テキサス・レンジャーズ

08年度の概要
昨年ティーム内に生じた、監督ロン・ワシントンと選手たちとのトラブルも解消したテキサス・レンジャーズは、今季はやや上昇の兆しを見せ始めた。4月までの負け越しを、5月の19勝10敗で取り返し、シーズン前半は50勝46敗、首位から7.5ゲーム差でアメリカンリーグ西地区3位につけていた。惜しまれるのは8月の不調で、11勝18敗と落ち込んだために、首位からの差はオールスターゲーム直前と比べて倍以上の17ゲーム差にまで広がってしまった。幸か不幸か、順位争いのライヴァル、オークランド・アスレティックスが、その上を行く不振に陥っていたおかげで2位に浮上。最後の5試合で4勝を挙げて、79勝83敗、西地区2位の成績でシーズンを終えた。しかし、得点力はMLB最強、防禦率は最低という両極端を改善しなければ、これ以上の進歩は期待できないだろう。

投手
ティーム防禦率5.37は、MLB30ティームで最低だった。開幕時にローテーションを形成していたビセンテ・パディヤ、ケヴィン・ミルウッド、ジェイスン・ジェニングズ、ケイスン・ガッバード、ラミロ・メンドサの5人のうち、どうにか規定投球回数を超えられたのは、パディヤ、ミルウッドの両右腕だけ。ジェニングズは右肘を傷めて5月に、ガッバードは左肘の故障で6月にメンバーを離れ、そのまま復帰できなかった。新人メンドサも、右肩の故障で4月からおよそ2カ月欠場。7月にローテーションに戻ったものの、8試合で2勝4敗、防禦率9.42というひどいありさまで、シーズン終盤はブルペンに回されている。

前年は故障がちで6勝10敗、防禦率5.76と不調だった右腕パディヤは、14勝8敗、防禦率4.74と立ち直った。シーズン前半は10勝をマークしていたが、オールスターゲーム前に首を傷めて2週間欠場。復帰後すぐに2勝を挙げたものの、前半ほど勝ち星が伸びなかった。2005年の最優秀防禦率投手ミルウッドは、テキサスに来てから3シーズンのうち、昨年、今年と5点台の防禦率で苦しんでいる。相変わらず故障も多く、今季も2度故障者リスト入りを経験した。8月に2試合連続1失点完投勝利をマークしているが、シーズン通じてこのような投球ができれば、テキサスの先発スタッフにも柱ができてくるところなのだが。

ジェニングズの欠場で、5月から先発に抜擢された右腕スコット・フェルドマンは、今年がMLB4年目だが、先発の経験は一度もなし。比較的いい投球をしていたのは6月までで、オールスターゲームを境にして数字が急落したのは、やはり体力不足であったか。その他にも多くの若手が先発に起用されているが、左腕A・J・マーレイは、肩を傷めために2試合投げただけでシーズン終了。5月に救援でMLB初登板したときに初勝利も挙げている右腕ダグ・マシスは、先発としては4試合で防禦率8.83と振るわず、組織内トップクラス右腕と期待されたエリク・ハーレィもMLB初勝利こそ挙げたが、2度の故障者リスト入りで定着できなかった。故障で完全に出遅れてしまったブランドン・マカーシーが復帰したのは8月下旬のこと。5試合で1勝1敗、防禦率4.09は平凡すぎて、かつてはシカゴ・ホワイトソックスのNo.1成長株とも評されていたことがある右腕投手としては、寂しい数字だった。一方、アトランタ・ブレイヴズでは有望株と言われていた左腕マット・ハリスンが7月にデビューした。MLB初先発で7回2失点の投球で初勝利、9月には初完封勝利までマークして、ミルウッドと並んでティーム2位の9勝を挙げたのは目を引くが、防禦率5.49は高すぎた。アリゾナ・ダイアモンドバックスでは芽の出なかった右腕ダスティン・ニッパートは、ブルペンではぱっとしなかったが、シーズン終盤にローテーション入りして、9月には2勝1敗、防禦率3.97と、ようやく素質を示しつつあるようだ。

