、そのまま残りシーズンを全休した。開幕から左翼を任されていたのは、シカゴ・カブズから獲得したアンヘル・パガン。4月に.276、11打点の成績だったが、左肩の打撲で5月に故障者リスト入りすると、やはりそのまま復帰できなかった。アロウの復帰が絶望的となった6月には、マーロン・アンダースンやイーズリィなどの内外野手や、アリゾナ・ダイアモンドバックスから獲得したトロット・ニクスンが左翼を守ったが、5月に昇格していたフェルナンド・タティスが定着。MLBでのプレイは2年ぶり、外野手の経験はわずか4試合というタティスだったが、7月に打率.397、18打点、6本塁打をマークした。そして、8月2日にMLBデビューを果たしたダニエル・マーフィーが、8月に.333、13打点、2本塁打を打ち、シーズン終了までレギュラー左翼手として起用された。マーフィーよりも早く、5月にMLBに昇格した新人ニック・エヴァンズは、25試合で先発左翼手にされているが、こちらは.257、9打点、2本塁打と目立たない成績に終わっている。

開幕試合の右翼には、ワシントン・ナショナルズから獲得したライアン・チャーチが起用された。チャーチは、6月上旬までの57試合で打率.307、36打点、10本塁打とよく打っていたが、試合中に脳震盪を起こしてからは休みがちになり、9月には24試合に出場したが、打率.209、11打点、2本塁打と、シーズン前半の勢いはなくなっていた。チャーチとは対照的に、打撃の巧さと脚力とを持ち味とするエンディ・チャベスは、チャーチ欠場中のシーズン中盤に右翼に起用されたが、打率.267と成績は今ひとつだった。

攻守ともに冴えなかったポール・ロドゥカに代わる捕手として、堅守で知られるブライアン・シュナイダーをワシントン・ナショナルズから獲得した。シュナイダーは期待通りに本塁を守り通し、打撃でも.257、38打点、9本塁打と悪くない数字を残している。ここ4年間控え捕手としてティームを支えるラモン・カストロは、開幕前と8月と、2度右脚を故障して、シーズンの約半分を欠場。そのため、ヴェテランのラウル・カサノバや、9年ぶりのMLB昇格を果たしたロビンソン・カンセル、2年目の新人グスタボ・モリナを起用してカヴァーした。

MLBにようこそ
サンタナを獲得するために、メッツは組織内の有望な若手を4人も失った。そんな中で、8月3日にMLBデビューを果たした右腕エディー・クンツは、トップクラスの投手と評判をとっている。昨年の新人ドラフトで追加第1巡指名を受けてのプロ入りだから、わずか1年余りでのMLB昇格ということになる。今季はAA級ビンガムトンでクローザーとして活躍していたが、MLBでの4試合で防禦率13.50と、初年度の成績はさんざんだった。アリゾナ秋季リーグでも打ち込まれているが、来年からクリーヴランド・インディアンズで投げることになったジョー・スミスに代わる中抑えとして、ティームは期待をかけているようだ。

09年への展望
ワグナーに代わるクローザーとして、今年62セーヴのMLB新記録を樹立したフランシスコ・ロドリゲスを3年契約で迎えた。さらに12人の選手が異動する大規模なトレードで、今年は故障で振るわなかったものの、昨年は40セーヴを挙げているJ・J・パッツを獲得。パッツ、ロドリゲスの2人が8回、9回をそれぞれ担当することでブルペンの問題は解決した。ベルトランの両側を守るレギュラー外野手に誰が選ばれるのかが注目されるが、パッツと一緒にシアトル・マリナーズから来たジェレミー・リードは、定位置確保の大きなチャンスになるだろう。