ワシントン・ナショナルズ

08年度の概要
待望の新球場ナショナルズ・パークが開場。その柿落としとなる開幕試合では、ライアン・ジマーマンのさよなら本塁打で勝利を飾った。その後二つ勝ち星を重ねたまでは良かったが、4月4日から12日まで9連敗を喫してナショナルリーグ東地区最下位に沈むと、それきり浮上することはできなかった。シーズン通算59勝103敗は、前身のモントリオール・エクスポズが1969年に創設されたときの52勝110敗、76年の55勝107敗に続く、史上3度目の100敗だった。シーズン終了後、監督マニー・アクタは留任することが決まったものの、投手担当のランディ・セントクレアを除く全てのコーチの交代が発表されており、これから大がかりなティーム建て直しが行なわれそうだ。

投手
先発スタッフで規定投球回数を超えることができたのは、右腕ティム・レディングと左腕ジョン・ラナンの2人だけ。昨年3年ぶりにMLB復帰を果たしたレディングは、シーズン前半に7勝3敗、防禦率3.85と好投。オールスターゲーム以降崩れたものの、2003年以来5年ぶりにマークした10勝は、ティームでただ一人のふたケタ勝利だった。昨年MLBデビューのラナンは、9月15日の試合で今季9勝目。しかし、最後の2試合の先発で敗れたために9勝15敗と負け越しでシーズンを終えた。それでも、通算防禦率3.91は悪くなかった。招待選手からMLB復帰を果たした左腕オダリス・ペレスは、開幕投手を務めながら、シーズン初勝利を挙げたのが5月12日と出遅れた。通算成績7勝12敗、防禦率4.34は、ひどく悲観したほどでもないのだが、30先発で投球回数が160回にも満たないというのは、いかにもスタミナに欠けている。

昨年先発に抜擢され、今年は一層の飛躍が期待された若手は、いずれも不調に終わっている。昨年7勝をマークしている左腕マット・チコは、4月に5連敗で防禦率7.00と不調でブルペンに回ったが、それでも投球内容は改善されず、5月いっぱいでマイナーリーグに送られた。16試合の先発ながら、4勝、防禦率3.42とまずまずの投球を披露している右腕ショーン・ヒルは、開幕から勝ち星をなかなか挙げることができない。6月13日にようやく今季初勝利を挙げたと思った矢先の6月下旬に故障者リスト入り。結局2人とも、シーズン前半の10試合ほどしかマウンドを務められなかった。また、チコに代わってローテーションに加わった右腕ジェイスン・バーグマンも、オールスターゲームまでは、防禦率4.02と悪くない数字を残していたが、後半に入ると6.56と急落。2勝11敗、防禦率5.04と大きく負け越し、9月はブルペンに戻されている。一昨年20先発の実績がある左腕マイケル・オコナーは、わずか5試合投げただけでシーズン終了となった。

『ベースボール・アメリカ』誌でナショナルズ組織内No.1と評されている右腕コリン・ベイルスターが、7月1日にMLB初登板初先発を務め、5回1失点の投球で初勝利もマーク。15試合の先発で3勝7敗、防禦率5.51と打ち込まれたが、80イニングで28四球と、コントロールは比較的落ち着いていて、来季の成長が見込めそうだ。今年のフューチャーズゲームで世界選抜に選ばれた右腕シャイロン・マルティスは、9月4日にデビュー。5試合のうち4試合で先発して1勝3敗、防禦率5.66の成績だったが、投球回数を上回る三振を奪った投球に期待が集まっている。07年のドラフトで全体第6位指名を受けた左腕ロス・ディトゥイラーは、今年はMLBに呼ばれないままシーズンを終えた。アリゾナ秋季リーグでも、やや打ち込まれているようだが、この3人が来季のローテーション入りを争うことは確実だと思われる。

