ニューヨーク・ヤンキーズ

08年度の概要
1996年に監督就任以来、ニューヨーク・ヤンキーズを12年連続でポストシーズンへと導き、4度の世界一を成し遂げたジョー・トーリは去った。後任のジョー・ジラルディは、2006年のナショナルリーグ最優秀監督。しかし、何年も前から下り坂にさしかかっていたティームを盛り上げることはできなかった。シーズン当初は3連勝すれば3連敗を喫するというありさまで勝ち星が伸びず、14勝15敗。5月以降少しずつ勝ち星が増え始め、6月12日からの7連勝でアメリカンリーグ東地区3位に浮上。さらにオールスターゲーム直後の8連勝で、首位から3ゲーム差まで迫ったが、そこまでが今のヤンキーズの限界だったようだ。8月に13勝15敗と負け越して再び後退。9月17日からの7連勝も焼け石に水だった。シーズン通算89勝73敗は、2000年以来の80勝台、東地区3位は92年に4位になって以来の低い順位だった。

投手
右腕マイク・ムシナがキャリア最高のシーズンを送った。4月は3勝3敗、防禦率4.73とやや振るわなかったが、5月に5勝をマークしてから安定感を取り戻した。シーズン前半だけでも11勝6敗、防禦率3.61の成績だったが、後半はさらに調子を上げ、9勝3敗、防禦率3.10。MLB18年目にして初の20勝を達成した。しかしムシナは、かねてから決意していた通り、今シーズン限りでの現役引退を表明した。通算成績は、537登板、536先発で史上30位タイの270勝153敗、防禦率3.68、2,813奪三振は史上19位の数字である。2年連続19勝の右腕ワン・チエンミンは、4月11日のボストン・レッドソックスの試合で2安打1失点の完投勝利をマークするなど、開幕から6連勝。しかし、6月15日の試合中に右足を傷めて降板。この試合で8勝目を挙げたものの、思わぬ重傷を負ったワンは、以後のシーズンを全休した。昨年4年ぶりに細縦縞のユニフォームを身に着けて、200勝を達成した左腕アンディ・ペティットは、シーズン前半に10勝7敗、防禦率4.03で、ムシナを上回る数字を残していた。しかし、7月31日の試合で9失点を喫して負け投手になると、以後は完全に調子を崩し、2勝6敗、防禦率も5点台と振るわなかった。

この3人は、開幕からの先発三本柱だったが、その他には10人の先発投手が起用されている。昨年MLB昇格を果たして、今季はローテーション入りが期待されたジョバ・チェムバレン、フィル・ヒューズ、イアン・ケネディの3人のうち、ヒューズとケネディとが先発に抜擢、チェムバレンはブルペンに配された。しかし、開幕から4連敗、防禦率9.00と打ち込まれていたヒューズが、腹斜筋を傷めて故障者リスト入り。9月まで復帰できなかった。ケネディも開幕以来1勝も挙げられず、5月下旬に腰の故障でメンバーを外れた。その直後にようやくチェムバレンがローテーションに加えられた。先発投手としての初勝利を挙げるまでおよそ1カ月かかったが、12試合の先発で3勝1敗、防禦率2.76、投球回数を上回る76三振を奪う活躍を見せていた。ところが、8月にチェムバレンも肩を傷めて1カ月欠場。9月に復帰したときには、調整のためブルペンに戻された。

ケネディに代わって5月に昇格した4年目の右腕ダレル・ラズナーは、先発でいきなり3連勝。しかし好投したのは最初だけで、ムシナ、ペティットに続いて多い、20試合に先発したものの、オールスターゲーム以降は1勝もできず、5勝10敗、防禦率5.40の成績に終わった。ワンの代役に選ばれたのは、06年にもシーズン途中にヤンキーズで投げたことがある右腕シドニィ・ポンソン。テキサス・レンジャーズでは4勝1敗、防禦率3.88と悪くない投球を披露していたポンソンは、6月27日の移籍後初先発で勝ち投手になった。しかし以降は打ち込まれるようになり、ヤンキーとしての成績は4勝4敗、防禦率5.85にすぎなかった。4年契約のほとんどを故障者リスト入りしていた右腕カール・パヴァノが8月23日に復帰。最初の2試合を連勝したが、9月は2勝2敗、防禦率6.94とやはり打ちまくられた。今年が契約最終年だったが、もちろんクラブからの契約延長の申し出はなかった。イガワ・ケイも1試合だけ先発を務めたが、3回で11安打を打たれて6失点で負け投手。他ティームに放出すればいいという話も聞かれるが、これがMLBでのイガワの限界ではないかという気がする。

