08年度の概要
2006年の世界一から、昨年は故障者続きでティーム力が低下して、勝率5割さえ維持できなかったセイントルイス・カーディナルズ。今年も、投打ともにレギュラーの決まらないポジションが多かったが、MLBでの実績が少ない選手たちがいい働きを見せて、次々に定位置を確保していった。4月に18勝11敗と好調な滑り出しで、ナショナルリーグ中地区首位。しかし、なかなか負けないシカゴ・カブズに対して、セイントルイスは5月以降、少しずつ負けが目立ち始める。53勝43敗、首位から4.5ゲーム差の2位でシーズンを折り返したものの、8月に入ると調子を取り戻したミルウォーキー・ブルワーズに抜かれ、9月10日から今季最長の7連敗を喫して、さらに4位に後退。最後は6連勝と追い上げたもののわずかに及ばず、86勝76敗の4位に終わった。
投手
2005年のサイ・ヤング賞クリス・カーペンターは、今年も右肘の故障でほとんど登板できなかった。昨年14勝をマークしてティームの勝ち頭になった右腕アダム・ウェインライトが、4月、5月で合計5勝、防禦率2点台と安定した投球を見せていたが、6月の試合中に右手中指を傷めて、およそ2カ月半もメンバーを離れた。復帰後は7試合先発のうち2失点以下に抑えた5試合に全て勝ち、2年連続のふたケタ勝利をマークしただけに、夏場の長期欠場は、ティームにとって大きな痛手になった。春期練習中に契約を結んだ右腕カイル・ローシは、8年間のキャリアで最高のシーズンを送った。5月24日からオールスターゲームをまたいで9連勝。夏場にやや打ち込まれ場面も見られたが、シーズン通算15勝、防禦率3.78は、いずれも自己ベストの記録だった。昨年、MLB10年目で初めて先発を務めたブレイデン・ルーパーは2年連続の12勝。6月11日に初完封勝利もマークしたが、オールスターゲーム以降は、投球内容が悪くないわりには勝ち星に恵まれず、3勝7敗と負け越した。しかし防禦率は、前年の4.94から4.16と大きく向上している。ルーパーと同じく、右腕トッド・ウェルマイアーは、昨年途中にカンザスシティ・ロイアルズから来るまでは、03年にMLB昇格以来、一度も先発経験がなかった。今季は開幕からローテーションに加えられ、5月には4勝して負けなし、防禦率2.19の好成績をマークして、月間最優秀投手に選ばれた。その直後にやや調子を落としたものの、オールスターゲーム後には立ち直って6勝5敗、防禦率3.31。シーズン通算防禦率3.71はティーム首位、13勝はローシに次ぐ数字だった。
ローテーションの一角に予定されていた右腕ホエル・ピニェイロは、春期練習中の故障で開幕に間に合わず、4月中旬からの合流になった。いい投球をするときには勝ち星がつかず、調子が悪いときにとことん打ち込まれるという投球で、7勝7敗、防禦率5.15。03年の16勝を最後に、今年もふたケタ勝利に届かなかった。06年世界一に貢献した右腕アンソニー・レイエスも昨年は2勝14敗、防禦率6.04と大きく崩れ、今季はブルペンに移動したために先発の機会はなし。そのうえ、シーズン途中にはクリーヴランド・インディアンズにトレードされてしまった。昨年も17試合で先発を務めたスウィングマンの右腕ブラッド・トムプスンも肘を傷めたために、登板数は昨年の44試合から26試合とほぼ半減して、6勝3敗、防禦率5.15の数字に終わっている。ミッチェル・ボッグズ、マイク・パリジの両新人右腕にも先発のマウンドが回ってきたが、ボッグズは3勝を挙げたとはいえ、奪三振数をはるかに上回る四球を与えるなどコントロールに苦しんだために防禦率は7.41と振るわず、パリジは勝ち星なしの4敗、防禦率はボッグズよりもさらに悪い8.22だった。
