08年度の概要
サンディエゴ・パドレスは、昨年ナショナルリーグのワイルドカード決定試合で、抑えのトレヴァー・ホフマンが2点差を逆転されるという悲劇的な結末でシーズンを終えていた。その衝撃が尾を引いていたのだろうか。開幕からは勝ったり負けたりを繰り返していたが、4月16日の延長22回という長い試合に敗れて8勝8敗になったのが最後の勝率5割になってしまった。前年よりも得点を100以上も減らしている打線では、投手スタッフを支えることができず、本拠地球場ペトコ・パークの広さが仇になったような感もある。ナショナルリーグ西地区最下位の63勝99敗は、辛うじて100敗は免れたものの、1993年の61勝101敗以来という、情けないシーズンで終わってしまった。
投手
昨年19勝、防禦率2.54、240奪三振の三冠王に輝き、ナショナルリーグのサイ・ヤング賞に選ばれた右腕ジェイク・ピーヴィには、今年はかなり不満の残るシーズンだった。開幕から3連勝と滑り出しは好調だったが、5月に右肘を痛めて1カ月欠場。6月に復帰してからは防禦率2点台と安定した投球を見せているのにもかかわらず、6回を3失点以内に抑えながら勝ち星を挙げられなかった試合が8試合もあった。シーズン通算防禦率2.85をマークしながら、10勝しかできなかったのは、あまりにもつきがなかったとしか言いようがない。ヴェテラン右腕グレッグ・マダクスも、勝ち星に恵まれなかった投手だ。5月10日の試合で今季3勝目をマークして、史上9人目の通算350勝を達成するが、それから2カ月半ものあいだ、勝ち星から見放されてしまう。ピーヴィと同様に、その間、6回を3失点以内に抑えて勝てなかった試合が8試合もあった。7月28日に今季4勝目を挙げてから、続けて3勝をマークしたが、8月半ばにポストシーズン進出を狙うロサンジェルス・ダジャーズに移籍した。
毎年故障に苦しめられる右腕クリス・ヤングは、今年も2度故障者リスト入りしている。まず5月下旬に打球を顔に受けて鼻の骨を折り、2度目は8月上旬に右前腕部を傷めたためで、合わせてほとんどシーズンの半分を休んでいては、満足な働きはできない。勝ち星は3年続けて減って、今季は7勝、防禦率3.96は、前年より1点近くも悪くなっている。左腕ランディ・ウルフは、5年ぶりに故障のないシーズンを送ることができた。ローテーションの一角として6勝10敗、防禦率4.74の数字を残していたが、7月下旬にヒューストン・アストロズにトレードされている。昨年26試合で先発を務めて7勝10敗、防禦率4.46の成績を収めた右腕ジャスティン・ジャーマノは、5人目の先発投手として開幕を迎えたが、4月21日に10失点を喫するなど、3試合連続でノックアウトされて先発を外された。それからサンディエゴの先発スタッフは、めまぐるしく入れ替わるようになった。招待選手から復帰したヴェテラン左腕ショーン・エステスがジャーマノに代わってローテーション入りして防禦率2点台の好投を見せたが、左手の親指を折って3カ月も休むことになってしまった。エステスが抜けた後にローテーションに入った2年目の新人右腕ジョシュ・バンクスがよかったのは最初の5試合ほどで、以後は長打を浴びやすい短所を狙われて打ち込まれることが多くなった。リリーフで好投していた左腕ウィル・レデスマも、先発で6点台の防禦率では、とても安心して任せられない。唯一、シアトル・マリナーズでは働き場所を失ってしまった右腕ペク・チャソンが、6月からローテーションに加わって、20試合に先発、6勝9敗、防禦率4.62の数字を残したのが、目立つくらいだった。
シーズン後半は、右腕チャド・ライネキ、ダーク・ヘイハースト、ジョシュ・ギア、左腕ウェイド・ルブランクなどの新人を先発に抜擢したが、この中では5試合に先発、2勝1敗、防禦率2.67をマークしたギアの投球が目を引いた。シカゴ・カブズでは03年に18勝をマークしたこともあるマーク・プライアは右肩の故障が完治せず、2年続けてマウンドに立つことができなかった。また、06年にパドレスが西地区優勝したときに11勝を挙げた右腕クレイ・ヘンズリィは、先発を務めたのがわずか1試合。ブルペンで投げることが多くなった。