抑えには今年も右腕マリアノ・リベラが健在。開幕から一度もセーヴ機会に失敗したことがなく、8月13日の試合で同点に追いつかれるまで、28試合連続でセーヴを挙げていた。結局リベラがセーヴ失敗したのはこの1試合だけで、シーズン通算6勝5敗39セーヴ、防禦率1.40、77奪三振の成績を収めた。史上2人目の通算500セーヴまであと18と迫っているのだが、シーズン終了後に右肩の手術を受けている点はやや気にかかる。開幕時にはセットアッパーに、チェムバレン、ラトロイ・ホーキンズ、カイル・ファーンズワースと速球派右腕を揃えていたが、チェムバレンはともかくも、ホーキンズは投球内容が今ひとつで、7月30日にヒューストン・アストロズに放出され、43試合で防禦率3.65と悪くない投球だったファーンズワースは、捕手イバン・ロドリゲス獲得のためデトロイト・タイガーズに譲り渡された。また、昨年終盤にMLBデビューして好投、ポストシーズンのメンバーにも選ばれた右腕ロス・オーレンドーフは、シーズン前半に防禦率6.53と打ち込まれてマイナーリーグに送られ、7月26日にピッツバーグ・パイレーツのザヴィア・ネイディを獲得するときの交換相手の1人としてティームを去っている。代わって活躍したのは、3年目のホセ・ベラスと、2年目のエドワル・ラミレスという両新人だった。ともに5勝に3点台の防禦率をマーク。投球回数を上回る三振を奪っている点も注目される。

左腕投手不足は開幕時から明らかで、春期練習中にビリー・トレイバーと契約したが、期待したほどの活躍はできず、MLBとマイナーリーグとを往復するだけだった。そこで、パイレーツからネイディを連れてくるときに、ヴェテランのダマソ・マルテも獲得。02年から6年続けて65試合以上に登板しているマルテは、移籍後の防禦率5.40と良くなかったが、2ティーム合計で72試合に登板。これを見たクラブは、早くも任意延長付きの3年契約を結んでいる。

野手
かつての強力打線も、相次ぐ故障者のために選手が揃えられず、リーグ7位の789得点、同じく4位の180本塁打という、並みの打力にと落ち込んでいる。数字の上ではティームをリードしたのはボビー・アブレウだったが、シーズン通算打率.296、100打点、20本塁打、22盗塁は、フィラデルフィア・フィリーズでプレイしていたころに比べると、打撃走塁守備いずれをとっても冴えがない。ティームのキャプテン、デレク・ジーターは7月12日に通算200本塁打、9月7日に1,000打点をマークして、また一歩野球栄誉の殿堂に近づいた。とは言うものの、シーズン通しての働きはあまり良くなかった。打率.300、88得点、69打点、11本塁打、11盗塁は、MVP投票で2位になった2006年の.343、118得点、97打点、14本塁打、34盗塁を見てみると、ずいぶん見劣りすることがわかる。守備ではダブルプレイ参加数が、前年の104から69と大きく減っているが、150試合近くに出場している遊撃手としては、これは異様なほどの少なさである。ジーターとコンビを組むロビンソン・カノは、06年に打率.342でリーグ3位、昨年は.306、97打点、19本塁打と活躍したが、今季は.271、72打点、14本塁打の不振に終わった。以前はミスの多かった守備が安定してきたのはいいが、ジーターと同じく、ダブルプレイ参加数が136から103に減っている。