昨年後半から抑えを任されていた左腕C・J・ウィルスンが、今季は開幕からクローザーを務めた。しかし、4月に防禦率3.27をマークした以外は、全ての月で防禦率5点台前後と打ち込まれている。そして、8月上旬には肘の故障でメンバーを離れた。ウィルスンが故障者リスト入りした後は、投球回数を上回る三振を奪う速球派右腕フランク・フランシスコが代役に抜擢された。当初はセーヴ失敗も目立ったが、9月は9試合に登板して無失点、1勝3セーヴの数字を残している。その他にブルペンで不振だったのは、前抑えの右腕ホアキン・ベノイト。昨年はティーム最多の70試合登板、7勝4敗6セーヴ、防禦率2.85、87奪三振の好成績を残しているベノイトは、シーズン前半に防禦率5点台と打ち込まれたのに加えて、7月には右肩に炎症を起こして1カ月欠場。8月に復帰してからは投球内容は良くなったものの登板機会は少なく、防禦率5.00に終わった。昨年は先発でも起用されていたヴェテラン右腕ジェイミィ・ライトが、MLB13年目で初めて救援投手としてシーズンを送った。ティーム最多の75試合でマウンドを務めているが、防禦率は5.12だった。3年目の新人右腕ジョシュ・ループは、前年の16試合から今年は46試合と登板機会を増やしているものの、防禦率はやはり5点台。今年MLBでのデビューを果たした右腕ワルネル・マドリガルも31試合登板で、防禦率4.75。過去2年間はローテーションに加えられていたが、ブルペンで再起を狙った右腕キャメロン・ローは、MLBとマイナーリーグとを行ったり来たりするばかりで、12試合しか投げられなかった。一番ひどかったのは新人右腕フクモリ・カズオで、クローザー候補の一人とも言われていながら、球威も制球力も全くなく、4試合で防禦率20.25の成績を残して解雇された。先日マイナーリーグ契約を結んだようだが、日本人なら誰でも活躍するだろうという幻想なのか、単なる金目当てなのか、理由はどうあれ、これが異常であるということにMLB全体が早く気付いてもらいたいものだ。

野手
昨年見事なMLBデビューを果たした、1999年全体第1位指名ジョシュ・ハミルトンを獲得して、打線が強化された。ハミルトンはシーズン前半、93試合で95打点と出場試合数を上回るペースで打点を記録、初めてオールスターゲームにも選ばれた。シーズン後半に入ると打点を挙げるペースは急落。俄然調子を上げてきたミネソタ・トゥインズのジャスティン・モノーとの争いになったが、最後は1点の差をつけて、130打点で初のタイトルを手にしている。新加入の選手では、ミルトン・ブラドリィも自己ベストとも言えるシーズンを送った。ここ数年故障がちで100試合以上に出場したことがなかったブラドリィは、今年は126試合に出場。開幕から毎月3割以上の打率をマークするという好調ぶりだったが、残念ながら、9月に.286とやや調子を落としたためにタイトル獲得はならなかった。しかし、打率.321、77打点、78得点、22本塁打は、いずれもデビュー以来最高の数字である。昨年途中にボストン・レッドソックスから来た3年目の新人デイヴィッド・マーフィーは、開幕試合で7番左翼手として先発。その後も外野の3ポジションを器用にこなしながら出場を続け、シーズン前半に打率.276、60打点、13本塁打をマークした。8月に入って膝を傷めて故障者リスト入りし、シーズンの残りを全休したのは残念だった。新人ブランドン・ボッグズは、4月29日のデビュー試合で2安打、翌日はMLB初本塁打と、第一印象は抜群。5月には正左翼手に抜擢されて16打点をマークした。調子が落ちた6月以降はレギュラーから外されはしたが、シーズン終了まで控え外野手としてメンバーに残っていた。ブラドリィや新人選手の活躍によって、フランク・カタラノットの出場機会は大きく減っている。シーズン当初は指名打者、左翼、一塁と、3つのポジションに起用されていたが、若手が相次いでデビューすると出場機会も減り、4年ぶりに出場試合数が100試合を下回った。昨年ティームの4番打者として活躍したマーロン・バードは、左膝を傷めて開幕早々に故障者リスト入り。その間に若手の台頭を許したが、5月中旬に復帰すると外野の3ポジションを掛け持ちしながらシーズンを務め上げ、打率.298、53打点、10本塁打をマークした。マーフィーがメンバーを離れた後正右翼手になったネルソン・クルスは、31試合の出場ながら、打率.330、26打点、7本塁打を打っているが、来季はメンバーに食い込めるだろうか。