通算最多セーヴ記録保持者でもある右腕トレヴァー・ホフマンも、40歳で迎えたシーズンはさすがに厳しかったか。シーズン2度目の登板で4失点を喫して負け投手になるなど、4月は防禦率6.52。その後、調子のいい月と悪い月とを繰り返す不安定さが見られ、通算30セーヴ、防禦率3.77は、故障で9試合にしか投げられなかった03年を除くと、95年以来の最低の成績に終わっている。昨年80試合以上でマウンドを務めたヒース・ベル、クラ・メレディスの両右腕は、今年もそれぞれ74試合、73試合に登板。防禦率は前年より悪くなったが、先発と抑えとに不安を抱えるサンディエゴの投手スタッフをよく支えてきた。昨年67試合に投げて防禦率3.05の好成績を残したダグ・ブロケイルに代わる中抑えには、2年ぶりにMLBのマウンドに立った右腕マイク・アダムズが54試合登板、防禦率2.48をマークしてカヴァーした。しかし、昨年新人ながら2点台の防禦率を挙げる活躍を見せたケヴィン・キャメロンは、右肘を痛めてほとんど働けず、1998年にMLBデビューという、35歳のヴェテラン右腕ブライアン・コーリィが8月にボストンからやってきたが、こちらは39試合で防禦率6.23と冴えなかった。
例年左腕の救援投手に人材を欠いているパドレスだが、今年もあまり状況は変わっていない。左腕投手として最も多く投げたのは、ジャスティン・ハムプスンの35試合。肩の故障で出遅れたために、今季初登板は6月に入ってから。しかし、防禦率2.93と好投した。ハムプスンに次ぐ25試合登板のジョー・サッチャーは、MLBデビューだった昨年の防禦率1.29から8.42にまで落ち込んだ。ヴェテランのグレンドン・ラッシュや、シーズン途中に獲得したショーン・ヘンも、全くいいところがなかった。
野手
エイドリアン・ゴンザレスは、ティームの中心打者として全試合に出場。打率.279、119打点、36本塁打を打ち、2年連続100打点、30本塁打をマークした。また、巧みなグラヴさばきと動きの良さを評価されて、今年は初めてゴールドグラヴに選出されている。エイドリアンの実兄エドガー・ゴンザレスは、イグチ・タダヒトの故障欠場から先発二塁手に抜擢され、MLB初年度ながら111試合に出場して打率.277を打った。しかし9月には、06年新人ドラフトで全体第17位指名のマット・アントネッリが昇格。来季はこの二人が正二塁手の座を争うことになるだろう。
エイドリアン・ゴンザレスの他に規定打席以上出場した選手は、右翼手のブライアン・ジャイルズと、三塁手のケヴィン・クズマノフの二人だけ。ピッツバーグ・パイレーツ時代には長打者として鳴らしたジャイルズも、広いペトコ・パークでは長い当たりが飛ばせなくなった。今年は、優れた選球眼を買われてリードオフマンを務めることが多くなり。今年は、ティーム唯一の3割打者になった。06年にMLB初打席満塁本塁打という鮮烈なデビューを果たしたクズマノフは、打率は.260に下がったものの、84打点、23本塁打とゴンザレスに次ぐ打力を振るった。不安視されていた三塁守備は、失策数が前年の22から11に半減、守備範囲も広くなり、進歩の跡が見られる。
昨年は97打点、27本塁打を打ち、エイドリアン・ゴンザレスとともに打線の中軸で活躍したハリル・グリーンは、開幕から大変な打撃不振に陥った。5月2日になるまで本塁打は打てず、打率も2割を少し上回る程度。シーズン前半の打率.216、32打点、8本塁打はひどすぎたが、悪いことは続くもので、7月の終わりに右手を骨折すると、そのままシーズン終了になってしまった。8月以降は、ミネソタ・トゥインズから来たルイス・ロドリゲスがグリーンに代わって遊撃手を務めた。どちらかというと不慣れなポジションではあったが、52試合で3失策と無難にこなし、打撃でも自身ベストの.287を打った。