昨年のアレクス・ロドリゲスは2度目のMVPに選出されているが、今年は打率こそ3割を超えたものの、104得点、103打点、35本塁打は、いずれもこの5年間では最低の数字である。太腿の故障で5月に3週間欠場した影響は確かにあるが、今年も得点圏打率は.271と、チャンスに打てないのは相変わらずである。。昨年は83試合にしか出られなかったジェイスン・ジアムビは、4月に打率.164と不振だったが、5月、6月と続けて3割以上を打って調子を上げてきた。ところが、オールスターゲームが終わると、再び打撃不振に陥る。最近5年間では最も多い145試合に出場したとは言っても、打率.247、96打点、32本塁打の5番打者では、あまり頼りにならなかった。クラブは、ジアムビとの契約更新を行なわず、ヤンキーズでの現役生活はどうやらこれでおしまいになるようだ。一塁や三塁が休んだときにはウィルソン・ベテミトが先発を務めたが、来季はそのベテミトはベンチにいない。

地区のライヴァル、ボストン・レッドソックスからやって来て3年目のジョニー・デイモンは、ようやく打率3割以上を打ち、出塁率も.375。95得点、29盗塁をマークしてリードオフマンとしての役割は果たした。。中堅手メルキ・カブレラが好調だったのは4月だけで、打率.299、15得点、12打点、5本塁打、3盗塁をマークしているが、シーズン通算成績が.249、42得点、37打点、8本塁打、9盗塁に止まっているのだから、ほとんどこの月だけしか働いていないことになる。その一方で、ブレット・ガードナー、ジャスティン・クリスティアンセンのようなスピードのある選手が昇格、それぞれ13盗塁、7盗塁をマークしており、カブレラの位置も危うくなっている。

10年間ヤンキーズの本塁を常に守り続けてきたホルヘ・ポサダが、右肩の故障のため、わずか51試合にしか出場できず、昨年途中にティームに加わったホセ・モリナが急遽正捕手になった。もともと守備には定評のある選手なのでその点の心配は全くなかったが、やはり打撃では.218、18打点、3本塁打とあまり期待はできなかった。控えに起用されたチャド・モラーも打撃は振るわず、ついに7月31日、デトロイトのイバン・ロドリゲスを獲得して問題解決を図った。ところが、ロドリゲスも26試合に先発して打率.219、3打点、2本塁打とさっぱりだった。

かつては米日通算連続試合出場記録を騒がれていたマツイ・ヒデキは、今年も膝の故障で長期欠場。昨年はサンフランシスコ・ジャイアンツとのトレードの噂もあったが、今ではティム・リンスカムを出さなくて本当に良かったと西海岸では思っているだろう。マツイと指名打者を争うはずだったモーガン・エンズバーグやシェリィ・ダンカン、シーズン途中にシアトル・マリナーズを解雇されたリッチー・セクスンなどの右打者は、いずれも30試合にも出場できなかった。しかし、7月のトレードでピッツバーグ・パイレーツから獲得したザヴィア・ネイディは59試合で打率.268と低かったものの、40打点、12本塁打。2ティーム合計では.305、97打点、25本塁打の打棒を維持できれば、来年もレギュラーで働けるだろう。

MLBにようこそ
フィル・コークの名前が何となく世に知れ渡っているのは、ザヴィア・ネイディ獲得のとき、ピッツバーグ・パイレーツに譲り渡される4選手のうちの1人と報じられたためである。しかし結局残留して、細縦縞のユニフォームでMLBデビューを果たしている。コークは、2002年の新人ドラフトでヤンキーズから第26巡で指名されてプロ入り。今季は初めてAA級トレントンでプレイして20試合に先発、9勝4敗、防禦率2.51と好投。シーズン後半に入ってAAA級スクラントン・ウィルクスバレに呼ばれると、今度はブルペンに回った。そして、9月の40人枠に加えられ、9月1日のデトロイト・タイガーズとの試合でデビュー。9月15日にはMLB初勝利を挙げるなど、12試合で防禦率0.61と好投している。

09年への展望
ただでさえ崩壊していた先発スタッフが、ムシナが引退したことで、さらに危機的状況に陥っている。そこで、このオフシーズンに去就が最も注目されていた左腕C・C・サバシアを7年契約で迎え入れ、前回はトロント・ブルージェイズにさらわれてしまったA・J・バーネットとの5年契約発表も間近だと言われており、先発投手の問題は一気に解決しそうである。一方、ジアムビが抜けた打線には、ニック・スウィシャーを獲得しているが、最盛期のジアムビのような活躍は期待できそうにない。ヤンキーズに来てからの成績はあまり良くないアブレウでも、打線から欠けてしまうと相当な痛手になる。