右肩の故障を抱えながらのプレイを続けていた抑えのジェイスン・イズリングハウゼンも、ついに限界を迎えることになるのだろうか。開幕から5試合連続セーヴと好調なスタートを切ったが、4月12日の試合で初めてセーヴ機会をつぶしてしまうと、ほぼ2試合に1度の割合で救援に失敗するようになった。5月にはクローザー役を外されたうえに、右手の怪我で故障者リスト入り。6月に復帰してからは中抑えで投げていたが、8月には再び故障者リスト入りし、そのままシーズンを終えた。結局、イズリングハウゼンの不振に伴うクローザーの不在が、最後までカーディナルズを苦しめることになった。最初に代役を務めたのは、右腕ライアン・フランクリン。オールスターゲームまでには12セーヴを挙げたが、後半すぐに3試合続けて救援に失敗すると、5月からブルペンに加わっていた新人右腕クリス・ペレスが引き継いだ。ペレスも8月には無失点で6セーヴと調子が良かったが、9月初めに打ち込まれ、最後はフランクリン、ペレスの2人で試合終盤をまかなうことになった。抑えには不安が多かったが、前抑えのラス・スプリンガーはほぼ万全と言える投球だった。昨年に続いて、今年も70試合に登板し、防禦率も2点台。ブルペンの中では最も安定感があった。春期練習での活躍で開幕メンバーに抜擢された新人右腕カイル・マクレランは、シーズン前半防禦率2.94と好投したが、後半は調子を落として6.46と打ち込まれた。
タイラー・ジョンスンの故障で手薄になりかかった左腕救援には、春期練習に招かれていたヴェテランのロン・ヴィローンが加わり、フランクリンと並んでティーム最多の74試合でマウンドを務めた。この3年間で185試合に投げていたランディ・フロレスは、4月に防禦率0.00と好投したのに、5月、6月は防禦率7点台。足首を傷めたり、マイナーリーグに送られたりと、浮き沈みの激しい1年だった。
野手
アルバート・プホルスは当代屈指の強打者にふさわしいい打撃を披露した。6月に左肩を傷めて半月ほど休んでいるが、シーズンの6カ月、全ての月で3割以上の打率をマーク。シーズン前半は打点が50と少なかったが、オールスターゲーム以降は65試合で66打点と打ちまくって、新人だった2001年から8年連続で100打点を達成。打率3割、30本塁打も8年連続で、100得点は7度目、そのうえ自身初めて100四球を選び、05年以来2度目のMVPに選ばれて今シーズンを締めくくった。今年ティーム一番の成長株はライアン・ルドウィクということで誰にも異存はあるまい。昨年2年ぶりにMLBに復帰して120試合に出場したルドウィクは、今季は開幕から打撃好調でシーズン前半に打率.289、65打点、21本塁打をマークし、オールスターゲームに選ばれた。シーズン後半も打棒は衰ることを知らず、打率.299でわずかに3割には届かなかったとは言え、37本塁打はプホルスと並んでティーム首位、113打点はプホルスに次ぐ数字で、シーズン終了後の記者投票でシルヴァースラッガー賞に選ばれている。
ルドウィクの成長ぶりにはかなわないが、スキップ・シューメイカーも素晴らしいシーズンを送っている。中堅を守ることが多かったが、左翼、右翼でも30試合以上に先発を務め、出場した試合の数はティーム最多の153試合。そのうち110試合でリードオフマンとして起用され、打率.302、出塁率.359、87得点の成績を収めた。野手としては初めてのフルシーズンとなったリック・アンキールは、自慢の長打力を発揮した。シーズン前半だけで20本塁打。特に7月には打率.353、21打点、7本塁打と大当たりだったが、8月以降は低調。9月には4試合しか出場できず、シーズン通算25本塁打で終わってしまったが、それがなければプホルス、ルドウィクと並んで30本塁打を打っていただろう。昨年のルール5ドラフトで迎えられたブライアン・バートンは、もちろん開幕メンバー入りを果たしている。シーズン序盤には脚力を買われてリードオフマンを任されることもあったが、5月、6月と低打率に苦しみ、7月には手首を強打して故障者リスト入りした。この2年続けて20本塁打以上を打ったクリス・ダンカンは、シーズン前半わずか6本塁打。シーズン後半に入ってすぐに首を傷め、以後のシーズンを欠場している。春期練習中から長打力に注目されていたジョー・マーザーは、ダンカンが打撃不振でマイナーリーグに送られたときに昇格し、5月30日にMLBデビューを果たした。一時マイナーリーグに戻ったが、今度はダンカンが故障者リスト入りしたときに呼ばれ、34試合で7本塁打を打っている。