今年が3年目のフルシーズンになったイアン・キンズラーは、さらなる成長を遂げた。今年は開幕からリードオフマンに起用されたが、シーズン前半だけで打率.337、出塁率.397、84得点、58打点、14本塁打、23盗塁という見事な成績を収めていた。守備範囲の広さもリーグ水準をはるかに上回っており、打撃走塁守備あらゆる面で活躍していたが、8月中旬にスポーツヘルニアを起こして、欠場を強いられることになった。キンズラーの相方、遊撃手のマイケル・ヤングは、打撃がやや振るわなかった。シーズン前半は打率3割を維持していたが、8月、9月と続けて打率を落としたために通算打率は.284。03年から続けていた打率3割、200安打がいずれも途絶えてしまった。しかし、安定した守備が評価され、初のゴールドグラヴ賞に選出された。新加入のベン・ブルサードが打撃不振で5月で解雇され、ハンク・ブレイロックも太腿裏に重傷を負って65試合しか出場できなかったため、一塁と三塁とはシーズンを通してレギュラーが不在だった。多数が起用された中で最も注目されたのは、一塁、三塁の二つのポジションで猛打を振るった新人クリス・デイヴィスだろう。デビュー2試合目で先発一塁手を務め、その試合でMLB初本塁打を放つと、その後オースルターゲームまでの15試合で5本塁打。ブレイロックが復帰した8月下旬から三塁に移動したが、打棒は衰えず、80試合で打率.285、55打点、17本塁打と、レンジャーズ組織内トップクラスの野手という評判通りの活躍を見せた。このデイヴィスの活躍によって、昨年50試合以上で先発三塁手を務めたトラヴィス・メトカーフや、デイヴィスより一足早く、4月にデビューしていたヘルマン・ドゥランなど、他の若手三塁手はすっかりかすんでしまった。俊足巧打堅守と言われていたホアキン・アリアスは、2年ぶりのMLBで一塁を除く内野の3ポジションに起用されて.291を打ったが、キンズラー、ヤングの二遊間コンビの壁は厚い。昨年テキサスに来てから万能内野手として2年続けて100試合以上に出場しているラモン・バスケスのように、スーパーサブになるべきかもしれない。

ミネソタ・トゥインズのジョー・マウアー、マイク・レドモンドのコンビに勝る捕手を抱えるティームは他にないが、層の厚さという点では、テキサスもいい線行っているかもしれない。一番多い86試合で先発したジェラルド・レアードは、打撃はやや苦手だが、強肩堅守で知られ、両打ちのジャロッド・サルタラマッキアは、逆に打撃が期待されている。ここに今年、05年新人ドラフト第3巡指名のテイラー・ティーガーデンが加わった。15安打のうち6本塁打、5二塁打と11本も長打を放つなど打撃面での成長が著しい。新人マックス・ラミレスは、捕手として育てるよりも、打力を活かすために一塁か指名打者に移動させる方針があるようだ。

MLBにようこそ
テイラー・ディーガーデンと言えば、2005年の新人ドラフトで第3巡指名を受けてプロ入りする前から、ゴールドグラヴ級の守備を備えた捕手と見られていた。その後、右肘のトミー・ジョン手術を受けた後でも、その評価は全く揺るがないが、昨年はHigh A級、AA級の2階級合計で27本塁打を放ち、打撃面でも大きく成長を見せている。そして今年はフューチャーズゲームのアメリカ選抜のメンバーに選ばれ、走者を2人もアウトにする活躍である。北京オリンピックに邪魔されてデビューが遅れたが、わずか16試合の出場ながら、ティーガーデンは周囲に強い印象を残したことだろう。

09年への展望
キンズラー、マーフィー、デイヴィス、ティーガーデン、ボッグズと、ここ2、3年でデビューした野手の活躍は目覚ましく、打線に関しては、この先も楽しみが多い。それだけに、MLB30ティームで最も打ち込まれている投手スタッフをいかにして建て直すかが重要な課題である。特に、今年開幕時の先発スタッフは全員故障に見舞われ、シーズンを通して満足な働きができなかっただけに、故障が少なくて体力のある先発投手を1人か2人迎えたいところだ。