ピッツバーグ・パイレーツ

08年度の概要
これといって明るい話題も見あたらないまま、ピッツバーグ・パイレーツは2008年のシーズンを迎えた。4月11日からの4連勝で、わずか1勝ながら勝率5割を上回ったこともあったものの、直後に6連敗を喫して、早くもナショナルリーグ中地区の最下位に転落した。それでも7月終了時点で50勝58敗と挽回の可能性は残されていたのだが、トレード期限日を前にザヴィア・ネイディ、ジェイスン・ベイと主力打者を相次いで放出。これではマイナーリーグ最優秀監督に選ばれたこともある新監督ジョン・ラッセルでも打つ手がない。8月は10連敗を喫するなど7勝21敗と大きく崩れ、結局シーズン通算67勝95敗で、2年連続の最下位に終わった。92年の東地区優勝を最後に、16年間も負け越しが続いているというのも、痛ましい話である。ボストン・レッドソックス時代に名コーチと謳われたジョー・ケリガンを迎え、まずは投手スタッフの建て直しを図るということだろうか。

投手
昨年14勝10敗、防禦率3.88の好成績を収めた左腕トム・ゴーゼラニーは、信じられないような落ち込みぶりだった。投球回数と同じくらいの四球を与えてしまうという荒れようで、シーズン前半は6勝7敗、防禦率6.57とさんざんの出来で、マイナーリーグに送られた。8月下旬になってメンバーに復帰したものの、今度は左手の中指を折って、一足早くシーズンを終えなければならなくなった。右腕イアン・スネルは、シーズン2試合目の先発で10三振を奪って勝ち投手になったが、以後はゴーゼラニーと同様に制球を乱して、数字を落とした。9月になって2勝2敗、防禦率3.67と立ち直りを見せたときにはシーズン終了で、7勝12敗、防禦率5.42は、ローテーションに定着した06年以来で最低の数字だった。ゴーゼラニー、スネルの不調で、先発の中心になったのは左腕ポール・マホルム。過去2年間は連打を浴びて大量失点を許してしまう場面が目立ったが、今年は粘り強い投球で防禦率を3.71に抑えることができた。しかし、2失点以下と好投したのにもかかわらず勝ち星を挙げられなかった試合が9試合もあり、シーズン通算で9勝と、ふたケタ勝利には届かなかった。左腕ザック・デュークは、05年の快投を再現できない。月によって投球の出来不出来が激しく、6月9日に4勝目を挙げてからは、およそ3カ月も勝ち星を挙げることができなかった。シーズン通算5勝14敗、防禦率4.82はやはり不安定すぎたと言うしかあるまい。

ヴェテラン右腕マット・モリスが、開幕から5試合で勝ち星なしの4敗、防禦率9.67と全く振るわず、4月30日に現役引退を発表した。そのため5月以降の5人目の先発投手のやりくりには、かなり苦心した跡が見られる。最初に抜擢されたのは、00年にボストン・レッドソックスから全体第22位指名を受けてプロ入りした左腕フィル・ドゥマトレイ。4月は救援で防禦率3.92とまずまずの投球を見せていたドゥマトレイは、5月7日の試合でMLB初勝利もマーク。しかし、6月に傷めた左肩が悪化して、シーズン後半を棒に振ってしまった。ドゥマトレイと入れ替わりで呼ばれた右腕ジョン・ヴァンベンショーテンは、4年ぶりの勝ち星こそ挙げたが、10点台の防禦率では、とてもMLBには残れない。右腕ヨスラン・エレラも、大方の元クバ代表選手と同じで、MLBに定着するにはいかにも力不足である。ザヴィア・ネイディとのトレードでニューヨーク・ヤンキーズからやって来た右腕ジェフ・カーステンズは、移籍後初登板初先発で勝利投手になっただけでなく、次の先発では初完封勝利もマークして、大いに期待を持たせたが、残念ながら好投はそこでおしまい。直後に6連敗を喫し、2勝6敗、防禦率4.03が今季の成績だった。ヤンキーズではブルペンで活躍していたロス・オーレンドーフも、9月の出場選手枠拡大に伴って昇格、ローテーションに加えられた。しかし、昨年終盤に見せたような球威はなく、5試合の先発で勝ち星なしの3敗、防禦率6.35と期待はずれに終わった。