昨年はブルペンの好投が目を引いたナショナルズだったが、今年はまず、抑えの右腕チャド・コーデロが故障のために4月いっぱいでメンバーを離れ、そのままマウンドに戻ってくることができなかった。コーデロに代わってクローザーを務めた右腕ジョン・ローチは、4勝2敗17セーヴ、防禦率2.98の数字を残したものの、オールスターゲーム直後にアリゾナ・ダイアモンドバックスに移籍。シーズン後半は、昨年は先発で投げていた右腕ジョエル・ハンラハンが抑えに定着し、25試合で防禦率3.81、9セーヴを記録している。コーデロの去就次第となるが、来季のクローザー候補の一人と言っていいだろう。ワールド・ベースボール・クラシックでの故障以来振るわない右腕ルイス・アヤラも、8月にニューヨーク・メッツに移籍し、ブルペンの中心だった3人が、それぞれメンバーから離れてしまった。

それでも、ティーム最多の76試合でマウンドを務めて防禦率3.96をマークしたサウル・リベラ、シーズン後半の防禦率が2.54だったヘスス・コロメ、9月の防禦率1.93で自信をつけただろう新人ギャレット・モック。モックと同じく、今年がMLBデビューだったスティーヴン・シェルも、39試合で防禦率2.16をマークするなど、右腕投手はまずまずの数字を残している。しかし、それに比べると左腕投手はかなり見劣りがする。左腕としてはティーム最多の57登板だったチャーリー・マニングは、防禦率5.14の数字を残して、先日セイントルイス・カーディナルズに移籍。一方、01年からの6年間で535試合に登板しているヴェテランのレイ・キングは、開幕からひと月も経たないうちにメンバーを外され、マイナーリーグ行きを嫌って、ティームを去った。現在は、9月のみのマウンドだったが14試合で無失点のマイク・ヒンクリィが残っているだけである。

野手
ミスター・ナショナルの三塁手ライアン・ジマーマンは、開幕試合でさよなら本塁打を打ったが、4月は打撃不振に苦しんだ。5月に調子が上向きになってきたところで、今度は左肩の故障で2カ月の欠場。7月下旬に復帰後は打率3割をマークしたものの、51打点、14本塁打は、過去2年の数字を大きく下回る。唯一の救いは、ゴールドグラヴ級の守備には全く影響が見られなかったことだった。今年が4年契約の最終年にあたる、遊撃手クリスティアン・グスマンは、MLB昇格以来最高のシーズンを送ることができた。打率.312は自己ベスト、7年ぶりのオールスターゲーム出場も果たしている。しかし、グスマンとコンビを組む二塁手は、シーズンを通してなかなか定着しなかった。昨年よく打ったロニー・ベリアードが左脚を傷めて、5月半ばに故障者リスト入り。フェリペ・ロペスは、打撃走塁守備いずれも振るわずにメンバーから外され、結局7月に解雇されている。シーズン後半は、ジョン・ローチとの交換でアリゾナからやってきた新人エミリオ・ボニファシオがレギュラー二塁手に抜擢されたが、攻守ともに今ひとつ。8月後半にはアヤラとの交換で獲得したアンデルソン・エルナンデスがポジション争いに加わって、こちらは打率.333、17打点とよく打った。

レギュラー不在だったのは、二塁だけではなかった。堅守のブライアン・シュナイダーがニューヨーク・メッツに去り、今年は入れ替わりでやって来たポール・ロドゥカが正捕手を任されることになっていた。しかし、開幕からひと月もしないうちに、右手を傷めて故障者リスト入り。代わったジョニー・エストラダも全く打てず、2週間でレギュラーから外された。そして7月には、ロドゥカ、エストラダともに解雇されている。昨年79試合に出場しているヘスス・フロレスにとってはレギュラー確保のチャンスだったが、シーズン序盤は打撃不振、終盤には足首の捻挫でメンバーを離れるなどあって、90試合の出場にとどまった。MLBでは63試合しか出場経験のなかったウィル・ニエベスが、61試合でマスクをかぶり、MLB初本塁打もマークしたが、来季の正捕手はやはりフロレスになるだろう。