ジャイルズの他にレギュラーが定まっていなかった外野手は、やはり最後まで決め手を欠いたようだ。通算1,121打点、362本塁打にゴールドグラヴ8回のヴェテラン、ジム・エドモンズをセイントルイス・カーディナルズから獲得したが、打率2割も打てないまま5月上旬でティームを去った。100試合以上でプレイしたのは、昨年途中にアリゾナ・ダイアモンドバックスから獲得したスコット・ヘアストンと、招待選手から3年ぶりのMLB復帰を果たしたジョディ・ゲラトの二人。ヘアストンの17本塁打はティーム第3位の数字だが、打点はわずか31。8月は打点、本塁打ともに0だったばかりか、左手の親指を傷めて、9月は全休することになった。ゲラトはオールスターゲーム以降3割を超える打率をマークして、正中堅手に定着したかと思われたが、ヘアストンと同様に、指の故障で9月をほとんど欠場したのは残念だった。『ベースボール・アメリカ』誌から、今年のトッププロスペクトに選ばれていたチェイス・ヘッドリィは、331打数で104三振は大振りすぎた。わずか9本塁打で、期待されていた長打力も発揮できなかった。しかし、同じく新人のウィル・ヴェナブルは9月11日からほぼ全試合でリードオフマンを任され、打率.264、出塁率.339をマークした。05年のフューチャーズゲームでラリー・ドビー賞に選ばれたジャスティン・ヒューバーは、ランディ・ジョンスンからMLB初本塁打を打って話題になったが、守備範囲が狭すぎて定着できず。ポール・マカナルティも守備に苦しむ場面が多く、長打力を活かしきれないでいる。
外野手とともに、捕手もパドレスの泣きどころとなった。今年がサンディエゴに来てから3年目になるジョシュ・バードが正捕手を務めていたが、攻守ともに不調。そのうえ、5月21日の試合中に傷めた足首が思わぬ重傷となり、2カ月も欠場を強いられた。復帰後も痛む右腕をかばいながらのプレイが続いた。守備にやや難はあるが、レギュラー級の技量を備えているはずのマイケル・バーレットは、ティーム内でのごたごたが原因でシカゴ・カブズから放出されて以来、すっかりつきが落ちてしまったように見える。開幕早々に右肘を傷めて故障者リスト入り。バードと入れ替わるようにしてメンバーに戻ったが、2割にも満たない低打率に苦しめられただけでなく、7月2日の試合で投球を顔に受けて退場。結局これが今季最後の試合出場になった。シーズン前半は、ルーク・カーリン、コルト・モートンの両新人が控えを務めていたが、まだまだMLBに定着できる水準ではなかった。しかし、バーレットの故障者リスト入りでMLBデビューを果たしたニック・ハンドリィがオールスターゲーム以降、レギュラー捕手として定着。攻守ともに成長途上と言えるが、5本塁打のうち地元ペトコ・パークで4本塁打を放った長打力に期待したいところだ。
MLBにようこそ
監督バド・ブラックは延べ14人の先発投手を起用したが、そのうち今年がMLBデビューだったのは、右腕チャド・ライネキ、ダーク・ヘイハースト、ジョシュ・ギア、左腕ウェイド・ルブランクの4人だった。この4人の中ではギアの評判が高いようだ。05年の新人ドラフトでは第3巡で指名されてプロ入り。大崩れすることが少ない、巧みな配球で、昨年パドレス組織内では最多の17勝をマークして、注目を集めるようになった。今季8月30日にMLB初登板初先発を務め、勝利投手にもなった。このまま順調に育っていけば、来季のローテーション入りは確実だろう。
09年への展望
ティーム唯一の3割打者ジャイルズとは契約延長を行なったが、最多セーヴ記録保持者のホフマンとは契約更新を行なわなかった。また、昨年のサイ・ヤング賞ジェイク・ピーヴィには、トレードの噂がある。オフシーズンに入ってから、やや打撃面を重視しているかのような動きが見られるのは、広いペトコ・パークをものともしない長打者獲得という狙いがあるのかもしれない。しかし、得点力向上を実現するよりも先に、投手スタッフが総崩れを起こしそうな危険性もある。