抑えの右腕マット・キャップスは、開幕から15試合連続セーヴ機会に成功と、悪くない救援ぶりを披露していたが、肩を傷めて7月に故障者リスト入り。およそ2カ月休んだために、49試合で防禦率3.02、21セーヴの数字に終わったが、体調万全であれば、40セーヴも不可能ではないという技量は発揮した。04年からの4年間で312試合に登板したサロモン・トレスが、オフシーズン中にミルウォーキー・ブルワーズに移籍。さらに、過去2年間で130試合に登板した左腕ダマソ・マルテも、ネイディとともにヤンキーズに去ったため、シーズン終盤のブルペンはかなり手薄になっていた。自己ベストの74試合登板をマークした左腕ジョン・グレイボーは、防禦率も2.84と安定していたが、右腕タイラー・イェイツは、防禦率4.66とやや打ち込まれた。しかし、故障で3年間MLBのマウンドから離れていたショーン・バーネットが、左腕の点抑えとして、グレイボー、イェイツに続く58試合に登板したのは、明るい話題と言っていいだろう。2年ぶりにMLBのマウンドに立った右腕T・J・ビームも、32試合で防禦率4.14はまずまず。しかし、ピッツバーグに来て2年目の右腕フランケリス・オソリアは、自己ベストの43試合でマウンドは務めたものの、防禦率6.08。6月にデトロイト・タイガーズから来た右腕デニ・バウティスタも、防禦率は6点台とさんざんの投球内容だった。ベイのトレードでボストンから来た右腕クレイグ・ハンセンは、不眠症を克服することはできたようだが、1勝4敗1セーヴ、防禦率7.47と、本来の投球を取り戻すまでには至っていない。

昨年途中に現役引退を表明していたはずだったクワタ・マスミがなぜか春期練習に招かれていたが、もちろんMLBで投げられる力があるわけもなく、開幕前に解雇された。

野手
パワーとスピードを兼ね備えた好打者と期待されていたネイト・マクラウスが、ようやく才能を開花させたようだ。4月に打率.330、21打点、6本塁打をマークするなど、前半だけで.281、65打点、19本塁打、11盗塁をマークして、初めてのオールスターゲーム出場を果たした。シーズン通算94打点、113得点、26本塁打、23盗塁は、ティーム最多の数字だった。これで、昨年の不振から立ち直った左翼ジェイスン・ベイ、シーズン前半だけで昨年の自己ベストを上回るペースで打ちまくる右翼ザヴィア・ネイディと並ぶ強打の外野トリオが形成された。しかし、7月26日にネイディがヤンキーズへ、31日にベイがボストン・レッドソックスに移籍し、8月以降ティームの得点力は大幅に低下した。ベイ、ネイディに代わって先発に起用されたのは、俊足巧打のナイジェル・モーガン、ボストンでは成長株と期待されていたブランドン・モス。モーガンは巧みな打撃とスピードとで打率.294、9盗塁をマークし、マクラウスに代わってリードオフマンを務めることもあった。一方のモスは、右翼に入ってしばしば強肩を披露したものの、打撃では.222の低打率と振るわなかった。5月初めにクリーヴランド・インディアンズから来た、ヴェテランのジェイスン・マイケルズは、出場機会は多くなかったものの、6月2日の試合では代打満塁本塁打を放つなど勝負強い打撃をしばしば披露した。昨年High A級から一気にMLBまで昇格して話題になったスティーヴ・ピアースは、ネイディ移籍までほとんど出番なし。昇格後も、不慣れな外野守備が影響したのか、昨年の猛打は微塵も見られなかった。