故障から2年ぶりに復帰したニック・ジョンスンは、昨年カムバック賞に選ばれたドミトリ・ヤングから正一塁手の座を奪い返したのも束の間、5月に右手首を傷めてメンバーを離れた。しかし、ヤングも、腰痛、糖尿病、臀部の故障と3度にもわたる故障者リスト入りで満足に働けず、シーズン後半は、ヴェテランのアーロン・ブーン、2年目の新人コリー・カスト、二塁から回ったロニー・ベリアードの3人を併用せざるを得なかった。しかし、ブーン、カストは打率が低く、オールスターゲーム以降のベリアードは3割以上の高打率をマークしているが、長打力に欠けていた。

03年にニューヨーク・メッツから全体第12位指名を受けているラスティングズ・ミリッジは、ワシントンに来てようやく定位置を得られた。シーズン前半は低打率と脚の付け根の故障とで振るわなかったが、オールスターゲーム以降は、58試合で打率.299をマーク。中堅手として広い守備範囲も披露した。しかし、ミリッジが134試合で先発出場した他には、100試合以上先発を務めた外野手はいなかった。ちなみに開幕試合のナショナルズの外野は左からイライジャ・デュークス、ミリッジ、オースティン・カーンズだったが、デュークスは、その試合で太腿裏を傷めて故障者リスト入り。7月にも膝の故障でひと月休み、81試合にしか出られなかった。ただ、シーズンの半分しか出られなかったのにもかかわらず、ミリッジ、ジマーマンの14本に次ぐ13本塁打、盗塁数もミリッジの24個に次ぐ13盗塁を決めており、俊足長打の外野手という素質の片鱗は示している。ここ2年続けて、故障のないシーズンを送っていたカーンズは、5月と8月と、やはり2度も故障者リスト入り。そればかりか、打率.217、32打点、7本塁打は、02年にMLB昇格を果たして以来、最低の数字だった。故障者と言えば、ウィリ・モ・ペニャもさっぱりだった。昨年途中にボストン・レッドソックスから来て、37試合で8本塁打と長打力を披露したペニャだったが、今年は初本塁打が出たのが、何と5月23日。シーズン後半は、故障のために完全に棒に振ってしまった。

怪我人の多かった外野をよくカヴァーしたのが、アトランタ・ブレイヴズから獲得したウィリー・ハリス。左翼を守ることが多かったが、二塁、三塁、遊撃、中堅と、今年は5つのポジションで先発を務めている。今季は突如長打力に目覚め、7年間で7本しか打てなかった本塁打を、今シーズンは13本も打っている。他にも、ライアン・ランガーハンス、ロブ・マコウィアク、シーズン途中にMLBに復帰したピート・オーアなどのヴェテランも控え選手としてプレイしていたが、活躍する機会はあまりなかった。

MLBにようこそ
シャイロン・マルティスは、オランダ領アンティル諸島出身ということでフューチャーズゲーム世界選抜、北京オリンピックのオランダ代表選手に選ばれて名を知られるようになったが、同郷のロジャー・ベルナディナは、マルティスよりも一足早く、今年の6月29日にMLBデビューを果たしている。とは言うものの、プロ契約を結んだのは、17歳だった2001年のことだから、MLB昇格まで7年もかかったことになる。注目されているのは、マイナーリーグ通算179盗塁という脚力と、中堅手としての守備力の高さ。苦手とされていた打撃も、今季はAA級、AAA級2階級合計で.335の高打率をマーク。9月に再昇格してからは、打率.306、出塁率.444と成長の跡を見せている。

09年への展望
10勝が期待できる先発投手とか、勝負強い長打者とかがほしいのはどこのティームでも変わりはない。しかしナショナルズの場合には、何よりも先に、故障に負けることなく、シーズンを全うしてくれるレギュラー級の選手を一人でも多くメンバーに置いておきたい。先日、フロリダ・マーリンズから先発左腕スコット・オルセン、右打ちの左翼手ジョシュ・ウィリンガムを獲得したが、これはいい人事だったと言える。ベイルスター、マルティス、フロレス、カストなどの若手はまだまだ成長途上にあるし、こういう中堅クラスの選手が加わってくれることで、若い選手にかかる重圧が軽減されるはずである。