オークランド・アスレティックス

08年度の概要
やらでもの日本開幕試合では、ボストン・レッドソックスの添え物にされてしまったオークランド・アスレティックスも、シーズン前半はまずまずの試合運びを見せていた。4月、6月と勝ち越し。オールスターゲーム直前の時点で、アメリカンリーグ西地区首位から6ゲーム差の2位につけていた。しかし、このときすでにローテーションの一角、リッチ・ハーデンをシカゴ・カブズに譲り渡しており、さらにシーズン後半が始まる前日にジョー・ブラントンも手放すと、ティームの成績は急落する。7月28日からの10連敗もあって、かつては得意にしていた8月さえも10勝20敗と大きく負け越し。前年の76勝86敗とほとんど変わらない75勝86敗、地区3位の成績でシーズンを終えた。「安く育てて高く売る」という統括ビリー・ビーンの手段が次第に目的化しつつあり、どうしたらこのティームに愛着を抱くことができるのか、疑問を拭い去れない人は多かろうと思う。

投手
オフシーズン中に、昨年ティーム首位の15勝、防禦率3.07、192奪三振をマークしたダン・ヘイレンを放出。シーズン中には、右肘の故障から復帰して5勝1敗、防禦率2.34の好成績を収めていたリッチ・ハーデン、今季は5勝12敗、防禦率4.96と振るわないが、2005年からの3年間では合計42勝をマークしているジョー・ブラントンを立て続けに手放したため、5年ぶりに先発を務める右腕ジャスティン・ダックシェアラーがローテーションの中心になった。開幕早々に右肩を傷めて半月ほど休んだもののシーズン前半は10勝5敗、防禦率1.82と抜群の安定感を見せていた。しかし、7月26日の試合で今季最悪の8失点を喫すると、やや調子が落ち始める。そして8月半ばには、投球中に古傷を再発させて故障者リスト入り。そのままシーズンを終えている。先発スタッフでシーズンを全うできたのは、グレッグ・スミスとデイナ・イヴランドという、ヘイレンとの交換でアリゾナ・ダイアモンドバックスから来た若手左腕だった。今年がMLBデビューだったスミスは、4月にダックシェアラーが故障者リスト入りしたときに代役を務め、そのままローテーションに残った。シーズン前半は防禦率3.43と頑張っていたが、オールスターゲーム以降は2勝9敗、防禦率5.18と崩れた。一方のイヴランドは、MLB4年目で初のフルシーズン出場。スミスと同じく、シーズン前半に7勝6敗、3.49と好投したものの、後半は2勝3敗、6.09と調子を落とし、わずかにふたケタ勝利に届かなかった。

ハーデン、ブラントン放出後の先発スタッフには、ハーデンとの交換で獲得した新人右腕ショーン・ギャラガー、MLB2年目の左腕ダラス・ブレイデン、組織内トップクラスの新人左腕ジオ・ゴンザレス、ブラントンに代わってフィラデルフィアからやって来た新人左腕ジョシュ・アウトマン、ティム・ハドスンのトレードで来てから3年経って依然として伸び悩みの続く左腕ダン・マイアーなどが起用されたが、5勝4敗、4.14をマークしたブレイデン以外はやや打ち込まれた。昨年20試合先発で8勝10敗をマークしている右腕レニー・ディナルドは4月に2度先発を任されたが、1勝1敗、防禦率8.59と打たれたため、マイナーリーグに送られた。

トレードによる選手の異動こそなかったものの、ブルペンでも配置換えが行なわれている。05年の新人賞、右腕抑えのヒューストン・ストリートは、最初の2カ月で12セーヴをマークしたが、6月ごろから打ち込まれるようになったため、8月に前抑えに移された。代わってクローザーを務めたのは、今年デビューの右腕ブラッド・ジーグラー。5月31日に昇格以来39回3分の1無失点という、101年ぶりの新記録を樹立した下手投げの新人は、抑えに定着した8月以降も2勝負けなしで11セーヴ、防禦率2.55と好投を続けている。デビュー以来と言えば、デビューから2試合連続で満塁本塁打を打たれて話題になった右腕ジョーイ・ディヴァインが、42試合に登板して6勝1敗、0.59と好投。打たれた本塁打はなしとは、見事な成長ぶりを披露したものだ。昨年ストリートの代役でMLB14年目にして初めて抑え役を任された左腕アラン・エムブリーは、ティーム最多の70試合に登板。防禦率4.96は、前年から1点以上も悪くなっているのを除けば、まだまだ体力は衰えていないようだ。2年目の新人ジェリー・ブレヴィンズは、7月になってようやく呼ばれた左腕投手だが、36試合で防禦率3.11とよく投げている。

