08年度の概要
この数年間、積極的に選手補強を行なってきているトロント・ブルージェイズだが、今年もまた故障者に苦しめられたシーズンになってしまった。抑えのB・J・ライアンと新加入の三塁手スコット・ローレン抜きで開幕を迎え、5月にはこれも新加入の遊撃手デイヴィッド・エクスタイン、ティームの中心ヴァーノン・ウェルズなどが故障者リスト入り。6月に入ってすぐに4連敗、さらに14日から5連敗を喫してアメリカンリーグ東地区最下位に沈んだところで監督ジョン・ギボンズが解任された。しかし、1992年、93年連続世界一のシト・ガストンが後任に就くと、ティームは調子を取り戻してきた。オールスターゲーム直後に4位に浮上。シーズン後半39勝28敗で、ニューヨーク・ヤンキーズと激しく3位の座を争ったがわずかに及ばず、86勝76敗で4位の結果だった。ティームを建て直したガストンは契約延長が決まっており、来季以降のブルージェイズの飛躍が期待されている。
投手
2003年のアメリカンリーグのサイ・ヤング賞右腕ロイ・ハラデイが、当時に勝るとも劣らない、素晴らしい投球を披露した。4月には4試合連続完投をマークしながら3連敗を喫するという不運なところもあったが、シーズン通して防禦率はリーグ2位の2.78と、安定感は抜群だった。リーグ首位の9完投に、同2位の20勝、同3位の206奪三振には、2度目のサイ・ヤング賞も期待されたが、惜しく得票第2位に終わっている。故障と荒れ球とで、例年ふたケタ勝つのがやっとだった右腕A・J・バーネットは、10年間のキャリアで最高の投球を披露した。シーズン前半は早くも10勝を挙げたとは言え、防禦率4.96と不安定な内容だったが、オールスターゲーム以降は8勝2敗、防禦率2.86と、大きく改善された。シーズン通算18勝、231奪三振は、自己ベストの数字である。
ハラデイ、バーネットの両輪に続くのはMLB2年目のジェシー・リチュ。開幕から最初の2カ月で7勝をマーク。6月から調子を落とし、オールスターゲーム後に半月ほどマイナーリーグに送られたが、復帰後は5勝2敗防禦率1.92と完全に立ち直った。昨年ともに12勝をマークしたショーン・マーカム、ダスティン・マガワンの両右腕は、故障のために不本意なシーズンだった。マーカムは4月、5月で5勝3敗、防禦率2.63の数字を挙げていたが、6月に故障者リスト入り。オールスターゲーム後に復帰したものの、4勝3敗、防禦率4.78と調子は戻らず、ふたケタ勝利には届かなかった。一方のマガワンは、オールスターゲーム直前に肩の痛みを訴えてメンバーを離れ、そのまま残りシーズンを全休。勝ち星は前年の半分の6勝しか挙げられなかった。
2人の故障者をカヴァーするため、04年の全体第16位指名左腕デイヴィッド・パーシィが先発に抜擢された。シーズン前半には2度、スケジュールが厳しいところで臨時の先発に起用されているが、リチュがマイナーリーグに送られた7月下旬に三たび昇格し、今度はローテーションに定着した。7月26日の試合でMLB初先発を挙げたものの、連打を浴びて早い回でマウンドを降りることが多かった。それでも1試合11奪三振をマークするなど、三振を奪える左腕投手として、来季は先発定着も期待される。7月下旬にMLBデビューを果たした右腕スコット・リッチモンドは、5試合の先発しかなかったが27回を投げて与えた四球がわずか2個と、コントロールの良さを披露してくれた。
昨年もB・J・ライアン欠場時にクローザーを任されて、30セーヴをマークした右腕ジェレミー・アッカード、右腕投手としては最多の70試合に登板して防禦率2.35と好投した右腕ケイシィ・ジャンセンが故障で働けなかったが、MLB屈指といわれる強力なブルペンには、ほとんど影響を受けなかった。2週間遅れてティームに合流したライアンは、故障する前のような三振の山を築き上げる投球を完全に取り戻してはいないものの、2年ぶりの30セーヴに防禦率2.95をマーク。抑えの仕事は全うした。ライアンを始めとして、トロントのブルペンには左腕投手が豊富に揃っている。