同じ三塁を守るスコット・ローレンとの交換で話題になったトロイ・グロースは、ベストではなかったものの、それに近い、いいシーズンを送ることができたようだ。昨年は故障で50試合近くを休んでいるが、今季は大きな故障がなかったおかげで、151試合でプレイした。100打点、30本塁打にはわずかに足りない99打点、27本塁打に、21世紀に入って最高打率の.270。芝のグラウンドでのプレイで負担が軽くなったのか、守備でも動きが良くなった。06年ワールドシリーズMVPのデイヴィッド・エクスタインに代わる遊撃手には、セサル・イストゥリスが任された。ゴールドグラヴ受賞経験のある守備はさすがと言わせるものだったが、打撃では不動の9番打者として.263と、可もなく不可もなしという成績で、ティーム首位の24盗塁をマークしたのが目を引くくらいだった。二塁手のアダム・ケネディは、相変わらず故障が多かった。試合に出れば、巧みな打撃とやはりゴールドグラヴ級の守備は披露してくれたが、残念ながらシーズンの3分の2でしかケネディのプレイを見ることはできなかった。アーロン・マイルズは今年も内外野の控えで活躍。捕手と一塁とを除く全てのポジションをこなしただけでなく、昨年に続いてマウンドも務めている。8月にワシントン・ナショナルズから放出されたフェリペ・ロペスが加わり、打っては打率.385、21打点、4本塁打、守りでは対左投手の二塁手としてよく働いた。昨年は新人ながら控え内野手として起用されたブレンダン・ライアンは、ロペスの加入以降はほとんど出番がなかった。
ヤディエル・モリナは、捕手の守りは抜群だが、打撃は今ひとつの選手というイメージが強かった。しかし、今季は打撃も好調。規定打席には20ほど足りなかったが、MLB5年目で初めて打率3割をマーク。56打点も自己ベストの数字だった。意外にもこれまで受賞経験のなかったゴールドグラブにも選ばれ、攻守両面でナショナルリーグを代表する捕手になったわけである。シンシナティ・レッズ時代には強肩長打で知られたジェイスン・ラルーが加わり、捕手としては57試合に出場。モリナの控えは毎年のように違う選手が務めていたが、契約延長も決まり、来季もセイントルイスの本塁はモリナ、ラルーが守ることが決まっている。
MLBにようこそ
2002年の新人ドラフトでは第25巡指名だったカイル・マクレランのプロ生活は、苦労の連続であったろう。プロ入りから最初の3年間は主に先発投手として投げていたが、7勝20敗、防禦率5.24とひどいものだった。さらに悪いことに、05年には右肘を傷め、トミー・ジョン手術を受けたためにほぼ2年間を棒に振っている。マクレランがようやくその力を発揮し始めたのは、プロ入りから6年目の去年のことで、High A級、AA級合計で40試合に救援を務め、6勝1敗、防禦率1.81、54奪三振の好成績を収めた。今年の春期練習では7試合で防禦率1.38をマークしたのを認められて開幕メンバーに加えられた。シーズン後半、疲れが出たためか調子を落としてはいるが、ほぼシーズンを全うして68試合に登板したのは、評価していいだろう。
09年への展望
先発投手と外野手との不安は、監督トニー・ラルサが老練な手際でやりくりして、破綻を来さずにすんだものの、イズリングハウゼンが崩れた後のクローザーだけは、どうにも繕いようがなかった。しかし、今年はあまり資金を注ぎ込まずに獲得できそうな救援投手がいないので、新人クリス・ペレスが抑え、ライアン・フランクリンやラス・スプリンガー、MLB2年目のカイル・マクレランが前抑えという役割分担で09年シーズンを迎えると思われる。その一方で左腕救援トレヴァー・ミラーや遊撃手ハリル・グリーンを補強し、徐々にティームの強化は進められている。