04年に地元PNCパークで開催されたオールスターゲームでは、ベイとともにファン投票でメンバーに選出されたジャック・ウィルスンも、そろそろティームを離れる時期なのかもしれない。開幕早々に左脚を故障して、メンバーに復帰できたのが5月下旬。復帰後は、守備はともかくも、打撃がさっぱりで、打率.272、22打点、1本塁打は、MLB8年間で最低の数字だった。9月には新人のブライアン・ビクスラー、ルイス・クルスに遊撃手の位置を譲り渡している。レギュラーの入れ替わりは捕手のポジションでも行なわれた。過去2年間、打てる捕手としてレギュラーを占めていたロニ・パウリノが、開幕から打撃不振。控えのライアン・ドゥーミトは、開幕から打率3割と打撃好調だったが、左手の親指を折って5月から欠場する。しかし、6月に復帰後も打棒は衰えず、規定打席には足りなかったものの、シーズン通算で.318をマーク。69打点、15本塁打と、完全にレギュラーの座を確保したようだ。パウリノがメンバーを離れたのと入れ替わりでMLBに呼ばれたラウル・チャベスは、5割近い盗塁阻止率をマークするなど、巧守を披露した。

内野の右側、一塁のアダム・ラローシ、二塁のフレディ・サンチェスはいずれも120試合以上に出場。ともに守備では堅実なところを披露したものの、打撃では期待はずれに終わった。サンチェスは、ナショナルリーグ首位打者になった06年から7分以上も低い.271しか打てなかっただけでなく、2年続けて80打点以上をマークしていたのが、今年は52打点にまで減らしている。ラローシの85打点、25本塁打は、ほぼ平年並みというところだが、相変わらず左投手が苦手で、ベイ、ネイディの右打者が抜けた後の中軸を任されるのは、かなり辛かった。

昨年正三塁手に定着したホセ・バウティスタだったが、3年続けて打率は2割4分前後。マイナーリーグ時代から期待されていた長打力もも今ひとつで、打順は7番がやっとというありさまだった。これ以上の成長はなさそうだと判断したクラブは、ベイのトレードの流れで獲得した、アダムの実弟アンディ・ラローシを三塁に抜擢し、バウティスタをトロント・ブルージェイズに放出した。ピッツバーグ移籍後のラローシは、打率.152、12打点、3本塁打、9失策と苦しんだが、長打力によせる期待は依然として大きい。捕手から三塁に移動した04年のドラフト全体第11位指名ニール・ウォーカーは、今年AAA級インディアナポリスで打率.242、80打点、16本塁打。来季はアンディ・ラローシと定位置争いが見られるだろうか。

ゴールドグラヴ受賞経験のあるヴェテラン一塁手ダグ・ミントキウィツは、本職の他、三塁手として30試合、外野手として6試合で先発出場するなど、意外に器用なところを見せた。ミントキウィツとは、ミネソタ・トゥインズで一緒にプレイしたことがあるルイス・リバス、クリス・ゴメスも複数のポジションをこなす控え内野手として働いた。

MLBにようこそ
ゴールドグラヴ遊撃手ジャック・ウィルスンがいるあいだは、ブライアン・ビクスラーのMLB定着は難しいだろうと言われていた。ビクスラーは、2004年の新人ドラフトで第2巡指名を受けてプロ入り。06年にHigh A級、AA級の2階級合計で3割を超える打率をマークして、注目を集めた遊撃手だ。開幕早々にウィルスンが左足を傷めて故障者リスト入りしたときに、MLBデビューを果たしたが、MLBの壁は厚く、打率2割も挙げられないまま、ウィルスンに定位置を返すことになる。9月に再昇格してからも打撃は振るわず、シーズン通算でわずか.157しか打てなかった。脚力を活かした守備範囲の広さには見るべきものがあったが、グラヴさばきにはまだまだ改善の余地が多い。

09年への展望
かねてから噂されていたこととはいえ、ベイ、ネイディをまとめてシーズン中にトレードしたということは、ティーム再建に早めに着手したと見るべきだろう。それだけに、今年のドラフト第1巡で指名したペドロ・アルヴァレスと、無事にMLB契約を結ぶことができたのは、明るいニューズだ。しかし、デューク、スネル、ヴァンベンショーテン、ピアース、ビクスラーなど、将来を嘱望された選手たちが伸び悩んでいるのを見ていると、クラブの目論む再建策にも一抹の不安がよぎる。来年は組織内トップクラスの素材と評判のアンドルー・マカチェンやニール・ウォーカーがレギュラーに抜擢される可能性が高いが、どうか順調に育ってもらいたいところだ。