昨年46試合登板の実績があるサンティアゴ・カシヤは、4月に無失点の投球を続けてきたが、5月半ばに右肘を傷めて故障者リスト入り。6月に復帰してからは打ち込まれることが多くなって、シーズンの防禦率は3.99まで下がってしまったが、それでも前年の4.44よりはいい数字だった。右腕アンドルー・ブラウンも4月は無失点と好投。しかし、盲腸の手術のために5月中旬から1カ月欠場し、肩を傷めたシーズン後半はほとんど働けなかった。やはり故障のために開幕からメンバーを離れていた右腕キコ・カレロは、5月下旬になってようやく復帰。しかし、カシヤがブルペンに戻ってくるのと入れ替わりでメンバーを外され、6月いっぱいで解雇されている。昨年クリーヴランド・インディアンズと契約しながら、右肩の故障を理由に引退を表明したキース・フォークが5年ぶりに古巣復帰。シーズン通算で防禦率4.06は、1年間のブランクを考えれば悪くない数字ではあるものの、シーズン途中に肩の故障で2カ月近くも休んでいるのは、やはり不安だ。昨年先発で11勝をマークしたチャド・ゴーダンは、開幕時にはローテーションに加わって3勝を挙げていたが、スミスを先発に残すためにブルペンに移動。7月のトレードで、ハーデンとともにカブズに移籍している。

野手
10年以上も左肩に白い象をつけているのは三塁手エリク・チャベスただ一人になってしまった。しかし、右肩の故障のため、3月には太平洋を渡ることができず。5月の終わりになってようやくメンバーに戻ったものの、30試合も出場しないうちに故障再発。手術を受けることになったため、チャベスのシーズンはそこで打ち切りになった。23試合出場で、打率.247、14打点、2本塁打の成績は、定位置を確保した1999年以来最低の数字である。実績あるヴェテランとして迎えられたであろうマイク・スウィーニィも左膝を傷め、6月以降は6度しか打席に立っていない。4月にトロント・ブルージェイズから放出されたばかりのフランク・トーマスを慌てて呼び戻していたが、2度も右太腿を傷めて、ほとんど働けなかった。ニック・スウィシャー、シャノン・ステュワートが抜けた後のレギュラー外野手として期待されたエミル・ブラウンは、日本では2試合で1本塁打を打つなど4打点、4月に入っても21打点とよく打っていたが、以後は調子を落とした。シーズン後半は.214しか打てず、本塁打数は前年の6本より倍増して13本にはなったが、打点は62から59へと減っている。

頼りになるヴェテランがいない打線の中で、昨年突如打撃開眼したジャック・カストが33本塁打と長打力を発揮したのは目を引く。しかし、33本のうち、得点圏に走者を置いて打った本塁打はわずか2本だけ。リーグ最多の111四球は、確かに「マネーボール」にふさわしい数字だった。ボビー・クロズビーは、04年の新人賞に選ばれて以来、4年ぶりにほぼフルシーズン出場を果たしたが、当時の22本塁打から7本塁打と、長打力が低下。遊撃手としての守備範囲もかなり狭まっている。クロズビーとコンビを組むマーク・エリスは、シーズン通しての打率は.233と、打撃はやや低調だったものの、守備では115試合でわずか4失策しただけで安心してみていられた。しかしエリスも、クロズビーと同じく故障の多い選手で、今季も右肩の手術のために8月まででメンバーを離れている。MLB2年目のカート・スズキは、正捕手として初めてフルシーズンを務め上げた。シーズン当初は下位を打つことが多かったが、リードオフマンを務めていたトラヴィス・バックが故障で抜けると1番を任されたり、打撃好調だった6月、7月には中軸を打ったりで、4番以外の全ての打順でプレイ。守備面でも成長が著しく、24歳の若さで、早くもティームのリーダー役として働いたと言える。控え捕手は、昨年途中にサンディエゴ・パドレスから獲得したロブ・ボウェン。打撃はあまり期待できない選手だが、堅実な守備を見せてくれた。このスズキとボウェンとの2人だけで161試合全てをまかなったというのは、捕手というポジションの仕事を考えるとたいへんなことである。