昨年もティーム最多の81試合に投げて防禦率2.17をマークしているスコット・ダウンズは、66試合で防禦率1.78と、完璧に近い救援を披露した。そのダウンズを上回る69試合に登板したジェシー・カールスンは、今年がMLB初年度の新人。シーズン通算7勝2敗2セーヴ、防禦率2.25はダウンズに匹敵する投球内容だった。トロントに来てから今年が3年目のブライアン・タレトは、年々数字が良くなっている。06年の防禦率3.81から、昨年は3.47、今年は2.88と、こちらも信頼できるリリーフ投手になった。ヴェテランのジョン・パリッシュは、出番は少なかったものの、先発、救援の両方で起用された。
アッカード、ジャンセンのいない右腕は、左腕よりやや見劣りがしたが、それでもジェイスン・フレイザーは、5年間で281試合に登板、防禦率4.03とまずまずの数字を残している。タムパベイ・デヴィルレイズから来たショーン・キャムプは、MLBとマイナーリーグとを行ったり来たりの一年だったが、40試合登板で防禦率4.12の成績はそれほどひどくはなかった。故障明けのブランドン・リーグや、ブライアン・ウルフは、いずれも2点台の防禦率をマークしており、シーズンを通して働いてくれれば、ブルペンはさらに強化されるだろう。
野手
攻守の要ヴァーノン・ウェルズは、開幕から36試合で打率.281、24打点、5本塁打と、悪くない数字をマークしていたが、打球を捕ろうとした弾みで左手首を折って1カ月の故障者リスト入り。7月には太腿裏を傷めてまた1カ月欠場し、結局シーズンの3分の1を休むことになってしまった。それでも打撃そのものは好調で、規定打席不足ながら打率.300を打っており、78打点、20本塁打は、もしシーズンを全うしていたならば100打点、30本塁打も可能だったろう。昨年は85打点、24本塁打と、長打力を発揮しつつあったアレクス・リオスは低調なシーズンだった。今年はウェルズの故障中に右翼から中堅に回って、打線の中軸を打った5月に.231、9打点、1本塁打と振るわなかったのも含めて、シーズン前半でわずか4本塁打。オールスターゲーム以降に打率.300、40打点、11本塁打と調子を取り戻したものの、前年を下回る79打点、15本塁打に終わっている。
開幕前にリード・ジョンスンが解雇されたため、マイナーリーグ契約を結んでいたシャノン・ステュワートを左翼手に起用。しかし、2割5分にも満たない低打率に加えて、6月には足首の故障でメンバーを離れ、そのまま解雇された。シアトル・マリナーズのメンバーとして開幕を迎えたが、ひと月も経たないうちに放出されたブラッド・ウィルカースン、テキサス・レンジャーズでは出番のなかったケヴィン・メンチを5月上旬に迎えて、手薄な外野手をカヴァーしようとしたが、ウィルカースンは85試合で4本塁打、メンチは1本も本塁打を打てなかった。昨年89試合で11本塁打を打っている若手のアダム・リンドは、シーズン前半にはほとんど出場機会がなかった。しかし、ヴェテランの故障や不振からチャンスをつかみ、6月下旬から正左翼手に定着。シーズン後半は65試合で.286を打ったものの、24打点、6本塁打は、打力を期待されているリンドとしては不本意な数字であったろう。同じ若手でも、トラヴィス・スナイダーは、8月29日にMLBにデビューすると24試合で打率.301、13打点、2本塁打の好成績を収めた。来年2月でやっと21歳という若さなので、レギュラーに定着させるかどうか悩ましいところだが、遠くない将来にトロントの主力打者になれる素材であるのは確かである。
06年にセイントルイス・カーディナルズが世界一になったときの三遊間コンビ、スコット・ローレンとデイヴィッド・エクスタインとは、故障がちの一年だった。ローレンはすでに春期練習中に右手中指を折って故障者リスト入りしたため開幕に間に合わず。4月下旬にメンバーに復帰したが、打撃不振は変わらなかった。8月に2度目の故障者リスト入りした後は、打順がどんどん下がり、8番を打つこともあった。ゴールドグラヴ受賞の三塁守備もリーグ水準程度に落ち込んでしまっている。リードオフマンとして開幕を迎えたエクスタインも、5月初めに臀部の故障のために欠場。復帰後は打率3割を打つなど、調子は上がりつつあったのだが、監督がシト・ガストンに代わってから、エクスタインの出番はめっきり減り、ついに8月31日にアリゾナ・ダイアモンドバックスにトレードされた。昨年17本塁打と長打力を発揮し、二塁の守りでも抜群の守備範囲の広さを見せつけたアーロン・ヒルは、5月29日の試合中に飛球を捕ろうとしてエクスタインと衝突。脳震盪の後遺症で、以後シーズンを全休している。昨年は故障でひと月以上休んでいるライル・オーヴァベイは、内野手4人の中でただ一人怪我に悩まされることなく、ティームで最も多い158試合に出場した。しかし、打率.270、69打点、15本塁打は、ほぼシーズン無休で務め上げた04年から06年の打撃成績を下回った。
故障者が続出した内野をカヴァーしたのは、マルコ・スクタロ、ジョン・マクドナルド、ジョー・イングレットの万能内野手トリオ。スクタロは遊撃、三塁、二塁でそれぞれ36試合以上先発を務め、145試合に出場。MLB7年目で初めて規定打席を超える活躍だった。マクドナルドは、ローレン、エクスタインが欠場していたときの正遊撃手が主な仕事だった。出場試合数は前年の123試合から84試合に減っているが、新監督ガストンからの信頼は厚かった。昨年はほとんど出場機会のなかったイングレットは、見事なカムバックぶりだった。ヒルの代役として二塁を守り、109試合の出場で打率.297とよく打った。
昨年はレギュラー指名打者として起用されたフランク・トーマスは、開幕から不振。そのうえメンバーを外されたことに怒って、ティームを批判したため、4月20日に解雇された。その後、マット・ステアーズが指名打者を任されたが、105試合で打率.250、44打点、11本塁打と平凡な成績に終わり、8月30日にフィラデルフィア・フィリーズにトレードされた。捕手はグレッグ・ゾーン、フィラデルフィアから来たロッド・バラハスとがほぼ2対1の割合で併用されていたが、5月下旬にゾーンが右肘の故障でメンバーを離れたため、以後はバラハスが主にマスクをかぶるようになった。バラハスは104試合に出場して49打点、11本塁打をマーク。守りでも堅実なところを披露している。出番の減ったゾーンは、3年続けていたふたケタ本塁打が途絶え、打率、打点ともに、04年に青カケスになってから最低の数字だった。来季は新人のカーティス・シグペンが控え捕手として定着することだろう。
MLBにようこそ
カナダはヴァンクーヴァー出身のスコット・リッチモンドは、高校卒業後、地元の港で働いていたという。シニアリーグで投げながら短期大学に入学し、奨学金でミズーリヴァレイ大学へと進学。その後オクラホマ州立大学に転校したが、2005年に卒業するときには、すでに25歳になっていた。おそらく年齢が引っかかったのだろう、興味を示すMLBティームはなく、リッチモンドは独立リーグのエドモントンと契約。そして3年目の昨年、初めて10勝をマークしたのにブルージェイズが目をつけて、昨年マイナーリーグ契約を結んだのだった。マイナーリーグでは目立った成績は残していないものの、AA級、AAA級と着実に昇格。カナダ代表選手として北京オリンピックに出場する予定だったが、幸いにもその前にMLBに呼ばれ、7月30日のタムパベイ・レイズとの試合で初登板初先発を務めている。この試合では敗れているが、今季最後の登板になった9月26日の試合では6回無失点の投球でMLB初勝利を挙げている。
09年への展望
ハラデイと並ぶ勝ち星をマークしたA・J・バーネットには新たに契約を提示しているものの、交渉は難航しているようで、ティームを去るのはほぼ確実になった。マーカム、マガワンが無事にシーズンを全うすれば15勝くらいは稼いでくれそうだが、それにしても先発スタッフがやや手薄になるので、できれば左腕投手を補強しておきたい。レギュラー級が次々と故障者リスト入りした内野手も、来年度に向けての補強ポイントになるだろう。特に、デイヴィッド・エクスタインが期待はずれに終わった遊撃手は、マルコ・スクタロを定着させるか、あるいは、別の手を打ってくるか。