不振のヴェテランをカヴァーできるほどに若手が伸びてこなかったのも大きな問題である。一塁手に抜擢されたデイリク・バートンは、セイントルイス・カーディナルズ在籍時から打撃を注目されていたが、今年はその片鱗さえもうかがえなかった。シーズン当初には3番を任されていたが、夏場以降は下位を打つことが多くなり、通算打率は.226、47打点、9本塁打。不慣れな一塁守備では13失策も犯し、守備範囲もリーグ平均よりずっと低かった。昨年右翼の定位置を確保したトラヴィス・バックは、開幕してすぐに脚を傷めてメンバーを離れた。3週間ほどで復帰したものの、打撃が振るわずに今度はマイナーリーグ行き。9月に復帰して.367を打ったことが、来季へつながればいいが。バックの故障者リスト入りを受けてサンフランシスコ・ジャイアンツから獲得したラジャイ・デイヴィスは、ティーム最多の25盗塁と、脚力のあるところは披露したが、出塁率が3割に満たないのでは、リードオフマン定着は難しかった。ハーデンとのトレードでシカゴ・カブズから来たマット・マートンは、06年に規定打席以上に出場して.297を打ったこともある右打者だが、9試合で3安打しか打てずにマイナーリーグ行きとなった。その他の外野手では、ライアン・スウィーニィ、カルロス・ゴンサレス、アーロン・カニンガム、クリス・ディノーフィアなど、前の所属ティームでは将来有望と見られていた若手が起用されたが、いずれも目立った活躍をできなかった。昨年もチャベス欠場時に三塁を任されたジャック・ハナハンは、日本での開幕試合で本塁打を打ったのが今年のハイライト。シーズン通して打撃は全く振るわず、打率.218、47打点、9本塁打の成績に終わった。ただ、126試合で9失策と、比較的守りが安定していたのは救いだった。エリスがメンバーを離れた後の二塁には、やはりハーデンのトレードでカブズから来たエリク・パタースンが起用されたが、打率が1割にも満たなかった。次いで、今年のフューチャーズゲームに出場したクリフ・ペニントンが抜擢され、最後の10試合を締めくくった。

MLBにようこそ
2005年の新人ドラフトでは第1巡指名を受けてプロ入りしたクリフ・ペニントンにとっては、来年がきっと正念場になることだろう。俊足強打巧守と三拍子揃った素材は、ボビー・クロズビーに匹敵するとまで言われたこともあるが、膝や太腿裏の故障に相次いで見舞われ、厳しいシーズンが続いていた。今季はAA級で開幕を迎え、本来の遊撃手の他、二塁も守るようになってから調子が出てきたようで、フューチャーズゲームのアメリカ選抜のメンバーには二塁手として選ばれている。MLBも含めた3階級合計で35盗塁を決めた脚力を活かして、来季は開幕からのメンバー入りを目指す。

09年への展望
主力選手ばかりか期待の若手まで次々と手放しているオークランドだが、先月コロラド・ロッキーズの強打者マット・ホリデイを獲得したニューズには驚かされた。ストリート、スミス、ゴンサレスの3人を失ったものの、最近のトレードの中では比較的前向きな感じがする。ロサンジェルス・ダジャーズでプレイしていたラファエル・フルカルと4年契約を結ぶとか、ワシントン・ナショナルズの一塁手ニック・ジョンスン獲得に動いているとか、今年はずいぶん積極的に動いているが、これは統括ビリー・ビーン得意の「マネーボール」の新しい展開なのだろうか。監督ボブ・ゲレンの苦労は、来年も絶えそうにない。